「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
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第1章 「私が初めて殺されるまでの話」
43(414歳)「VS 宮廷筆頭魔法使い」
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宮廷筆頭魔法使いは、気の強そうな美少女だった。
そして、筆頭魔法使い様の研究部屋は汚かった……散らかってるという意味で。本とか杖とか魔道具とか魔石とかが床中に転がっていた。
「相変わらず散らかっておるのぅ……」
「へ、陛下!?」
人払いは済ませても、陛下がいらっしゃるとは知らなかったらしい。
ローブ姿――スカート姿の筆頭魔法使い様がカーテシー(頭を下げるバージョン)で礼を取る。
「よいよい。顔を上げよ」
「ははっ。陛下と殿下が御自らお越しになるとは、いったいどのような御用向きで……? あら、それに後ろにいらっしゃるのは竜殺しのサー・ロンダキルア」
「パーヤネン女準男爵よ」
「ぶふぉっ」
「ぬおっ、どうしたのじゃアリス?」
「い、いえ……失礼致しました」
『頭パーやねん』って……いや元日本人的にはびっくりするけど、たしか北欧では普通の名前だったはず。
中世ヨーロッパ風のこの世界では普通だ普通。
「ごほん。パーヤネン女準男爵よ、この娘に聖級魔法の稽古をつけてやってほしいのじゃ。そなたが使えるものを全部じゃ。全ての業務を止めて、最優先で」
「なっ……こ、こんな子供に!? 陛下のご命令とあればもちろん対応はさせて頂きますが、しかし全ての業務を止めてというのは……」
「大丈夫じゃ、数日もあれば覚えるじゃろう」
まぁ【魔力操作】LV10の私なら、数日あればマスターできると思う。【1日が100年になる部屋】込みなら確実に。
だけどデイム・パーヤネン様(敬称重複)は部屋のことを知らないわけで。
たぶん、筆頭魔法使いとしてのプライドを刺激されたのだろう。
「この私でも聖級を1つ習得するのに1ヵ月はかかったのです。……念のため、能力を確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「相変わらずそなたは気が強いのぅ。では軽く模擬戦を行うとしよう。アリスも良いな?」
「はいっ」
◇ ◆ ◇ ◆
王城内にいくつかあるらしい模擬戦場にて。ちなみに地面は土。
私とデイム・パーヤネンは50メートルくらいの距離で対峙する。
2人のちょうど中間地点に、審判役のパパンが立っている。
あ、もちろん旅装に着替えたよ?
王城でお借りしてるドレスのまま立ち回るわけにはいかない。
「――始めっ!」
パパンが言うと同時、デイム・パーヤネンが軽く腕を振った。
次の瞬間、デイム・パーヤネンの前に数えきれない量のアースニードル、アイスニードル、ファイアニードル、ウィンドニードルが現れる!
レジストさせ難いように、4属性をまちまちに配置している……無詠唱かつ一瞬でこれだけのことができるのは、さすが筆頭魔法使いだと思う。
【1日が100年になる部屋】で鍛える前の私ならできなかっただろう……私が何百年もかかってこの境地に到達したことを思うと、この美少女の才能は計り知れない。
私が平然としているのを見て取ったのか、紛れ込んでいた1本のウォーターニードルが私に向けて飛んできた!
あれなら当たっても怪我はしないだろう――子供相手に手加減してくれているというわけだ。
だけど、その時にはもう、私の仕込みは終わっていた。
「――きゃっ!?」
足元の土が急に泥沼になり、デイム・パーヤネンがすっこぶ。
肩までずっぽり沼の中に入った次の瞬間、今度は泥ががっちがちに固まる――もちろん私の魔法だ。
【闘気】をまとった私は1秒かからず距離を詰め、虚空(【アイテムボックス】)から引き抜いた片手剣の刃をデイム・パーヤネンの首に添えた。
この、虚空からの抜剣がカッコ良くて好きなんだよ!
厨二っぽくていいじゃない!?
