「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
文字の大きさ
大中小
55 / 143
第1章 「私が初めて殺されるまでの話」
53(414歳)「聖女様といっしょ。からの女神様といっしょ」
しおりを挟む
というわけで、パパンとママンと一緒にみたび略式謁見室にやって来た。
今日はなんと、陛下までもが下座側のソファーに座っていた。
メンツは陛下、フェッテン殿下、ノティアさん、リスちゃん、パパン、ママンと私。
陛下からは、『聖女様はとても気さくな方だから、挨拶は適当でよいぞ』とのご指示が。
……がちゃ
言われつつも礼を取らないわけにはいかないので、私たち一家は急いで立ち上がる。ノティアさんとリスちゃんも立つ模様。
「座んな。堅っ苦しい挨拶なんざごめんなんでね」
宰相様に案内されて入ってきた聖女様は、20台後半~30手前って感じのグラマラスなチャンネーさんだった! 僧侶っぽいローブの上からでも分かるほど、胸がデカい。
聖女様は上座側のソファにどかっと座り、
「見知った顔は――…あぁ坊や、また一段と歳を取ったねぇ」
坊やだからさ!
「10年ですからなぁ」
答えたのは陛下。って陛下を坊や呼び!?
あぁ……10年ごとに会ってるとすれば、そうなる、のか?
「隣のガキんちょは?」
「第二王子のフェッテンです」
「あぁ! あん時の赤ん坊! んじゃ第一王子は?」
「あやつは……聖女様のお顔を拝見して、泣き出してしまいましたからな。本日お見せしても、ご気分を害されるかと思いまして」
「気にしやしないけどねぇ。……で、そっちの見知らぬ人たちは?」
「勇者です」
私を示しながら、陛下。
「!?」
ぎょっとする聖女様。
「そして、勇者の両親と、この国の武力と魔力を預かる者各1名……このふたりは勇者の護衛兼お目付け役ですな。勇者は先日冒険者登録を済ませたばかりで、【瞬間移動】ポイントを作るための旅を希望しています。もしよければ、聖女殿もご一緒して頂ければと」
「いつまで?」
「最後まで」
「ってことは……」
「はい。7年後に魔王が復活するとのお告げを、勇者が1歳の時に受けたとのことです」
「……………………ふぅ、よし。小さな勇者様、アンタ名前は?」
「は、はい!」
慌ててカーテシー。陛下が下に付くくらいなので、最敬礼バージョンだ。
「アリス・フォン・ロンダキルアと申します」
「ロンダキルア……ああ! あのノロマの末裔かい! あいつは図体だけはデカかったからねぇ、盾職としてさんざお世話になったさね!」
「は、はぁ……」
よく分かんないけど、初代ロンダキルアさんは勇者様のパーティーメンバーとして果敢に戦ったっぽい。
隣のパパンから、嬉しそうな気配を感じる。常時軽くまとった【闘気】が、そういう情報を伝えてくるんだよね。
「あのっ、私のお父様とお母様も、とっても強いんですよ!」
思わず、わざわざそんなことを言ってしまった。
「ほぅ……? アンタ、アリスちゃんの父親かい? レベルは?」
「さ、300です」
ビビりながら答えるパパンと、
「!? !? !?」
マジビビりする聖女様。
「いや、これは失礼した。ぞんざいな態度だったのを謝るよ」
居住まいを正す聖女様。
「い、いえ……伝説の聖女様にそんなことを仰って頂くなど、恐れ多いことです」
恐縮しきりなパパン。
「奥さんの方は?」
「200です」
「ははっ、大したもんだ! 肝心の勇者様、アンタのレベルは?」
「ろ、600です」
「!?」
再びマジビビりの聖女様。
「……ちょっと、アリスちゃんとふたりだけで話させてもらえないかい?」
◇ ◆ ◇ ◆
ってことで、謁見室にふたりきり。
「しっかし……当代の勇者様は随分可愛らしいじゃないのさ」
「は、はぁ……」
「さっそくだけど、ゼニス様から魔王封印じゃなく、『討伐』を命じられたって?」
「は、はい……がんばろうと思います」
「そのレベルは、どうやって鍛えたんだい? あんだけ鍛えてた勇者だって500ちょいだったってのに」
「は、はい。実は……」
◇ ◆ ◇ ◆
「【1日が100年になる部屋】ねぇ……お前さん、空間魔法のレベルは?」
「じゅ、10です」
「…………………………なるほど」
聖女様、天井を仰ぎ、
「女神様、ついに『あの手』を使ったってわけだ」
お、おおぉ……もしかしてわけ知り?
