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160話 『恋の観測者(4)』
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す、すごい……。目の前ではニールさんの攻撃をレニお兄さんが防いでいる。
初めはさすがに手を抜いていたけど、タイラーさんに一喝されてからというもの、ニールさんの猛攻は続いていた。
「ちっ、師匠の言う通りお前――異常だぜ!!」
「うぉっと! 何言ってんだ、お前だって相当強くなっただろ!?」
あんな攻撃の最中に会話なんてどうかしてるわよ。いくら訓練用の剣だからってあんなのが当たったらと思うと……。
女性陣はソフィアさんとリリアさんを除いてキャーキャー騒いでますし、間違って怪我でもしなければいいのですが。
「仕方ねぇ……師匠、あれを使うぞ!」
「だからさっきから全力でいけと言ってるだろう」
ニールさんは構え直すと深呼吸をした。
≪剣技:四方≫
危ないと思ったのも束の間、レニお兄さんは横に避けると見えない斬撃を剣で防ぐ。そしてぶつかり合った二人の剣は折れてしまっていた。
「やっぱこれじゃあ持たねぇか」
「これを使え」
タイラーさんはそういうと鞘ごと剣を投げる。あれって真剣じゃあ……!
「ね、ねぇアイリ! あれ本物じゃないの!?」
「と、ととと止めなきゃッ!」
本物ってことは切れちゃうんでしょ!? でも近づいたら私が危ないし……って、どうしてこんなときにリリアお姉さんとソフィアさんは二人を眺めているのよ!
「大丈夫だよアイリちゃん」
「まったく、あの子ったらどれだけ強くなってるのよ」
あれ、先ほどとなんかレニお兄さんの雰囲気が変わったような――って剣抜いてるし!! 何あのヤバそうな剣!
「師匠としてアドバイスだ。目の前にいるのがお前の目標、しっかり学べよ」
「はっ? 急に何言って」
「いくぞ、ニール」
剣と剣がぶつかり合うと先ほどとはまったく違う音が響き渡る。その音の大きさから一発がどれほど重いのか、想像することはまったくできませんが、ニールさんの表情を見るに相当な威力なのでしょう。
「お前ッ……手ェ抜いてたのか!?」
「いいや、ずっと全力だよ」
体格差でも明らかにニールさんのほうが有利なのにレニお兄さんが片手で押し続けていく。ニールさんも反撃してるけど綺麗に受け流されてしまった。
ついに追い詰められたニールさんは先ほどのように剣を構える。
≪剣技:四方≫
「すまんなニール、俺は二度と負けるわけにはいかないんだ」
≪秘剣:四方≫
「なッ!?」
いったい何が起きたのかわかりませんが、気づけば後から動いたように見えたレニお兄さんがニールさんの剣を吹き飛ばしていました。
背後の岩は切り崩れ、宙を舞った剣が地面へと突き刺さると、それを合図にタイラーさんが声をあげた。
「そこまでだ!」
「くっ……師匠、剣まで借りたのにすみません」
とりあえず終わったようですね、私達もあちらへ向かいましょう。
「二人ともお疲れ様!」
「おう、嬢ちゃん。どうだったこいつの動きは?」
「すごかったですよ、普通の相手だったら誰にも負けないんじゃないでしょうか」
「はっはっは! 普通ときたか、こりゃあお前でも無理なわけだ」
普通の相手以外に何がいるんでしょうか……リリアさんの言ってることが謎ですが、とにかく二人とも怪我がなくてよかったです。
恋の進展はなさそうでしたがそれ以上のものを見ることができましたし良しとしましょう。
「そういえばお前ら揃いも揃ってどうしたんだ?」
「ん? お前が来るのを待ってたんじゃないのか?」
ま、まずい、なんとか誤魔化さなくては! 大急ぎでソフィアさんとタイラーさんに目を配る。
「こいつを呼んでくるまで時間がかかっちまうと思ってな、探しておくように頼んでたんだ」
「そ、そう! そういうことだから先にリリアちゃんとレニ君を探していたのよ」
「そうなんです! お二人の邪魔をしてはいけないと思って隠れてたんです!」
「あっバカ……」
しまった……完全に墓穴を掘ってしまった。ほかにいいようもないし白状してしまうしか…………。
「あ、そうか! 私たちのお参りが終わるまで気を遣ってくれたのね」
「あーそういうことか、普通に声をかけてもらってもよかったんだがな」
まさかリリアお姉さんまで気づいてない……? ソフィアさんとタイラーさんをみると二人とも苦笑している。まさかここまでお二人が鈍いとは……ちょっと予想していませんでした。
「ニール君とも久しぶりに会えたし、みんなありがとね!」
「ど、どういたしまして……?」
何はともあれ無事に終わってよかった。全員で帰ろうとしたところ、ニールさんの腕から赤いものがみえる。
「大変ッ! 怪我をしてますわ!」
「んっ? あぁこんなん掠り傷だろ、ほっときゃ治る」
「いけません! ちゃんと治療しておかないと悪化します! 何か縛るものは……あ、これならちょうどいいですね!」
ハンカチなら抑えるのにもいいでしょう。血さえ止まれば回復薬であっという間に治りますからね。
「あ、おいそんな綺麗なもん――」
「あぁもうジッとしててください、ずれちゃうじゃないですか!」
「……ニール、お前、ちゃんと最後まで面倒みろよ」
「な、なんすか師匠!?」
「さぁそろそろ戻りましょうか。最後にいいものがみれて楽しかったわ」
初めはさすがに手を抜いていたけど、タイラーさんに一喝されてからというもの、ニールさんの猛攻は続いていた。
「ちっ、師匠の言う通りお前――異常だぜ!!」
「うぉっと! 何言ってんだ、お前だって相当強くなっただろ!?」
あんな攻撃の最中に会話なんてどうかしてるわよ。いくら訓練用の剣だからってあんなのが当たったらと思うと……。
女性陣はソフィアさんとリリアさんを除いてキャーキャー騒いでますし、間違って怪我でもしなければいいのですが。
「仕方ねぇ……師匠、あれを使うぞ!」
「だからさっきから全力でいけと言ってるだろう」
ニールさんは構え直すと深呼吸をした。
≪剣技:四方≫
危ないと思ったのも束の間、レニお兄さんは横に避けると見えない斬撃を剣で防ぐ。そしてぶつかり合った二人の剣は折れてしまっていた。
「やっぱこれじゃあ持たねぇか」
「これを使え」
タイラーさんはそういうと鞘ごと剣を投げる。あれって真剣じゃあ……!
