素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。～趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました～

164話 『成長過程』

「ちょっと待ってよ。君たちも相当強いよね？　僕らじゃなくて自分でやったらどうなのさ」

「それがちょっと厄介でね、あなた達の協力も必要ってわけ」


　この人らニッグを相手に戦ってたわけでしょ。俺達まで追加したら過剰戦力といってもいいんじゃないの。


「ちなみに、アビスの王だっけ？　そいつらを倒さなかったらどうなる？」

「世界はアビスに飲まれ、生命あるものすべてが餌となるわ」


　なるほど、また世界が終わるってことね。まさか俺みたいなやつが世界の命運を握る日がくるなんてなぁ。いや、俺というよりもリリアやみんなが揃ってるからこそなのだろう。
　仕方ない、状況が状況だしみんなと相談するか。


「は～いみんな集合～」


　ルークを背に声をかけるとみんなが集まってくる。やはり困ったときはこれに限る。


「みんなも聞いたと思うが、いつの間にか世界の命運は俺達の手に握られていたっぽい」

「君を封印したら避けれたりできそうじゃない？」


　なるほど、いい意見だ。トラブルメイカーである俺を封印するという考えは嫌いじゃないぞ。だが事態が起こってからでは俺をどうこうしようと意味はないのだ。


「シャルのことはどうしよう、さすがにこのまま一緒だと」

「シャル、みんなといるー！」

「そうはいっても……今度こそ本当に危ないかもしれないのよ」

「いやー！」


　いつにも増してシャルが駄々をこねている。だけど、さすがに今回は危険すぎるからな。


「なぁシャル、今回ばかりはママの言うことを」

「やッ！」


　そういってぷいっと横を向くシャルはまだまだ可愛い子どもだ。いつもならほっぺを突っついてやりたいところだが、今回はそうもしてられない。


「みんなシャルのことが心配なんだよ、わかってくれ」

「ッ！！　……シャルもみんなのことが心配なの、わかってー」


　もしかして……シャルはずっと俺達のことを心配してるといいたかったのか？　どうやって伝えたらいいのかわからなかったから、拒否するしか方法がなかったのかも……。
　いつもはひたすら叫んで暴れていたのが、今は俺の服を掴みしょんぼりしている。この子も知らない間にどんどん成長してるんだな。


「このままパパたちと一緒にきたら、痛くて、とても辛い思いをするかもしれないよ」

「それっていつも通りってことでしょー？」

「あははは、そうかもしれないね」

「シャルが助けてあげるー！」

「…………そっか。それじゃあみんなのこと、しっかりと頼んだぞ」

「うんッ！！」


　シャルの元気な返事を聞いた俺は手をグーにして前に出すとシャルも同じようにグーをつくりコツンと合わせた。とても小さいが、とても頼りになる拳だ。


「ほ、本当に大丈夫なの？」

「シャルは俺たちが思ってるよりもずっと成長してるよ。そろそろ自分で決めさせてもいいだろう」


　リリアは不安なのか、なかなか賛成の言葉がでてこない。気持ちはわかるがここで俺達が無理を言ってしまうといざというとき独り立ちもできなくなってしまう。
　俺たちも子離れする時期なんだろう。


「君も少しは成長しないとダメだよ。いつかお母さんになるんだから」

「ミントの言う通り、これも立派な母親になるための試練だと思えばいいさ」

「立派な……わ、わかったわ！　シャルが自分で決めたなら応援しなきゃね！！」


　やはり年長者の言葉というのは伝わるものがあるのだろう、ミントの後押しもあったおかげでわかってくれたようだ。


「あとは君も！　図体だけでかいって思われないように頑張ってよ」

「グルルルルルル」


　昔は舐められて（物理的に）いたのに今ではまるで相棒のようだな。もちろんルーク自身もやる気十分だ。
　どうせ逃げたところで世界は滅びるらしいし、腹をくくっていっちょ世界を救いにいきますか！


「よし、決まりだな。メアさん、俺達は何をすればいいんだ」

「今のあなた達じゃアビスの王は倒せないから、まずは全員修行をつけさせてもらうわ」


　そういえばこのまま進んだ場合の未来は滅んでたんだから、何か対策をする必要があるわけか。修行なんてしたことなかったから楽しみといえば楽しみなんだが……今の俺達にやれることなんてあるのだろうか。


「俺たち、これでも結構強いほうだと思うんだが」

「そうね。だから修行といっても、あなたたちの限界をもう一段階上げるためのものと思ってちょうだい」


　メアさんは不敵な笑みを浮かべると指を鳴らし、俺達は魔法陣により別々の場所へと飛ばされた。