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第三十話
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私の心霊体験についてお話します。
これは去年の夏に起きた出来事です。
当時、私は大学生でしたがとあるサークルに所属していました。
特にこれといった活動内容はなく、ただ集まっておしゃべりをするだけのゆるーい感じのものでした。
そして夏休みに入ってすぐのことだったと思います。
先輩の一人がある提案を持ちかけました。
「肝試しをしましょう!」
私は正直あまり乗り気ではありませんでした。
だって怖いものは苦手だし、それに夏といえば怪談話の季節でしょう。
わざわざそんなことをしなくても、もっと他に楽しいことはたくさんあるはずだと思いました。
しかし他の人たちはみんなやる気満々の様子だったので、仕方なく私も参加することにしました。
場所は大学の近くにある古いアパートの一室だった。
そこは以前、一家心中があった場所で今では誰も住んでいないらしい。
なので今回の肝試しにはうってつけの場所である。
私たち五人はその部屋に入ると、早速準備に取りかかりました。
まずは部屋の明かりを全て消して真っ暗にし、ろうそくを立てます。
次に用意したお菓子やジュースをテーブルの上に置き、最後に各々が用意してきた怪しげなアイテムを用意しました。
私はというと、友達と一緒に作った手作りのお守りを持って来ていました。
これには自分の身を守る効果があるそうで、よく効くおまじない付きだと聞かされました。
こうして私たちはいよいよ出発することになりました。
先頭は言い出しっぺの先輩。
続いて二番目に私、三番目は女の子二人、四番目に男の子という順番でした。
私たちは一列に並んでゆっくりと進み始めました。
外はすっかり日が落ちていたので、辺りはとても静まり返っていました。
風もなく、まるで時間が止まっているかのように感じられるほどです。
しばらく歩いたところで、ふと後ろを振り返ると三人の背中が小さく見えました。
どうやら遅れてしまったようです。
急いで追いつこうと走り出そうとしたところで、私は足を滑らせて転んでしまいました。
幸いケガはなかったのですが、その時ポケットに入れていたはずのお守りがいつの間にかなくなっていました。
ひょっとしたらどこかへ落としてしまったのかも知れません。
慌てて探そうとした時、不意に首筋に冷たいものを感じて思わず悲鳴を上げてしまいました。
何事かと思って振り向くと、そこには髪の長い女性が立っていて、こちらをジッと見つめていました。
私は恐怖のあまりその場から動けず、声も出ませんでした。
女性はしばらくの間、黙ったまま見つめ続けていましたが、やがてすぅっと消えていきました。
そこで私はようやく我に返り、急いで後を追いかけようとしたものの、すでにその姿はありませんでした。
その後、私は必死になって探し回ったけれど結局見つかりませんでした。
これは去年の夏に起きた出来事です。
当時、私は大学生でしたがとあるサークルに所属していました。
特にこれといった活動内容はなく、ただ集まっておしゃべりをするだけのゆるーい感じのものでした。
そして夏休みに入ってすぐのことだったと思います。
先輩の一人がある提案を持ちかけました。
「肝試しをしましょう!」
私は正直あまり乗り気ではありませんでした。
だって怖いものは苦手だし、それに夏といえば怪談話の季節でしょう。
わざわざそんなことをしなくても、もっと他に楽しいことはたくさんあるはずだと思いました。
しかし他の人たちはみんなやる気満々の様子だったので、仕方なく私も参加することにしました。
場所は大学の近くにある古いアパートの一室だった。
そこは以前、一家心中があった場所で今では誰も住んでいないらしい。
なので今回の肝試しにはうってつけの場所である。
私たち五人はその部屋に入ると、早速準備に取りかかりました。
まずは部屋の明かりを全て消して真っ暗にし、ろうそくを立てます。
次に用意したお菓子やジュースをテーブルの上に置き、最後に各々が用意してきた怪しげなアイテムを用意しました。
私はというと、友達と一緒に作った手作りのお守りを持って来ていました。
これには自分の身を守る効果があるそうで、よく効くおまじない付きだと聞かされました。
こうして私たちはいよいよ出発することになりました。
先頭は言い出しっぺの先輩。
続いて二番目に私、三番目は女の子二人、四番目に男の子という順番でした。
私たちは一列に並んでゆっくりと進み始めました。
外はすっかり日が落ちていたので、辺りはとても静まり返っていました。
風もなく、まるで時間が止まっているかのように感じられるほどです。
しばらく歩いたところで、ふと後ろを振り返ると三人の背中が小さく見えました。
どうやら遅れてしまったようです。
急いで追いつこうと走り出そうとしたところで、私は足を滑らせて転んでしまいました。
幸いケガはなかったのですが、その時ポケットに入れていたはずのお守りがいつの間にかなくなっていました。
ひょっとしたらどこかへ落としてしまったのかも知れません。
慌てて探そうとした時、不意に首筋に冷たいものを感じて思わず悲鳴を上げてしまいました。
何事かと思って振り向くと、そこには髪の長い女性が立っていて、こちらをジッと見つめていました。
私は恐怖のあまりその場から動けず、声も出ませんでした。
女性はしばらくの間、黙ったまま見つめ続けていましたが、やがてすぅっと消えていきました。
そこで私はようやく我に返り、急いで後を追いかけようとしたものの、すでにその姿はありませんでした。
その後、私は必死になって探し回ったけれど結局見つかりませんでした。
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