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「おお、ちょうどよかった。お前たちを探していたところだったんだよ」
「お主は?」
「俺はこの町の自警団のリーダーをしているものだ、あんたが町長かい?」
「そうだが、どうかしたのか?」
「実は町の人間がいなくなってしまったみたいなんだ」
「なんじゃと!?それはどういうことか説明せい!」
「それがさっぱりわかんねえんだ、気づいた時にはもう誰もいなくなっててな……」
「ふむ、つまり何者かによって連れ去られたというわけか」
「ああ、多分そうだと思う」
「そうか……」
「ところであんたらは何か知らないか?ここに来るまでのこととか」
「残念だが何もわからんな」
「そっか……」
「すまんな」
「気にしないでくれ、それであんたらはこれからどうするつもりだい?」
「ひとまず他の町に助けを求めに行くつもりだ」
「なるほど、なら俺も同行させてくれないか?」
「別に構わんぞ」
こうして二人は町を出発し、次の目的地へと向かうのであった。
「そういえば自己紹介がまだだったな、俺の名前はダロスだ。よろしくな」
「私はセリーナです、こちらこそよろしくお願いします」
「ワシはタカテルだ、こちらこそよろしくな」
三人はそれぞれ挨拶をした。
「しかしどうしてこんなことになったんだろうか……」
「さあな、とりあえず先へ進もう」
「そうだな、いつまでもここで止まっている訳にもいかないもんな」
それからしばらく歩いていくと大きな洞窟が見えてきた。
「ここが入口かな?」
「おそらくそうだろうな」
「よし、行ってみるか」
三人は洞窟の中へと入っていった。
「暗いな、松明でも持ってくれば良かったな」
「仕方ない、とりあえず進むしかないな」
「ですね」
しばらく進んでいくと大きな広間に出た。そこには巨大な竜の死体が転がっていた。
「こいつは!?」
「まさか……!」
「あの時の竜じゃないか!」
「やはりそうですか、ということはこの近くにあの竜がいるということでしょうか」
「その可能性が高いな」
「となると急いで探さないといけませんね」
「ああ、手分けして探すか」
「はい」
タカテル達は二手に別れて捜索を開始した。
「しかしどこを探しても見つからないな……」
タカテルはため息をついた。その時、背後から気配を感じた。タカテルはすぐに振り返った。するとそこには例の竜の姿があった。「こいつは!」
タカテルはすぐさま剣を構えた。しかし竜は何もせずじっとしていた。
「なんだ?襲ってこないぞ?」
タカテルが不思議に思っていると竜の身体が徐々に変化していった。そしてその正体はセリーナだった。
「セリーナなのか?」
タカテルが問いかけるとセリーナはゆっくりと目を開けた。
「タカテルさん……」
「セリーナ!無事だったんだな!」
タカテルはセリーナに駆け寄ろうとしたが、その前にセリーナが口を開いた。
「ごめんなさい、私のせいであなた達まで巻き込んでしまって……」
「そんなことはいいんだ、とにかく無事でよかったよ」
「ありがとうございます、ところでそちらの方は?」
「ああ、この人はダロスさんだよ」
「はじめまして、俺は自警団の団長をしている者だ」
「はじめまして、私はタカテルの妻のセリーナと申します」
「奥さんだったのか!これは失礼しました!」
「いえ、気になさらないでください。それより事情を説明していただけますか?」
「わかりました。実は……」
セリーナとダロスはお互いに今までの経緯を説明した。
「そういうことだったんですね……」
「ええ、全ては私のせいなんです……」
「そんなことはないですよ」
「そうだぜ、悪いのは全て奴らだろ」
「ダロスさんの言う通りです、だからセリーナが責任を感じる必要なんてありませんよ」
「みなさん……」
「ところで二人はこれからどうするんだい?」
「ひとまず他の町へ行きたいと思います」
「そうか、それなら俺たちと一緒に行くか?」
「よろしいのですか?」
「もちろんさ」
「ありがとうございます!」
「じゃあ出発しようか」
こうしてタカテルたちは新たな仲間を加えて町へと戻るのであった。
その後、町では無事に全員が発見されて町の人間全員でお祝いをするのであった。
タカテル達が町を離れて数日後、とある場所で二人の男が会話をしていた。
