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186話 『立場』
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アビスはいっていた、『僕は呼ばれてきた』と……。あの剣豪も女性の声で呼ばれ、気づけばあそこにいたといっていた。
ネーナさんが使った魔法は俺を呼んだと思っていたがそれは違っていた。リリアを助けられる人を無差別に探していただけだった。その中でたまたま肉体を持って魔法に応えたのが俺だった。
肉体を持っていた俺は魔法に応えたモノたちのなかでも一番意識が高かったため選ばれた――そう考えれば確かに辻褄が合う。
「なるほど、メアの言っていることが本当であれば納得がいくわね」
「ま、待ってお母さん! アビスが別の世界から来たって……それに呼んだって誰を――何のために呼んだの!?」
「それは……」
リリアは俺が転生者だということを知らない。ネーナさんがどうしようかと困っているが、いつまでも隠すわけにもいかないだろう。別にいって悪いことでもないしな。
「呼ばれたのは俺だ。いつか言おうと思っていたんだが、ネーナさんが使った魔法は、こことは違う世界にいた俺を呼んだんだ」
「どういうこと……? レニ君はあの村で生まれたはずじゃ……」
「あぁ、俺があそこで生まれたのは間違いない。だが俺には前世――つまり別の世界で過ごしていた長年の記憶がそのまま残っているんだ」
混乱しているのかリリアはまだわかっていないようだ。ネーナさんが補足するように言葉を足していく。
「私が使った魔法はあなたを守る守護者を探すものだった。選ばれた者は魂の契約者となり、あなたを守り続けることになる。それに選ばれたのが彼だったのよ」
「それじゃあレニ君がいつも私を助けてくれてたのって……」
「そういう運命にあったといってもいいわね。彼には悪いと思ってるけど、私は絶対にあなたを死なせたくなかった」
助けてっていわれたから何かを守るためにこの世界に呼ばれたんだろうって自覚はあったし、あくまで伝説を探す旅はそのついでだ、そういうことにしておいてほしい。だってそんな契約があったなんて知らなかったし。
とにかく、娘の心配が第一なのは親として当然だろう。
微力ながら役に立てたのであれば本望だ。
「そんな…………お母さん! 早く魔法を解いて!!」
「これは互いの魂に干渉するものだから解除はできないの……でも、ほ、ほら、今まで一緒に旅をしてきたんでしょ? 彼も別に気にしては――」
「解けないってどうして!? 魔法のせいでレニ君がどれだけ――」
「リリア落ち着いて。確かに色々あったけど、みんな無事だったんだしいいじゃないか」
「よくないよッ!! 私のせいでどれだけ危険な目にあったのか忘れたの!? 力のない私の変わりに……何度も傷ついて、腕まで失くして……っ!!」
俺の腕をみてハッとしたリリアの目から涙が零れる。もう気にするなといいたいが、やはり一度あったことを完全に受け入れるというのは難しいもの。
今俺が何かいったところで、きっとリリアは自分自身を責めるだろう。
「ご、ごめんなさい……少し、頭を整理したいから離れてるね……」
「グルルルルル……」
リリアの後をルークが寄り添うようについていく。自分が悪いと思っているようだが別に誰が悪いという訳ではない。なるべくしてなっただけ、ただそれだけのことだ。
「ママどうしたのー具合でもわるくなった―?」
フェンリルの背に乗って遊んでいたシャルが戻ってくる。さすがに一部始終を見たのか、何かがあったということだけはわかっているようだ。
「そういうわけじゃないんだ。シャルは、パパが別の世界からやってきたっていったら信じるかい?」
「別の世界? シャルの中にいる人と一緒のとこー?」
魔人も違う次元から来ているっていってたし、思ったよりもそういう存在っていっぱいいるのかもしれないな。
「その人たちとは違うところからだよ。魔法がなかった世界から、ママを助けるために呼ばれたんだ」
「パパかっこいいー! おうじさまだー!」