「ね、ねぇアイリ! あれ本物じゃないの!?」
「と、ととと止めなきゃッ!」
本物ってことは切れちゃうんでしょ!? でも近づいたら私が危ないし……って、どうしてこんなときにリリアお姉さんとソフィアさんは二人を眺めているのよ!
「大丈夫だよアイリちゃん」
「まったく、あの子ったらどれだけ強くなってるのよ」
あれ、先ほどとなんかレニお兄さんの雰囲気が変わったような――って剣抜いてるし!! 何あのヤバそうな剣!
「師匠としてアドバイスだ。目の前にいるのがお前の目標、しっかり学べよ」
「はっ? 急に何言って」
「いくぞ、ニール」
剣と剣がぶつかり合うと先ほどとはまったく違う音が響き渡る。その音の大きさから一発がどれほど重いのか、想像することはまったくできませんが、ニールさんの表情を見るに相当な威力なのでしょう。
「お前ッ……手ェ抜いてたのか!?」
「いいや、ずっと全力だよ」
体格差でも明らかにニールさんのほうが有利なのにレニお兄さんが片手で押し続けていく。ニールさんも反撃してるけど綺麗に受け流されてしまった。
ついに追い詰められたニールさんは先ほどのように剣を構える。
≪剣技:四方≫
「すまんなニール、俺は二度と負けるわけにはいかないんだ」
≪秘剣:四方≫
「なッ!?」
いったい何が起きたのかわかりませんが、気づけば後から動いたように見えたレニお兄さんがニールさんの剣を吹き飛ばしていました。
背後の岩は切り崩れ、宙を舞った剣が地面へと突き刺さると、それを合図にタイラーさんが声をあげた。
「そこまでだ!」
「くっ……師匠、剣まで借りたのにすみません」
とりあえず終わったようですね、私達もあちらへ向かいましょう。
「二人ともお疲れ様!」
「おう、嬢ちゃん。どうだったこいつの動きは?」
「すごかったですよ、普通の相手だったら誰にも負けないんじゃないでしょうか」
「はっはっは! 普通ときたか、こりゃあお前でも無理なわけだ」
普通の相手以外に何がいるんでしょうか……リリアさんの言ってることが謎ですが、とにかく二人とも怪我がなくてよかったです。
恋の進展はなさそうでしたがそれ以上のものを見ることができましたし良しとしましょう。
「そういえばお前ら揃いも揃ってどうしたんだ?」
「ん? お前が来るのを待ってたんじゃないのか?」
ま、まずい、なんとか誤魔化さなくては! 大急ぎでソフィアさんとタイラーさんに目を配る。
「こいつを呼んでくるまで時間がかかっちまうと思ってな、探しておくように頼んでたんだ」
「そ、そう! そういうことだから先にリリアちゃんとレニ君を探していたのよ」
「そうなんです! お二人の邪魔をしてはいけないと思って隠れてたんです!」
「あっバカ……」
しまった……完全に墓穴を掘ってしまった。ほかにいいようもないし白状してしまうしか…………。
「あ、そうか! 私たちのお参りが終わるまで気を遣ってくれたのね」
「あーそういうことか、普通に声をかけてもらってもよかったんだがな」
まさかリリアお姉さんまで気づいてない……? ソフィアさんとタイラーさんをみると二人とも苦笑している。まさかここまでお二人が鈍いとは……ちょっと予想していませんでした。
「ニール君とも久しぶりに会えたし、みんなありがとね!」
「ど、どういたしまして……?」
何はともあれ無事に終わってよかった。全員で帰ろうとしたところ、ニールさんの腕から赤いものがみえる。
「大変ッ! 怪我をしてますわ!」
「んっ? あぁこんなん掠り傷だろ、ほっときゃ治る」
「いけません! ちゃんと治療しておかないと悪化します! 何か縛るものは……あ、これならちょうどいいですね!」
ハンカチなら抑えるのにもいいでしょう。血さえ止まれば回復薬であっという間に治りますからね。
「あ、おいそんな綺麗なもん――」
「あぁもうジッとしててください、ずれちゃうじゃないですか!」
「……ニール、お前、ちゃんと最後まで面倒みろよ」
「な、なんすか師匠!?」
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