「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
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第2章 「私が領主になって無双する話」
78(寸話) 「新領主サマは頭がおかしい」
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(とある街の少年)
「はーい次の人ー」
ひえっ、ついに俺の番が回ってきた。
なんでも『ぱわーレベリング』とかいうらしい。周りでは、ドラゴンやらグリフォンやらオルトロスなんていう伝説の魔獣にとどめを刺していきなりレベル100になり、のたうち回る人がたくさん転がってる……。
「はい、この剣持ってー」
なんか薄っすら輝く物凄い業物のような剣を掴まされる。とたん、なんだかこの剣の振り方が分かったような気がした……気の所為か?
で、でもいくらなんでも目の前の地竜にコレをぶっ刺せとか無茶言わないでくれよ領主サマ! こ、こここ怖いに決まってる!
「ほらほら、こうやって握って」
躊躇してると、ふわりと宙に浮かんだ領主サマが俺の両手を小さな手で包み込み――全然包み込めてないけど――容赦なく剣先を地竜の脳天に乗せてくる。
領主様はまだまだ幼いけど、将来絶対美人になりそうなお顔立ちをしている。至近距離で見つめられ、思わずドキドキしてしまう。
「はい、ぶすりー」
――!? とたん、意味不明なほどの吐き気!!
「ぅぉぇえええええええええええええええええええ!?」
「あはは、少年よ強くなれ!」
ひ、人がゲロ吐いてるのを見てケラケラ笑ってる……正直言って怖い。
でも、俺みたいなただの平民を安全にレベル100まで上げてくださるなんて、まるで女神様のように慈悲深いお方だ! やることなすこと常識外れでちょっと怖いけど……。
「【リラクゼーション】! 良くできました。じゃあこれ着替えセットと食料詰め合わせ」
木箱をずずいと渡される。
し、しかし5歳児から『良くできました』とはね……。けどなぁんか不思議な包容力があるんだよなぁ、って俺はいったい何を考えてるんだ!?
「もう行っていいですよー」
あ、とにかくお礼だけは言わないと!
「あ、あのっ! ありがとうございました! 領主サマから頂いたこの力で俺、冒険者としてこれからもやっていけそうです!」
「あはは何より。あ、得物はなんです?」
「か、片手剣です」
「じゃあちょっといい剣をプレゼントしましょう。エクスカリバーはさすがに差し上げられませんので……そりゃっ」
言うや否や、領主サマの手のひらからずぞぞぞぞぞっと宝石のような光り輝く棒が出てきて、それが整形され、あっという間にひと振りの剣になる。
「な、ななな……」
「ダイヤモンドソードです。切れ味鋭いから気をつけて扱ってくださいね」
言いつつ鞘もずぞぞぞぞっと作り、鞘に納めた剣をずずいと渡してくる領主サマ。
『ぱわーレベリング』といいこの剣といい、いったいぜんたいどれだけ人を驚かせれば気が済むのだろう……。
◇ ◆ ◇ ◆
(とある村の農民)
「【グロウ】!」
目の前の畑へ作物強制育成魔法をかける。
まさかただの農民に過ぎないオラが、上級混合魔法で魔力消費の大きい【グロウ】が使えるようになる日が来るとは思いもしなかった。
それもこれも全部、村の人間全員をレベル100にしてくださった新領主サマ――アリス様のおかげだぁ。
アリス様はまるで女神様のように慈悲深いお方。
なんだども……
「【グロウ】! ……はぁはぁ、アリス様、もう魔力が――」
「【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】! まだまだいけます! 魔力を増やすにはひたすら魔法を使うのみ!」
「うっぷ……」
アリス様の【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】は容赦なく魔力を流し込んでくるので結構酔う。
アリス様は慈悲深いけど、反面、ご自分がおできになるのと同じレベルのものを村人たちにも求めてくるのは、ちょっとしんどいんだぁな……。
隣ではアリス様がオラに魔力を流し込みつつ、謎の舞を踊りながらご自身の目の前の畑をモリモリ【グロウ】で育ててる。
なまじっか自分で【グロウ】が使えるようになったからよく分かるけど、アリス様はバケモンだべさ。
◇ ◆ ◇ ◆
(とある街の宿の女将)
宿の前で掃除をしてると、馬車の音が聞こえてきた。なのに馬の足音がない。こりゃ領主サマかな?
