上 下
3 / 13

1-3

しおりを挟む
  午後の授業も無事終わり、みんなが寮に帰る中、セシリアは図書室に来ていた。そして本棚から数冊の本を持ってきた。その題名は『魔法の使い方』というものだ。
この本は初級編、中級編、上級編の3つに分かれている。まずは初級編から見てみることにする。そこには魔法について書かれていた。
まず魔法とは魔力を変換して、現象を起こすことであると書かれている。そしてその魔力の属性によって、使える魔法が変わってくるそうだ。火魔法を使う場合は、水魔法を使うよりも多くの魔力が必要だが、威力が上がるらしい。
また、無詠唱での発動も可能だが、難易度はかなり高いようだ。次に中級編を見てみると、魔法陣についてのことが書いてあった。魔法陣を使うことにより魔法を発動することができるが、複雑なものほど、必要な魔力が多くなるそうだ。
また、使う魔法によっては、魔法陣を書く位置を変えることで、魔法効果を高めることができるらしい。さらに上級編になると、古代文字についても書かれていて、それを読むことで魔法を習得することもできるが、かなり難しいため、ほとんどの人が諦めるらしい。
最後にそれぞれの属性ごとの魔法が載っているページを見てみると、火→炎・風・土・雷・光 ・闇・聖となっている。それぞれ読み方が違うらしく、発音の仕方が書かれているだけで、呪文のようなものは載っていなかった。
ちなみに先生に聞いたところ、魔導書の中にはちゃんとした呪文のようなものがあるそうだが、普通はその本を見ることはほとんどないと言っていた。
一通り目を通してみた感じでは、どうやら魔法は使えそうだった。あとは実際に使ってみて練習するしかないだろうと思い、とりあえず部屋に戻って寝ることにした。
翌日、いつも通りに起きて支度を整えた。そして朝食を食べた後、すぐに学園に向かった。そして授業を受けると、今日は珍しく武術の訓練があった。訓練場に着くと、先生が来た後早速訓練が始まった。今回は先生と模擬戦をやるということだった。
「これから私が相手になりますから、全力でかかってきてくださいね?」
「わかりました。よろしくお願いします!」
「ふふっ、元気があってよろしいですね。じゃあ始めましょうか。」
「はい!行きます!!」そう言って一気に距離を詰めると剣を振り下ろしたが簡単に受け止められてしまった。その後も何度か切りかかったが、どれも防がれてしまい全く相手にされなかった。
「もう終わりですか?まだ時間はありますから頑張ってくださいね?」それからしばらくの間、何度も打ち込んでいったが全く攻撃を当てることができなかった。しかも時々反撃までされる始末だ。それでもめげずに攻撃をし続けていった。
しかし結局一度も当たることはなかった。先生の攻撃は一度も当たらなかったが、こちらも一回も攻撃を受けることはなかった。
「はい、これで今日の稽古はおしまいです。明日からも頑張りましょうね?」
「ありがとうございました……。」
「あら、随分と疲れていらっしゃるようですね。」
「えぇ……まぁ……」
「それはいけませんね。少し待っていてください。」
そういうと先生はどこかに行ってしまった。待っている間周りを見渡していると、他の生徒達も同じように稽古をしていたが、やはりみんなボロボロになっていた。
(うーん、俺ってそんなに強くないのか?)しばらくすると、先生が戻ってきた。
「はい、これでも飲んで休憩してくださいな。疲労回復によく効くお茶ですよ。」
そう言って差し出してきたのは、茶色の液体の入ったカップだった。受け取って匂いを嗅いでみると、なんとも言えない臭いがした。だが折角持ってきてくれたのだ。飲まないわけにもいかないので、覚悟を決めて飲むことにした。そして口に含むと、その味に驚いた。
苦くて渋くてとても飲み込めるようなものではなかった。思わず吐き出しそうになったがなんとか堪えて全てを飲み込んだ。その瞬間全身から力が抜けていく感覚に襲われて倒れかけたが、ギリギリのところで持ちこたえた。
その後地面に膝をつくと、そのまま横になってしまった。
「ふふっ、よく耐えられましたね。これは体力の回復だけではなく、魔力も回復する効果があるのです。それに、これを飲んだ後はすごくスッキリするでしょう?それこそがこの茶葉のすごいところなのです。さぁ、ゆっくり休んでくださいね。」先生の声を聞きながら俺は意識を失った。
目が覚めると知らない天井が広がっていた。辺りを見渡すと、どうやら医務室にいるようだった。起き上がろうとすると身体中に痛みが走ったが、動けないというほどではなかった。ベッドの横には椅子があり、そこにはレイラさんが座っていた。
「気がついたみたいね。体調はどうかしら?」
「はい、大丈夫です。」
「そう、ならよかったわ。それと、一応謝っておくけれど、ごめんなさいね。まさか倒れるとは思わなかったものだから。」「いえ、気にしないでください。それよりもどうして倒れたんですかね?」
「おそらく、一度に大量の魔力を使ったことが原因だと思うわ。あなたの場合、ほとんど使ったことがない状態だったから体が追いつかなかったんでしょうね。」
「そうですか。ちなみにどれくらい寝てたんでしょうか?」