「――そこまで!!」
間髪入れずにパパンの静止。
やや遅れて、制御を失った4属性ニードルたちがゴロゴロと地面に転がる。
「な、ななな……」
言葉にならないデイムを、土を柔らかくしてずぼっと引っこ抜く。鍛え上げたステータス【力】や【体術】スキルは、小柄な少女1人くらい軽々と持ち上げられるよ。
「ほほう! いやはや本当に強いなアリスよ!」
陛下が嬉しそうに笑っている。
それを見て、デイムの顔がみるみる赤くなる。陛下の前で恥をかかされたとでも思ってるのかな? 陛下も『気が強い』って言ってたし……。
「……ま、待ちなさい!」
ほらきた!
「あたしは後衛専門。自分で言うのもなんだけど……武術の心得はないわ。でも、遠距離からの魔法合戦なら誰にも負けたことがないのよ!?」
「じゃあ、もう一戦やります?」
「もちろんよ!」
◇ ◆ ◇ ◆
「では――始めっ!」
第2ラウンド開始!
デイムの前に、私の視界を埋め尽くす数の4属性ニードルが現れる。相変わらず惚れ惚れする魔力制御だ。
【探査】――ふむ、各属性100本ずつね。
私も真似をし、同じ数・同じ質・同じ配置の4属性ニードルを並べてみる。
「ええっ!? ――い、いくわよ!」
デイムが唖然とした表情になったが、すぐに気を取り直してニードルの一部を放ってきた!
私は同じ属性のニードルを、同じ速度でデイムのニードルにぶつける。
全く同じ大きさ・威力のニードルたちは相殺。私とデイムのちょうど中間地点に、アースとアイスの破片が降り積もる。
「ま、まさか――」
言いながら、デイムが第2波を放ってくる。
同じくレジストする。
「そ、そんなことって――い、いえ、やってみれば分かるわ! キミ、残り全部いくわよ! いいわね!?」
「どうぞー!」
そして、先の2回とは比べ物にならない速度で、わずかにタイミングをずらしつつ、残り全部が飛んできた!
もちろん私は、同じ属性のニードルで全てぴったりレジストする。
私とデイムの中間地点に土と氷の山ができた。
「……負けたわ」
言って、デイムはその場に座り込んでしまった。
魔力切れ? ではなさそう。
私がプライドを叩き折っちゃったからかな……申し訳ない。
デイムの元へ小走りで進み、道中、アースとアイスの山を【アイテムボックス】へ。
「立てますか?」
手を貸そうにも身長が足りないので、【浮遊】してからデイムの手を取った。
「本当、息をするように魔法を使うのね……ねぇ小さな賢者様、いくつか聞いてもいいかしら?」
「どうぞ」
「キミの4属性魔法のレベルはいくつ?」
「6です」
「たったの6であの制御力!? ――いえ、陛下は、キミに聖級魔法を教えるようにと仰った。聖級魔法を学ぶ機会がなかったから、ぴったり上級の6ってわけね。
6であの制御なら、キミの【魔力操作】は――神級に至っているはず」
「レベル10です」
「はは、10、か……なるほどね。あと、私の4属性ニードル魔法の数、大きさ、威力、速度を全て正確に模倣できたのはなぜ?」
「【探査】したからです」
「【探査】。なるほど……キミの【探査】も、きっと神級ね」
「あはは……」
【空間魔法】がLV9以上であることにも気づかれたらしい。
本当、優秀だなこの人。いや、この国で最も優秀な魔法使いだったか。
「そういえば、さっき土だらけにしちゃったままでしたね」
泥沼から引っ張り上げる時に乾かしておいたが、土だらけなのは違いない。
「ちょっと失礼しますね……【探査】で土を特定してからのぉ――【アイテムボックス】!」
鍛え上げた私の【アイテムボックス】は、デイムの衣服と肌から、土だけを収納する。泥でこすった汚れも綺麗さっぱりだ。
模擬戦の最中は無詠唱でやっていたけど、味方に魔法の発動を知らせる時や、こちらに悪意がないことを示す時には、私はこうして省略詠唱するようにしている。
「汗もかいたでしょう。私もさっぱりしたいですし――【アースウォール】で目隠しフェンスを作って、【ホットウォーターシャワー】からの【ドライ】からの、フェンスを【アイテムボックス】へ! はい、終わりましたよ」
屋外行動時にしょっちゅうやってる一連の魔法。
ここに石鹸とシャンプーがあれば完璧なんだけど……シャンプー&リンス魔法とかないかしら。
デイムはというと、親方の技を盗もうとする職人のような目で、私の一挙手一投足を観察している。
「ねぇ小さな賢者様、名前を教えてくれない?」
「あ、そういえば名乗ってませんでした! アリス・フォン・ロンダキルアと申します」
「アリスちゃん……いえ」
デイムが深く体を沈め、頭を下げる最敬礼のカーテシー。
「――アリス様、私を弟子にしてください!!」
「えぇぇぇええええええええええっ!?」
私が弟子になるって話じゃなかったの!?