「……あ、あの、【時空魔法】的な話は、できればその……」
「あぁ、黙っておくよ」
「ありがとうございます……」
「悪いけど、ステータスを全て隠さず見せてもらえるね?」
「はいぃ……」
◇ ◆ ◇ ◆
「なんていうか……【勇者】の皮かぶった【賢者】だねぇアンタ!」
全部見せたし話したよ。私が転生者であるところから、【ふっかつのじゅもん】でMP養殖したところまで全部。聖女様は、先代勇者様が転生者であることもご存じだったよ。
絶対に他言しないでくれって頼んだら、『女神様と先代勇者の名に誓って言わないよ!』って言ってくれたので安心した。
やっぱりパパンとママン……特にお腹を痛めたママンには、言いたくないんだよ……。
「で、この人生は何度目なんだい?」
「い、一応、一度目のつもりです。ただ、生まれてすぐにロードを繰返しまくって魔力を育てたので、何千回目かは正直覚えてません……」
【おもいだす】スキルを使って精査すれば出てくるだろうけど、意味ある情報とは思わないので。
「で、10歳で洗礼を受けるまでは、【瞬間移動】ポイント作りをしながら冒険者稼業ってわけか。まずはその【1日が100年になる部屋】に入ってみたいね!
アタイもレベルは300しかないんだ。それで当時、死ぬ思いをして――というか仲間の大半が死んで、それでやっと魔王を封印できたんだ。少なくとも先代勇者と同等の500までは上げておきたい。あと、お前さんにみっちり神級【光魔法】を教え込みたいさね」
「お、お手やわらかにぃ……」
「アンタが魔王討伐の悲願を果たしてくれれば、アタイだって普通の人族の生活に戻れるんだ。気張ってくれなよ!?」
そ、そうだよね……周りの人が10年ずつ年を取っていく世界は、つらいよね。
◇ ◆ ◇ ◆
もっかいフルメンバーに戻り、今後のことのこまごまとした相談をしばし。
聖女様は『凄腕冒険者』として私たちと一緒に旅することになった……『お披露目会』が終わってからだけど。
どうも今までの10年ごとの1年間も、陛下が冒険者ギルドに働きかけて裏入手した『凄腕Bランク冒険者カード』を手に、各地を見て回っていたんだそうだ。
Bランクなのは、Aだと目立ちすぎるため。Bでも十分に凄腕なのだ。
「じゃあまずはゼニス様にお会いしに行くよ! 筆頭魔法使いと近衛騎士団長はここで待っといておくれ」
謁見? 会議? が終わり、さて解散っとなったところで、聖女様が私の襟首を掴んでそう言った。
「えっ?」
「ん? ゼニス様にお会いしたことはあるんだろう?」
「(ごにょごにょ……転生時の)一度きりですが」
「ん? んんん? 教会で祈れば、いつでもお会いできるだろう?」
「??????」
というわけで、聖女様に担がれて、王都の教会に連れていかれた――【瞬間移動】で。
さすがは先代勇者様パーティーメンバー! 【瞬間移動】はデフォなのね。
◇ ◆ ◇ ◆
「あら、※※※ちゃん久しぶり! どう? 魔王倒せそう?」
実に数百5年ぶりの全知全能神ゼニス様が、目の前にいた。
教会の祭壇で聖女様のマネして祈ったら、意識が遠くなって……懐かしの、見渡す限り白一色の不思議空間が広がっていて、そんで女神様がいた。
「隣のあなたは……あぁ、ホーリィちゃんですね!?」
ホーリィ? あ、聖女様のお名前か。
「はい。10年振りとなります。女神様にまたこうしてお会いできて、光栄の限りでございます」
聖女様が女神様の前で頭を垂れる。
「魔王封印後も、あなた自身の幸せを捨ててまで人族の領域を見守ってくれているあなたには、感謝しかありません。本当にありがとう」
女神様の女神様っぽい笑み。数百年振りに見るけど、眩しいわぁ……。
「ホーリィちゃんに魔王復活の時期を教えてあげられなくて、本当にごめんなさいね。魔法神の動きを監視してて、本当につい最近分かったことだったから……」
「そ、そんな、恐れ多いことでございます……」
「※※※ちゃん……じゃなかったアリスちゃんには先代勇者ちゃんの『リセットボタン』発言から得た構想を余すところなく注ぎ込んだ最強魔法【ふっかつのじゅもん】を与えてるから、いつかは必ず勝つわ。今、ここにいるホーリィちゃんが魔王討伐の場に立てるかどうかは分からないけれど、勝利を信じてアリスちゃんを支えてあげてくださいね」
「ははっ!」
「さて、アリスちゃん」
「はいっ」
私が前世の名前で呼ばれるのを嫌がるのを察知してか、女神様が今世の名で呼んでくる。
「まずは私からの謝罪ですよね。【ふっかつのじゅもん・セーブ】で死んじゃうことを隠してた件については、本当にごめんなさい。死を恐れてセーブしてくれなかったらマズイと思ってね……」
「いえ……事情とお立場を考えれば、当然のことだと思います」
実際、死ぬと分かっていてたら躊躇してたかもしれなかった。
2回目からは、吹っ切れてロードしまくったけどね! 生き返ると分かれば、そこまで怖いもんでもない。あの頃はまだまだゲーム感覚だったってこともあるけど。
「それにしても、理屈を理解するや否や魔力を1億まで上げるとは驚きましたよ!! 確かに魔力消費の重たい魔法を連発するのが、一番効率の良い魔力の上げ方ですものねぇ。自分の命を犠牲にそれを何回も行えるとは、さすがはゲーム脳の効率厨! あなたを選んで大正解でした」
「あ、あはは……」
「ところで、なんで【ふっかつのじゅもん】がレベル1のままなんですか?」
「………………………………はい?」
呆然とする。女神様が何を言っているのか分からなかった。
「え、え、え……? 何千回とロードしても、まったく上がりませんでしたよ?」
「あー、セーブとロードは連動していて、ロードだけ繰り返してもレベルは上がりません。セーブの方もあと数千回やってもらえれば、レベル10になりますよ。そしたらセーブ枠が10枠まで増えます。言ったじゃないですか、スキルレベル1では1枠が限界だって!」
スキル【おもいだす】発動!
あー言ってたわ確かに! 1巻1話参照ってか!
「なんてこと……」
「まぁ次ロードした時にセーブしまくって枠を増やせばいい話ですよ」
うー……女神様は神なだけあって、このへんがドライというか淡泊なんだよね。
「でも、女神様に頂いた今世は幸せなことが多くて、大切な思い出がたくさんあるのです」
「【おもいだす】の中に記録されているでしょう? そのための【おもいだす】なのですから」
「でも、私は覚えていても相手は覚えていません……」
パパンとママンの愛情、可愛い可愛いディータの笑顔、軍人さんたちと一緒に汗を流した日々、お守りチームと鍛えた数百年、チビを始めとした従魔たちとの思い出、一緒に商売した人たちとの苦労話、フェッテン殿下にプロポーズされたこと……。
ノティアさんとリスちゃんとはまだ日が浅いからいいや……我ながらドライだな!
