上 下
2 / 61

しおりを挟む
 「へえー、彼なかなかいいやつじゃないか」
「そうなの!見た目は少し怖い感じだけど中身は優しい人でね……」
タグリアナは嬉しそうに青年の事を語っていた。
だがセリーナは複雑な気持ちになっていたのであった。
(まさかこんなところで再会することになるとは思わなかったわ)
そう心の中でつぶやくとその表情は徐々に暗くなっていったのであった。
それからさらに歩くこと一時間ようやく港町に到着したのであった。
「やっと着いたわね、これで少しは休めるわ」
「それにしてもこの世界にきてからまだ何も食べていなかったから腹ペコだよ」
「私もなんだか疲れちゃいました」
「じゃあさっそく宿屋を探してご飯を食べに行きましょう」
「そうだな」
それから三人はそれぞれの部屋を取ると食堂へと向かったのであった。
「いらっしゃい!好きなところに座ってくださいな」
店に入ると恰幅の良いおばちゃんが出迎えてくれた。
「それでは遠慮なく座らせてもらいますね」
そう言うと三人はテーブルについたのである。
「私は海鮮パスタとサラダとスープをお願いします」
「俺はビーフシチューとパンを貰おうかな」
「私はオムライスとコーンポタージュにしようっと!」
三人がそれぞれ注文を終えるとタグリアナはおもむろに口を開いた。
「そういえば自己紹介がまだだったよね、私の名前はタグリアナです、こっちはセリーナさんで職業はヒーラーです。二人ともレベルはまだ1なんです。タカちゃんは……」
「おい、なんで俺だけ職業とか言っちゃうんだよ!?」
タカテルの言葉にタグリアナは慌てて口をふさいだ。
「あっ、つい……でもタカちゃんのステータスなら問題ないじゃない」
「それはそうかもしれないけどさ……」
「まあまあ二人とも落ち着いて、とにかくお互いに名前を知っておくだけでもいいじゃないですか」
セリーナの言葉に二人はしぶしぶうなずくのであった。
「それじゃあタカテルくん、あなたの職業を教えてくれるかしら?」
「はい、僕の職業は勇者です、といっても初期職なので大した能力ではないのですが……」
「あら、すごいじゃないですか!」
セリーナが感嘆の声を上げるとタグリアナも興奮したように続けた。
「そうだよすごいよ!!だってこの世界で最初に選ばれた人間ってことだもん!」
「そんなたいしたものでもないんだけどなぁ」
「そんなことありませんよ!すごいと思います!」
「まあ褒められるのは悪い気がしないけどな、ハハッ」
「それで次は私の番ですね、名前はセリーナと言います、職業はプリーストでレベルは665になっています、それとタカテルさんと同じで初期職なので能力はたいしたことありませんけど」
「へえ~、セリーナさんは回復魔法が得意なんですね!」
「えぇ、そうみたいですね」
「ちなみに二人共武器は何を使っているんだ?」
「僕は剣を使ってるよ!」
「私は杖ですね」
「やっぱりそうなのか、じゃあ明日はとりあえず装備を整えないとな」
「そうね、じゃあそろそろ食事にしましょうか」
「うん、おなかぺこぺこだよぉ」
「じゃあとりあえず乾杯といきましょうか」
「そうね、今日は二人の出会いに感謝して!」
「「「かんぱーい!!」」
こうして三人は食事を楽しみながら親睦を深めていったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

絶縁書を出されて追放された後に、王族王子様と婚約することになりました。…え?すでに絶縁されているので、王族に入るのは私だけですよ?

新野乃花(大舟)
恋愛
セレシアは幼い時に両親と離れ離れになり、それ以降はエルクという人物を父として生活を共にしていた。しかしこのエルクはセレシアに愛情をかけることはなく、むしろセレシアの事を虐げるためにそばに置いているような性格をしていた。さらに悪いことに、エルクは後にラフィーナという女性と結ばれることになるのだが、このラフィーナの連れ子であったのがリーゼであり、エルクはリーゼの事を大層気に入って溺愛するまでになる。…必然的に孤立する形になったセレシアは3人から虐げ続けられ、その果てに離縁書まで突き付けられて追放されてしまう。…やせ細った体で、行く当てもなくさまようセレシアであったものの、ある出会いをきっかけに、彼女は妃として王族の一員となることになる…! ※カクヨムにも投稿しています!

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

サレ妻王太子妃は実家に帰らせていただきます!~あなたの国、滅びますけどね???

越智屋ノマ@甘トカ【書籍】大人気御礼!
恋愛
小国の王女だったヘレナは、大陸屈指の強国「大セルグト王国」の王太子妃となった。 ところが夫である王太子はふしだらなダメ男。怜悧なヘレナを「お高くとまった女」と蔑み、ヘレナとは白い結婚を貫きながらも他の女を侍らせている。 ある日夫の執務室を訪ねたヘレナは、夫が仕事もせずに愛妾と睦び合っている【現場】を目撃してしまう。 「殿下。本日の政務が滞っておいでです」 どこまでも淡々と振る舞うヘレナに、罵詈雑言を浴びせる王太子と愛妾。 ――あら、そうですか。 ――そこまで言うなら、実家に帰らせていただきますね? あなたの国、滅びますけどね??? 祖国に出戻って、私は幸せになります。

処理中です...