世界はフィクションになりました。

世界はフィクションになりました

　通学のために玄関を一歩。
開かれた視界に違和感を感じて、その場で首を傾げる。

　その違和感の正体にはすぐ気づいた。

　父親が勝ち取った、駅から徒歩5分のこのマンション。
駅近くで防音がしっかりとしているのが最大の売りなのだ。
つまり通りに出たら、正直騒がしい。
特に平日のこの時間なら、電車と車と人が雑然と行き交っているはずで――




「……こういうの閑静って言うのかな？」

　そこには人っ子一人見当たらない、いつもと様子の違う通学路が存在していた。

　不吉な何かがあるわけではない。
むしろ何も無いのが不気味に感じる。

　気の進まない足取りで進む彼女の脳裏には、どうしてもとある死人的終末映画の有名なシーンが浮かんでしまう。

「物が散らかってたり車が乗り捨てられてたり、そんな異常とか無いし！」

　いわゆる「怖い考え」を慌てて否定し気を取り直した。

「口に出したらフラグ立っちゃうかもだし……え～と、電車が止まっちゃったとか、そういう――」

　そこでハッと気づいて、ストラップの先のスマホを引っ張り出す。
何かニュースやお知らせがネットに流れているかもしれない。
とりあえず駅名を検索しようと電源に指を掛けた途端。

　
　メールが届いたと通知音が流れたのだった。