「【おもいだす】に従って、アリスちゃんが同じ日時に同じ場所で同じように振舞えば、同じ反応が返ってきますから大丈夫ですよ。あなたの従魔とも、同じ個体と出会えることでしょう」
こ、個体って……。
その言葉、信じますからね!? 特にチビとアラクネさんとはなんとしてでも再会したい。いやまぁこの周回が必ずしも死ぬとはまだ決まってないんだけど。
「あっ、でも【1日が100年になる部屋】の中で数百年鍛える必要がなくなっちゃう」
ステータスは引き継ぐから……。
随分と野性味の強い数百年だったけど、あれはあれで大切な思い出なんだ。
「じゃあ次回ロード時にはレベル1相当のステータスに戻しましょうか?」
「えぇぇえええっ!? そんなことできるんですか!?」
「ステータスを一方的に与えるのはいろいろ制約があるんですけど、奪う分には簡単にできます。次回ロード時に今みたいに祈祷してもらえれば私が出てきますので、事情を説明してください」
あ、そうか……ロードするってことは、女神様にこの会話の記憶はないのか。
「そしたら私が一時的にあなたのステータスを奪い、10歳で『職業』に就いた時のレベルアップ時に、そのステータスも返すことにしましょう。そうすれば違和感ないでしょう?」
「て、テンサイですか!」
「私は砂糖にもお酒にもなりませんよ?」
「あ、あはは……ちなみにそれ、【ふっかつのじゅもん】で養殖した魔力その他のステータスだけは奪わない、とかできますか?」
「はいはいできますから」
「やったぁ!」
「これで安心ですか?」
「はい! 安心して死ねます!」
「それは良かった。まぁ、そこにいるホーリィちゃんのためにも、できるだけその命で魔王を討伐できるよう、引き続き努力してくださいね」
聖女様の方を見てみると、私と女神様のあんまりな会話内容に、引きつり笑いしてた。
*******************************************
追記回数:4,649回 通算年数:414年 レベル:600
次回、ついにアリスが死者蘇生魔法を覚えます。
今日はなんと、陛下までもが下座側のソファーに座っていた。
メンツは陛下、フェッテン殿下、ノティアさん、リスちゃん、パパン、ママンと私。
陛下からは、『聖女様はとても気さくな方だから、挨拶は適当でよいぞ』とのご指示が。
……がちゃ
言われつつも礼を取らないわけにはいかないので、私たち一家は急いで立ち上がる。ノティアさんとリスちゃんも立つ模様。
「座んな。堅っ苦しい挨拶なんざごめんなんでね」
宰相様に案内されて入ってきた聖女様は、20台後半~30手前って感じのグラマラスなチャンネーさんだった! 僧侶っぽいローブの上からでも分かるほど、胸がデカい。
聖女様は上座側のソファにどかっと座り、
「見知った顔は――…あぁ坊や、また一段と歳を取ったねぇ」
坊やだからさ!
「10年ですからなぁ」
答えたのは陛下。って陛下を坊や呼び!?
あぁ……10年ごとに会ってるとすれば、そうなる、のか?