何かと常識外れで話題の尽きない新領主サマだけど、最近は人攫いにハマってるらしい。領主サマが、人を、攫うこと、にハマってるんだよ。
あ、ほら来た!
街の入り口の方から、馬車のいない馬車――『車』って言うそうだ――がやってきた。で、なぜか馬車の屋根の上で仁王立ちしている5歳の領主サマ。さすがに男装だね。
この街の仕立て屋にも飾られている、領主サマが考案したっていう頭のおかしな丈のスカートなんかはいてた日にゃあ、馬車の屋根から引きずり下ろさなきゃならないところだった。領主サマにも、最低限の常識――恥じらい?――はあるようだね。
『車』はアタシの目の前を通り過ぎ、【瞬間移動】でいきなり向きを変えて小通りに入っていく。この街にも【瞬間移動】持ちは何人かいるけど、車の向きを変えるために【瞬間移動】なんて魔力消費の重い魔法を使うのは、王国広しといっても領主サマだけだろう。
小さな人攫い様のお仕事ぶりが気になるので、追いかけることにした。どうせ今は客がいないからね!
小通りに入ると、領主サマが馬車から飛び降りたところだった。そのまま、成人女性でも入るのをためらうような裏路地にずんずん踏み込んでいく。
「ちょちょちょ領主サマ!? 攫われでもしたら――」
慌てて裏路地を覗き込むと、幸いにして浮浪児がひとり座り込んでるだけだった。 はーっ! 肝が冷える。いくら魔法がお得意だからって、まだ5歳児だろう? まぁウチを利用してくれる冒険者たちからは、『新領主の【竜殺し】は絶対に怒らせちゃいけねぇ……』みたいに恐れられてたけどさ。
で、当の領主サマはというと、浮浪児の前に立ち、
「【パーフェクト・ヒール】!」
いきなりの聖級治癒魔法!
続いて虚空から湯気を立てる串焼きと白パンを取り出し、呆然とした様子の浮浪児の口に突っ込んでる。領主サマは基本とってもお優しいお方なんだけど、なんというか容赦がないんだよね。こっちが怒涛の展開に驚いてるってのに、落ち着く間もなくどんどん話を進めちまうんだ。
あぁほら今も、夢中になって食う浮浪児なんざお構いなしに暖かそうなシャワーを浴びせかけ、乾かし、毛布でぐるぐる巻きにしてる……最近ちょっと肌寒くなってきたもんねぇ。で、浮浪児の首根っこをひょいっと掴んで抱え上げ、路地から出てきた。
そりゃアタシらをレベル100にしてくれるくらいだ。領主サマご本人だって最低でも100以上だろう……レベル100の膂力ってのは物凄いからねぇ。
「お姉さん、こんな裏路地に入ったら危ないですよ?」
道を塞ぐ形になっちまってたアタシに向かって、5歳の領主サマが言ってくる。
「領主サマだって危ないでしょう?」
言っても無駄だろうけど、道を空けつつ諫めるだけ諫めてみた。
「あはは、ご心配どうも」
あーこりゃ聞き流されたね。
で、領主サマは馬車の中に浮浪児を放り込みつつ、レベル100以上の脚力で馬車の屋根に飛び乗り、【風魔法】か【テレキネシス】か何かの魔法で押される車は、次の裏路地へ進んでいった。
攫われた子はどうなるのかって?
