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第3章 「私が魔王国内で大暴れする話」

114(2,998歳)「開店! からのぉ早々売り切れ在庫大ピンチ!?」

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 ピエールさんから譲り受けた――といっても特大ダイヤは支払ったが――宝石商店は、【建築】スキルと【土魔法】を駆使して1階の店舗部分を3つに区切った。
 正面から見て左側が宝石屋さん、中央がTVゲーム屋さん、右側がITコンサル屋さんだ。
 人材は流動的に行くつもりだけど、一応、宝石屋のメイン店長がデボラさん、副店長がサロメさん――ふたり投入するのは、宝石生成作業を伴うから――で、TVゲーム屋の店長はクロエちゃん――養殖時に一番ゲームにハマってたからね――で、ITコンサル社の社長が私。
 ピエールさん以下従業員13名は、執務能力が最も高いピエールさんを私につけつつ、あとは適当に3等分する。

 その日は店の改装と、深夜のフェッテン様との逢瀬――ソフトタッチ縛り――で終了。
 商売は、翌日の朝から開始した。


    ◇  ◆  ◇  ◆


「いらっしゃいませ~! アリソン宝石店、本日開店で~す!」

 初日はお客様方にとって最も理解しやすいであろう宝石屋から始める。TVゲーム屋とITコンサル社の開店は明日以降とする。

 今日は私、デボラさん、サロメさん、クロエちゃんの総員で宝石店の対応をする。従業員13名の半数は休暇もしくは買い出しに出した。

「ここがウワサの……『あの』アリソン氏の宝石店かね?」

 さっそく高級そうな魔導車がやって来て、恰幅の良い男性――どこぞの貴族様だろう――が店内に入って来た。

「「「「いらっしゃいませ!」」」」

 美少女――一部美女――4人でもみ手で対応する。

「そうですここが『その』アリソンの宝石店! そして私が『その』アリソンでございます」

 魔王国では平民の振りをしているので、カーテシーではなく普通にお辞儀で礼をとる。

「その割に、肝心の宝石がひとつも置いていないようだが……?」

 そう、『宝石店』なのに、ここにはショーウィンドウもなければ展示された宝石のひとつもなく、ただ面会用のテーブルとソファーがいくつかあるばかり。

「まずはこちらへどうぞ」

 一番の年長さんであるデボラさんが、お貴族様をふっかふかのソファーへ案内する。
 お貴族さんはソファーのふっかふか具合に驚き、すぐに出てくるお茶の香り高さに驚いたご様子。
 そしてお貴族さん本人と、その後ろに立つ従者さんが、さりげなくぱぱっと【鑑定】で毒の有無をご確認されたご様子――魔王国ならではの光景。

「こちら、カタログでございます」

 私が1枚の紙をテーブルの上に広げる。

「まずこのリストの中から『素材』を選んで頂き、続いて『サイズ』と『カット方法』を選んで頂きます。『カット』方法はこちらのイラストをご参照ください。
 例えば『ダイヤモンド』の『ブリリアントカット』なら、【ダイヤモンド・ボール】! ブリリアントカット・バイ・【アイテムボックス】!!」

「「な、ななな……っ!?」」

 突如私の手の上に生成された大きなダイヤモンドに、『ななな』るお貴族さんと運転手兼従者さん。

「価格もこの表の通りでございます」

「……はっ!? あ、いやしかし、他の店に比べてずいぶんと安いのだな!」

「あはは、この通り我々4人とも自由に生み出せるものですから」

 金銀財宝の相場破壊工作が目的だからね。
 とはいえ困窮から自殺者なんて出ても寝覚めが悪いから、破壊加減が難しいのだけれど。

「そうだな、では素材はルビー、カットは――」


    ◇  ◆  ◇  ◆


 お昼になる頃には、【瞬間移動】付きの口コミによって、アリソン宝石店の前に行列ができ始めてしまった。
 これが王国なら、貴族家の馬車で中央広場が埋まっちゃうところなんだけど、身なりの良い人たちは大抵、自らかその従者が大容量【アイテムボックス】持ちで、自分たちが乗って来た車を収納しちゃうんだよね! なんというか、本当に恐ろしい国だよ魔王国。