慌てて陛下を見ると、楽しそうに笑ってらっしゃった。
◇ ◆ ◇ ◆
「……なるほど、賢者様ではなく勇者様でしたか。あっ、申し遅れました。私はノティア・フォン・パーヤネンと申します。どうぞ気軽にノティアとお呼びくだ――えっ、護衛兼お目付け役を探している!? やります! やらせてください! 陛下、なにとぞ私にその任を!!」
「ふむ。部下への引き継ぎにはどのくらいかかる?」
「明日中に終わらせてみせます!!」
「勇ましいのぅ。よかろう。では明後日からそなたはアリスの護衛兼お目付け役兼パーティーメンバー兼家庭教師じゃ」
「ありがたき幸せ!!」
「ジークフリートもそれで良いな?」
「はい。デイム・パーヤネンであれば、安心して娘を任せられます。ただ……デイム、失礼ですがレベルを教えては頂けませんか?」
「――――89です」
おおっ、ほぼ英雄や達人レベルだった。若いのにすげぇな!
「低すぎますね……せめて200は超えて頂かないと安心できません」
「今安心できるって――はぁっ!? に、200!?」
「アリス、これからパーティーメンバーになるんじゃ。レベルを教えてやってくれんか?」
「はいっ! 私のレベルは600です!」
「――はっ!? はぁぁぁぁああああっ!?」
「あっはっはっ! 例の『部屋』の話は、近衛騎士団で誰か見繕ってからまとめてすることにしよう。では行くぞ。宰相、先に行って人払いを済ませてくれ」
「――ははっ」
再び、御自ら案内してくれる陛下。
ついて行く私たち。
あとには、呆然としたまま再起動しないデイム改めノティアさんが残った。
*******************************************
追記回数:4,649回 通算年数:414年 レベル:600
次回、アリスに妹ができる?
あとアリスの母の意外な一面が!
そして、筆頭魔法使い様の研究部屋は汚かった……散らかってるという意味で。本とか杖とか魔道具とか魔石とかが床中に転がっていた。
「相変わらず散らかっておるのぅ……」
「へ、陛下!?」
人払いは済ませても、陛下がいらっしゃるとは知らなかったらしい。
ローブ姿――スカート姿の筆頭魔法使い様がカーテシー(頭を下げるバージョン)で礼を取る。
「よいよい。顔を上げよ」
「ははっ。陛下と殿下が御自らお越しになるとは、いったいどのような御用向きで……? あら、それに後ろにいらっしゃるのは竜殺しのサー・ロンダキルア」
「パーヤネン女準男爵よ」
「ぶふぉっ」
「ぬおっ、どうしたのじゃアリス?」
「い、いえ……失礼致しました」
『頭パーやねん』って……いや元日本人的にはびっくりするけど、たしか北欧では普通の名前だったはず。
中世ヨーロッパ風のこの世界では普通だ普通。
「ごほん。パーヤネン女準男爵よ、この娘に聖級魔法の稽古をつけてやってほしいのじゃ。そなたが使えるものを全部じゃ。全ての業務を止めて、最優先で」
「なっ……こ、こんな子供に!? 陛下のご命令とあればもちろん対応はさせて頂きますが、しかし全ての業務を止めてというのは……」
「大丈夫じゃ、数日もあれば覚えるじゃろう」
まぁ【魔力操作】LV10の私なら、数日あればマスターできると思う。【1日が100年になる部屋】込みなら確実に。
だけどデイム・パーヤネン様(敬称重複)は部屋のことを知らないわけで。
たぶん、筆頭魔法使いとしてのプライドを刺激されたのだろう。
「この私でも聖級を1つ習得するのに1ヵ月はかかったのです。……念のため、能力を確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「相変わらずそなたは気が強いのぅ。では軽く模擬戦を行うとしよう。アリスも良いな?」
「はいっ」
◇ ◆ ◇ ◆
王城内にいくつかあるらしい模擬戦場にて。ちなみに地面は土。
私とデイム・パーヤネンは50メートルくらいの距離で対峙する。
2人のちょうど中間地点に、審判役のパパンが立っている。
あ、もちろん旅装に着替えたよ?
