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125話
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「パーティですか?」
「ああ、是非ティーナたちも誘ってほしいって言われてね。どうかな?」
「お嬢様、それならご予定が終わり次第、すぐに向かえば間に合うかと」
「エレナ、せっかくのお誘いですからその日は休みに――」
「ダメです。最近やっとお嬢様の淑女としての評価が上がってきたというのに、いつぞやのようにまたふらっと休まれてはお転婆に逆戻りしてしまいます」
エレナさんに言い切られたティーナはガクリと肩を落とす。
「ティーナ、当日は教会の飾り付けをみて午後からがメインイベントらしいから、そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
「それなら仕方ありません……。ほかの皆様もお誘いしてよろしいでしょうか」
「もちろんだ。まぁあくまで子供たちが主役だから、気楽に来てもらえばいい」
一通り話が終わった俺は雪で遊んでいるアンジェロとニエを連れ教会へ向かった。
「お邪魔しま~す」
「リッツさん、表からでしたら普通に入ってきてもらっていいんですよ」
「あ、そっか! いつもの癖でつい……。ところで何か用があるって聞いたんだけど」
「それなんですが、教会で祝福をかけた薬草で回復薬を作ってほしいんです。というのも、回復薬を子供たちのプレゼントにしようと決まったのですが、どうせならばと聖人であるリッツさんに作ってもらえないかと話がでまして。もちろん、ご迷惑でなければですが」
「それくらい構わないよ。なんならそこら辺の回復薬に負けない効果にする?」
さすがにエリクサーまでは無理だが、最上級の回復薬に負けないくらいなら作れるし。
「あーいえ、そこまでは必要なくてですね」
シスターはどうもばつが悪そうに苦笑いをする。
「リッツ様、シスターさんたちはみえない価値を子供たちに教えてあげてるんじゃないでしょうか」
「みえない価値って、なんだそれ?」
「先ほど聖人であるリッツ様から回復薬を作ってもらうって言ってましたよね。要はいつも頑張っている子供たちに対して、神様もとい聖人様はちゃんとみてるんですよーって伝えようとしてるんじゃないかと」
「でも、それで普通の回復薬と大して変わらなかったら悲しまないか?」
「そんなことありません! この髪飾りだってなんの効果もありませんが、もし奇跡を起こすような効果がついていたとしても、リッツ様から頂いたという嬉しさに変わりはないんです!」
ニエの熱意に押されほんの少し身を退くと、今では身体の一部のようになっていた鞄を感じた。
――弟子の一生モノと考えれば、それくらい安いものよ――
…………ああ、そういうことだったのか。
俺はあの日、マジックバックの価値に喜んだのは間違いない。
それと同時に師匠が俺を見てくれていたことが嬉しかったんだ。
「――余計なことをするところだった。回復薬は子供たちの分だけでいいのか?」
「はい、祝福したといっても薬草に変わりはありません。リッツさんの畑で採れたものですから、同じように使ってください」
「わかった、出来上がり次第届けるよ。……ニエ、そういえば回復薬の作り方を教えてなかったな。ついでに教えてやろうか? 両親から教わった秘伝だ」
秘伝といってもゴリゴリ磨り潰したりやることは昔のままだけどな。
とってつけたような言葉にニエは満面の笑みをみせた。
「ワン!」
「ん、アンジェロも手伝うって? そりゃあ心強いな~」
冬毛でいつも以上にもふもふなアンジェロを撫でると屋敷へ帰り、さっそく回復薬作りを始めた。
「ああ、是非ティーナたちも誘ってほしいって言われてね。どうかな?」
「お嬢様、それならご予定が終わり次第、すぐに向かえば間に合うかと」
「エレナ、せっかくのお誘いですからその日は休みに――」
「ダメです。最近やっとお嬢様の淑女としての評価が上がってきたというのに、いつぞやのようにまたふらっと休まれてはお転婆に逆戻りしてしまいます」
エレナさんに言い切られたティーナはガクリと肩を落とす。
「ティーナ、当日は教会の飾り付けをみて午後からがメインイベントらしいから、そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
「それなら仕方ありません……。ほかの皆様もお誘いしてよろしいでしょうか」
「もちろんだ。まぁあくまで子供たちが主役だから、気楽に来てもらえばいい」
一通り話が終わった俺は雪で遊んでいるアンジェロとニエを連れ教会へ向かった。
「お邪魔しま~す」
「リッツさん、表からでしたら普通に入ってきてもらっていいんですよ」
「あ、そっか! いつもの癖でつい……。ところで何か用があるって聞いたんだけど」
「それなんですが、教会で祝福をかけた薬草で回復薬を作ってほしいんです。というのも、回復薬を子供たちのプレゼントにしようと決まったのですが、どうせならばと聖人であるリッツさんに作ってもらえないかと話がでまして。もちろん、ご迷惑でなければですが」
「それくらい構わないよ。なんならそこら辺の回復薬に負けない効果にする?」
さすがにエリクサーまでは無理だが、最上級の回復薬に負けないくらいなら作れるし。
「あーいえ、そこまでは必要なくてですね」
シスターはどうもばつが悪そうに苦笑いをする。
「リッツ様、シスターさんたちはみえない価値を子供たちに教えてあげてるんじゃないでしょうか」
「みえない価値って、なんだそれ?」
「先ほど聖人であるリッツ様から回復薬を作ってもらうって言ってましたよね。要はいつも頑張っている子供たちに対して、神様もとい聖人様はちゃんとみてるんですよーって伝えようとしてるんじゃないかと」
「でも、それで普通の回復薬と大して変わらなかったら悲しまないか?」
「そんなことありません! この髪飾りだってなんの効果もありませんが、もし奇跡を起こすような効果がついていたとしても、リッツ様から頂いたという嬉しさに変わりはないんです!」
ニエの熱意に押されほんの少し身を退くと、今では身体の一部のようになっていた鞄を感じた。
――弟子の一生モノと考えれば、それくらい安いものよ――
…………ああ、そういうことだったのか。
俺はあの日、マジックバックの価値に喜んだのは間違いない。
それと同時に師匠が俺を見てくれていたことが嬉しかったんだ。
「――余計なことをするところだった。回復薬は子供たちの分だけでいいのか?」
「はい、祝福したといっても薬草に変わりはありません。リッツさんの畑で採れたものですから、同じように使ってください」
「わかった、出来上がり次第届けるよ。……ニエ、そういえば回復薬の作り方を教えてなかったな。ついでに教えてやろうか? 両親から教わった秘伝だ」
秘伝といってもゴリゴリ磨り潰したりやることは昔のままだけどな。
とってつけたような言葉にニエは満面の笑みをみせた。
「ワン!」
「ん、アンジェロも手伝うって? そりゃあ心強いな~」
冬毛でいつも以上にもふもふなアンジェロを撫でると屋敷へ帰り、さっそく回復薬作りを始めた。
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