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58話 『再会』
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「こ、これは使者様!」
「そこで何をしていると聞いているのだ」
「ふ、不審な足跡を見つけたため裏に誰か隠れていないかと!」
「そろそろ王子がくる頃だ、そんなところにいないで出迎える準備をしろ」
「で、ですが……」
「なら私が変わりに見てやる、さっさと降りるがいい」
侍女と男が道をあけフードを深くかぶった人物がこちらを覗き込む。顔は見えないがこちらを注意深く見ている――俺とミントはばれないことを祈りながら自分の口を塞いだ。
「……足元を回せ」
そのままジッとしていると男はすぐに兵士たちへ報告する。
「誰もいないぞ、異常なしだ。疲れていたんだろう」
「そうでしたか……」
「さぁそんなことよりも早く準備をするぞ、こい」
「かしこまりました!」
そういうと男たちは祭壇から離れていった。誰もいなくなった祭壇でミントが口を開く。
「あいつ、なんだったんだ……」
「わからない……俺たちに気づいてたんだろうか」
足元で回る場所がないか探すと一か所だけ回転する床を見つけ、その中には本が隠されてあった。
「これだ……」
本はリリアが持っていた絵日記によく似ており、表紙には砂漠の民と水の国と書かれている。まるで絵日記というより物語だ。
「何々……砂漠の国に王子様がいました」
あるとき王子様は、オアシスで倒れている一人の少女を助けました。助けられた少女は自分がどこから来たのかもわからず困っていましたが、王子様の助けによって平穏な日々を過ごしていました。
なんだこの子供が考えたような大雑把なストーリーは……俺は続けてページをめくる。
そんなある日、突然砂漠にモンスターが押し寄せてきました。水の国の王女と婚約していた王子様は水の国に助けを求めましたが誰も助けには来ません。
それでも国を守ろうと立ち上がった王子様に対し、少女は勇敢にも自分が戦うと言い出します。王子様の制止を振り切った少女はモンスターの前に出ていくと強力な魔法を使いモンスターを一掃しました。
疲れ果てその場に座り込む少女に王子様はキスをしていいました。あなたはこの国を救ってくれた英雄だ、妻となってこの国を一緒に守ってほしい。
こうして砂漠の国は力をつけ繁栄し、水の国は裏切りを知った隣国に攻め滅ぼされました。
「なにこれ、僕でももう少しマシなのが書けるよ」
「あぁ、まるで願望だけを詰め込んだような……とりあえず、燃やすか」
「えっいいの?」
「地下にいた人も燃やせって言ってたし明らかに変だろ。何より中身が気に食わん」
「それもそうだね。それじゃあ、さっさとそこに置いて」
俺が本を置くとミントが魔法を唱える。火の玉が飛んでいき本にぶつかると燃やし始めた――――はずだったが、本を覆った炎は段々弱くなりついには消えてしまった。
「……なにこれ」
「まさか耐性でもあるのか? ミント、ほかにも試してくれ」
様々な魔法を試すが本は壊れることなく無傷だった。
「いったい何なのこれ、僕に壊せないなんて絶対おかしいよ!」
「仕方ない、時間もないし元に戻して引き上げよう」
本を戻し足跡を消しながら祭壇を去る。一度戻ったら本の情報を整理しなければならないな……。
通路を戻り吹き抜けを通ると庭のほうから声が聞こえてくる。
「いつまでそんな子供だましの魔法を使うつもりだ、もう一度やれ」
柱から庭を覗くと、先ほどのフードを被った男と、隣には見慣れた後ろ姿が目に入った。あの髪色、杖、間違いない……!
リリアは魔法陣を描く。タカノツメが現れるが小さく纏っている炎も以前より弱く小さい。そして壁に向かって放つがぶつかる前に消えてしまった。
「こんなものでこの国を救うどころかモンスターの一匹でも倒せると思っているのか」
「ご、ごめんなさい……」
「もういい今日はここまでだ。そろそろ王子がくる、部屋に戻っていろ」
「はい……」
リリアが項垂れながらこちらに歩いてくると俺は隠れるように柱の裏に隠れた。
あのフードの男、たぶんだがさっきは俺にヒントをくれた。あいつはいったい何者なんだ? そしていつからリリアはこんなことを……。
俺がもっと早く見つけていればこんなことになっていなかったかもしれない。だがそれをいったら元も子もないという事実になんとか冷静さを保つ。
深呼吸し俺はリリアの横を通り抜ける。
「必ず、助ける」
「……えっ」
リリアを背に俺は神殿を出ると宿にこもり徹底的に現状を調べた。
どうすればリリアを救出し記憶を取り戻せるか。そして、王子の動向……あの声の主は、たぶんこれから王子が何かを始めるか、もうすでに始めていることを知っていたのだろう。本を燃やせという言葉から何かしら本が関わっていることは間違いない。
そして予言の本に書いてあった内容――雑ではあったが、もし本当にその名の通りリリアがオアシスに倒れていたというのならこれから来る未来を予知しているということになる。そうなれば近い将来、起こることは……モンスターの襲撃。
そう考えると優先順位としてまずはモンスターを倒す。そして王子の結婚を阻止、最後にリリアの記憶をどうにか取り戻す。最悪記憶が戻らなくても、また一緒に旅を始めればどこかで思い出すこともあるだろう。
