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190話 『期日③』
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時乃回廊へ戻ると話を聞いていたのか、すでに議論を始められるように全員が集まっていた。
「まさかお前が失敗するとはな。ま、これでお前も普通の人間ってことがわかって安心したぜ」
「言ってくれるわね。これでもあなたたちより世界を見てきたつもりだったんだけど、私もまだまだねぇ」
ヒュノスは揶揄って見せたが別に責めようとする者は誰一人としていない。
そもそもメアさんがいなければ、俺たちは今頃一切何も知ることなく、アビスによる滅亡を待ちながら過ごしていた。
ここからは俺たちも一丸となって解決策を見出さなければならないだろう。
「今の歴史じゃ彼は死んでる、もし彼の犠牲を覚悟でアビスを倒したとしても、今度は彼女が生きられない。ならばどうするか……か」
ラーティアさんが確認するようにポツリと呟く。言うなれば最後の相手は運命そのもの、俺が死ねばリリアを守る守護者がいなくなってしまう――そこまで考えた俺にふと妙案が降りる。
「あ、だったら俺の変わりにリリアを守れる守護者を探すってのはどうなんだ? ミントなら俺たちが生まれた時代でも生きていたはずだ。魔力も持っているし、契約がなくたって十分助けることができるだろ?」
我ながらなかなかいい案だと思ったがそれを聞いた周りの反応はいまいちだった。代表するようにミントが俺の前に出てくる。
「君、それ本気でいってるの?」
「当たり前だろ。俺のことはともかくとして、まずは世界の平和とリリアが生きられる状況を組み立てなければいけない。そのうえで俺が生きていける方法があればいいんだが……とにかく、今は優先すべき順を間違っては――」
「パパのバカぁぁぁああああああああッ!!!」
「ぐぇあッ!?」
助走をつけた久々のシャルアタックはなかなかの衝撃を俺に与えた。ダメージになるぎりぎり手前のせいか、ものまね士の恩恵を受けることなく、俺はその場に跪く。
顔をあげると目の前には腰に両手を当て仁王立ちするシャルが見下ろしていた。
「シャ、シャル……今まじめな話をだな……」
「みんなで助からなきゃダメなの! わかってるッ!?」
だからそれを今探してるわけで……ミントに対し何かいってくれと視線を向けると宙にいたはずのミントの姿が消えていた。
「あーはっはっはっは!! ひー……は、腹が痛いッ!!」
シャルの後ろから声がすると、ミントは隠れるように地面を叩いていた。そのまま息を整えるとシャルを指差しリリアをみた。
「ね、ねぇ! この子、すっごく君に似ていると思わない? ……ぷっ、あっはははははは!!!」
「わ、私あんな怒り方してたっけ?」
シャルを叱っているリリアにそっくりだ。思い出しつい顔が緩むとシャルが可愛い顔でキッと睨んでくる。
「パパ、ちゃんと聞きなさい! もう! ママからもいってあげてー」
「えッ!?」
出鼻を挫かれたためか、言葉を探しつつもその表情は真剣そのものだった。先ほどまで笑っていたミントも落ち着いたのかリリアと一緒にシャルの横にくる。
「わ、私はレニ君とずっと一緒に旅をしてきた……だから、これからもずっと一緒にいたいの」
言われてみればドラゴンの事件以降から旅を続けてきた仲だ。それにシャルのことだって中途半端にするわけにはいかない。
今更ながら家族だと言った手前、俺も生き残る方法を優先しないとな……。
「そうだな、俺たちは一人もかけちゃいけないんだった。なんとかみんなで生き残れる方法を探そう」
「やる気になってくれてちょうどいいわ。一つだけ、あなたたち全員が助かるかもしれない方法が見つかった」