「そうね、2時間ぐらいかしらね。そろそろ夕食の時間だから寮に戻りましょうか。」
「はい、わかりました。」
そうして二人で部屋に戻ると、ちょうどいいタイミングで呼びに来た先生と一緒に食堂へ向かった。今日はいつもより豪華な食事が出た。先生曰く、俺が寝ている間にいろいろとあったらしく、そのお詫びだそうだ。ちなみに何があったかというと、俺が気絶してから1週間が経っているらしい。
それでその間に色々と行事が行われたようだ。まず最初に行われたのは、武術大会だ。なんでも毎年この時期に行われているものらしい。今年は剣術部門と武術部門の二つがあるようで、両方で優勝すればかなりの報酬が出るとのことだ。さらに優勝者には特別な景品も出るとのことだ。もちろん参加する生徒は多い。
次に魔法部門で上位3位以内に入れば賞金がもらえるという。こちらはかなり参加人数が多く、特に優秀な成績を収めた人には国から奨学金が与えられるとのことだ。その他にも学園から様々な特典が得られるため、ほとんどの生徒が参加していた。
他には、闘技会や舞踏会などがあったようだ。闘技会は、各学年の代表者が戦うもので、成績優秀者だけでなく、戦闘技術が高いと判断された生徒も出場できるそうだ。他にも、模擬戦やパーティーなど様々な催し物が行われる予定だ。
最後に文化祭のようなものがあった。といってもただのお祭り騒ぎではなく、それぞれの研究発表の場となっている。例えば、ある人は魔道具について発表し、また別の人は薬草などについて発表するといった感じだ。どれも興味のある内容だったので楽しみである。
こうして長い一日が終わった。
次の日、朝起きると朝食を食べてすぐに武術の訓練に向かった。そして授業を受けると次は魔法の授業になった。今回は座学で魔法の種類と歴史についての話だった。
「皆さんは属性というものを知っていますよね?」先生の言葉に全員がうなずいた。
「では、それぞれどんな属性を持っているのか答えられる人はいるかな?」先生は生徒達を見渡した。しかし誰も手をあげなかった。そこで先生は俺の方を見て、当ててきた。
「はい!風です!」元気よく答えると、みんなが驚いたようにこちらを見た。
「えぇ、正解よ。じゃあ、次に当てるのは誰かな?」
「はい!水です!!」今度はちゃんと答えられた。
「あら、これも正解。」先生は少し驚きながらも、他の子を当てていった。その後も何人か当てたが、結局最後まで残ったのは俺だった。
「うーん、残念だけど最後になってしまったわね。でも、これだけは覚えていてほしいの。私は、あなたたちのことを見捨てたりなんか絶対にしないわ。だから安心してくださいね。」先生の優しい言葉に、みんな涙を流していた。
その後は普通に授業を受け、昼食を食べたあとは訓練場に行った。そして午後からは座学の代わりに実習となった。内容は、武器の使い方についてだった。
まず初めに、自分の使う武器を決めさせられた。そこから、一人ずつ先生が指導してくれることになった。俺は剣を選んだ。すると、先生は木でできた大きめの剣を持ってきて渡してくれた。
「それでは、これからあなたの実力を見せてもらいます。全力でかかってくるといいですよ。」
「はい、よろしくお願いします。」そう言って構えた瞬間、目の前から先生の姿が消えた。そして気づいた時には首元に大剣が添えられていた。
「はい、これで終わりです。今のが本気だとしたら、まだまだですね。」それだけ言うと、その場から離れてしまった。慌てて追いかけると、先生はもう準備運動を始めており、俺は呆然と立ち尽くしてしまった。
(あれ?おかしいな、さっきまで先生の後ろにいたはずなのに……)そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「どうしましたか?」振り返るとそこにはレイラさんがいた。
「いえ、何でもありません。」そうして再び訓練に戻った。
それからしばらくの間、訓練を続けた。するといつの間にか外は暗くなっていた。そのことに驚いていると、突然横から声をかけられた。
「あら、こんな時間になるまでやってたんですか?」振り向くとそこにはアリス様がいた。
「はい、つい夢中になってしまっていて……」
「そうでしたか。あまり無理しないように気をつけてくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
「ところで、この後何か用事とかありますか?」
「いいえ、特に浮かばないですけど……」
「なら、私と一緒にお茶をしませんか?」
「えっ!?︎あっ、はい喜んで!」
「ふふっ、相変わらず面白い方ですね。」
「そ、そうでしょうか?」
「はい、とても楽しいですわ。それにしても、随分と熱心に練習してましたよね?」
「まぁ、一応これでも騎士団を目指しているものですので。」「そうなんですか。頑張ってくださいね。応援していますよ。」
「はい、頑張ります。」その後、二人で寮に戻ると、そのまま食堂へ向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結済み】王子への断罪 〜ヒロインよりも酷いんだけど!〜