まぁ、今の一部始終を見た感じ、けっして不幸にはならないだろうさ。
◇ ◆ ◇ ◆
(とある村の養蜂家)
「で、でででデスキラービー・クイーンですって!?」
領主サマが【アイテムボックス】からずるりと取り出したのは、全長2メートルの女王蜂。鉄のようなもので全身を拘束されているけど、その目は殺気に満ち満ちているように見える。
「ほらほら早く【従魔】して」
「い、いやいやいやいや1匹でも街に放たれたら街が壊滅するような魔物ですよねコレ!?」
「慣れれば可愛いもんですよ」
「――…」
言葉も出ない。
こんなバケモノに蜂蜜を作らせようっていうんだから、目の前にいるこの若干5歳の領主サマは絶対頭がおかしい。
◇ ◆ ◇ ◆
(とあるベテラン冒険者)
「今日は魔の森で狩りの練習しますよー!!」
「「「「「おぉぉぉぉおおおおおッ!!」」」」」
領主サマが魔の森で『狩りの練習会』を開いた。レベル100の新人冒険者――何かもうわけの分からん字面だが――向けの会なんだが、領主サマの戦い振りが気になる俺も、参加することにした。
俺だってBランク冒険者として長いことやってきたんだ。それなりに矜持もあった。だってのに……。
「前方、100メートル先よりゴブリン3! 見本見せますねー」
だからそもそもなんで、こんな鬱蒼とした森の中で100メートル先の藪の中が見えるんだよ!
領主サマに聞いたら、『【探査】です』って言うしよう。上級【時空魔法】だっての!
そんなの無理ですって言ったら今度は『【闘気】でも同じことできますよ』ときやがった。どうしていちいち上級や聖級前提なんだよ!?
俺ぁ魔法は苦手だからなぁ……【片手剣術】はLV5だが、がんばって6狙ってみるか。
で、肝心の戦い振りなんだけど、まず、姿が見えねぇ。
虚空から光り輝く剣を抜いたかと思うと、フッと姿が消え、ちょうど藪から出てきたゴブリン3体の首がゴロリと落ち、気づいたらさっきと同じ場所に立ってる。すでに剣は手にしていない。
「こんな感じです」
「「「「「な、ななな……」」」」」
「いやいやいやいや領主サマ、それじゃさすがに手本になりやせんぜ!」
「うーん……そうかなぁ? でもお父様も最初っからこんなモンだったし……」
ダメだこりゃ……。
◇ ◆ ◇ ◆
(城塞都市南の漁村の村長)
「ってことで、今日は大海獣どもを狩りまくりますよ!!」
「「「「「ぅぉぉおおおおおお!!」」」」」
血気盛んな海の男どもが雄叫びを上げる。
嬢ちゃん――じゃなかったアリス様が初めてこの村に現れ、上級治癒魔法を披露したり、魔法で塩を作っちまった時にもさんざん驚かされたが、次に会った時には領主様になってて、『村民全員レベル100にします!』って言った時にゃあ気ぃ失うかと思ったもんよ!
で、今、野郎どもはアリス様と一緒になって海上を【飛翔】で飛び回り、まるで小魚を狙うカワセミのように、アリス様が下賜くださったダイヤモンド製の銛で海中の大海蛇の脳天をぶっ刺して回ってる。
3隻の船を使い、十数人体制で大海蛇1匹に挑んでたあの頃を思うと、隔世の感があるな!
で、こんな凄まじい光景を作り上げちまった当のアリス様はというと、巨大なクラーケンを魔法でスパスパ解体して、【ドライ】と【グロウ】の亜種魔法【熟成】を駆使してスルメを作って食ってる。
「うんめぇええ~~~~ッ!!」
そりゃ良かったな、嬢ちゃ――アリス様。
************************
いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。m(_ _)m
「異世界無限レベリング」ですが、タイトルを「~何百年何千年とレベリングしつつ、テレビゲームを作って娯楽無双を目指します~」に変えました。
「レベリング」だけでなく「レベル上げ」も入れた方が、ワードとして引っ掛かりやすそうでしたので……。
あと、次話に現れるダークホースのおかげで、異世界にテレビゲームを現出させる目途がつきましたので。
そして、いつもお読みくださっておられる皆々様、大変不躾なお願いではございますが、ブックマーク登録と評価を付けてくだされば、ものすごくものすごーっく励みになりますので、何卒よろしくお願い致します(アリス、ママンに1年間かけて仕込まれた最敬礼カーテシー)。
次回、頭のおかしい新領主サマをして心胆寒からしめる、モノホンのヤバいやつ、登場。
「はーい次の人ー」
ひえっ、ついに俺の番が回ってきた。
なんでも『ぱわーレベリング』とかいうらしい。周りでは、ドラゴンやらグリフォンやらオルトロスなんていう伝説の魔獣にとどめを刺していきなりレベル100になり、のたうち回る人がたくさん転がってる……。
「はい、この剣持ってー」
なんか薄っすら輝く物凄い業物のような剣を掴まされる。とたん、なんだかこの剣の振り方が分かったような気がした……気の所為か?