ネーナさんに色々と質問をしていたメアさんが僅かな希望を知らせにくる。その方法というのは本来ならば 考えられないようなものだったが、ここにいる全員はそれ以外に思いつくようなこともなかった。
「万が一失敗した場合は俺がいなくなる可能性もでてくると?」
「えぇ、ネーナが使った魔法はあなたを指定したわけじゃなく彼女を助ける者を呼んだだけ。これだけ歴史が変わった今、次に呼ばれるのがあなたとは限らない」
俺が死ぬだけなら何度も戻ってやり直せばいいんじゃないかと思ったんだが……まさかこんなところで一発勝負になるとは。
「私にできるかな……やっぱり、お母さんに任せた方がいいと思うんだけど、どうにかならない? もし失敗でもしちゃったら……」
「リリア、よく聞きなさい。誰かを助ければ誰かが救われないというのは世の理。あのときの私は何を犠牲にしようとあなたを助けたかった。それは今でも変わらないし過去に戻っても変えられない。だけどあなたには彼と過ごした思い出がある。力に変えるのよ――私たちは想いそのものが力になる」
ネーナさんがいうように魔法使いの魔法というのは想いがすべてだ。現状では俺のことを一番知ってそうなリリアしか適任者はいないだろう。何度もいったが万が一失敗したとしても誰のせいでもないのだ。
「封印が解かれる頃だわ。みんな、準備はいい?」
そろそろ頃合いか、あいつを見逃せば何をしでかすかわからないからな。絶対に止めなければならない。
またこの世界に呼ばれることができたらもっと伝説の地を巡りたいものだ。幻獣もみたいし伝説の鍛冶師にだって会いたい、ローラさんたちやメユちゃんにも会いたいし、それにマフィーも迎えにいかなきゃな。
アビスがいなくなれば世界も大きく変わる。むしろアビスが存在しなかった世界に戻るといってもいい。
――うまくいったとしてどうなるか、答えを予想出来ているのはメアさんとネーナさんくらいだろう。
次の世界線では俺という存在がどこまで認知されるのかはわからないが、新しい俺だって何も変わることなく旅に出るはずだ、きっとみんなにもまた会える。
「さぁみんな、最後の一仕事だ! 旅のついでに世界を救ってやろう!!」
「まさかお前が失敗するとはな。ま、これでお前も普通の人間ってことがわかって安心したぜ」
「言ってくれるわね。これでもあなたたちより世界を見てきたつもりだったんだけど、私もまだまだねぇ」
ヒュノスは揶揄って見せたが別に責めようとする者は誰一人としていない。
そもそもメアさんがいなければ、俺たちは今頃一切何も知ることなく、アビスによる滅亡を待ちながら過ごしていた。
ここからは俺たちも一丸となって解決策を見出さなければならないだろう。
「今の歴史じゃ彼は死んでる、もし彼の犠牲を覚悟でアビスを倒したとしても、今度は彼女が生きられない。ならばどうするか……か」
ラーティアさんが確認するようにポツリと呟く。言うなれば最後の相手は運命そのもの、俺が死ねばリリアを守る守護者がいなくなってしまう――そこまで考えた俺にふと妙案が降りる。
「あ、だったら俺の変わりにリリアを守れる守護者を探すってのはどうなんだ? ミントなら俺たちが生まれた時代でも生きていたはずだ。魔力も持っているし、契約がなくたって十分助けることができるだろ?」
我ながらなかなかいい案だと思ったがそれを聞いた周りの反応はいまいちだった。代表するようにミントが俺の前に出てくる。
「君、それ本気でいってるの?」
「当たり前だろ。俺のことはともかくとして、まずは世界の平和とリリアが生きられる状況を組み立てなければいけない。そのうえで俺が生きていける方法があればいいんだが……とにかく、今は優先すべき順を間違っては――」
「パパのバカぁぁぁああああああああッ!!!」
「ぐぇあッ!?」
助走をつけた久々のシャルアタックはなかなかの衝撃を俺に与えた。ダメージになるぎりぎり手前のせいか、ものまね士の恩恵を受けることなく、俺はその場に跪く。
