天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)

文字の大きさ
上 下
49 / 90
第四章:新生活の始まり

48 僕は手紙の返事を貰う

しおりを挟む
 荷物は一旦置いておいて、次は個室へと向かった。
 個室は外と同じく白い壁で、シンプルなベッド、机、タンス、本棚が置いてある。

 家具をよく見ると、シンプルなデザインだけど安っぽくはなく、良い素材を使った、しっかりした作りの物のように思える。
 管理人のスティーブさんに、家具も好きなように変えることができるといわれたけれど、別にこれでもいいかなという気はする。
 白い壁は寂しいから、何か壁紙を貼りたいとは思うけれど。



 家の中の説明が一通り済んだところで、僕はスティーブさんに向かってお辞儀をした。

 「あの、ご説明、ありがとうございました。これからよろしくお願いします」

 「いえいえ。ご丁寧にありがとうございます。魔術研究所での生活について書かれた冊子をお渡ししておきますが、何かご不明な点がありましたらご遠慮なくお聞きください」

 そうして渡された冊子をパラパラとめくってみると、敷地内にある施設の紹介、色々な部署の紹介、時々聞こえる鐘の意味など、色々なことが書かれているようだ。





 スティーブさんが出ていき、家には僕とスタイズさんと、メイドのティムさんが残された。
 ティムさんによると、僕たちの今日の予定はもう無いので、好きに過ごしていいらしい。

 明日は朝から魔法の訓練があるらしいので、それなりに忙しそうだ。


 自分の荷物を片付けたい気もするけれど、別に急ぐ必要は無いだろう。
 明日はバタバタとすることになりそうだし、今日はスタイズさんとのんびりお話ししたいと思う。

 でも彼はどうなんだろう?
 研究所に来たばかりだし、敷地内を見て回りたいとかあるのかな?


 そんなことを考えていると、スタイズさんが上着のポケットから封筒を出して僕に渡してくれたんだ。

 「セルテ君、レオンさんから君宛ての手紙を預かっていたんだ。どうぞ」

 「えっ!? あ、はい……」


 僕がかつて住んでいた町の役場で働いていたレオンさん。
 父さんが亡くなったことを悲しんで、色々と相談に乗ってくれた人だ。

 以前スタイズさんと面談した後、荷物を回収するのをお願いする時に手紙を書いたのだけど、返事が返ってくるとは思っていなかった。
 封筒は厚く、中に便箋が沢山入っているようだ。

 何が書かれているのだろう……って、既に開封されているし。
 誰かが中を見たのだろうか?


 眉を顰めて封筒を眺めていると、スタイズさんの穏やかな声が降ってきたんだ。

 「外部への情報漏洩や、犯罪組織との結託を防ぐ為に、外部の人間と手紙のやり取りをする際には検閲が入るそうだ。そして不適切な文面があると、その部分が黒く塗り潰されてしまう。その手紙は特に問題は無かったようだが……」


 僕がレオンさんとブローディさんに手紙を書いた時に、エイシア様が手紙を読んで修正したのは、そういうことだったのか。


 「まぁ、廊下で立ちっぱなしもなんだし、とりあえず楽な服に着替えて、下の部屋のソファーで寛ごう。ティムさん、お茶とお菓子の用意をよろしく」


 ティムさんはお辞儀をした後、降りて行ってしまった。
 そしてスタイズさんは荷物を置いている部屋からゆったりとした感じの服を持って来て、自分の部屋に入っていった。


 確かに魔術士とパートナーの制服は、身体にぴったりと合った厚めの生地のものなので、屋内で寛ぐには向いていないと思う。
 僕の部屋着は医務室から持ってきた荷物の中に入っているので、とりあえず鞄を持って自室に入った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...