187 / 201
187話 『目線』
しおりを挟む
自分を守ってくれる相手を探し出し契約をする。契約した相手にメリットは一切なし、術者の都合のみが叶えられる魔法――危険なときに駆り出されるのだから身代わりといってもいいだろう。使われる側からみれば呪いだ……。
お母さんが自分のことをどれだけ心配していたのか、頭ではわかっているつもりだった。
一番辛かったのは魔法使いでありながら何もできなかったお母さんだろうと……お父さんは許してやってくれといっていたが、元々恨んでることもなかった。
……だけど、あの場にいたらもっと酷いことを言ってしまいそうな自分がいた。
「あなたも聞いてたわよね……魔法使いって身勝手で……最低だと思わない……?」
「グウゥゥ……」
強くなって負担を減らして、彼の変わりに死ぬことになったとしても今までの恩を返したいと、そう決めたはずなのに……。
『彼の傷つく姿を見続けることになるだろう。その覚悟はあるか?』
お父さんの言葉、あれは本当だった。私はその言葉に応えたはずだった。
ミントに何度も喝を入れてもらい、シャルの母としても多少は板についてきたかと思っていた。
なぜ今になって心が揺らぐ? お母さんが勝手なことをしたから? 違う、あれは私のためであって仕方のないことだ。それにいってしまえば私だって魔法を使い、彼の人生を変えてしまった一人、お母さんを責められるわけがない。
これが終わったら謝ろうと思ってたのに……なのに……なぜ、レニ君なの……。
「話は聞いたよ、まさかあいつが転生者だったとは、どうりでいろんな知識を持ってるわけだ」
「あ、ミント……びっくりだよね。私の身代わりで呼ばれたなんて……今更謝っても許されないことをしちゃってた」
いっそ、お前のせいで酷い目にあったんだと――少しでもいってくれれば楽になるのに、そう考えるのは逃げというものだろう。
「あいつはなんて? 文句の一つでもいわれちゃった?」
「ううん、みんな無事でよかったって……でもちゃんと話してないし、本当は自分の人生めちゃくちゃにされたって、怒ってるかもしれないね」
「そんなことないよッ! パパはママを助けにきたおうじさまだから!」
シャルが必死に擁護するが助けにきたら呪われていたなんて迷惑でしかない。そんな卑屈な考えばかりが巡る私にシャルは一枚の絵を見せてきた。
子どもと両親だろうか、幸せそうに笑い合っている三人の絵だった。
「あのね、パパとママにあったの。パパとママに会う前よりずーっと昔の、パパとママに」
「それって……まさか、記憶が戻ったの!?」
黙っていたことが悪いと思っていたのかはわからないが、こくりと頷いたシャルは少しばつが悪そうにしている。
「あとでみんなにいおうと思ってたの。だけどママが悲しそうにしているの嫌だから、パパにみんなのこと頼んだって言われてるから……パパ、ママのこと少しも怒ってないよー」
「そんなこと聞いてみなきゃわからないわ。私は、シャルを救った両親みたいに立派じゃないのよ」
「シャルわかるの、パパはママのこと大好きだから! 昔のパパとママみたいに愛し合ってるのッ!」
「ッ!?」
きゅ、急に何を言ってるのこの子は――すぐさまミントの悪知恵かと思ったが、自分は関係ないと顔の前で手を振り首を横に振った。
「ママが怒るのはパパが大好きだから! でもパパも大好きだから大丈夫だよー!!」
「わ、わかったから! もう少し静かにして!」
「お婆ちゃんもママが大好きなの、だから許してあげて、ねッ?」
許すも何も別に……いや、シャルの眼には私が怒ってるように映っているのだろう。驚いてジッと黙っていたミントがやってくる。
「まさかシャルがこんなに成長しているなんて、あいつのいった通りだったね」
「うん、やっぱりレニ君はすごいね……」
「契約の話、あいつは微塵も気にしてないと思うんだけど、君は自分を許せないみたいだからね。けじめとして一緒に謝ってあげるよ」
「本当は怒ってたらどうしよう」
「前にもいったけど文句を言われたら僕も一緒に謝ってあげるよ。もちろん君もだ」
「グゥ!!」
