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133話 『お気に入り』
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『そんな……霊獣様、お気を確かに!』
『くそ、遅かったか』
『……なんてこと』
大きな社の前ではアビスにとり憑かれた霊獣が苦しむように暴れていた。前に出た精霊達は悲しんでいるが、その手には先ほど飲んだジュースの容器が、名残惜しそうにしっかりと握りしめられていた。
もちろん自然で作ったものだから壊れようと問題ない。俺の隣で三人に呆れているシルフさんはいち早く容器を捨て霊獣を探すのを先導してくれていた。
「どにかくアビスを離さないと、何か特徴とかわかりませんか?」
『うーん……霊獣様はあたしたちのバランスが崩れないように見張ってるだけで、実際そんなに会ったこともないのよね』
まさかの情報はなしか……。精霊たちが好き勝手に暴れないための抑止力であるのならば力も強いはず、このままでは危険すぎる。
まずは相手の出方をみようとしたそのとき、アビスの姿は一瞬にして消え、そして強い衝撃が起きると目の前にいたアクアさんたちが吹き飛ばされていた。
「大丈夫ですか!?」
なんて力だ……全員震えている、怪我はなさそうだがあまりの力の差に絶望しているのだろう……だが、最後まで諦めてはいけない。
『あっ……ジュース(空)が……』
『あたいの、ジュース(空)……』
『……よくも……』
『『『壊したなッ!!』』』
そっちかよ!!
三人の容器は粉々に砕けてしまっていた。さすがに壊れるって、むしろ防具代わりに……はなってないな。
三人は立ち上がると一斉に霊獣へ攻撃を開始した。倒してやろうという意気込みすら感じる、絶妙なコンビネーションでアビスを責め立てていく。
『っしゃあ覚悟しろおおおお!!』
サラさんが炎を纏わせた拳で殴りかかる。だがまたしてもアビスは瞬間移動したかのように遠くへ移動した。なんだあの動き……速すぎて目で追えないぞ。
そしてまた消えたと思うと今度はサラさんが吹き飛ばされた。
今度はシルフさんが隙をみて攻撃を仕掛ける。アビスの体は大きなカマイタチにあったようにスッパリと斬れたが、体はすぐに繋がると何事もなかったかのように暴れ始めた。
攻略法が見つからないまま時間だけが過ぎていく……。その間にも霊獣にとり憑いたアビスはどんどん深くまで侵食しているのか先ほどよりも黒さが増していた。
『何を遊んでいる』
「こ、子ども!?」
もう全員逃げていたと思ってたがまさか子どもが残っていたとは……!
社の前で立ちっぱなしの子どもにリリアが急いで駆け寄る。しかし大きな声を出した子どもは、すでにアビスの標的になり狙われていた。
「危ない、逃げてーーー!」
『ふんッ』
衝撃が空気を揺らす――しかし、あろうことかその子どもはその場から一歩も動かずアビスの突進を片手で受け止めていた。
『地の者よ、こやつの対処法はわかるか』
「あっ……まずはその身体からアビスを引き離さないと!」
『方法は?』
「霊獣様も精霊達の水や火のように何かでできているはず、それと同じものがあれば……」
『ふむ、ならば問題ない』
子供の手が光出しバチバチと音を鳴らしていく。これはまさか、霊獣の正体って雷!?
その手にアビスが勢いよく移動していく。黒かった霊獣の体は白く綺麗な毛並みに戻っていき、逆に子どもの手は真っ黒に染まっていった。
『お主、これを倒すことはできるか』
「あ、あぁそいつをその辺に放してくれ!」
子どもが手を振ると黒い塊が地面にへばりつく。パチパチと音を立てているが対象を失ったアビスの塊はその場で蠢いているだけだった。
すぐに剣を突き刺すとアビスは霧散し消えていった。
「ふう……助かった。ありがとう」
『気にするな』
妙にませている子どもだが、相当な実力者みたいだし精霊もこの子のことを知っているかもしれない。
やってきた精霊に何者なのか聞こうと思った瞬間、全員が膝をつき頭を下げた。何事かと思っている俺の元へミントがやってくる。
「どうやらその人が精霊王らしいよ」
「えっえぇこの子どもが!? って、も、申し訳ございません!」
『構わん。世界の違うお主らが我にへりくだる道理などない』
そう言われても、あんだけふざけてた雰囲気の精霊達が全員微動だにしていない。いや、本人達はまじめだったんだろうけど。
『さて、お前たちの戦いをみせてもらったがなんだあのざまは』
『め、滅相もございません』
『全員代替わりするか?』
『ッ!!』
よその世界の事情に首を突っ込むわけにもいかないから邪魔しないように黙っていたいが、シャルが気になって仕方がなかったのか精霊王へ声をかける。
「ねぇダイガワリってなぁにー?」
『こやつらを消して次の者に代えてやるのだ。お主らにも迷惑をかけたようだしちょうどいいだろう』
何もそこまでする必要はないと思うが……。まだここにきて間もないし、せっかく知り合ったみんながいなくなるというのもな。
「口を挟んで悪いがみんなを許してやってくれないか」
『この世界では当たり前のことだ、気にする必要はない』
そうは言っても俺たちには思い出として残ってしまっている。はいそうですかと納得できるわけがない。
「みんなとはまだ短いけど思い出があるんだよ。精霊はどうかわからないが俺たちにとっては大切な時間なんだ」
『ふむ……お前は全員の加護を受けておるのか。地の者には与えられないはずだが……面白い。恩人の頼みだ、今回は見逃してやる』
ふぅ、とりあえずは免れたようだ。精霊という存在がどんなものかわからないが、人間とは程遠いということだけはわかった。…………あれ、全員から加護だって……?