 どうせTVゲーム無双が始まったら行列でごった返すだろうけど、開店初日から炎天下の中人を並ばせるのも外聞が悪い――と言いつつ並んでる人はみんな魔法や魔道具で涼んでるけど――ので、TVゲーム屋とITコンサル社、果ては2階の居住スペースまで開放してお茶とお菓子を提供し、お待ち頂く。

 デボラさん、サロメさん、クロエちゃんは今日だけで数回ずつMP切れを起こし、私からの【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】を受けることとなった。


    ◇  ◆  ◇  ◆


「新発売! まったく新しい体験をあなたに! 『ピコピコ』と『インベーダ○ゲーム』です!!」

 次の日、ついにお待ちかね、TVゲーム屋開店!!
 メイン店長はクロエちゃんに任せつつ、私も補佐に入る。
 宝石店の方はデボラさんとサロメさん、他従業員さんたちに任せる。

 開店当日の朝イチから長蛇の列ができてたよ!
 なんたって昨日、順番待ちしてたお客さんたちにお試しでプレイしてもらっていたんだもの。社交界のための話題に飢えたお貴族様ってのは基本、新しいものが大好きだ。目の色変えてプレイしてたね!
 それに、単にキラキラ光る宝石なんかより、プレイの快感を与えてくれるゲームの方に関心が移るってのは人のさがってもの! いやぁゲームプログラマ冥利に尽きるってもんさね!!

 え? 他人のふんどしで相撲取って嬉しいかって? 嬉しいに決まってんじゃないのさそんなもの!
 そりゃ私がアイデア段階から生み出したゲームじゃないよ? でも似たようなゲームならさんざん開発してきたよ。娯楽過多な前々世では鳴かず飛ばずだったけどさ。
 それが、ウン十年も昔のゲームでも目の色変えて遊んでくれるこの世界!

 無双せずして何が悪い!!

 なぁんて左うちわで商売してたら、

「アリソン様、ピコピコとソフトが売り切れました!」

 クロエちゃんから悲痛な報告が!

「うっそでしょ!? 千セット用意してたんだよ!?」

 恐る恐る店の外に出てみると、夕日に照らされた中央広場に果てしない行列が!

「ドラ○エ3発売日かよォ!」

「どうしたんだ、店長さん?」

 行列先頭のお客様が、血走った目で迫ってくる。

「早く『ピコピコ』を売ってくれ! こちとら3時間並んでんだぞ!?」

「ヒッ!」

 思わず悲鳴を上げつつ店内に引っ込み、

「どどどどうしましょう!?」

 泣きそうな顔ですがってくるクロエちゃんに対し、

「1分だけ明日発売の新作トークで誤魔化しといて! 【瞬間移動】!」


    ◇  ◆  ◇  ◆


「ディータ、助けてぇ~~~~ッ!!」

 アフレガルド王国ロンダキルア領城塞都市のじたくの書斎に転移すると、ディータが『やれやれ』と方をすくめ、

「やはりそうなりましたか。【アイテムボックス】――はい追加の千セット」

 どどんと目の前に在庫の山!!

「神様!!」

「期間限定時空神が何言ってんですか」

 さすディータ!
 ディータは私が困っていたら必ず助けてくれるドラ○もんキャラなのだ!
 あぁ……ディータの目論見通り、ディータなしでは生きられない体になっていく……。

 ってことで、その日は何とかかんとか乗り切った。





***********************************************
追記回数:26,042回  通算年数:2,998年  レベル:5,100

次回、アリソン・コンサルティング社爆誕!
紙とソロバンと【算術】スキル頼みの世界に、パソコンとワ○ドとエク○ルとマクロで戦いを仕掛けます。
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