そんなことないとわかっているのかルークは元気に返事をすると立ち上がった。早く戻ろうと急かしてくる。
一緒に危機を乗り越えた仲間たちのなんと頼もしいことだろう。
「僕らだって君たちばかりに負担はかけたくないからね。だからこうして強くなったんだ」
* * * * * * * * * * * *
最後に現れたアビス、異常な力を持っているだけでなく驚異的なあの回復力……倒す方法などあるんだろうか。
変化したであろう過去と未来を覗いてくるといっていたメアさんが戻ってきた。
「案の定というか、やっぱりあれが全てに繋がっていたわ」
「元凶ってアビスの王たちじゃなかったのか」
「私もそう思っていたんだけど、あなたたちが王を倒し変化した未来ではあれが好き勝手していた。それに過去も以前にみたものとは違った。むしろ、こっちがもう一つの真実だったといってもいいかもしれない」
今度はそっちを止めなくてはいけないわけか、まったく面倒なモノを連れてきてしまったな。
俺だけくればよかったんだがさすがに前世じゃ霊感なんてなかったし、仕方ないといえば仕方ないんだが。
「あいつを倒せば終わりそうか?」
「えぇ、でも一つ問題があるわ。あなた自身についてなんだけど――面倒だから直接みてもらったほうがいいわね」
魔法陣が俺とメアさんを包み込むと次に現れたのは見知った家の中だった。
お母さんが自分のことをどれだけ心配していたのか、頭ではわかっているつもりだった。
一番辛かったのは魔法使いでありながら何もできなかったお母さんだろうと……お父さんは許してやってくれといっていたが、元々恨んでることもなかった。
……だけど、あの場にいたらもっと酷いことを言ってしまいそうな自分がいた。
「あなたも聞いてたわよね……魔法使いって身勝手で……最低だと思わない……?」
「グウゥゥ……」
強くなって負担を減らして、彼の変わりに死ぬことになったとしても今までの恩を返したいと、そう決めたはずなのに……。
『彼の傷つく姿を見続けることになるだろう。その覚悟はあるか?』
お父さんの言葉、あれは本当だった。私はその言葉に応えたはずだった。
ミントに何度も喝を入れてもらい、シャルの母としても多少は板についてきたかと思っていた。
なぜ今になって心が揺らぐ? お母さんが勝手なことをしたから? 違う、あれは私のためであって仕方のないことだ。それにいってしまえば私だって魔法を使い、彼の人生を変えてしまった一人、お母さんを責められるわけがない。
これが終わったら謝ろうと思ってたのに……なのに……なぜ、レニ君なの……。
「話は聞いたよ、まさかあいつが転生者だったとは、どうりでいろんな知識を持ってるわけだ」
「あ、ミント……びっくりだよね。私の身代わりで呼ばれたなんて……今更謝っても許されないことをしちゃってた」
いっそ、お前のせいで酷い目にあったんだと――少しでもいってくれれば楽になるのに、そう考えるのは逃げというものだろう。
「あいつはなんて? 文句の一つでもいわれちゃった?」
「ううん、みんな無事でよかったって……でもちゃんと話してないし、本当は自分の人生めちゃくちゃにされたって、怒ってるかもしれないね」
「そんなことないよッ! パパはママを助けにきたおうじさまだから!」
シャルが必死に擁護するが助けにきたら呪われていたなんて迷惑でしかない。そんな卑屈な考えばかりが巡る私にシャルは一枚の絵を見せてきた。
子どもと両親だろうか、幸せそうに笑い合っている三人の絵だった。
「あのね、パパとママにあったの。パパとママに会う前よりずーっと昔の、パパとママに」
「それって……まさか、記憶が戻ったの!?」
黙っていたことが悪いと思っていたのかはわからないが、こくりと頷いたシャルは少しばつが悪そうにしている。
「あとでみんなにいおうと思ってたの。だけどママが悲しそうにしているの嫌だから、パパにみんなのこと頼んだって言われてるから……パパ、ママのこと少しも怒ってないよー」
「そんなこと聞いてみなきゃわからないわ。私は、シャルを救った両親みたいに立派じゃないのよ」