「隣のガキんちょは?」
「第二王子のフェッテンです」
「あぁ! あん時の赤ん坊! んじゃ第一王子は?」
「あやつは……聖女様のお顔を拝見して、泣き出してしまいましたからな。本日お見せしても、ご気分を害されるかと思いまして」
「気にしやしないけどねぇ。……で、そっちの見知らぬ人たちは?」
「勇者です」
私を示しながら、陛下。
「!?」
ぎょっとする聖女様。
「そして、勇者の両親と、この国の武力と魔力を預かる者各1名……このふたりは勇者の護衛兼お目付け役ですな。勇者は先日冒険者登録を済ませたばかりで、【瞬間移動】ポイントを作るための旅を希望しています。もしよければ、聖女殿もご一緒して頂ければと」
「いつまで?」
「最後まで」
「ってことは……」
「はい。7年後に魔王が復活するとのお告げを、勇者が1歳の時に受けたとのことです」
「……………………ふぅ、よし。小さな勇者様、アンタ名前は?」
「は、はい!」
慌ててカーテシー。陛下が下に付くくらいなので、最敬礼バージョンだ。
「アリス・フォン・ロンダキルアと申します」
「ロンダキルア……ああ! あのノロマの末裔かい! あいつは図体だけはデカかったからねぇ、盾職としてさんざお世話になったさね!」
「は、はぁ……」
よく分かんないけど、初代ロンダキルアさんは勇者様のパーティーメンバーとして果敢に戦ったっぽい。
隣のパパンから、嬉しそうな気配を感じる。常時軽くまとった【闘気】が、そういう情報を伝えてくるんだよね。
「あのっ、私のお父様とお母様も、とっても強いんですよ!」
思わず、わざわざそんなことを言ってしまった。
「ほぅ……? アンタ、アリスちゃんの父親かい? レベルは?」
「さ、300です」
ビビりながら答えるパパンと、
「!? !? !?」
マジビビりする聖女様。
「いや、これは失礼した。ぞんざいな態度だったのを謝るよ」
居住まいを正す聖女様。
「い、いえ……伝説の聖女様にそんなことを仰って頂くなど、恐れ多いことです」
恐縮しきりなパパン。
「奥さんの方は?」
「200です」
「ははっ、大したもんだ! 肝心の勇者様、アンタのレベルは?」
「ろ、600です」
「!?」
再びマジビビりの聖女様。
「……ちょっと、アリスちゃんとふたりだけで話させてもらえないかい?」
◇ ◆ ◇ ◆
ってことで、謁見室にふたりきり。
「しっかし……当代の勇者様は随分可愛らしいじゃないのさ」
「は、はぁ……」
「さっそくだけど、ゼニス様から魔王封印じゃなく、『討伐』を命じられたって?」
「は、はい……がんばろうと思います」
「そのレベルは、どうやって鍛えたんだい? あんだけ鍛えてた勇者だって500ちょいだったってのに」
「は、はい。実は……」
◇ ◆ ◇ ◆
「【1日が100年になる部屋】ねぇ……お前さん、空間魔法のレベルは?」
「じゅ、10です」
「…………………………なるほど」
聖女様、天井を仰ぎ、
「女神様、ついに『あの手』を使ったってわけだ」
お、おおぉ……もしかしてわけ知り?
「……あ、あの、【時空魔法】的な話は、できればその……」
「あぁ、黙っておくよ」
「ありがとうございます……」
「悪いけど、ステータスを全て隠さず見せてもらえるね?」
「はいぃ……」
◇ ◆ ◇ ◆
「なんていうか……【勇者】の皮かぶった【賢者】だねぇアンタ!」
全部見せたし話したよ。私が転生者であるところから、【ふっかつのじゅもん】でMP養殖したところまで全部。聖女様は、先代勇者様が転生者であることもご存じだったよ。
絶対に他言しないでくれって頼んだら、『女神様と先代勇者の名に誓って言わないよ!』って言ってくれたので安心した。
やっぱりパパンとママン……特にお腹を痛めたママンには、言いたくないんだよ……。
「で、この人生は何度目なんだい?」
「い、一応、一度目のつもりです。ただ、生まれてすぐにロードを繰返しまくって魔力を育てたので、何千回目かは正直覚えてません……」
【おもいだす】スキルを使って精査すれば出てくるだろうけど、意味ある情報とは思わないので。
「で、10歳で洗礼を受けるまでは、【瞬間移動】ポイント作りをしながら冒険者稼業ってわけか。まずはその【1日が100年になる部屋】に入ってみたいね!
