ぼくは帰って来た男

東坂臨里

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ぼくは帰って来た男 6

たぶんきっとだいじょーぶ

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「ああ、あの後は自分の好きに時間も取れたしね。召喚と帰還の陣で移動の陣ができたから、君たちの持ち物から時間を逆算して、少し前に転移する様に組み替えたら……まあ少しの誤差はあったけど、おかげで戸籍も正当に貰えたしでね。結果オーライ?」

 勇者の予想以上にサインはサインだった。
しかし彼は峻烈で情け容赦無く見えて、自分の世界に関わって来ない限り平和主義であるというのが勇者の見立てである。
あくまで六歳児の自分の本体と、スペックには恵まれている筈なのにどうにも愉快な美玖みくにとっては、プラスの方が大きい相手だろう。
ゆうとしても美玖は少し危なっかしいので、頼りになる人が混ざってくれて助かるというのもプラス判定だ。
一方、美玖の方はクルミ時代の偏屈な友情関係が「怖いもの知らずの自分コワイ」という気持ちに転化され、それが苦手意識に繋がっているのだと思われる。
おまけにクルミの記憶が無ければ、単純に三角みすみサインというカッコイイお兄さんに憧れただろう事も、余計に「恐れ多い」気持ちとなって表れている様に勇者には見えるのだった。

 そんな感じでサインに研究成果を渡したのは、正解だったのか不覚だったのかと頭を抱えて唸っている美玖である。
何となく全てを察してしまい、チラリと運転席に目をやった勇は、バックミラーに映るサインの目が笑っているのを見た。

「んーと、ぼくは見守っているね。がんばって、ミクお姉ちゃん」

 その励ましの言葉で気を取り直したのか、「うん、もう今更だもんね。うん、お姉ちゃんがんばるよ」と彼女は顔を上げた。
そしてすっかり自分反省会も終わった様で、もう興味は勇の片手に載る重たげな水晶に向かっていて、改めてじっくり鑑定している。
実に打たれ強い彼女のバイタリティは、実生活(小学校)で目の届かないうちに、何かやらかしてくれちゃう予感が止まらないのだ。
 術の知識やそれを発動できるという事はある意味で爆弾を抱えている様なもので、それを知られる事は普通の人生を送るのに差し障る。
現実に“魔法使い”だと知られた場合、魔法が当たり前に存在していた向こうの世界よりも、煩わしい騒動になるのも容易に想像が付く。
それだけに少々迂闊な美玖にはサインの存在は、個人的にはやっぱり歓迎してもいいよね? と勇は思うのだった。
勇者も『異議無し。家族とか友人知人、何ならただの顔見知りとか脅されるネタも多いし、サインさんならそういうの上手いしな』と同意している。
 
 勇が『きょーりょくするね』の意味を込めてバックミラーに目配せすると、彼には珍しい位に毒の無い笑顔を返された。


 だからこれで美玖は、ちょっと位ドジっても、多分きっと大丈夫。


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