「シャルわかるの、パパはママのこと大好きだから! 昔のパパとママみたいに愛し合ってるのッ!」
「ッ!?」
きゅ、急に何を言ってるのこの子は――すぐさまミントの悪知恵かと思ったが、自分は関係ないと顔の前で手を振り首を横に振った。
「ママが怒るのはパパが大好きだから! でもパパも大好きだから大丈夫だよー!!」
「わ、わかったから! もう少し静かにして!」
「お婆ちゃんもママが大好きなの、だから許してあげて、ねッ?」
許すも何も別に……いや、シャルの眼には私が怒ってるように映っているのだろう。驚いてジッと黙っていたミントがやってくる。
「まさかシャルがこんなに成長しているなんて、あいつのいった通りだったね」
「うん、やっぱりレニ君はすごいね……」
「契約の話、あいつは微塵も気にしてないと思うんだけど、君は自分を許せないみたいだからね。けじめとして一緒に謝ってあげるよ」
「本当は怒ってたらどうしよう」
「前にもいったけど文句を言われたら僕も一緒に謝ってあげるよ。もちろん君もだ」
「グゥ!!」
そんなことないとわかっているのかルークは元気に返事をすると立ち上がった。早く戻ろうと急かしてくる。
一緒に危機を乗り越えた仲間たちのなんと頼もしいことだろう。
「僕らだって君たちばかりに負担はかけたくないからね。だからこうして強くなったんだ」
* * * * * * * * * * * *
最後に現れたアビス、異常な力を持っているだけでなく驚異的なあの回復力……倒す方法などあるんだろうか。
変化したであろう過去と未来を覗いてくるといっていたメアさんが戻ってきた。
「案の定というか、やっぱりあれが全てに繋がっていたわ」
「元凶ってアビスの王たちじゃなかったのか」
「私もそう思っていたんだけど、あなたたちが王を倒し変化した未来ではあれが好き勝手していた。それに過去も以前にみたものとは違った。むしろ、こっちがもう一つの真実だったといってもいいかもしれない」
今度はそっちを止めなくてはいけないわけか、まったく面倒なモノを連れてきてしまったな。
俺だけくればよかったんだがさすがに前世じゃ霊感なんてなかったし、仕方ないといえば仕方ないんだが。
「あいつを倒せば終わりそうか?」
「えぇ、でも一つ問題があるわ。あなた自身についてなんだけど――面倒だから直接みてもらったほうがいいわね」
魔法陣が俺とメアさんを包み込むと次に現れたのは見知った家の中だった。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件
有沢天水
ファンタジー
立花烈はある日、不思議な鏡と出会う。鏡の中には死んだはずの妹によく似た少女が写っていた。烈が鏡に手を触れると、閃光に包まれ、気を失ってしまう。烈が目を覚ますと、そこは自分の知らない世界であった。困惑する烈が辺りを散策すると、多数の屈強な男に囲まれる一人の少女と出会う。烈は助けようとするが、その少女は瞬く間に屈強な男たちを倒してしまった。唖然とする烈に少女はにやっと笑う。彼の目に真っ赤に燃える赤髪と、金色に光る瞳を灼き付けて。王国の存亡を左右する少年と少女の物語はここから始まった!
転生令嬢の幸福論
はなッぱち
ファンタジー
冒険者から英雄へ出世した婚約者に婚約破棄された商家の令嬢アリシアは、一途な想いを胸に人知の及ばぬ力を使い、自身を婚約破棄に追い込んだ女に転生を果たす。
復讐と執念が世界を救うかもしれない物語。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
偽りの半鳥人アレガ
影津
ファンタジー
人間のいなくなった密林の世界で、半鳥人(ハルピュイア)に育てられた人間の子供アレガは育ての親を女盗賊団に殺される。女盗賊団に唯一の男として所属することになったアレガは、不死鳥を探す人間の一団と遭遇する。
自分を人間だと知ったアレガは半鳥人として戦うのか。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる