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第3章 「私が魔王国内で大暴れする話」

102(2,974歳)「私を買うのはだぁれ?」

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 高級奴隷商での待遇は良かった。
 お風呂に入れさせてもらえて、個室が与えられて、出てくる料理も超美味しい!
 文句はなかった。ただひとつ――部屋がガラス張りで、入れ替わり立ち代わりやって来るお金持ちそうな人たちからの見世物になる点以外は。

 まぁ仕方ない。
 なんたって私は商品で、この部屋はショールームなわけだから。

 視線にはいろいろあった。
 ひとつ、食欲旺盛な私が奴隷商の出す食事だけでは足らず、【物理防護結界】の中でドラゴン――もちろん、そう広くない部屋に丸ごと出すわけにはいかないから【アイテムボックス】内であらかじめカットしたもの――をスパスパ解体しつつ、【テレキネシス】で塩を振って【ファイアウォール】で焼く様を見る、ギラついた視線。
 私を買ってその魔力をいろんなことに使いたいんだろうねぇ。

 ひとつ、自分で言うのもなんだけど、超絶美少女として成長しつつある私を劣情丸出しの目で見つめてくる視線。
 でも、私ゃ肉体労働を拒否できる高級奴隷だから、そういう『にくたぃろぅどぅ』の要求はのまないよ? フェッテン様に殺されるっての――相手の魔族が。

 フェッテン様ったら、肉体年齢は青春ど真ん中の20歳で、私が傷心のあまりうっかりキス解禁しちゃったものだから、夜添い寝してもらってる時なんかはもう相当に限界っぽい。私の【魔力感知】スキルが、私を抱きしめるフェッテン様が無詠唱で【リラクゼーション】しまくってるのをバリバリに感知してるんだよね……。
 まぁでも結婚までは同衾禁止ってのは陛下から言われてることだから、何とかがんばってほしい。
 可愛そうだと思うなら添い寝はやめろって? そんなことになったらフェッテン様とチビの同時吸いをキメれなくなった私のストレスがマッハだからムリムリムリムリカタツムリ!

「息子の話し相手に是非とも欲しいのだが、値段は?」

 ほら今も、客寄せパンダよろしくベッドで寝っ転がってる私を指差しつつ、お金持ちっぽい男性がウチの奴隷商さん相手に商談してる。
 男性の隣には奥さんと子供――未選別の男の子? なるほどねぇ、お子さんの話し相手兼将来のお妾さんってか。

 お? お子さんが顔を真っ赤にして私を見てる。ウフフ、私、高いわよ?

「【瞬間移動】! こんにちは。ハイ、これ蜂蜜キャンディー」

 とりま少年の前に転移して、紙袋に包まれたキャンディーを3つほど少年の手に握らせる。

「「「!?」」」

 ビビるお金持ちっぽい一家と、

「ちょちょちょ、アリソンさん! 勝手に出て来ちゃだめでしょう!」

 嗜める奴隷商人さん。
 私がたびたびフリーなムーブをかますものだから、もうすっかり慣れっこになってる。

「な、ななな……ってぇこの値段はいくらなんでも!!」

 男性がビビりつつも、奴隷商さんの出した値段を見て目を剥いた。

「いやぁ……実はこの都一番の魔力持ちである、『あの方』からご予約を頂いておりまして。それ以上のお代を頂けない限りは――」

 そう、どうやら私、この城塞都市で一番魔力の高い人に、ツバ付けられてるらしいんだよね……。


    ◇  ◆  ◇  ◆


「ふむ……こいつが、その『アリソン』か」

 数日後、果たして『そいつ』がやって来た。
 見たところ、いかにも羽振りがよさそうな商人風の男性。

 商人風――といったけど、服装はなんと、スーツにネクタイ!
 ま、まぁ今さら驚くことでもない。国境警備隊や野戦服っぽかったし、街行く人の服装も、近現代の日本や西欧に凄く近かった。まぁ事前にアデスさんから聞いてたけど、いやぁ進んでんなぁ。

 私を見物しに来たお客の中には、膝丈ミニスカートの女性もたくさんいたよ!

 さて話を目の前の『そいつ』に戻しまして、とりま【ロード】前提で【セーブ】ポイントを置き、【鑑定】!!

「ぬおっ!? か、【鑑定】された!?」

 ビビる男性、からのぉ【ふっかつのじゅもん・ロード】!


    ◇  ◆  ◇  ◆


 大宝石商ビジューさん231歳。231と言いつつ外見は中年って感じ。何というか、高慢ちきが服着て歩いてるってくらいに偉そうな感じが口調や態度の端々に現れている人。

 ここで突然のアデスさん魔王国知識講座その4『寿命』。魔族は基本、長寿だ。数百歳とか生きるらしい。で、MPが多い人ほど歳をとっても若々しく、長寿であるらしい。
 ん? やっぱりMPイコール生命? ホーリィさんから魂操作系魔法の数々を学んだ日々を思い出すんだよねぇ。

 で、肝心のMP――魔力だけど、ま、大したことなかったよ。

 【MP】 1,091,013/1,092,413

 だった。ちなみに養殖前の四天王(魔力的な意味で)最弱アデスさんのMPが1万強、あのスパイ女の四天王ベルゼネ・ド・ラ・ベルゼビュートのMPが2,000万弱。で、私が10億。
 我ながらインフレパネェな!?

 まぁ『魔法を極めた魔族やハイエルフ』のMPが10万くらいって話だから、その10倍あるなら十分に『この都一番の魔力持ち』なのかもね。
 それを思うと、スパイ女の2,000万ってのはいかに異常な高さなのか分かるってもんだ。まぁつまり、少なくとも魔王国で魔力量4位に入ってるってことだな。

 で、そのビジューさんがガラス越しに私をじろじろと見て、

「お前、時間停止機能付き【アイテムボックス】持ちらしいが……魔力は?」

「10億です」

 聞かれたので答えてみた。

「「10億ぅ!?」」

 ビビるビジューさんと奴隷商さんだが、

「あっはっはっ、奴隷商よ、こいつ、頭は大丈夫か?」

 そりゃ信じられんわな。

「は、はぁ……普段の受け答えや生活態度は普通ですし、魔法の精度は極めて素晴らしいものです」

「まぁ荷運びとしてだけでも、十分に価値はあるな。約束通り買い取るとしよう」

「ありがとうございます!」

 ってなことで、私はこの人――大宝石商ビジューの所有物となった。

 ま、この心と体はフェッテン様に捧げると決めてるけどね!(唐突なノロケ)





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追記回数:26,042回  通算年数:2,974年  レベル:5,100

次回、アリス、首輪をはめられる。
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