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第一章:セルテと母親
6 僕は今後のことを考える
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フィールズさんの荷車に乗せられて食堂に着くと、彼は僕を抱えて店の中に入っていき、入口近くの席に下ろしてくれた。
そして両手を振り、店員さんを呼んでくれたんだ。
「おーい、セルテ坊ちゃんがお腹を空かせてる! 何か美味しいものを食べさせてやってくれ!」
「フィールズさん、すみません……」
「いいってことよ! じゃあ俺は仕事があるから、じゃあな!」
フィールズさんはそう言うと、爽やかに去って行き、それと入れ替わりで女性の店員さんがやってきた。
けれど、僕はお金を持って来てないことに気が付いてしまったんだ。
「あの、すみません。今お金を持ってなくて……後で払いに来ますので……」
「そうなんだ。カーレム先生には何度もお世話になったから、今回は無料にしておくよ! 坊ちゃん、何か食べたいものはある?」
「えっ、あ、ありがとうございます。お腹は空いてるけど、あんまり食欲は無くて……」
「じゃあ、とりあえず野菜のスープでも食べる? 後でまだ食べられそうなら、何か注文してくれたらいいし」
「それでお願いします…」
店員さんが去って行った後、僕は溜息をついて机の上に視線を落とす。
これから役場に書類を提出して、父さんの知り合いに手紙を書いて、荷物の片付けをしないといけない。
食欲が無くても、しっかり食べて頑張らないと。
ふと思った。
もし僕一人で生活することが出来るなら、叔母さんのところに行かなくても、良いんじゃないか?
実は父さんは母さんに内緒で、銀行に僕の名義で口座を作って、結構な金額を入れてくれている。
纏まったお金を引き出すには日数がかかってしまうらしいけれど、それを使えば家を買うことは出来なくても、部屋を借りて、どこかのお店の人に頼んで働かせてもらいつつ、一人暮らしをするくらいは出来るんじゃないか?
色々と考えていると、恰幅の良い女性――近所に住むラナおばさんが、僕の元にやってきた。
「あらあら、セルテ坊ちゃん、一人でどうし……ええっ!?」
彼女はテーブルの上を見て固まってしまった。
父さんの名前の葬儀証明書と、教会の紋章が入った布に包まれたものを見て、何があったのかを察したようだ。
「カーレム先生、ご病気だと聞いていたけど……まだ若いのに残念だったわね」
「えっ、あ、はい……」
「本当に仲が良かったのに。これから寂しくなるわね」
「はい……」
「お母さんはどうしたの? こんな時に子どもに寄り添わないなんて、何を考えてるのかしら! 若い男とよろしくやってるって噂を聞いたけど、本当に酷いわねぇ! おばさんがガツンと言ってあげようかい?」
「い、いえ、結構です。人に言われて止めるくらいなら、最初からしないでしょうし。僕は、大丈夫……です……」
「そう? 色々と辛いと思うけど……にか……ったこ……が……」
「……」
ラナおばさんは僕を心配して色々と話してくれるんだけど、途中から彼女の言葉が頭に入らなくなってしまった。
これからやらなきゃいけないことを考えることで、悲しさを誤魔化そうとしていたのに。
おばさんのせいで、父さんが亡くなったことを意識してしまって、また涙が溢れてくる。
正直今は放ってほしいと思った……。
そして両手を振り、店員さんを呼んでくれたんだ。
「おーい、セルテ坊ちゃんがお腹を空かせてる! 何か美味しいものを食べさせてやってくれ!」
「フィールズさん、すみません……」
「いいってことよ! じゃあ俺は仕事があるから、じゃあな!」
フィールズさんはそう言うと、爽やかに去って行き、それと入れ替わりで女性の店員さんがやってきた。
けれど、僕はお金を持って来てないことに気が付いてしまったんだ。
「あの、すみません。今お金を持ってなくて……後で払いに来ますので……」
「そうなんだ。カーレム先生には何度もお世話になったから、今回は無料にしておくよ! 坊ちゃん、何か食べたいものはある?」
「えっ、あ、ありがとうございます。お腹は空いてるけど、あんまり食欲は無くて……」
「じゃあ、とりあえず野菜のスープでも食べる? 後でまだ食べられそうなら、何か注文してくれたらいいし」
「それでお願いします…」
店員さんが去って行った後、僕は溜息をついて机の上に視線を落とす。
これから役場に書類を提出して、父さんの知り合いに手紙を書いて、荷物の片付けをしないといけない。
食欲が無くても、しっかり食べて頑張らないと。
ふと思った。
もし僕一人で生活することが出来るなら、叔母さんのところに行かなくても、良いんじゃないか?
実は父さんは母さんに内緒で、銀行に僕の名義で口座を作って、結構な金額を入れてくれている。
纏まったお金を引き出すには日数がかかってしまうらしいけれど、それを使えば家を買うことは出来なくても、部屋を借りて、どこかのお店の人に頼んで働かせてもらいつつ、一人暮らしをするくらいは出来るんじゃないか?
色々と考えていると、恰幅の良い女性――近所に住むラナおばさんが、僕の元にやってきた。
「あらあら、セルテ坊ちゃん、一人でどうし……ええっ!?」
彼女はテーブルの上を見て固まってしまった。
父さんの名前の葬儀証明書と、教会の紋章が入った布に包まれたものを見て、何があったのかを察したようだ。
「カーレム先生、ご病気だと聞いていたけど……まだ若いのに残念だったわね」
「えっ、あ、はい……」
「本当に仲が良かったのに。これから寂しくなるわね」
「はい……」
「お母さんはどうしたの? こんな時に子どもに寄り添わないなんて、何を考えてるのかしら! 若い男とよろしくやってるって噂を聞いたけど、本当に酷いわねぇ! おばさんがガツンと言ってあげようかい?」
「い、いえ、結構です。人に言われて止めるくらいなら、最初からしないでしょうし。僕は、大丈夫……です……」
「そう? 色々と辛いと思うけど……にか……ったこ……が……」
「……」
ラナおばさんは僕を心配して色々と話してくれるんだけど、途中から彼女の言葉が頭に入らなくなってしまった。
これからやらなきゃいけないことを考えることで、悲しさを誤魔化そうとしていたのに。
おばさんのせいで、父さんが亡くなったことを意識してしまって、また涙が溢れてくる。
正直今は放ってほしいと思った……。
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