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62話 『一得一失』
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「あっ……えっと…………今、君を助けるためにあいつらを…………」
リリアは記憶がない。見知らぬ人が助けるといって町を滅ぼすと知ったらどうする……。
なんといえばいいのか俺は戸惑っていた。そんな俺にリリアは近づいてくる。
「ごめんね、私のせいでこんなことに」
「ち……違う! これは先にあいつらが!」
「あとでルーちゃんにも謝んなきゃ……ね……」
「……えっ? あっ、おい!」
力なく倒れるリリアを俺はすぐさま支えるとゆっくりと地面に寝かせた。今ルーちゃんって――――
「リ、リリア、もしかして記憶が……」
「うん……やっと思い出せた…………もう大丈夫、だから……泣かないで」
「な、なにを言って」
リリアは俺の頬にそっと手を添えるとそこで初めて俺は自分が泣いていることに気づいた。こんな情けない姿は見せちゃいけないとすぐに涙を拭くが次々に溢れてくる涙はなかなか止まってはくれない。
「ふふ……少し休むね……大丈夫、疲れただけだから……」
俺が心配されてどうするんだ、早く安心させないと! 俺は必死に笑顔をつくるが涙はそれを無視して溢れ続けていた。ならばせめて言葉だけでもと、震える情けない声で必死に言葉を探す。
「あぁ、おやすみ……俺が…………ずっと側についてるから……安心してくれ……」
「うん……あり……が……とう…………」
そういうとリリアは目を閉じ眠りについた。呼吸もゆっくり落ち着いている、本当に眠っただけのようだ……よかった……。
≪スキル:ものまね解除≫
先ほど使った魔法がすべて消え去っていく。リリアが起きたら何を言われるかわからないもんな……。
俺はリリアを抱え歩き出した。まずはルークの傷をみて…………それからここを離れたらすぐに寝床を探そう。
「待て、休むのならオアシスを使うといい。あそこの水は微量ながら疲れを癒す効果がある」
「……寝床でも襲うつもりか?」
「そんなつもりはない、むしろ君には感謝している」
「なんだと」
「この国は予言に縛られていた――それを君が破ったのだ」
「何を言って……」
「おーい! こいつも無事だったぞ!」
「クウゥ!!」
ルークがミントを背に乗せ走ってくる。思った以上に元気そうだが……回復薬が効いたのか?
「ルーク、身体は大丈夫なのか」
「ククゥ~」
「おぉ、そうか。本当によかった……ミントもありがとな」
「もー今回のはさすがに貸しだからね」
ルークはどうやら一番効いた攻撃はリリアの攻撃であり、剣の攻撃はほとんど効いていなかったらしい。むしろ振動ばかり伝わって痛かったといっている。
多少切り傷はできてるがこの程度回復薬で十分みたいだ。ミントにも大きな借りができたしそのうちお礼をしないと……何を言われるかちょっとこわいな。
みんなが無事で安堵していると男が口を挟んでくる。この男は敵であり信用できない……警戒しなければ。
「預言についての詳しい話は落ち着いたらしよう。君たちが休むのに必要なものがあれば手配する、なんでも言ってくれ」
「何か企んでいるのならやめておけ」
「そんなつもりはないと言っただろう、王に誓ってもいい」
「……王がいるのか? なんならそいつを連れてこい、あの屑をどうするのか聞く」
こんな状況になっても止められなかった王など存在してる意味はないと思うが、あいつをどうするのかだけは気になる。もし無罪とか言い出したらこんな国はもういらないだろう。
「体調次第だが掛け合ってみるよ」
「……三日後だ……あんたと二人で俺たちのところにこい」
「わかった、可能な限りそうする」
「何を言ってる? 必ずだ。それと夜までにリリアの私物をすべて返せ」
正直休むためには足りないものだらけだが今は仕方がない……。強がりだができる限り隙をみせず休むにはこれしかないのだから。