で、でもいくらなんでも目の前の地竜にコレをぶっ刺せとか無茶言わないでくれよ領主サマ! こ、こここ怖いに決まってる!
「ほらほら、こうやって握って」
躊躇してると、ふわりと宙に浮かんだ領主サマが俺の両手を小さな手で包み込み――全然包み込めてないけど――容赦なく剣先を地竜の脳天に乗せてくる。
領主様はまだまだ幼いけど、将来絶対美人になりそうなお顔立ちをしている。至近距離で見つめられ、思わずドキドキしてしまう。
「はい、ぶすりー」
――!? とたん、意味不明なほどの吐き気!!
「ぅぉぇえええええええええええええええええええ!?」
「あはは、少年よ強くなれ!」
ひ、人がゲロ吐いてるのを見てケラケラ笑ってる……正直言って怖い。
でも、俺みたいなただの平民を安全にレベル100まで上げてくださるなんて、まるで女神様のように慈悲深いお方だ! やることなすこと常識外れでちょっと怖いけど……。
「【リラクゼーション】! 良くできました。じゃあこれ着替えセットと食料詰め合わせ」
木箱をずずいと渡される。
し、しかし5歳児から『良くできました』とはね……。けどなぁんか不思議な包容力があるんだよなぁ、って俺はいったい何を考えてるんだ!?
「もう行っていいですよー」
あ、とにかくお礼だけは言わないと!
「あ、あのっ! ありがとうございました! 領主サマから頂いたこの力で俺、冒険者としてこれからもやっていけそうです!」
「あはは何より。あ、得物はなんです?」
「か、片手剣です」
「じゃあちょっといい剣をプレゼントしましょう。エクスカリバーはさすがに差し上げられませんので……そりゃっ」
言うや否や、領主サマの手のひらからずぞぞぞぞぞっと宝石のような光り輝く棒が出てきて、それが整形され、あっという間にひと振りの剣になる。
「な、ななな……」
「ダイヤモンドソードです。切れ味鋭いから気をつけて扱ってくださいね」
言いつつ鞘もずぞぞぞぞっと作り、鞘に納めた剣をずずいと渡してくる領主サマ。
『ぱわーレベリング』といいこの剣といい、いったいぜんたいどれだけ人を驚かせれば気が済むのだろう……。
◇ ◆ ◇ ◆
(とある村の農民)
「【グロウ】!」
目の前の畑へ作物強制育成魔法をかける。
まさかただの農民に過ぎないオラが、上級混合魔法で魔力消費の大きい【グロウ】が使えるようになる日が来るとは思いもしなかった。
それもこれも全部、村の人間全員をレベル100にしてくださった新領主サマ――アリス様のおかげだぁ。
アリス様はまるで女神様のように慈悲深いお方。
なんだども……
「【グロウ】! ……はぁはぁ、アリス様、もう魔力が――」
「【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】! まだまだいけます! 魔力を増やすにはひたすら魔法を使うのみ!」
「うっぷ……」
アリス様の【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】は容赦なく魔力を流し込んでくるので結構酔う。
アリス様は慈悲深いけど、反面、ご自分がおできになるのと同じレベルのものを村人たちにも求めてくるのは、ちょっとしんどいんだぁな……。
隣ではアリス様がオラに魔力を流し込みつつ、謎の舞を踊りながらご自身の目の前の畑をモリモリ【グロウ】で育ててる。
なまじっか自分で【グロウ】が使えるようになったからよく分かるけど、アリス様はバケモンだべさ。
◇ ◆ ◇ ◆
(とある街の宿の女将)
宿の前で掃除をしてると、馬車の音が聞こえてきた。なのに馬の足音がない。こりゃ領主サマかな?