「そうか、ついに動き出したか」
「はい、どうやら我々の計画に気付いたようです」
「ふむ、予想より早かったな」
「しかし問題はないでしょう、奴らは我々の存在をまだ把握していませんから」
「そうだな、まあいいだろう。いずれ時が来た時に始末すれば良いだけのことだ」
「仰るとおりかと」
「引き続き監視を続けてくれ」
「かしこまりました」
「うむ、頼んだぞ」
男はその場を後にした。
「しかし奴らがこの町に来るとはな……」
「どういたしますか?」
「今は放っておくしかないだろう、だがもし何かあれば……」
「わかっております」
「ならばよい」
「はっ!」
男は再び姿を消した。
一方その頃、タカテル達は町に戻ってきていた。
「ただいま戻りました」
「おお、おかえり。ずいぶん遅かったな」
「すいません、ちょっと道草を食ってしまいまして」
「そうか、まあお前たちなら大丈夫だと思っていたがな」
「ところで町長、一つ相談があるのですが」
「ん?なんだ?」
「実は……」
セリーナは自分が体験したことを全て話した。
「なるほどな、それでその竜を探したいと」
「はい、どうしても見つけ出して謝りたいんです」
「わかった、好きにするといいさ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「ただし条件が一つある」
「なんでしょうか?」
「お前たちがその竜を見つけた時は俺にも知らせてほしい、それが約束できるなら探すのを許可してやる」
「わかりました、必ず伝えます」
「よし、じゃあ行ってこい!」
「はい!」
タカテル達は竜を探す旅へと出た。
それからしばらく歩き続けてタカテル達は洞窟の前に来ていた。
「ここか……」
「おそらくそうですね」
「入るぞ」
三人は中に入っていった。するとそこにはあの時の竜の姿があった。
「やっぱりここに居たか」
「しかしどうやって連れて帰りましょうかね?」
「それなんだが……」
ダロスは竜に近付いた。
「おい、起きろ」
「グルルルル……!」
竜は大きく吠えた。
「ちっ!仕方ねえ、力ずくでも連れて行くしかねえようだな」
「大丈夫ですか?」
「ああ、任せとけって!」
「グオオオオン!!」
竜は口から炎を吐き出した。
「お主は?」
「俺はこの町の自警団のリーダーをしているものだ、あんたが町長かい?」
「そうだが、どうかしたのか?」
「実は町の人間がいなくなってしまったみたいなんだ」
「なんじゃと!?それはどういうことか説明せい!」
「それがさっぱりわかんねえんだ、気づいた時にはもう誰もいなくなっててな……」
「ふむ、つまり何者かによって連れ去られたというわけか」
「ああ、多分そうだと思う」
「そうか……」
「ところであんたらは何か知らないか?ここに来るまでのこととか」
「残念だが何もわからんな」
「そっか……」
「すまんな」
「気にしないでくれ、それであんたらはこれからどうするつもりだい?」
「ひとまず他の町に助けを求めに行くつもりだ」
「なるほど、なら俺も同行させてくれないか?」
「別に構わんぞ」
こうして二人は町を出発し、次の目的地へと向かうのであった。
「そういえば自己紹介がまだだったな、俺の名前はダロスだ。よろしくな」
「私はセリーナです、こちらこそよろしくお願いします」
「ワシはタカテルだ、こちらこそよろしくな」
三人はそれぞれ挨拶をした。
「しかしどうしてこんなことになったんだろうか……」
「さあな、とりあえず先へ進もう」
「そうだな、いつまでもここで止まっている訳にもいかないもんな」
それからしばらく歩いていくと大きな洞窟が見えてきた。
「ここが入口かな?」
「おそらくそうだろうな」
「よし、行ってみるか」
三人は洞窟の中へと入っていった。
「暗いな、松明でも持ってくれば良かったな」
「仕方ない、とりあえず進むしかないな」
「ですね」
しばらく進んでいくと大きな広間に出た。そこには巨大な竜の死体が転がっていた。
「こいつは!?」
「まさか……!」
「あの時の竜じゃないか!」
「やはりそうですか、ということはこの近くにあの竜がいるということでしょうか」
「その可能性が高いな」
「となると急いで探さないといけませんね」
「ああ、手分けして探すか」
「はい」
タカテル達は二手に別れて捜索を開始した。
「しかしどこを探しても見つからないな……」