「ミント、すまないが杖を持ってきてくれ。いこう」
「お、おい!?」
「クゥー……」
リリアを抱えたまま俺たちはオアシスへ歩き出す。ミントがリリアの杖を持ちながらつぶやく。
「まったくもう、あんなめちゃくちゃに魔法使って……僕のオアシス、無事だといいけどなぁ」
「……すまん。まぁ逆側だし大丈夫だろう……と思いたい」
オアシスが見える位置まで来ると、多少荒れてはいたが水は問題なくそのままだ。よかった……これで壊れてたら水を探してひとっ走りするところだった。
水辺に着きリリアを寝かせるとルークから鞄をはずす。フードを取り出し鞄を枕代わりにリリアの頭の下に敷く。
さてと……寒さ対策用のフードだが顔を隠すためだし我慢するしかないな。
「二人共、すまないがリリアを看ていてくれ」
「クゥ?」
「そんな恰好してどこに行くんだ?」
「町で食料を買ってくる。さすがに非常食だけじゃあ持たないからな」
「あの男に持ってきてもらえばよかったのに、君は肝心なところが抜けてるねぇ」
「あいつは信用できないからな。万が一毒でも盛られていたらさすがに俺一人じゃ対処できない」
「さすがにそこまではしないんじゃ…………まぁわかったよ、何かあったらすぐ魔法ぶっぱなすからね」
「あぁ、遠慮なく使ってくれ。俺もすぐに戻る」
「クウゥ……」
「ん? 心配するなって。ミントもいるし町まではそれほど距離もない、俺の力ならここまですぐだ」
俺のスキル――使ってみてわかったが、どうやら一度ものまねしたものを無条件で使えるようだ。魔力に関しても一切減ってる気がしない。ダメージを受けると解除後に倒れるのはきっと変わらないかもしれないが、普通に考えても破格といえるだろう。
さて、町の中がどうなっているかはわからないがもしバレたら……その場でやるしかないな。俺は覚悟を決め町へと向かった。
「あいつ…………少し変わったな……」
「クゥー…………」
リリアは記憶がない。見知らぬ人が助けるといって町を滅ぼすと知ったらどうする……。
なんといえばいいのか俺は戸惑っていた。そんな俺にリリアは近づいてくる。
「ごめんね、私のせいでこんなことに」
「ち……違う! これは先にあいつらが!」
「あとでルーちゃんにも謝んなきゃ……ね……」
「……えっ? あっ、おい!」
力なく倒れるリリアを俺はすぐさま支えるとゆっくりと地面に寝かせた。今ルーちゃんって――――
「リ、リリア、もしかして記憶が……」
「うん……やっと思い出せた…………もう大丈夫、だから……泣かないで」
「な、なにを言って」
リリアは俺の頬にそっと手を添えるとそこで初めて俺は自分が泣いていることに気づいた。こんな情けない姿は見せちゃいけないとすぐに涙を拭くが次々に溢れてくる涙はなかなか止まってはくれない。
「ふふ……少し休むね……大丈夫、疲れただけだから……」
俺が心配されてどうするんだ、早く安心させないと! 俺は必死に笑顔をつくるが涙はそれを無視して溢れ続けていた。ならばせめて言葉だけでもと、震える情けない声で必死に言葉を探す。
「あぁ、おやすみ……俺が…………ずっと側についてるから……安心してくれ……」
「うん……あり……が……とう…………」
そういうとリリアは目を閉じ眠りについた。呼吸もゆっくり落ち着いている、本当に眠っただけのようだ……よかった……。
≪スキル:ものまね解除≫
先ほど使った魔法がすべて消え去っていく。リリアが起きたら何を言われるかわからないもんな……。
俺はリリアを抱え歩き出した。まずはルークの傷をみて…………それからここを離れたらすぐに寝床を探そう。
「待て、休むのならオアシスを使うといい。あそこの水は微量ながら疲れを癒す効果がある」
「……寝床でも襲うつもりか?」
「そんなつもりはない、むしろ君には感謝している」
「なんだと」
「この国は予言に縛られていた――それを君が破ったのだ」
「何を言って……」
「おーい! こいつも無事だったぞ!」
「クウゥ!!」
ルークがミントを背に乗せ走ってくる。思った以上に元気そうだが……回復薬が効いたのか?
