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31話 『残されたモノ②』

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『魔法という言葉は数多く耳にする。それは呪文と魔力を行使し現象を起こす行為――魔術師や錬金術師が行うものとされている。いや、いつからかわからないが、現在までそう伝えられていたというほうが正しいだろう。』

『魔術師である私は長い間様々な魔法を試みてきた。結果、ある共通点を見つけた……それは同じ魔術を全員が使えるという点だ。魔術師であれば当然と思うだろう。だが、逆に考えればそれは決定されている呪文の中から選択しているだけなのでは? そして私は真実を探した、己が創造する魔法は使えないのかと。』


『あるとき不思議な一族に出会った。彼らは魔術と違い見たこともない不思議な魔法を行使していた。それこそ、自分の思いを叶えるように。彼らの魔法は魔術師が使うものとは根本が違っていた――そして私はある結論に至った……魔法を使う者、すなわち【魔法使い】という存在だ。』


「やっぱり……」

「うん、ほかにもいたんだ」


 そのままムントゥムさんに促され読み進めると、破れたページが目に留まる。


『彼らは何かを隠すように外界へ深い関心を持とうとしなかった。魔術の道を歩む私はどうしても彼らの使う魔法を研究したくなり、何度も教えてもらえるよう頼み込んだが……彼らは縦に首を振ることはなかった。やれないのではなくできないのだと――この理由については一族の口から明かされることはなかった。私もこの貴重な関係を失いたくはない、これ以上の詮索はやめることにした。』


 それ以降、あとのページには一族に関しては書かれておらず魔術に関してばかりだった。
 制約か縛りでもあるのだろうか? だがリリアは俺たちに協力して魔法を使ってくれていた。


「私、魔法……使えてたよね?」

「あぁ、いったいどういうことだろう」

「これを読んでみるといい」


 差し出された本はボロボロになっており、タイトルなど何も書かれていない。ほとんどのページが破られておりまともに読めそうなところはなく、ムントゥムさんの指摘で辛うじて読めるページをみる――そこには殴り書きしたような字が書いてあった。


『好奇心だった…………私はなんてことを……彼らがなぜ人里にでないのかを考えるべきだった! もう何も私にできることは…………いや、せめてあの子を、友が残した希望だけは繋がなくては…………。』


「何があったんだろ……」

「ほかのページを読んでも詳しくはわからんかった。だが、唯一の手掛かりというのがもう一つある」


 ムントゥムさんは別の日記を手に取りこちらへ持ってくる。
 そうだ、あれは確か魔力を持った人間が手に取ると中身が変わるはず。


「待ってください、それって読めました?」

「何を言うとる、読めるに決まっとるだろう」


 あいまいなことが多かったため、リリアが時間をかけて説明をするとムントゥムさんは首を傾げた。


「おかしいのぅ……ほれ、儂が開いてみても何も変わっとらんぞ」


 そういって本を開いて見せるが確かに空白で変わっているところはない。魔力を持たない俺も手に持ってみるが案の定何も起きない。ここまではいい、問題はリリアが持った場合か。


「中身が変わるといけないから先に読んでみよっか?」

「万が一というのも考えられるな、そうするか」


 本を開くと中には一言だけ書かれていた。


『真実を求めし者よ、世界をメグレ。』


「これだけ?」

「残されているのはそれだけじゃな、いったい何のことかもわからん」

「私が触っても大丈夫そうだね」


 俺が差し出した本をリリアが触った瞬間、本が光出し俺たちの足元へ魔法陣が展開されていく。


「いかん! そこから離れるんじゃ!」

「な、何これ!?」

「くそっ……身体が動かない……!」


 徐々に光が強くなっていく――――走り出していたルークが俺に触れるかどうかというとき、辺りを光が包み込んだ。



 * * * * * * * * * * * *



「クゥクゥ!」

「……ん……うわっ!? ちょ、やめろ!」


 ルークが勢いよく俺の頬を舐めていた。よっぽど心配してたのが伝わってくる……まずは撫でて落ち着かせよう。


「心配かけたな」

「クルルルルルッ」

「しかしここはどこだ?」


 辺りを見渡すと見たことのない木々や花、そして宙には幻想的なシャボン玉のようなものが浮かんでいた。
 すげーロマンティックだな……こういうのって女の子は好きだからリリアも喜ぶんじゃ――。


「あれ、リリアは!?」

「クゥ~……」

「そうか……わかった、とりあえず辺りを探してみよう」


 ルークも一緒にいるということはリリアもこの辺りにとばされているはずだ。探していればどこかでルークが匂いをかぎ分けてくれるかもしれない。


「グルルルルル」

「どうした?」


 ルークの視線の先に目を向けると木々が絡み合って大きな獣を形作っていた。


「なんだこいつ……」

「グギャアアアアアアアア!」

「木に化けていたモンスターか!?」


 叫び声をあげた獣がこちらに走り出し、応戦したルークがぶつかり合うと衝撃が地面を揺らす。ルークが爪と牙で攻撃しているが獣は痛がる様子もなく平然としている。
 おかしい……それにさっきから相手を視ているが【ものまねし】の反応がない。

 どういうことだ……発動条件は満たしているはずなのに……仕方がない、今はやれることを考えるしかないな。

 短剣を抜きルーク主体の動きに合わせ加勢して斬りつける。草木でできた獣を斬ったところでダメージがあるのかはわからないが、この状況ではこれしか方法がない。
 獣は崩れそうになると新たに木が伸び再生をしている。このままではじり貧だ……何か策を練らないと。ルークも仕切り直そうと考えたのか一度距離をあけた。

≪竜の咆哮≫

 辺りにルークの雄叫びが響き渡る――そのとき、今まで攻撃になんの反応も示さなかった獣の動きがわずかに止まった。
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