上 下
125 / 150

125話

しおりを挟む
「パーティですか?」

「ああ、是非ティーナたちも誘ってほしいって言われてね。どうかな?」

「お嬢様、それならご予定が終わり次第、すぐに向かえば間に合うかと」

「エレナ、せっかくのお誘いですからその日は休みに――」

「ダメです。最近やっとお嬢様の淑女としての評価が上がってきたというのに、いつぞやのようにまたふらっと休まれてはお転婆に逆戻りしてしまいます」

 エレナさんに言い切られたティーナはガクリと肩を落とす。

「ティーナ、当日は教会の飾り付けをみて午後からがメインイベントらしいから、そんなに慌てなくても大丈夫だよ」

「それなら仕方ありません……。ほかの皆様もお誘いしてよろしいでしょうか」

「もちろんだ。まぁあくまで子供たちが主役だから、気楽に来てもらえばいい」

 一通り話が終わった俺は雪で遊んでいるアンジェロとニエを連れ教会へ向かった。

「お邪魔しま~す」

「リッツさん、表からでしたら普通に入ってきてもらっていいんですよ」

「あ、そっか! いつもの癖でつい……。ところで何か用があるって聞いたんだけど」

「それなんですが、教会で祝福をかけた薬草で回復薬を作ってほしいんです。というのも、回復薬を子供たちのプレゼントにしようと決まったのですが、どうせならばと聖人であるリッツさんに作ってもらえないかと話がでまして。もちろん、ご迷惑でなければですが」

「それくらい構わないよ。なんならそこら辺の回復薬に負けない効果にする?」

 さすがにエリクサーまでは無理だが、最上級の回復薬に負けないくらいなら作れるし。

「あーいえ、そこまでは必要なくてですね」

 シスターはどうもばつが悪そうに苦笑いをする。

「リッツ様、シスターさんたちはみえない価値を子供たちに教えてあげてるんじゃないでしょうか」

「みえない価値って、なんだそれ?」

「先ほど聖人であるリッツ様から回復薬を作ってもらうって言ってましたよね。要はいつも頑張っている子供たちに対して、神様もとい聖人様はちゃんとみてるんですよーって伝えようとしてるんじゃないかと」

「でも、それで普通の回復薬と大して変わらなかったら悲しまないか?」

「そんなことありません! この髪飾りだってなんの効果もありませんが、もし奇跡を起こすような効果がついていたとしても、リッツ様から頂いたという嬉しさに変わりはないんです!」

 ニエの熱意に押されほんの少し身を退くと、今では身体の一部のようになっていた鞄を感じた。

 ――弟子の一生モノと考えれば、それくらい安いものよ――

 …………ああ、そういうことだったのか。

 俺はあの日、マジックバックの価値に喜んだのは間違いない。
 それと同時に師匠が俺を見てくれていたことが嬉しかったんだ。

「――余計なことをするところだった。回復薬は子供たちの分だけでいいのか?」

「はい、祝福したといっても薬草に変わりはありません。リッツさんの畑で採れたものですから、同じように使ってください」

「わかった、出来上がり次第届けるよ。……ニエ、そういえば回復薬の作り方を教えてなかったな。ついでに教えてやろうか? 両親から教わった秘伝だ」

 秘伝といってもゴリゴリ磨り潰したりやることは昔のままだけどな。

 とってつけたような言葉にニエは満面の笑みをみせた。

「ワン!」

「ん、アンジェロも手伝うって? そりゃあ心強いな~」

 冬毛でいつも以上にもふもふなアンジェロを撫でると屋敷へ帰り、さっそく回復薬作りを始めた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

ロベリアが咲き乱れるお茶会へ

山桜桃梅子
ファンタジー
「ロベリアが咲き乱れるお茶会」への、 不気味な招待状が今年も届き参加をする。 しかしそこへ現れたのは、 「あの方の代わりとして参りました」 二人の少女が雲行き怪しい笑みを浮かべて立っていた。 手にする一通の手紙には、確かにその公爵令嬢がプライベートの中でもこの会でのみ使用する封蝋印が刻まれてある。 中にはただ一言だけ、「これが私の手土産よ」と書かれてあった。 果たしてその手土産として寄越された少女たちが語ることとは。 瑞々しく清純な、選ばれた女性しか参加することの出来ない、特別なお茶会で事件は起きた。 これは「エマ・ケリーの手紙」、赤いシクラメンの咲く場所は~花言葉と純白のレディー、の時間軸で書いております。 短編で御座います。 (エマ・ケリーの手紙もよろしくお願い申し上げます) 1/23 完結致しました!

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

処理中です...