『くそ、遅かったか』
『……なんてこと』
大きな社の前ではアビスにとり憑かれた霊獣が苦しむように暴れていた。前に出た精霊達は悲しんでいるが、その手には先ほど飲んだジュースの容器が、名残惜しそうにしっかりと握りしめられていた。
もちろん自然で作ったものだから壊れようと問題ない。俺の隣で三人に呆れているシルフさんはいち早く容器を捨て霊獣を探すのを先導してくれていた。
「どにかくアビスを離さないと、何か特徴とかわかりませんか?」
『うーん……霊獣様はあたしたちのバランスが崩れないように見張ってるだけで、実際そんなに会ったこともないのよね』
まさかの情報はなしか……。精霊たちが好き勝手に暴れないための抑止力であるのならば力も強いはず、このままでは危険すぎる。
まずは相手の出方をみようとしたそのとき、アビスの姿は一瞬にして消え、そして強い衝撃が起きると目の前にいたアクアさんたちが吹き飛ばされていた。
「大丈夫ですか!?」
なんて力だ……全員震えている、怪我はなさそうだがあまりの力の差に絶望しているのだろう……だが、最後まで諦めてはいけない。
『あっ……ジュース(空)が……』
『あたいの、ジュース(空)……』
『……よくも……』
『『『壊したなッ!!』』』
そっちかよ!!
三人の容器は粉々に砕けてしまっていた。さすがに壊れるって、むしろ防具代わりに……はなってないな。
三人は立ち上がると一斉に霊獣へ攻撃を開始した。倒してやろうという意気込みすら感じる、絶妙なコンビネーションでアビスを責め立てていく。
『っしゃあ覚悟しろおおおお!!』
サラさんが炎を纏わせた拳で殴りかかる。だがまたしてもアビスは瞬間移動したかのように遠くへ移動した。なんだあの動き……速すぎて目で追えないぞ。
そしてまた消えたと思うと今度はサラさんが吹き飛ばされた。
今度はシルフさんが隙をみて攻撃を仕掛ける。アビスの体は大きなカマイタチにあったようにスッパリと斬れたが、体はすぐに繋がると何事もなかったかのように暴れ始めた。
攻略法が見つからないまま時間だけが過ぎていく……。その間にも霊獣にとり憑いたアビスはどんどん深くまで侵食しているのか先ほどよりも黒さが増していた。
『何を遊んでいる』
「こ、子ども!?」
もう全員逃げていたと思ってたがまさか子どもが残っていたとは……!
社の前で立ちっぱなしの子どもにリリアが急いで駆け寄る。しかし大きな声を出した子どもは、すでにアビスの標的になり狙われていた。
「危ない、逃げてーーー!」
『ふんッ』
衝撃が空気を揺らす――しかし、あろうことかその子どもはその場から一歩も動かずアビスの突進を片手で受け止めていた。
『地の者よ、こやつの対処法はわかるか』
「あっ……まずはその身体からアビスを引き離さないと!」
『方法は?』
「霊獣様も精霊達の水や火のように何かでできているはず、それと同じものがあれば……」
『ふむ、ならば問題ない』
子供の手が光出しバチバチと音を鳴らしていく。これはまさか、霊獣の正体って雷!?
その手にアビスが勢いよく移動していく。黒かった霊獣の体は白く綺麗な毛並みに戻っていき、逆に子どもの手は真っ黒に染まっていった。
『お主、これを倒すことはできるか』
「あ、あぁそいつをその辺に放してくれ!」
子どもが手を振ると黒い塊が地面にへばりつく。パチパチと音を立てているが対象を失ったアビスの塊はその場で蠢いているだけだった。
すぐに剣を突き刺すとアビスは霧散し消えていった。
「ふう……助かった。ありがとう」
『気にするな』
妙にませている子どもだが、相当な実力者みたいだし精霊もこの子のことを知っているかもしれない。
やってきた精霊に何者なのか聞こうと思った瞬間、全員が膝をつき頭を下げた。何事かと思っている俺の元へミントがやってくる。
「どうやらその人が精霊王らしいよ」
「えっえぇこの子どもが!? って、も、申し訳ございません!」
『構わん。世界の違うお主らが我にへりくだる道理などない』
そう言われても、あんだけふざけてた雰囲気の精霊達が全員微動だにしていない。いや、本人達はまじめだったんだろうけど。
『さて、お前たちの戦いをみせてもらったがなんだあのざまは』
『め、滅相もございません』
『全員代替わりするか?』
『ッ!!』
よその世界の事情に首を突っ込むわけにもいかないから邪魔しないように黙っていたいが、シャルが気になって仕方がなかったのか精霊王へ声をかける。
「ねぇダイガワリってなぁにー?」
『こやつらを消して次の者に代えてやるのだ。お主らにも迷惑をかけたようだしちょうどいいだろう』
何もそこまでする必要はないと思うが……。まだここにきて間もないし、せっかく知り合ったみんながいなくなるというのもな。
「口を挟んで悪いがみんなを許してやってくれないか」
『この世界では当たり前のことだ、気にする必要はない』
そうは言っても俺たちには思い出として残ってしまっている。はいそうですかと納得できるわけがない。
「みんなとはまだ短いけど思い出があるんだよ。精霊はどうかわからないが俺たちにとっては大切な時間なんだ」
『ふむ……お前は全員の加護を受けておるのか。地の者には与えられないはずだが……面白い。恩人の頼みだ、今回は見逃してやる』
ふぅ、とりあえずは免れたようだ。精霊という存在がどんなものかわからないが、人間とは程遠いということだけはわかった。…………あれ、全員から加護だって……?
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