何かと常識外れで話題の尽きない新領主サマだけど、最近は人攫いにハマってるらしい。領主サマが、人を、攫うこと、にハマってるんだよ。
あ、ほら来た!
街の入り口の方から、馬車のいない馬車――『車』って言うそうだ――がやってきた。で、なぜか馬車の屋根の上で仁王立ちしている5歳の領主サマ。さすがに男装だね。
この街の仕立て屋にも飾られている、領主サマが考案したっていう頭のおかしな丈のスカートなんかはいてた日にゃあ、馬車の屋根から引きずり下ろさなきゃならないところだった。領主サマにも、最低限の常識――恥じらい?――はあるようだね。
『車』はアタシの目の前を通り過ぎ、【瞬間移動】でいきなり向きを変えて小通りに入っていく。この街にも【瞬間移動】持ちは何人かいるけど、車の向きを変えるために【瞬間移動】なんて魔力消費の重い魔法を使うのは、王国広しといっても領主サマだけだろう。
小さな人攫い様のお仕事ぶりが気になるので、追いかけることにした。どうせ今は客がいないからね!
小通りに入ると、領主サマが馬車から飛び降りたところだった。そのまま、成人女性でも入るのをためらうような裏路地にずんずん踏み込んでいく。
「ちょちょちょ領主サマ!? 攫われでもしたら――」
慌てて裏路地を覗き込むと、幸いにして浮浪児がひとり座り込んでるだけだった。 はーっ! 肝が冷える。いくら魔法がお得意だからって、まだ5歳児だろう? まぁウチを利用してくれる冒険者たちからは、『新領主の【竜殺し】は絶対に怒らせちゃいけねぇ……』みたいに恐れられてたけどさ。
で、当の領主サマはというと、浮浪児の前に立ち、
「【パーフェクト・ヒール】!」
いきなりの聖級治癒魔法!
続いて虚空から湯気を立てる串焼きと白パンを取り出し、呆然とした様子の浮浪児の口に突っ込んでる。領主サマは基本とってもお優しいお方なんだけど、なんというか容赦がないんだよね。こっちが怒涛の展開に驚いてるってのに、落ち着く間もなくどんどん話を進めちまうんだ。
あぁほら今も、夢中になって食う浮浪児なんざお構いなしに暖かそうなシャワーを浴びせかけ、乾かし、毛布でぐるぐる巻きにしてる……最近ちょっと肌寒くなってきたもんねぇ。で、浮浪児の首根っこをひょいっと掴んで抱え上げ、路地から出てきた。
そりゃアタシらをレベル100にしてくれるくらいだ。領主サマご本人だって最低でも100以上だろう……レベル100の膂力ってのは物凄いからねぇ。
「お姉さん、こんな裏路地に入ったら危ないですよ?」
道を塞ぐ形になっちまってたアタシに向かって、5歳の領主サマが言ってくる。
「領主サマだって危ないでしょう?」
言っても無駄だろうけど、道を空けつつ諫めるだけ諫めてみた。
「あはは、ご心配どうも」
あーこりゃ聞き流されたね。
で、領主サマは馬車の中に浮浪児を放り込みつつ、レベル100以上の脚力で馬車の屋根に飛び乗り、【風魔法】か【テレキネシス】か何かの魔法で押される車は、次の裏路地へ進んでいった。
攫われた子はどうなるのかって?