こうして俺はリリアを助ける計画と、万が一モンスターが来たときを想定して作戦を練り――そしてその日は突然、何の前触れもなくやってきた。
「そこで何をしていると聞いているのだ」
「ふ、不審な足跡を見つけたため裏に誰か隠れていないかと!」
「そろそろ王子がくる頃だ、そんなところにいないで出迎える準備をしろ」
「で、ですが……」
「なら私が変わりに見てやる、さっさと降りるがいい」
侍女と男が道をあけフードを深くかぶった人物がこちらを覗き込む。顔は見えないがこちらを注意深く見ている――俺とミントはばれないことを祈りながら自分の口を塞いだ。
「……足元を回せ」
そのままジッとしていると男はすぐに兵士たちへ報告する。
「誰もいないぞ、異常なしだ。疲れていたんだろう」
「そうでしたか……」
「さぁそんなことよりも早く準備をするぞ、こい」
「かしこまりました!」
そういうと男たちは祭壇から離れていった。誰もいなくなった祭壇でミントが口を開く。
「あいつ、なんだったんだ……」
「わからない……俺たちに気づいてたんだろうか」
足元で回る場所がないか探すと一か所だけ回転する床を見つけ、その中には本が隠されてあった。
「これだ……」
本はリリアが持っていた絵日記によく似ており、表紙には砂漠の民と水の国と書かれている。まるで絵日記というより物語だ。
「何々……砂漠の国に王子様がいました」
あるとき王子様は、オアシスで倒れている一人の少女を助けました。助けられた少女は自分がどこから来たのかもわからず困っていましたが、王子様の助けによって平穏な日々を過ごしていました。
なんだこの子供が考えたような大雑把なストーリーは……俺は続けてページをめくる。
そんなある日、突然砂漠にモンスターが押し寄せてきました。水の国の王女と婚約していた王子様は水の国に助けを求めましたが誰も助けには来ません。
それでも国を守ろうと立ち上がった王子様に対し、少女は勇敢にも自分が戦うと言い出します。王子様の制止を振り切った少女はモンスターの前に出ていくと強力な魔法を使いモンスターを一掃しました。
疲れ果てその場に座り込む少女に王子様はキスをしていいました。あなたはこの国を救ってくれた英雄だ、妻となってこの国を一緒に守ってほしい。
こうして砂漠の国は力をつけ繁栄し、水の国は裏切りを知った隣国に攻め滅ぼされました。
「なにこれ、僕でももう少しマシなのが書けるよ」
「あぁ、まるで願望だけを詰め込んだような……とりあえず、燃やすか」
「えっいいの?」
「地下にいた人も燃やせって言ってたし明らかに変だろ。何より中身が気に食わん」
「それもそうだね。それじゃあ、さっさとそこに置いて」
俺が本を置くとミントが魔法を唱える。火の玉が飛んでいき本にぶつかると燃やし始めた――――はずだったが、本を覆った炎は段々弱くなりついには消えてしまった。
「……なにこれ」
「まさか耐性でもあるのか? ミント、ほかにも試してくれ」
様々な魔法を試すが本は壊れることなく無傷だった。
「いったい何なのこれ、僕に壊せないなんて絶対おかしいよ!」
「仕方ない、時間もないし元に戻して引き上げよう」
本を戻し足跡を消しながら祭壇を去る。一度戻ったら本の情報を整理しなければならないな……。
通路を戻り吹き抜けを通ると庭のほうから声が聞こえてくる。
「いつまでそんな子供だましの魔法を使うつもりだ、もう一度やれ」
柱から庭を覗くと、先ほどのフードを被った男と、隣には見慣れた後ろ姿が目に入った。あの髪色、杖、間違いない……!
リリアは魔法陣を描く。タカノツメが現れるが小さく纏っている炎も以前より弱く小さい。そして壁に向かって放つがぶつかる前に消えてしまった。
「こんなものでこの国を救うどころかモンスターの一匹でも倒せると思っているのか」
「ご、ごめんなさい……」
「もういい今日はここまでだ。そろそろ王子がくる、部屋に戻っていろ」
「はい……」
リリアが項垂れながらこちらに歩いてくると俺は隠れるように柱の裏に隠れた。
あのフードの男、たぶんだがさっきは俺にヒントをくれた。あいつはいったい何者なんだ? そしていつからリリアはこんなことを……。
俺がもっと早く見つけていればこんなことになっていなかったかもしれない。だがそれをいったら元も子もないという事実になんとか冷静さを保つ。
深呼吸し俺はリリアの横を通り抜ける。
「必ず、助ける」
「……えっ」
リリアを背に俺は神殿を出ると宿にこもり徹底的に現状を調べた。
どうすればリリアを救出し記憶を取り戻せるか。そして、王子の動向……あの声の主は、たぶんこれから王子が何かを始めるか、もうすでに始めていることを知っていたのだろう。本を燃やせという言葉から何かしら本が関わっていることは間違いない。
そして予言の本に書いてあった内容――雑ではあったが、もし本当にその名の通りリリアがオアシスに倒れていたというのならこれから来る未来を予知しているということになる。そうなれば近い将来、起こることは……モンスターの襲撃。
そう考えると優先順位としてまずはモンスターを倒す。そして王子の結婚を阻止、最後にリリアの記憶をどうにか取り戻す。最悪記憶が戻らなくても、また一緒に旅を始めればどこかで思い出すこともあるだろう。
こうして俺はリリアを助ける計画と、万が一モンスターが来たときを想定して作戦を練り――そしてその日は突然、何の前触れもなくやってきた。
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