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132話 『精霊と常識と』
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無事に出来上がった巨大ピザは大好評だった。まぁ、そもそも精霊たちは食事をとる必要がないらしくこの世界の霊気を吸収してれば問題ないとのことだったが。
最初は味わうようにしていたリリアたちも無言になり次々と口へ運んでいた。
「それで、皆さんの無事は確認できましたが……霊獣様は大丈夫なんですか?」
残ったピザを片手に精霊たちが動きを止める。
『私に異変が起きたときあなた達にお願いしたわよね』
『あたいは途中であの黒いのと戦ってたからな、知らないぞ』
『私は……侵入者がこないか見てた。彼らがきた』
『えっ、あたしは何も聞いてないよ!?』
現時点で霊獣を確認してる精霊はいないということだな、よしッ!!
「君達はチームワークがいいみたいだね」
『……今度からもっと話し合うようにするわ』
ミントがウンディーネさんにちょっかいかけて楽しそうにしている。
どうやら直接会って確かめるしかないようだな。霊獣か……人知れぬ伝説、の島の霊獣…………伝説の霊獣……これは間違いなく伝説として語ってもいいレベルだろう。
きちんとこの目に焼き付けておかなければいけない。
「それなら急いだほうがいいですね。ジュースも考えていたけど――とりあえずすぐに片付けを」
「レニ君、急ぎ過ぎてもよくないと思うの」
「そうさ、君はこういうとき焦ってしまう癖があるからね」
『霊獣様は力も強いしきっと大丈夫だわ』
『んっ……問題ない』
『ジュースってなんだ!? さっきのやつみたいにうめぇのか!?』
あれ、そんなに急がなくても大丈夫な感じ? だったらゆっくりしていくけど。
『あ、あたしは霊獣様の元へ急いだほうがいいと思うんだけど……なー……』
…………みんなジュースが優先になってただけかよ。だが、俺だってここで退いたら会うのが遅くなってしまう。
「ミント、砂漠の国で飲んだココヤッシみたいな容器を作ってくれ。蓋は閉められるようにな」
「えっ」
「あとストローもつけてくれ。シャルのは小さめで、ルークは大きめで頼む。さぁみんな! ミントが容器を作り次第ご馳走するからすぐ出発できるように片付けだ!」
全員が一丸となると片付けがあっという間に終わる。そして早く飲みたいというみんなの心がミントを追い込む。
ここでは地の世界の魔力がないため自分の魔力だけでやらなければいけない。もちろんみんなが持つ魔力量はかなり多く回復薬もあるため、よっぽどでなければ切れる心配はないが……。
同じ魔力をもたない物質を操作するのはかなり難しいみたいだ。精霊達から助けてもらうミントの姿を見れることは滅多にないだろう。
「ハァハァハァ……」
「お、なかなか綺麗にできたじゃないか」
「ぼ、僕、君に何かしたっけ……?」
「いや、利害一致ってやつだ。さぁこれで霊獣様の元へ向かいながら飲めるな」
全員がニコニコしながら手に容器を持つと出発した。
* * * * * * * * * * * *
焦る気持ちを抑え慎重に歩を進めていく……といいたいところだが、俺の前を歩く女性達は全員ジュースを手にのんびり歩いている。
感想を言い合ったり和気あいあいとして、シャルもみんなと手を繋ぎ楽しそうだ。
子供のためにもたまにはこういう時間があってもいいだろう。だが、どうも戦力過多のせいか緊張感がない。
話を聞く限り霊獣というのはすべての精霊のまとめ役であり、その上には精霊王という存在がいるとのことだった。
全然まとめられていないような気もするが……。俺が思うよりもっと深い理由があるのだろう。
「パパおいしかったー!」
『混ぜるという料理もあるのね、面白かったわ』
「あの、ここからだと霊獣様のところにはどのくらいかかるんですか?」
急ぐに越したことはないからな、全員が飲み終わったのなら一刻も早く向かうべきだ。俺の言葉を聞いたウンディーネさんが手を振ると目の前に水が浮かび門の形になっていく。
『はい、ここを通ればいけるわよ』
……はっ? なんとなくみんなが歩き始めたからついてきたがどこかに向かってたんじゃないのか。
この中で唯一、霊獣を気にかけていたシルフさんに目を配るとなぜか驚く。
『えっ……ジュースって歩いて飲むのが美味しいんじゃないの……?』
その発想はなかった。むしろ精霊ならではの自由な発想力だと感心してもいいだろう。俺は様々な理由を思い浮かべなんとか冷静さを保ちながら話を繋げているとミントが笑いを堪えながらやってきた。
「ぷぷっ……さすがの君も、精霊相手じゃあ一筋縄ではいかなかったみたいだね」
「常識ってなんなのか改めて考えさせられたよ……」
最初は味わうようにしていたリリアたちも無言になり次々と口へ運んでいた。
「それで、皆さんの無事は確認できましたが……霊獣様は大丈夫なんですか?」
残ったピザを片手に精霊たちが動きを止める。
『私に異変が起きたときあなた達にお願いしたわよね』
『あたいは途中であの黒いのと戦ってたからな、知らないぞ』
『私は……侵入者がこないか見てた。彼らがきた』
『えっ、あたしは何も聞いてないよ!?』
現時点で霊獣を確認してる精霊はいないということだな、よしッ!!