タカテルはため息をついた。その時、背後から気配を感じた。タカテルはすぐに振り返った。するとそこには例の竜の姿があった。「こいつは!」
タカテルはすぐさま剣を構えた。しかし竜は何もせずじっとしていた。
「なんだ?襲ってこないぞ?」
タカテルが不思議に思っていると竜の身体が徐々に変化していった。そしてその正体はセリーナだった。
「セリーナなのか?」
タカテルが問いかけるとセリーナはゆっくりと目を開けた。
「タカテルさん……」
「セリーナ!無事だったんだな!」
タカテルはセリーナに駆け寄ろうとしたが、その前にセリーナが口を開いた。
「ごめんなさい、私のせいであなた達まで巻き込んでしまって……」
「そんなことはいいんだ、とにかく無事でよかったよ」
「ありがとうございます、ところでそちらの方は?」
「ああ、この人はダロスさんだよ」
「はじめまして、俺は自警団の団長をしている者だ」
「はじめまして、私はタカテルの妻のセリーナと申します」
「奥さんだったのか!これは失礼しました!」
「いえ、気になさらないでください。それより事情を説明していただけますか?」
「わかりました。実は……」
セリーナとダロスはお互いに今までの経緯を説明した。
「そういうことだったんですね……」
「ええ、全ては私のせいなんです……」
「そんなことはないですよ」
「そうだぜ、悪いのは全て奴らだろ」
「ダロスさんの言う通りです、だからセリーナが責任を感じる必要なんてありませんよ」
「みなさん……」
「ところで二人はこれからどうするんだい?」
「ひとまず他の町へ行きたいと思います」
「そうか、それなら俺たちと一緒に行くか?」
「よろしいのですか?」
「もちろんさ」
「ありがとうございます!」
「じゃあ出発しようか」
こうしてタカテルたちは新たな仲間を加えて町へと戻るのであった。
その後、町では無事に全員が発見されて町の人間全員でお祝いをするのであった。
タカテル達が町を離れて数日後、とある場所で二人の男が会話をしていた。
「そうか、ついに動き出したか」
「はい、どうやら我々の計画に気付いたようです」
「ふむ、予想より早かったな」
「しかし問題はないでしょう、奴らは我々の存在をまだ把握していませんから」
「そうだな、まあいいだろう。いずれ時が来た時に始末すれば良いだけのことだ」
「仰るとおりかと」
「引き続き監視を続けてくれ」
「かしこまりました」
「うむ、頼んだぞ」
男はその場を後にした。
「しかし奴らがこの町に来るとはな……」
「どういたしますか?」
「今は放っておくしかないだろう、だがもし何かあれば……」
「わかっております」
「ならばよい」
「はっ!」
男は再び姿を消した。
一方その頃、タカテル達は町に戻ってきていた。
「ただいま戻りました」
「おお、おかえり。ずいぶん遅かったな」
「すいません、ちょっと道草を食ってしまいまして」
「そうか、まあお前たちなら大丈夫だと思っていたがな」
「ところで町長、一つ相談があるのですが」
「ん?なんだ?」
「実は……」
セリーナは自分が体験したことを全て話した。
「なるほどな、それでその竜を探したいと」
「はい、どうしても見つけ出して謝りたいんです」
「わかった、好きにするといいさ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「ただし条件が一つある」
「なんでしょうか?」
「お前たちがその竜を見つけた時は俺にも知らせてほしい、それが約束できるなら探すのを許可してやる」
「わかりました、必ず伝えます」
「よし、じゃあ行ってこい!」
「はい!」
タカテル達は竜を探す旅へと出た。
それからしばらく歩き続けてタカテル達は洞窟の前に来ていた。
「ここか……」
「おそらくそうですね」
「入るぞ」
三人は中に入っていった。するとそこにはあの時の竜の姿があった。
「やっぱりここに居たか」
「しかしどうやって連れて帰りましょうかね?」
「それなんだが……」
ダロスは竜に近付いた。
「おい、起きろ」
「グルルルル……!」
竜は大きく吠えた。
「ちっ!仕方ねえ、力ずくでも連れて行くしかねえようだな」
「大丈夫ですか?」
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