王城でお借りしてるドレスのまま立ち回るわけにはいかない。
「――始めっ!」
パパンが言うと同時、デイム・パーヤネンが軽く腕を振った。
次の瞬間、デイム・パーヤネンの前に数えきれない量のアースニードル、アイスニードル、ファイアニードル、ウィンドニードルが現れる!
レジストさせ難いように、4属性をまちまちに配置している……無詠唱かつ一瞬でこれだけのことができるのは、さすが筆頭魔法使いだと思う。
【1日が100年になる部屋】で鍛える前の私ならできなかっただろう……私が何百年もかかってこの境地に到達したことを思うと、この美少女の才能は計り知れない。
私が平然としているのを見て取ったのか、紛れ込んでいた1本のウォーターニードルが私に向けて飛んできた!
あれなら当たっても怪我はしないだろう――子供相手に手加減してくれているというわけだ。
だけど、その時にはもう、私の仕込みは終わっていた。
「――きゃっ!?」
足元の土が急に泥沼になり、デイム・パーヤネンがすっこぶ。
肩までずっぽり沼の中に入った次の瞬間、今度は泥ががっちがちに固まる――もちろん私の魔法だ。
【闘気】をまとった私は1秒かからず距離を詰め、虚空(【アイテムボックス】)から引き抜いた片手剣の刃をデイム・パーヤネンの首に添えた。
この、虚空からの抜剣がカッコ良くて好きなんだよ!
厨二っぽくていいじゃない!?
「――そこまで!!」
間髪入れずにパパンの静止。
やや遅れて、制御を失った4属性ニードルたちがゴロゴロと地面に転がる。
「な、ななな……」
言葉にならないデイムを、土を柔らかくしてずぼっと引っこ抜く。鍛え上げたステータス【力】や【体術】スキルは、小柄な少女1人くらい軽々と持ち上げられるよ。
「ほほう! いやはや本当に強いなアリスよ!」
陛下が嬉しそうに笑っている。
それを見て、デイムの顔がみるみる赤くなる。陛下の前で恥をかかされたとでも思ってるのかな? 陛下も『気が強い』って言ってたし……。
「……ま、待ちなさい!」
ほらきた!
「あたしは後衛専門。自分で言うのもなんだけど……武術の心得はないわ。でも、遠距離からの魔法合戦なら誰にも負けたことがないのよ!?」
「じゃあ、もう一戦やります?」
「もちろんよ!」
◇ ◆ ◇ ◆
「では――始めっ!」
第2ラウンド開始!
デイムの前に、私の視界を埋め尽くす数の4属性ニードルが現れる。相変わらず惚れ惚れする魔力制御だ。
【探査】――ふむ、各属性100本ずつね。
私も真似をし、同じ数・同じ質・同じ配置の4属性ニードルを並べてみる。
「ええっ!? ――い、いくわよ!」
デイムが唖然とした表情になったが、すぐに気を取り直してニードルの一部を放ってきた!
私は同じ属性のニードルを、同じ速度でデイムのニードルにぶつける。
全く同じ大きさ・威力のニードルたちは相殺。私とデイムのちょうど中間地点に、アースとアイスの破片が降り積もる。
「ま、まさか――」
言いながら、デイムが第2波を放ってくる。
同じくレジストする。
「そ、そんなことって――い、いえ、やってみれば分かるわ! キミ、残り全部いくわよ! いいわね!?」
「どうぞー!」
そして、先の2回とは比べ物にならない速度で、わずかにタイミングをずらしつつ、残り全部が飛んできた!