「君達はチームワークがいいみたいだね」
『……今度からもっと話し合うようにするわ』
ミントがウンディーネさんにちょっかいかけて楽しそうにしている。
どうやら直接会って確かめるしかないようだな。霊獣か……人知れぬ伝説、の島の霊獣…………伝説の霊獣……これは間違いなく伝説として語ってもいいレベルだろう。
きちんとこの目に焼き付けておかなければいけない。
「それなら急いだほうがいいですね。ジュースも考えていたけど――とりあえずすぐに片付けを」
「レニ君、急ぎ過ぎてもよくないと思うの」
「そうさ、君はこういうとき焦ってしまう癖があるからね」
『霊獣様は力も強いしきっと大丈夫だわ』
『んっ……問題ない』
『ジュースってなんだ!? さっきのやつみたいにうめぇのか!?』
あれ、そんなに急がなくても大丈夫な感じ? だったらゆっくりしていくけど。
『あ、あたしは霊獣様の元へ急いだほうがいいと思うんだけど……なー……』
…………みんなジュースが優先になってただけかよ。だが、俺だってここで退いたら会うのが遅くなってしまう。
「ミント、砂漠の国で飲んだココヤッシみたいな容器を作ってくれ。蓋は閉められるようにな」
「えっ」
「あとストローもつけてくれ。シャルのは小さめで、ルークは大きめで頼む。さぁみんな! ミントが容器を作り次第ご馳走するからすぐ出発できるように片付けだ!」
全員が一丸となると片付けがあっという間に終わる。そして早く飲みたいというみんなの心がミントを追い込む。
ここでは地の世界の魔力がないため自分の魔力だけでやらなければいけない。もちろんみんなが持つ魔力量はかなり多く回復薬もあるため、よっぽどでなければ切れる心配はないが……。
同じ魔力をもたない物質を操作するのはかなり難しいみたいだ。精霊達から助けてもらうミントの姿を見れることは滅多にないだろう。
「ハァハァハァ……」
「お、なかなか綺麗にできたじゃないか」
「ぼ、僕、君に何かしたっけ……?」
「いや、利害一致ってやつだ。さぁこれで霊獣様の元へ向かいながら飲めるな」
全員がニコニコしながら手に容器を持つと出発した。
* * * * * * * * * * * *
焦る気持ちを抑え慎重に歩を進めていく……といいたいところだが、俺の前を歩く女性達は全員ジュースを手にのんびり歩いている。
感想を言い合ったり和気あいあいとして、シャルもみんなと手を繋ぎ楽しそうだ。
子供のためにもたまにはこういう時間があってもいいだろう。だが、どうも戦力過多のせいか緊張感がない。
話を聞く限り霊獣というのはすべての精霊のまとめ役であり、その上には精霊王という存在がいるとのことだった。
全然まとめられていないような気もするが……。俺が思うよりもっと深い理由があるのだろう。
「パパおいしかったー!」
『混ぜるという料理もあるのね、面白かったわ』
「あの、ここからだと霊獣様のところにはどのくらいかかるんですか?」
急ぐに越したことはないからな、全員が飲み終わったのなら一刻も早く向かうべきだ。俺の言葉を聞いたウンディーネさんが手を振ると目の前に水が浮かび門の形になっていく。
『はい、ここを通ればいけるわよ』
……はっ? なんとなくみんなが歩き始めたからついてきたがどこかに向かってたんじゃないのか。
この中で唯一、霊獣を気にかけていたシルフさんに目を配るとなぜか驚く。
『えっ……ジュースって歩いて飲むのが美味しいんじゃないの……?』
その発想はなかった。むしろ精霊ならではの自由な発想力だと感心してもいいだろう。俺は様々な理由を思い浮かべなんとか冷静さを保ちながら話を繋げているとミントが笑いを堪えながらやってきた。
「ぷぷっ……さすがの君も、精霊相手じゃあ一筋縄ではいかなかったみたいだね」
「常識ってなんなのか改めて考えさせられたよ……」
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