どちらかというと、おじさまなんだけどね。唯一の救いは生まれ変われたことだな。前世の姿でそのままきていたら事案でしかない。
「とりあえずあっちも終わったみたい。仲間外れはよくないだろうから彼らにも話してあげなさい」
メアさんが魔法を使うとミントたちが現れる。ヒュノスがボロボロだが怪我はないようだし全員無事のようだ。
「これで終わり? ずいぶんと辛気臭いけど、まさか失敗したの?」
「いや、アビスの王は倒したんだが、一つ問題が起きてな……ついでにミントにも知っておいてほしいことがある」
新たに現れたアビス、そして俺が転生者であるということ。ミントは驚くというより、なるほどと腕を組みながら頷いていた。
「どおりで見た目と中身が合ってなかったわけだ、安心したよ。それで、そのアビスを倒す方法はわかったの?」
「これからメアさんに聞こうとしてたところだ。だけどリリアがな……俺がもっと早くに伝えるべきだったかもしれない。ミントも、今更になってしまってすまんな」
「それなら任せてよ。いい機会だし、シャルの勉強にもなるからね」
アビスも解決しなければならないしあっちは任せるか。なんだかんだでこういうときこそ頼れるのはミントだからな。
「ごめんなさいね、あなたにも迷惑をかけてしまったみたいで」
「ネーナさんは悪くないですよ、ずっとリリアを守っていただけなんですから。ただ、育ての親というのはリリアにとって村のお婆ちゃんなんです。だからたぶん、リリアはまだ母親であるあなたのことが受け入れられないのかもしれません」
「そこまでみていてくれたの……選ばれたのがあなたで本当によかったわ」
「買いかぶり過ぎですよ、俺だってリリアを守り切れたわけじゃないんです。あの髪だって、本当はあなたと同じだったんですから……」
「あら、私は素敵だなって思ってたんだけど、若い子的にはダメなのかしら?」
「そういう意味じゃありません。あれは魔人を呼び出したせいで――」
「それくらい大丈夫よ、あの子は根っから髪のことなんか気にしていない。あなたのために怒れるのがその証拠よ」
本当にそうだろうか……それならまだ救われた気もするが……。とにかく、まずはあのアビスを倒さなければならない、こっちはこっちで集中しよう。
ネーナさんが使った魔法は俺を呼んだと思っていたがそれは違っていた。リリアを助けられる人を無差別に探していただけだった。その中でたまたま肉体を持って魔法に応えたのが俺だった。
肉体を持っていた俺は魔法に応えたモノたちのなかでも一番意識が高かったため選ばれた――そう考えれば確かに辻褄が合う。
「なるほど、メアの言っていることが本当であれば納得がいくわね」
「ま、待ってお母さん! アビスが別の世界から来たって……それに呼んだって誰を――何のために呼んだの!?」
「それは……」
リリアは俺が転生者だということを知らない。ネーナさんがどうしようかと困っているが、いつまでも隠すわけにもいかないだろう。別にいって悪いことでもないしな。
「呼ばれたのは俺だ。いつか言おうと思っていたんだが、ネーナさんが使った魔法は、こことは違う世界にいた俺を呼んだんだ」
「どういうこと……? レニ君はあの村で生まれたはずじゃ……」
「あぁ、俺があそこで生まれたのは間違いない。だが俺には前世――つまり別の世界で過ごしていた長年の記憶がそのまま残っているんだ」
混乱しているのかリリアはまだわかっていないようだ。ネーナさんが補足するように言葉を足していく。
「私が使った魔法はあなたを守る守護者を探すものだった。選ばれた者は魂の契約者となり、あなたを守り続けることになる。それに選ばれたのが彼だったのよ」
「それじゃあレニ君がいつも私を助けてくれてたのって……」
「そういう運命にあったといってもいいわね。彼には悪いと思ってるけど、私は絶対にあなたを死なせたくなかった」
助けてっていわれたから何かを守るためにこの世界に呼ばれたんだろうって自覚はあったし、あくまで伝説を探す旅はそのついでだ、そういうことにしておいてほしい。だってそんな契約があったなんて知らなかったし。
