上 下
39 / 89

第三十八話

しおりを挟む
 「ねえ、知ってる?ここって昔は処刑場があった場所らしいよ」

「えっ、そうなの!?」

「なんでも、ここで首を切られたりとか、火炙りにされたりして殺された人がいるんだって」

「へぇ~、そうなんだ」「それでね、今でも時々首吊り自殺をする人がいて、その幽霊が出るんだってさ」

「嘘!マジで?」

「本当だよ。実際に見た人もいるみたいだし、何人も目撃情報があるんだから間違いないよ。それにさ、なんか聞いた話だとこの辺りで殺人事件が起きたこともあるみたいなんだよ。ほら、ちょうどこの場所でね」

「……」

「どうしたの?急に黙っちゃって」

「……いや、ちょっと寒気がしただけ。それより早く行こうよ。次の講義に遅れちゃうよ」

そんなことを言ってると突然背後から肩を叩かれた。

振り返るとそこには知らない男が立っていた。

男はニコニコしながらこちらの顔を見てこう言った。

「お前もこっち側に来ないか?」

「ねぇ、知ってる?ここって昔は処刑場だったらしいよ」

「えっ、そうなの?」

「なんでも、ここで首を切られたりとか、火炙りにされた人がいたんだって」

「へぇ~、そうなんだ」

「それでね、今でも時々首吊り自殺をする人がいて、その幽霊が出るんだって」

「嘘!本当に?」

「本当だよ。実際に見た人いるもん。何人か見たっていう人もいて、中にはこの目ではっきりと見た人もいるのよ」

「……そっか。ちなみにどんな人だった?」

「確か、若い男の人で全身血まみれで、自分の死体を抱えて泣いてたんだって。きっと罪悪感に押し潰されそうになったんじゃないのかなぁ。可哀想だよね。それに、自分が死んでいるのに気付いていないんじゃないかってくらい普通にしてたし、周りの人は気味が悪いから逃げていったんだけど、その人だけはずっとその場から動かなかったらしいよ。まるで誰かを待ってるみたいだったって。だから、もし見かけたら優しく声をかけてあげてほしいの。きっと喜ぶと思うから……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

それって冤罪ですよね? 名誉棄損で訴えさせていただきます!

恋愛
伯爵令嬢カトリーヌ・ベルテに呼び出された男爵令嬢アンヌ・コルネ。 手紙に書いてあった場所へ行くと、カトリーヌだけではなく、マリー・ダナ、イザベル・クレマンの3人に待ち受けられていた。 言われたことは……。 ※pixiv、小説家になろう、カクヨムにも同じものを投稿しております。

継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……思わぬ方向へ進んでしまうこととなってしまったようです。

四季
恋愛
継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……。

大好きな彼女と幸せになってください

四季
恋愛
王女ルシエラには婚約者がいる。その名はオリバー、王子である。身分としては問題ない二人。だが、二人の関係は、望ましいとは到底言えそうにないもので……。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

そんな事も分からないから婚約破棄になるんです。仕方無いですよね?

ノ木瀬 優
恋愛
事あるごとに人前で私を追及するリチャード殿下。 「私は何もしておりません! 信じてください!」 婚約者を信じられなかった者の末路は……

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...