BBやっこ
恋愛
悪役令嬢もので王子の立ち位置ってワンパターンだよなあ。ひねりを加えられないかな?とショートショートで書こうとしたら、短編に。他の人物目線でも投稿できたらいいかな。ハッピーエンド希望。 断罪の舞台に立った令嬢、王子とともにいる女。そんなよくありそうで、変な方向に行く話。 ※ 【完結済み】

【完結】三挺の蝋燭 婚約破棄された悪役令嬢の復讐とその代償

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁモノ】(HOTランキング 女性向け 39位 2023/4/27、ありがとうございました!)  私はソフィア・サザーランド公爵令嬢。  突然、ほとんど会ったことのない偏屈な祖母に会わなければならないことになった。なぜ偏屈かって? うちの祖母、なんと国王陛下の元婚約者だったんですって! ピンクブロンド嬢に国王陛下を盗られ婚約破棄されてから、すっかり性根が腐ってしまったらしいわ。だからうちの家族と縁を切ってたの。  私だって余計な面倒事は嫌だからこんな祖母に会うなんてまっぴらご免だったのだけれど、祖母が何やら厭らしい脅しを使ってくるから仕方なく会うことになった。  ……その祖母が私に託した物はなんと『呪いの蝋燭(ろうそく)』だった。さらには祖母の口から語られる、あり得ない王宮のどろどろ劇!  憤慨した私は王宮の膿を除くべく立ち上がることにした。ピンクブロンドもヤな奴だけど、もっとヤバい奴がいる! 王宮をひっくり返す断罪劇を企んじゃった私だけど、私には自信があった。だって私には祖母から託された『呪いの蝋燭(ろうそく)』があるもの──。 異世界恋愛、『ざまぁ』モノです!(笑) 短め連載(3万文字超)です(完結済み)。設定ゆるいです。 お気軽に読みに来ていただけたらありがたいです。(お手柔らかによろしくお願いいたします汗) 他サイト様にも掲載しております。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

婚約破棄させていただきますわ

佐崎咲
恋愛
巷では愚かな令息による婚約破棄が頻発しています。 その波が私のところにも押し寄せてきました。 ですが、婚約破棄したいのは私の方です。 学園の広場に呼び出されましたが、そうはいきませんことよ。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

【完結】婚約してから余命のことを知らされました

紫崎 藍華
恋愛
病気で余命1年程度と診断されたライナスは婚約者すらできないまま残された人生を過ごすことが耐えられなかった。 そこで自分の願いを叶えるべく、一人の令嬢に手紙を出した。 書かれたものは婚約の申し出。 自分の病気のことには一切触れていなかった。

こんな人とは頼まれても婚約したくありません!

Mayoi
恋愛
ダミアンからの辛辣な一言で始まった縁談は、いきなり終わりに向かって進み始めた。 最初から望んでいないような態度に無理に婚約する必要はないと考えたジュディスは狙い通りに破談となった。 しかし、どうしてか妹のユーニスがダミアンとの縁談を望んでしまった。 不幸な結末が予想できたが、それもユーニスの選んだこと。 ジュディスは妹の行く末を見守りつつ、自分の幸せを求めた。

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】小悪魔笑顔の令嬢は断罪した令息たちの奇妙な行動のわけを知りたい

宇水涼麻
恋愛
ポーリィナは卒業パーティーで断罪され王子との婚約を破棄された。 その翌日、王子と一緒になってポーリィナを断罪していた高位貴族の子息たちがポーリィナに面会を求める手紙が早馬にて届けられた。 あのようなことをして面会を求めてくるとは?? 断罪をした者たちと会いたくないけど、面会に来る理由が気になる。だって普通じゃありえない。 ポーリィナは興味に勝てず、彼らと会うことにしてみた。 一万文字程度の短め予定。編集改編手直しのため、連載にしました。 リクエストをいただき、男性視点も入れたので思いの外長くなりました。 毎日更新いたします。

処理中です...