まぁ、今の一部始終を見た感じ、けっして不幸にはならないだろうさ。
◇ ◆ ◇ ◆
(とある村の養蜂家)
「で、でででデスキラービー・クイーンですって!?」
領主サマが【アイテムボックス】からずるりと取り出したのは、全長2メートルの女王蜂。鉄のようなもので全身を拘束されているけど、その目は殺気に満ち満ちているように見える。
「ほらほら早く【従魔】して」
「い、いやいやいやいや1匹でも街に放たれたら街が壊滅するような魔物ですよねコレ!?」
「慣れれば可愛いもんですよ」
「――…」
言葉も出ない。
こんなバケモノに蜂蜜を作らせようっていうんだから、目の前にいるこの若干5歳の領主サマは絶対頭がおかしい。
◇ ◆ ◇ ◆
(とあるベテラン冒険者)
「今日は魔の森で狩りの練習しますよー!!」
「「「「「おぉぉぉぉおおおおおッ!!」」」」」
領主サマが魔の森で『狩りの練習会』を開いた。レベル100の新人冒険者――何かもうわけの分からん字面だが――向けの会なんだが、領主サマの戦い振りが気になる俺も、参加することにした。
俺だってBランク冒険者として長いことやってきたんだ。それなりに矜持もあった。だってのに……。
「前方、100メートル先よりゴブリン3! 見本見せますねー」
だからそもそもなんで、こんな鬱蒼とした森の中で100メートル先の藪の中が見えるんだよ!
領主サマに聞いたら、『【探査】です』って言うしよう。上級【時空魔法】だっての!
そんなの無理ですって言ったら今度は『【闘気】でも同じことできますよ』ときやがった。どうしていちいち上級や聖級前提なんだよ!?
俺ぁ魔法は苦手だからなぁ……【片手剣術】はLV5だが、がんばって6狙ってみるか。
で、肝心の戦い振りなんだけど、まず、姿が見えねぇ。
虚空から光り輝く剣を抜いたかと思うと、フッと姿が消え、ちょうど藪から出てきたゴブリン3体の首がゴロリと落ち、気づいたらさっきと同じ場所に立ってる。すでに剣は手にしていない。
「こんな感じです」
「「「「「な、ななな……」」」」」
「いやいやいやいや領主サマ、それじゃさすがに手本になりやせんぜ!」
「うーん……そうかなぁ? でもお父様も最初っからこんなモンだったし……」
ダメだこりゃ……。
◇ ◆ ◇ ◆
(城塞都市南の漁村の村長)
「ってことで、今日は大海獣どもを狩りまくりますよ!!」
「「「「「ぅぉぉおおおおおお!!」」」」」
血気盛んな海の男どもが雄叫びを上げる。
嬢ちゃん――じゃなかったアリス様が初めてこの村に現れ、上級治癒魔法を披露したり、魔法で塩を作っちまった時にもさんざん驚かされたが、次に会った時には領主様になってて、『村民全員レベル100にします!』って言った時にゃあ気ぃ失うかと思ったもんよ!
で、今、野郎どもはアリス様と一緒になって海上を【飛翔】で飛び回り、まるで小魚を狙うカワセミのように、アリス様が下賜くださったダイヤモンド製の銛で海中の大海蛇の脳天をぶっ刺して回ってる。
3隻の船を使い、十数人体制で大海蛇1匹に挑んでたあの頃を思うと、隔世の感があるな!
で、こんな凄まじい光景を作り上げちまった当のアリス様はというと、巨大なクラーケンを魔法でスパスパ解体して、【ドライ】と【グロウ】の亜種魔法【熟成】を駆使してスルメを作って食ってる。
「うんめぇええ~~~~ッ!!」
そりゃ良かったな、嬢ちゃ――アリス様。
************************
いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。m(_ _)m
「異世界無限レベリング」ですが、タイトルを「~何百年何千年とレベリングしつつ、テレビゲームを作って娯楽無双を目指します~」に変えました。
「レベリング」だけでなく「レベル上げ」も入れた方が、ワードとして引っ掛かりやすそうでしたので……。
あと、次話に現れるダークホースのおかげで、異世界にテレビゲームを現出させる目途がつきましたので。
そして、いつもお読みくださっておられる皆々様、大変不躾なお願いではございますが、ブックマーク登録と評価を付けてくだされば、ものすごくものすごーっく励みになりますので、何卒よろしくお願い致します(アリス、ママンに1年間かけて仕込まれた最敬礼カーテシー)。
次回、頭のおかしい新領主サマをして心胆寒からしめる、モノホンのヤバいやつ、登場。
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しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
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チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
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