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126話 『純真無垢』

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 子は成長するというが五年の間、リリアだけでなく俺の身体も成長は続けていた。寝ていたため肉付きは悪いが青年となった俺の身体はリリアの頭が肩にくるくらいまで伸び、伸びきった髪はリリアにお願いし後ろで結ってもらった。

 肩を借りて外へ出ていくと変わらない懐かしい顔があった。


「よぉ、手間かけさせたな」

「ボケてはいなそうだね。さっそく料理を――と思ったけど、そんな状態じゃ無理だろうからもう少し待っててあげるよ」


 相変わらずだな……逆にそれが安心するというのもあるが。俺を支えてくれているリリアもクスッと笑っている。


「もうじきあの子たちも帰ってくるから座って待ってよっか。ミントはテーブルと椅子をお願い、私は飲み物を取ってくる」


 地面から作り上げられた机と長椅子は、若干センスが向上しているようで装飾も施されていた。魔力の操作が更に上がったみたいだな。
 椅子に座りミントの愚痴を聞いていると家からリリアがお茶菓子を持ってでてくる。


 ここは魔界の山の一部で平原のように開かれている場所だ。いつまでもレイラさんたちの世話になりっぱなしはいけないと、部屋を探したが妖精にドラゴン、シャルがいるため思うようにいかなかった。
 そこでレイラさんが提案したのが王家の所有している土地に住んでもらい、変わりにアリスの鍛錬や、妖精と人間からみた魔族への助言をするという案だった。

 もちろん多少は不満の声もあがったらしいが、王様を救い妖精とドラゴンに繋がりを持つ人間は世に二人としていない、早々に受け入れてもらうことができた。

 まぁ、レイラさんが有無を言わせない気迫で押し通したらしいけど。そしてなんでこんな山の平地を選んだのかということだが――――


「グォォォオオオオオオオオオ!!」

「あいつも君に気づいたみたいだね」


 おぉー……この声はどことなく親に似てきているような……。たぶん俺たちのなかで一番成長したといってもいいだろう。突風が吹き荒れ目の前にドラゴンが降り立つ。
 記憶よりも数倍大きくなったその体は俺たちを乗せて飛ぶことも容易にやれそうだ。鱗はまだ生え変わったわけじゃなさそうだが、魔力が増えたおかげか、ほかのモンスターとは一線を画しているのが一目でわかる。


「でかくなったな、ルーク」

「グルルルルルル……」


 もう何年かすれば更にでかくなるんだろうなぁ。嬉しそうに頭をおろしてきたが頭まで手が届かない、仕方なく届く範囲で撫でるとジッと嬉しそうにしていた。

 こいつだけはある意味特別だ。従魔という関係だからか言わずとも意思は伝わってくるし、そして俺の意思も伝わる。


「あールークずるーい! 私もー!!」


 そして話には聞いていたが……まさか目が覚めたらパパになっていたとは。

 ルークの背中から少女が飛び降りてくる。普通なら危ないといってキャッチするのだろうが、少女は慣れたようにストンと着地するとこちらに走り出した。

 しかし、もう少しというところで急ブレーキをかける。俺までの道は両手を腰にあて仁王立ちしたリリアに阻まれていた。


「げっ、ママ!」

「シャル、帰ったらまずなんていうの? ルークにちゃんとお礼はいった?」


 ……リリアがしっかり母親をしている。シャルもたじたじだ、まさかこんな光景をみるとは思ってもいなかった。


「ずいぶん様になっていると思わないかい」

「あぁ、相当シャルに手を焼いたみたいだな」


 村でも何度か見た光景だったなぁ……泣きべそかいた子どもが次の日には元気にリリアと遊んでいたっけ。一通り説教が終わるまで座って待ってるとしよう。



「ねーパパはどうしてママのパパなのー?」

「ッ! ちょ、ちょっとシャル何をいって」


 俺がどうしてリリアのパパなのか……ふむ、シャルからみればママの隣にいた俺はパパに見えたという単純な理由だろう。だがよく考えて発言しないとシャルが不信感を抱きまた暴れてしまう可能性もある。

 見ての通りリリアも慌てふためきシャルを止めようとしているし。


「ママが言ってたよー、ママにはパパしかいないって」

「ママとパパはね、大事な家族・・なんだ。変わりになるような人はいないんだよ」

「家族……シャルも一緒ー!」

「そうだね、ルークもミントもみんな家族だ」


 子どもを育てたことなどないが気持ちはわかっている(つもりだ)。今の返しは俺のなかでも完璧といっていいだろう。
 リリアもわかると思うが、子供はやはり心のどこかで家族がほしいと思っているのだ。


「わ、わわわ私、みんなのご飯の準備をしなきゃ!」

「僕も手伝うよ。あれは生粋の天然だ、一筋縄じゃいかないみたい」


 いい魚でも手に入ったんだろうか? 俺も早く体力を戻して片腕でも魚くらい捌けるようにならないとな。

 しかし、その日のご飯で魚がだされることはなかった。
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