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87話
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真っ暗な倉庫で一部だけ明かりが灯され、周囲ではちらちらと影が動いているのがわかる。まったく隠れ切れていないし気づかないフリをしろというほうが大変だ。
「おい、要求通り一人で来たぞ!」
「さすが聖人様、約束を守るとは見事ですな」
奥から男たちがでてくるとその後ろに男性とリヤンがでてくる。
「お兄ちゃん助けてー!」
「ぶっ――」
リヤンに手を向けられ俺は盛大に吹きそうになったのをなんとか堪えた。
はたから見ればどうみても猿芝居だ、こんなのが通用するのだろうか。
「おっと、大人しくしてねぇと痛い目見ることになるぜ。さぁて……てめぇには散々邪魔されたからな、こいつに傷を付けられたくなければ大人しくこちらに従ってもらおうか」
「きゃーこわいよぉー」
ナイフを取り出した男に恐がるリヤン、俺の目には二人が楽しんでるようにしかみえない。心なしか横で取り残されている男性も気の毒に見える。
……とにかく調子を合わせるしかない。
「くそ、いったい何が目的だ!」
「まずは教会に卸しているという薬草を全て渡してもらおうか」
「あれは俺だけじゃなく教会の子供たちが作っているものだ、勝手にそんなことできるか」
「んなもん知らねぇよ。おい」
男が合図すると仲間が木箱を持ってくる。
「明日の朝までに薬草を全部この中に入れてこい」
「そんな大きな箱、持っていけるわけないだろ」
「だったら薬草を集めて持ってくればいい。何往復するかなんて俺たちにゃ関係ないからな」
悔しがる真似をすると男たちが笑い出す。
「朝まで精々頑張ってくれよ! そんじゃあまた会おうぜ!」
「お、おにいちゃーーーん!」
倉庫を出る男たちの後を男性に促され去って行くリヤンを見送る。
「ぶはっ……あ、危なかった……」
「見事な演技だったわね」
「師匠、いまどきあんな子供いませんって」
「あら、子供なんてあんなものよ。連中だって気にも留めていなかったでしょ」
「そうは言っても師匠だって聞いたでしょう。きゃーこわいよぉーって」
「ぷっ……」
「あ、ほら今笑った!」
「……今のはあなたの真似が面白かっただけよ」
「これが終わったら特大のパフェでも奢ってやんなきゃなぁ」
「そのときは私もお礼を言わないとね」
「俺一人だと余計なことまで喋っちゃいそうですから助かります」
「今まで随分苦労したみたいね。王様なんて仕事よりあなたの片付けのほうが何倍も面倒だと嘆いていたわよ」
「あいつの冗談だって洒落にならないんですから、お互い様ですよ。この前だって――」
俺は久しぶりに師匠と静まり返った夜道を笑いながらゆっくり帰った。
◇
「リモン様、聖人の野郎から薬草を集めました。これでいつでも送り出せます」
「よし、予定通りあの男に運ばせれば怪しまれることもないだろう。いつも通り抵抗しそうになったら殺せ」
「ガキのほうはどうします?」
「あれは使えるから閉じ込めておけ。聖人の立場を奪って国を支配したらあとは用無しだ。お前たちの好きにすればいい」
「うひょー! おい、ガキの監視は俺にやらせろよ!」
「お前、先に手を出すんじゃねぇぞ」
「わかってるって! お前らは配達に行ってこい、うまくいけば楽しめるだろ」
「最近殺しの仕事がなかったからな。おい、お前もついてこいよ」
男が仲間の一人に声を掛けると頷き首を鳴らす。
「出発は早朝過ぎ、商人どもの移動が落ち着いてからだ」
「そろそろ俺たちも組織に入れる頃ですかね?」
「そうだな、この国を支配したら次は組織だ。あの生意気な野郎も黙らせてやる」
リモンが不適な笑みを浮かべると男たちは足取り軽く部屋を出ていった。
「おい、要求通り一人で来たぞ!」
「さすが聖人様、約束を守るとは見事ですな」
奥から男たちがでてくるとその後ろに男性とリヤンがでてくる。
「お兄ちゃん助けてー!」
「ぶっ――」
リヤンに手を向けられ俺は盛大に吹きそうになったのをなんとか堪えた。
はたから見ればどうみても猿芝居だ、こんなのが通用するのだろうか。
「おっと、大人しくしてねぇと痛い目見ることになるぜ。さぁて……てめぇには散々邪魔されたからな、こいつに傷を付けられたくなければ大人しくこちらに従ってもらおうか」
「きゃーこわいよぉー」
ナイフを取り出した男に恐がるリヤン、俺の目には二人が楽しんでるようにしかみえない。心なしか横で取り残されている男性も気の毒に見える。
……とにかく調子を合わせるしかない。
「くそ、いったい何が目的だ!」
「まずは教会に卸しているという薬草を全て渡してもらおうか」
「あれは俺だけじゃなく教会の子供たちが作っているものだ、勝手にそんなことできるか」
「んなもん知らねぇよ。おい」
男が合図すると仲間が木箱を持ってくる。
「明日の朝までに薬草を全部この中に入れてこい」
「そんな大きな箱、持っていけるわけないだろ」
「だったら薬草を集めて持ってくればいい。何往復するかなんて俺たちにゃ関係ないからな」
悔しがる真似をすると男たちが笑い出す。
「朝まで精々頑張ってくれよ! そんじゃあまた会おうぜ!」
「お、おにいちゃーーーん!」
倉庫を出る男たちの後を男性に促され去って行くリヤンを見送る。
「ぶはっ……あ、危なかった……」
「見事な演技だったわね」
「師匠、いまどきあんな子供いませんって」
「あら、子供なんてあんなものよ。連中だって気にも留めていなかったでしょ」
「そうは言っても師匠だって聞いたでしょう。きゃーこわいよぉーって」
「ぷっ……」
「あ、ほら今笑った!」
「……今のはあなたの真似が面白かっただけよ」
「これが終わったら特大のパフェでも奢ってやんなきゃなぁ」
「そのときは私もお礼を言わないとね」
「俺一人だと余計なことまで喋っちゃいそうですから助かります」
「今まで随分苦労したみたいね。王様なんて仕事よりあなたの片付けのほうが何倍も面倒だと嘆いていたわよ」
「あいつの冗談だって洒落にならないんですから、お互い様ですよ。この前だって――」
俺は久しぶりに師匠と静まり返った夜道を笑いながらゆっくり帰った。
◇
「リモン様、聖人の野郎から薬草を集めました。これでいつでも送り出せます」
「よし、予定通りあの男に運ばせれば怪しまれることもないだろう。いつも通り抵抗しそうになったら殺せ」
「ガキのほうはどうします?」
「あれは使えるから閉じ込めておけ。聖人の立場を奪って国を支配したらあとは用無しだ。お前たちの好きにすればいい」
「うひょー! おい、ガキの監視は俺にやらせろよ!」
「お前、先に手を出すんじゃねぇぞ」
「わかってるって! お前らは配達に行ってこい、うまくいけば楽しめるだろ」
「最近殺しの仕事がなかったからな。おい、お前もついてこいよ」
男が仲間の一人に声を掛けると頷き首を鳴らす。
「出発は早朝過ぎ、商人どもの移動が落ち着いてからだ」
「そろそろ俺たちも組織に入れる頃ですかね?」
「そうだな、この国を支配したら次は組織だ。あの生意気な野郎も黙らせてやる」
リモンが不適な笑みを浮かべると男たちは足取り軽く部屋を出ていった。
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