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玉生ホームで朝食を

玉生ホームで朝食を 2

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 朝食はカレーうどんに昨日のご飯の残りで焼きお握りを付ける事に決まったが、「ジャージだからいいけど、カレーうどんは跳ねるからな」「やっぱりエプロン必要っすね」というかける翠星すいせいの会話に、「確かに」と玉生たまおも同意して頷いた。

「作業着と一緒に箪笥にあっただろう」
「あ!」

 そこでよみが、一度に家ごと大量の物を贈られたせいで頭がふわふわで記憶力も低下している玉生に、夕べ見つけたエプロンの事を思い出させた。
それで玉生が急いで胸当て付きの物を人数分選んで箪笥から引っ張り出して来た姿に、家にある物が自分の所有物になった自覚がまだ薄い彼でも、こうして自分の手で出し入れしているうちに自然とその扱いに慣れていくだろうと詠は密かに頷いたのだった。
そのエプロンを駆が一枚手に取って広げてみると、汚れに強いデニム生地の素材で作られ、バランスを考えて付けられただろういくつかのポケットがアクセントになったデザイン性にも優れた一品だった。

「これならちょっと工作する時とかにもいいな」
「作業着もあったよ。ツナギとかデニムのオーバーオールとか」
「制服着てる時とかに、ちょっと作業するならこっちの方が便利なんじゃね?」

 キッチン組は料理の時に使うべしとさっそく着用してみたが、なかなかにお洒落で全員が気に入った様だ。

「ああ。日尾野ひびのが出かける前に猫と戯れる時の、猫の毛防ぐのに良さげ」
「詠のながら読みで物を食べながら、服に食べこぼして汚すのもな。今日のカレーうどんなら必須だろ」

 相変わらずの微妙な会話にどうしてもハラハラしてしまう玉生をよそに、寿尚すなおの言葉に特に反論する事もなく「うむ」と頷いた詠は、「これで跳ねを気にしないで食べられる」といそいそとエプロンを着た。
幼少時は襟元から紙ナプキンでガードできていたソース類が、大人はナプキンを膝に置くのがマナーとなって不便に思っていたので、前掛け部分がちょうどいいと思った様だ。
自分のジャージを見下ろした寿尚も、「黒で汚れは分からなくても、どこが汚れているか分からないで匂いがするのってかえってイヤだな」と呟いてエプロンを着込む。
そして玉生たちがキッチンで朝食を作っている間、二人で先にテーブルに着いて昨日から家を見て回った感想などを話しながら待つのだった。

 
 朝食の準備は玉生が出汁でカレーをのばしているいるうちに、翠星が乾麺をゆでながら片栗粉を水溶きして「ちょっとずつ垂らすから、ゆっくり混ぜろ」ととろみ付けを手伝い、駆は先に三人がかりで握って準備しておいたお握りに醤油を塗りながら網焼きしている。
そうやって手が空いたら互いの作業を手伝うと、朝食の準備は手早くあっという間に終わった。
その時から醤油の焦げた匂いに誘われていた玉生は、お握りを食べた分うどんは半玉にしてもらったが、片栗粉でとろみがついたカレーうどんは美味しくて傍目にもよほど夢中で食べていたのか、「カレーの時は、またうどんで食べような」と駆に笑われてしまった。
出会い当初のむしろ欠食と言いたくなる様な小食さを知っているだけに、保護者目線で喜ばしい気持ちになったらしい。
それは当然、寿尚も一緒で「ちいたまもチャトからささみの缶フレークちょっとだけ分けて貰ってたし、成長とは感慨深いものだねえ」とこちらは詠に「親目線か」と半ば呆れた目で見られた。
ちなみに「チャト」とは温室で発見された茶虎猫の事で、「チャトラッシュ、愛称はチャト」と名付けたそうだ。
妙に貫禄があるので、チャトでは軽すぎると思ってのこだわりの名付けなのだそうだ。


 今はそんな雑談も挟みながら食後のまったりとした時間で、ガラスの皿に載せられているスモモとサクランボを紅茶と一緒にデザートにして摘まみながら、今日の予定を話している。
ちなみに、紅茶はティーポットが無事発見されたので、たまが張り切って淹れた。

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