もちろん私は、同じ属性のニードルで全てぴったりレジストする。
私とデイムの中間地点に土と氷の山ができた。
「……負けたわ」
言って、デイムはその場に座り込んでしまった。
魔力切れ? ではなさそう。
私がプライドを叩き折っちゃったからかな……申し訳ない。
デイムの元へ小走りで進み、道中、アースとアイスの山を【アイテムボックス】へ。
「立てますか?」
手を貸そうにも身長が足りないので、【浮遊】してからデイムの手を取った。
「本当、息をするように魔法を使うのね……ねぇ小さな賢者様、いくつか聞いてもいいかしら?」
「どうぞ」
「キミの4属性魔法のレベルはいくつ?」
「6です」
「たったの6であの制御力!? ――いえ、陛下は、キミに聖級魔法を教えるようにと仰った。聖級魔法を学ぶ機会がなかったから、ぴったり上級の6ってわけね。
6であの制御なら、キミの【魔力操作】は――神級に至っているはず」
「レベル10です」
「はは、10、か……なるほどね。あと、私の4属性ニードル魔法の数、大きさ、威力、速度を全て正確に模倣できたのはなぜ?」
「【探査】したからです」
「【探査】。なるほど……キミの【探査】も、きっと神級ね」
「あはは……」
【空間魔法】がLV9以上であることにも気づかれたらしい。
本当、優秀だなこの人。いや、この国で最も優秀な魔法使いだったか。
「そういえば、さっき土だらけにしちゃったままでしたね」
泥沼から引っ張り上げる時に乾かしておいたが、土だらけなのは違いない。
「ちょっと失礼しますね……【探査】で土を特定してからのぉ――【アイテムボックス】!」
鍛え上げた私の【アイテムボックス】は、デイムの衣服と肌から、土だけを収納する。泥でこすった汚れも綺麗さっぱりだ。
模擬戦の最中は無詠唱でやっていたけど、味方に魔法の発動を知らせる時や、こちらに悪意がないことを示す時には、私はこうして省略詠唱するようにしている。
「汗もかいたでしょう。私もさっぱりしたいですし――【アースウォール】で目隠しフェンスを作って、【ホットウォーターシャワー】からの【ドライ】からの、フェンスを【アイテムボックス】へ! はい、終わりましたよ」
屋外行動時にしょっちゅうやってる一連の魔法。
ここに石鹸とシャンプーがあれば完璧なんだけど……シャンプー&リンス魔法とかないかしら。
デイムはというと、親方の技を盗もうとする職人のような目で、私の一挙手一投足を観察している。
「ねぇ小さな賢者様、名前を教えてくれない?」
「あ、そういえば名乗ってませんでした! アリス・フォン・ロンダキルアと申します」
「アリスちゃん……いえ」
デイムが深く体を沈め、頭を下げる最敬礼のカーテシー。
「――アリス様、私を弟子にしてください!!」
「えぇぇぇええええええええええっ!?」
私が弟子になるって話じゃなかったの!?
慌てて陛下を見ると、楽しそうに笑ってらっしゃった。
◇ ◆ ◇ ◆
「……なるほど、賢者様ではなく勇者様でしたか。あっ、申し遅れました。私はノティア・フォン・パーヤネンと申します。どうぞ気軽にノティアとお呼びくだ――えっ、護衛兼お目付け役を探している!? やります! やらせてください! 陛下、なにとぞ私にその任を!!」
「ふむ。部下への引き継ぎにはどのくらいかかる?」
「明日中に終わらせてみせます!!」
「勇ましいのぅ。よかろう。では明後日からそなたはアリスの護衛兼お目付け役兼パーティーメンバー兼家庭教師じゃ」
「ありがたき幸せ!!」
「ジークフリートもそれで良いな?」
「はい。デイム・パーヤネンであれば、安心して娘を任せられます。ただ……デイム、失礼ですがレベルを教えては頂けませんか?」
「――――89です」
おおっ、ほぼ英雄や達人レベルだった。若いのにすげぇな!
「低すぎますね……せめて200は超えて頂かないと安心できません」
「今安心できるって――はぁっ!? に、200!?」
「アリス、これからパーティーメンバーになるんじゃ。レベルを教えてやってくれんか?」
「はいっ! 私のレベルは600です!」
「――はっ!? はぁぁぁぁああああっ!?」
「あっはっはっ! 例の『部屋』の話は、近衛騎士団で誰か見繕ってからまとめてすることにしよう。では行くぞ。宰相、先に行って人払いを済ませてくれ」
「――ははっ」
再び、御自ら案内してくれる陛下。
ついて行く私たち。
あとには、呆然としたまま再起動しないデイム改めノティアさんが残った。
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追記回数:4,649回 通算年数:414年 レベル:600
次回、アリスに妹ができる?
あとアリスの母の意外な一面が!
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