顔をあげると目の前には腰に両手を当て仁王立ちするシャルが見下ろしていた。
「シャ、シャル……今まじめな話をだな……」
「みんなで助からなきゃダメなの! わかってるッ!?」
だからそれを今探してるわけで……ミントに対し何かいってくれと視線を向けると宙にいたはずのミントの姿が消えていた。
「あーはっはっはっは!! ひー……は、腹が痛いッ!!」
シャルの後ろから声がすると、ミントは隠れるように地面を叩いていた。そのまま息を整えるとシャルを指差しリリアをみた。
「ね、ねぇ! この子、すっごく君に似ていると思わない? ……ぷっ、あっはははははは!!!」
「わ、私あんな怒り方してたっけ?」
シャルを叱っているリリアにそっくりだ。思い出しつい顔が緩むとシャルが可愛い顔でキッと睨んでくる。
「パパ、ちゃんと聞きなさい! もう! ママからもいってあげてー」
「えッ!?」
出鼻を挫かれたためか、言葉を探しつつもその表情は真剣そのものだった。先ほどまで笑っていたミントも落ち着いたのかリリアと一緒にシャルの横にくる。
「わ、私はレニ君とずっと一緒に旅をしてきた……だから、これからもずっと一緒にいたいの」
言われてみればドラゴンの事件以降から旅を続けてきた仲だ。それにシャルのことだって中途半端にするわけにはいかない。
今更ながら家族だと言った手前、俺も生き残る方法を優先しないとな……。
「そうだな、俺たちは一人もかけちゃいけないんだった。なんとかみんなで生き残れる方法を探そう」
「やる気になってくれてちょうどいいわ。一つだけ、あなたたち全員が助かるかもしれない方法が見つかった」
ネーナさんに色々と質問をしていたメアさんが僅かな希望を知らせにくる。その方法というのは本来ならば 考えられないようなものだったが、ここにいる全員はそれ以外に思いつくようなこともなかった。
「万が一失敗した場合は俺がいなくなる可能性もでてくると?」
「えぇ、ネーナが使った魔法はあなたを指定したわけじゃなく彼女を助ける者を呼んだだけ。これだけ歴史が変わった今、次に呼ばれるのがあなたとは限らない」
俺が死ぬだけなら何度も戻ってやり直せばいいんじゃないかと思ったんだが……まさかこんなところで一発勝負になるとは。
「私にできるかな……やっぱり、お母さんに任せた方がいいと思うんだけど、どうにかならない? もし失敗でもしちゃったら……」
「リリア、よく聞きなさい。誰かを助ければ誰かが救われないというのは世の理。あのときの私は何を犠牲にしようとあなたを助けたかった。それは今でも変わらないし過去に戻っても変えられない。だけどあなたには彼と過ごした思い出がある。力に変えるのよ――私たちは想いそのものが力になる」
ネーナさんがいうように魔法使いの魔法というのは想いがすべてだ。現状では俺のことを一番知ってそうなリリアしか適任者はいないだろう。何度もいったが万が一失敗したとしても誰のせいでもないのだ。
「封印が解かれる頃だわ。みんな、準備はいい?」
そろそろ頃合いか、あいつを見逃せば何をしでかすかわからないからな。絶対に止めなければならない。
またこの世界に呼ばれることができたらもっと伝説の地を巡りたいものだ。幻獣もみたいし伝説の鍛冶師にだって会いたい、ローラさんたちやメユちゃんにも会いたいし、それにマフィーも迎えにいかなきゃな。
アビスがいなくなれば世界も大きく変わる。むしろアビスが存在しなかった世界に戻るといってもいい。
――うまくいったとしてどうなるか、答えを予想出来ているのはメアさんとネーナさんくらいだろう。
次の世界線では俺という存在がどこまで認知されるのかはわからないが、新しい俺だって何も変わることなく旅に出るはずだ、きっとみんなにもまた会える。
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