アタイもレベルは300しかないんだ。それで当時、死ぬ思いをして――というか仲間の大半が死んで、それでやっと魔王を封印できたんだ。少なくとも先代勇者と同等の500までは上げておきたい。あと、お前さんにみっちり神級【光魔法】を教え込みたいさね」
「お、お手やわらかにぃ……」
「アンタが魔王討伐の悲願を果たしてくれれば、アタイだって普通の人族の生活に戻れるんだ。気張ってくれなよ!?」
そ、そうだよね……周りの人が10年ずつ年を取っていく世界は、つらいよね。
◇ ◆ ◇ ◆
もっかいフルメンバーに戻り、今後のことのこまごまとした相談をしばし。
聖女様は『凄腕冒険者』として私たちと一緒に旅することになった……『お披露目会』が終わってからだけど。
どうも今までの10年ごとの1年間も、陛下が冒険者ギルドに働きかけて裏入手した『凄腕Bランク冒険者カード』を手に、各地を見て回っていたんだそうだ。
Bランクなのは、Aだと目立ちすぎるため。Bでも十分に凄腕なのだ。
「じゃあまずはゼニス様にお会いしに行くよ! 筆頭魔法使いと近衛騎士団長はここで待っといておくれ」
謁見? 会議? が終わり、さて解散っとなったところで、聖女様が私の襟首を掴んでそう言った。
「えっ?」
「ん? ゼニス様にお会いしたことはあるんだろう?」
「(ごにょごにょ……転生時の)一度きりですが」
「ん? んんん? 教会で祈れば、いつでもお会いできるだろう?」
「??????」
というわけで、聖女様に担がれて、王都の教会に連れていかれた――【瞬間移動】で。
さすがは先代勇者様パーティーメンバー! 【瞬間移動】はデフォなのね。
◇ ◆ ◇ ◆
「あら、※※※ちゃん久しぶり! どう? 魔王倒せそう?」
実に数百5年ぶりの全知全能神ゼニス様が、目の前にいた。
教会の祭壇で聖女様のマネして祈ったら、意識が遠くなって……懐かしの、見渡す限り白一色の不思議空間が広がっていて、そんで女神様がいた。
「隣のあなたは……あぁ、ホーリィちゃんですね!?」
ホーリィ? あ、聖女様のお名前か。
「はい。10年振りとなります。女神様にまたこうしてお会いできて、光栄の限りでございます」
聖女様が女神様の前で頭を垂れる。
「魔王封印後も、あなた自身の幸せを捨ててまで人族の領域を見守ってくれているあなたには、感謝しかありません。本当にありがとう」
女神様の女神様っぽい笑み。数百年振りに見るけど、眩しいわぁ……。
「ホーリィちゃんに魔王復活の時期を教えてあげられなくて、本当にごめんなさいね。魔法神の動きを監視してて、本当につい最近分かったことだったから……」
「そ、そんな、恐れ多いことでございます……」
「※※※ちゃん……じゃなかったアリスちゃんには先代勇者ちゃんの『リセットボタン』発言から得た構想を余すところなく注ぎ込んだ最強魔法【ふっかつのじゅもん】を与えてるから、いつかは必ず勝つわ。今、ここにいるホーリィちゃんが魔王討伐の場に立てるかどうかは分からないけれど、勝利を信じてアリスちゃんを支えてあげてくださいね」
「ははっ!」
「さて、アリスちゃん」
「はいっ」
私が前世の名前で呼ばれるのを嫌がるのを察知してか、女神様が今世の名で呼んでくる。
「まずは私からの謝罪ですよね。【ふっかつのじゅもん・セーブ】で死んじゃうことを隠してた件については、本当にごめんなさい。死を恐れてセーブしてくれなかったらマズイと思ってね……」
「いえ……事情とお立場を考えれば、当然のことだと思います」
実際、死ぬと分かっていてたら躊躇してたかもしれなかった。
2回目からは、吹っ切れてロードしまくったけどね! 生き返ると分かれば、そこまで怖いもんでもない。あの頃はまだまだゲーム感覚だったってこともあるけど。
「それにしても、理屈を理解するや否や魔力を1億まで上げるとは驚きましたよ!! 確かに魔力消費の重たい魔法を連発するのが、一番効率の良い魔力の上げ方ですものねぇ。自分の命を犠牲にそれを何回も行えるとは、さすがはゲーム脳の効率厨! あなたを選んで大正解でした」
「あ、あはは……」
「ところで、なんで【ふっかつのじゅもん】がレベル1のままなんですか?」
「………………………………はい?」
呆然とする。女神様が何を言っているのか分からなかった。
「え、え、え……? 何千回とロードしても、まったく上がりませんでしたよ?」
「あー、セーブとロードは連動していて、ロードだけ繰り返してもレベルは上がりません。セーブの方もあと数千回やってもらえれば、レベル10になりますよ。そしたらセーブ枠が10枠まで増えます。言ったじゃないですか、スキルレベル1では1枠が限界だって!」
スキル【おもいだす】発動!