「ルーク、身体は大丈夫なのか」
「ククゥ~」
「おぉ、そうか。本当によかった……ミントもありがとな」
「もー今回のはさすがに貸しだからね」
ルークはどうやら一番効いた攻撃はリリアの攻撃であり、剣の攻撃はほとんど効いていなかったらしい。むしろ振動ばかり伝わって痛かったといっている。
多少切り傷はできてるがこの程度回復薬で十分みたいだ。ミントにも大きな借りができたしそのうちお礼をしないと……何を言われるかちょっとこわいな。
みんなが無事で安堵していると男が口を挟んでくる。この男は敵であり信用できない……警戒しなければ。
「預言についての詳しい話は落ち着いたらしよう。君たちが休むのに必要なものがあれば手配する、なんでも言ってくれ」
「何か企んでいるのならやめておけ」
「そんなつもりはないと言っただろう、王に誓ってもいい」
「……王がいるのか? なんならそいつを連れてこい、あの屑をどうするのか聞く」
こんな状況になっても止められなかった王など存在してる意味はないと思うが、あいつをどうするのかだけは気になる。もし無罪とか言い出したらこんな国はもういらないだろう。
「体調次第だが掛け合ってみるよ」
「……三日後だ……あんたと二人で俺たちのところにこい」
「わかった、可能な限りそうする」
「何を言ってる? 必ずだ。それと夜までにリリアの私物をすべて返せ」
正直休むためには足りないものだらけだが今は仕方がない……。強がりだができる限り隙をみせず休むにはこれしかないのだから。
「ミント、すまないが杖を持ってきてくれ。いこう」
「お、おい!?」
「クゥー……」
リリアを抱えたまま俺たちはオアシスへ歩き出す。ミントがリリアの杖を持ちながらつぶやく。
「まったくもう、あんなめちゃくちゃに魔法使って……僕のオアシス、無事だといいけどなぁ」
「……すまん。まぁ逆側だし大丈夫だろう……と思いたい」
オアシスが見える位置まで来ると、多少荒れてはいたが水は問題なくそのままだ。よかった……これで壊れてたら水を探してひとっ走りするところだった。
水辺に着きリリアを寝かせるとルークから鞄をはずす。フードを取り出し鞄を枕代わりにリリアの頭の下に敷く。
さてと……寒さ対策用のフードだが顔を隠すためだし我慢するしかないな。
「二人共、すまないがリリアを看ていてくれ」
「クゥ?」
「そんな恰好してどこに行くんだ?」
「町で食料を買ってくる。さすがに非常食だけじゃあ持たないからな」
「あの男に持ってきてもらえばよかったのに、君は肝心なところが抜けてるねぇ」
「あいつは信用できないからな。万が一毒でも盛られていたらさすがに俺一人じゃ対処できない」
「さすがにそこまではしないんじゃ…………まぁわかったよ、何かあったらすぐ魔法ぶっぱなすからね」
「あぁ、遠慮なく使ってくれ。俺もすぐに戻る」
「クウゥ……」
「ん? 心配するなって。ミントもいるし町まではそれほど距離もない、俺の力ならここまですぐだ」
俺のスキル――使ってみてわかったが、どうやら一度ものまねしたものを無条件で使えるようだ。魔力に関しても一切減ってる気がしない。ダメージを受けると解除後に倒れるのはきっと変わらないかもしれないが、普通に考えても破格といえるだろう。
さて、町の中がどうなっているかはわからないがもしバレたら……その場でやるしかないな。俺は覚悟を決め町へと向かった。
「あいつ…………少し変わったな……」
「クゥー…………」
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