とにかく、娘の心配が第一なのは親として当然だろう。
微力ながら役に立てたのであれば本望だ。
「そんな…………お母さん! 早く魔法を解いて!!」
「これは互いの魂に干渉するものだから解除はできないの……でも、ほ、ほら、今まで一緒に旅をしてきたんでしょ? 彼も別に気にしては――」
「解けないってどうして!? 魔法のせいでレニ君がどれだけ――」
「リリア落ち着いて。確かに色々あったけど、みんな無事だったんだしいいじゃないか」
「よくないよッ!! 私のせいでどれだけ危険な目にあったのか忘れたの!? 力のない私の変わりに……何度も傷ついて、腕まで失くして……っ!!」
俺の腕をみてハッとしたリリアの目から涙が零れる。もう気にするなといいたいが、やはり一度あったことを完全に受け入れるというのは難しいもの。
今俺が何かいったところで、きっとリリアは自分自身を責めるだろう。
「ご、ごめんなさい……少し、頭を整理したいから離れてるね……」
「グルルルルル……」
リリアの後をルークが寄り添うようについていく。自分が悪いと思っているようだが別に誰が悪いという訳ではない。なるべくしてなっただけ、ただそれだけのことだ。
「ママどうしたのー具合でもわるくなった―?」
フェンリルの背に乗って遊んでいたシャルが戻ってくる。さすがに一部始終を見たのか、何かがあったということだけはわかっているようだ。
「そういうわけじゃないんだ。シャルは、パパが別の世界からやってきたっていったら信じるかい?」
「別の世界? シャルの中にいる人と一緒のとこー?」
魔人も違う次元から来ているっていってたし、思ったよりもそういう存在っていっぱいいるのかもしれないな。
「その人たちとは違うところからだよ。魔法がなかった世界から、ママを助けるために呼ばれたんだ」
「パパかっこいいー! おうじさまだー!」
どちらかというと、おじさまなんだけどね。唯一の救いは生まれ変われたことだな。前世の姿でそのままきていたら事案でしかない。
「とりあえずあっちも終わったみたい。仲間外れはよくないだろうから彼らにも話してあげなさい」
メアさんが魔法を使うとミントたちが現れる。ヒュノスがボロボロだが怪我はないようだし全員無事のようだ。
「これで終わり? ずいぶんと辛気臭いけど、まさか失敗したの?」
「いや、アビスの王は倒したんだが、一つ問題が起きてな……ついでにミントにも知っておいてほしいことがある」
新たに現れたアビス、そして俺が転生者であるということ。ミントは驚くというより、なるほどと腕を組みながら頷いていた。
「どおりで見た目と中身が合ってなかったわけだ、安心したよ。それで、そのアビスを倒す方法はわかったの?」
「これからメアさんに聞こうとしてたところだ。だけどリリアがな……俺がもっと早くに伝えるべきだったかもしれない。ミントも、今更になってしまってすまんな」
「それなら任せてよ。いい機会だし、シャルの勉強にもなるからね」
アビスも解決しなければならないしあっちは任せるか。なんだかんだでこういうときこそ頼れるのはミントだからな。
「ごめんなさいね、あなたにも迷惑をかけてしまったみたいで」
「ネーナさんは悪くないですよ、ずっとリリアを守っていただけなんですから。ただ、育ての親というのはリリアにとって村のお婆ちゃんなんです。だからたぶん、リリアはまだ母親であるあなたのことが受け入れられないのかもしれません」
「そこまでみていてくれたの……選ばれたのがあなたで本当によかったわ」
「買いかぶり過ぎですよ、俺だってリリアを守り切れたわけじゃないんです。あの髪だって、本当はあなたと同じだったんですから……」
「あら、私は素敵だなって思ってたんだけど、若い子的にはダメなのかしら?」
「そういう意味じゃありません。あれは魔人を呼び出したせいで――」
「それくらい大丈夫よ、あの子は根っから髪のことなんか気にしていない。あなたのために怒れるのがその証拠よ」
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