あー言ってたわ確かに! 1巻1話参照ってか!
「なんてこと……」
「まぁ次ロードした時にセーブしまくって枠を増やせばいい話ですよ」
うー……女神様は神なだけあって、このへんがドライというか淡泊なんだよね。
「でも、女神様に頂いた今世は幸せなことが多くて、大切な思い出がたくさんあるのです」
「【おもいだす】の中に記録されているでしょう? そのための【おもいだす】なのですから」
「でも、私は覚えていても相手は覚えていません……」
パパンとママンの愛情、可愛い可愛いディータの笑顔、軍人さんたちと一緒に汗を流した日々、お守りチームと鍛えた数百年、チビを始めとした従魔たちとの思い出、一緒に商売した人たちとの苦労話、フェッテン殿下にプロポーズされたこと……。
ノティアさんとリスちゃんとはまだ日が浅いからいいや……我ながらドライだな!
「【おもいだす】に従って、アリスちゃんが同じ日時に同じ場所で同じように振舞えば、同じ反応が返ってきますから大丈夫ですよ。あなたの従魔とも、同じ個体と出会えることでしょう」
こ、個体って……。
その言葉、信じますからね!? 特にチビとアラクネさんとはなんとしてでも再会したい。いやまぁこの周回が必ずしも死ぬとはまだ決まってないんだけど。
「あっ、でも【1日が100年になる部屋】の中で数百年鍛える必要がなくなっちゃう」
ステータスは引き継ぐから……。
随分と野性味の強い数百年だったけど、あれはあれで大切な思い出なんだ。
「じゃあ次回ロード時にはレベル1相当のステータスに戻しましょうか?」
「えぇぇえええっ!? そんなことできるんですか!?」
「ステータスを一方的に与えるのはいろいろ制約があるんですけど、奪う分には簡単にできます。次回ロード時に今みたいに祈祷してもらえれば私が出てきますので、事情を説明してください」
あ、そうか……ロードするってことは、女神様にこの会話の記憶はないのか。
「そしたら私が一時的にあなたのステータスを奪い、10歳で『職業』に就いた時のレベルアップ時に、そのステータスも返すことにしましょう。そうすれば違和感ないでしょう?」
「て、テンサイですか!」
「私は砂糖にもお酒にもなりませんよ?」
「あ、あはは……ちなみにそれ、【ふっかつのじゅもん】で養殖した魔力その他のステータスだけは奪わない、とかできますか?」
「はいはいできますから」
「やったぁ!」
「これで安心ですか?」
「はい! 安心して死ねます!」
「それは良かった。まぁ、そこにいるホーリィちゃんのためにも、できるだけその命で魔王を討伐できるよう、引き続き努力してくださいね」
聖女様の方を見てみると、私と女神様のあんまりな会話内容に、引きつり笑いしてた。
*******************************************
追記回数:4,649回 通算年数:414年 レベル:600
次回、ついにアリスが死者蘇生魔法を覚えます。
0
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
嘘つき師匠と弟子
聖 みいけ
ファンタジー
見事な満月の晩。その魔術師は幼い少年をひろった
驚くほど鮮やかな青の瞳をした少年は、魔術師と会った晩のことを何も覚えていなかった
少年の心を守るため、魔術師は小さな嘘をつく
「お前を俺の弟子にすることにした」
精霊と共に、世界を気ままに旅する強面の魔術師が、人形のような幼い少年を子守りする話
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる