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第八話

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 幽霊なんて本当にいると思いますか?
私は信じていませんでした。あの日あんな体験をするまでは…………
「ねえ、そろそろ帰らない?」
「もうちょっとだけ! あと少しだから!」
私は友人の制止も聞かずに駆け出しました。
このトンネルには昔から噂がありました。
「夜中にトンネルに入ると二度と帰ってこれない」
と。
私はそれを確かめたくて友人を連れてきてしまったのです。
しばらくすると真っ暗な道が開けて、目の前に赤い光が見えてきました。
それはまるで満月のように綺麗でした。
でもその時の私にはそれがとても恐かったんです。だってその光の中に人影のようなものが見えたからです。
その瞬間、私の足はすくんでしまい動けなくなっていました。
どうしよう、引き返そうか迷っているうちにその人影はどんどん近づいてきて……
「あなたたちこんなところで何してるの?」
声をかけられた瞬間、思わず悲鳴をあげてしまいました。
だってそこには人間じゃなかったんですもの。
顔は青白く、目は赤く血走っていて、口元からは鋭い牙が覗いていました。
その姿を見たとき思い出しました。ここの噂のことを。そしてすぐに逃げ出せば良かったものを、私は怖くて動くこともできずに固まっていたのです。
そんな私を見て怪物はニヤリと笑いながら言いました。
「お嬢さん、今夜は満月だよ。早く家に帰らないと食べられてしまうよ」
そしてそのまま闇の中へ消えていきました。
私が正気に戻ったときには既に遅く、友達の姿はなく、私は一人で家に帰りました。
それ以来、私はまだあのトンネルを通ってはいません。
どうしてかって? それは決まっています。怖いからですよ。
もしもまたあそこに行ったら今度こそ食べられてしまうかもしれない。
いえ、きっとそうなります。だから私はもう行かないことに決めています。
それにしても不思議ですね。何故今まで忘れていたのでしょう。もし本当に吸血鬼がいるなら会ってみたいものです。
どんな姿をしているのか、そしてどこに住んでいるのか……
まぁ、多分無理でしょうけどね。
えっ? 最後に一つ聞きたいことがあるって? なんですか? 何でも答えてあげますよ。それでは質問をどうぞ。……はい、分かりました。ではその質問に答えましょう。
あなたの知りたかったことは「あの時、友達と一緒にトンネルに入った女の子は誰だったのか」ということですよね。
残念ながらそれは分かりません。でもひとつ言えることがあります。それはあの子もまた、この世界とは別の世界で生き続けているということだけです。
それでは皆さんさようなら。
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