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第三話 必死の抗議、そして……
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「ま、待ってください!! 私じゃありません!
いつもは上手く言葉に出来ない私もさすがに大声を出した。
その剣幕に押されたのか、騎士様は訝しむように眉を顰める。
「だが盗まれたルビーはここにある。これをどう説明する」
「私だってそれがどうしてここにあるのか分かりません。帰ったら部屋に置いてあったんです」
私は身の潔白を証明するためにあれこれ説明をした。
まず犯行時刻からして私ではないこと、その時間、パーティーに出席していたことを多数の者達が証言できること。それと断言できるけど、私に宝石店のショーケースを壊すような力はない。魔術だって使えないし、悲しいかな、非力さには自信がある。
「もちろんその宝石はお返しします。もう一日だけちゃんと調べてくれませんか」
隊長さんはしばらく考えるように目を伏せて、
「…………分かった」
「隊長!?」
わ、信じてくれた!?
正直このまま連れて行かれるかと思っていただけに、私の反応は部下の人と同じようなものになってしまった」
「彼女は口が悪くてわがまま放題、買い物の際にはクレームをつけまくり、社交界を辟易させた噂の悪女ですよ?」
え、そんな話になってるの!?
部下さんの話に仰天する私から目を離さないまま、隊長さんは告げる。
「それは分かっているんだが……その噂からして、どうもきな臭い。それに、犯行には魔術の形跡があったが、貴族学校に問い合わせたところアイリ・ガラントは魔術も使えない役立たずという話じゃないか」
「ひぇ」
ぐさりと刺さりすぎて私のハートは壊れる寸前だ。
確かに私は役立たずで、いつもエミリアのあとにくっついていたけど……。
「彼女が犯行に及べたというのは考えにくい。現物がここにあったのは確かに不信だし、ほぼ確定的だが……もう一日だけ調べよう。その間、あなたはここに軟禁させていただきます。よろしいですね?」
「は、はい……ありがとうございます」
「いえ、仕事ですので」
私がお礼を言うと、騎士様たちはルビーを回収して去って行った。
扉の前には見張りが立っている気配がする。
はぁ──……どうして私がこんな目に合わなきゃいけないんだろ。
エミリアに恨まれるような覚えはないんだけどなぁ。
私はベッドに転がりながら天井を見つめる。
唯一の救いはあの騎士様が私のことを信じようとしてくれたことくらいか。
とはいえ騎士様も権力があるわけじゃない。ここまでしたのだ。エミリアはあらゆる手を使って私を追い詰めようとしてくるだろう……なんとかしないと、実家にまで迷惑がかかる。出来れば家族に知られる前に、この騒ぎを治めないと……でもどうしたら……。
つらつらと考えていた私はうとうとし始めて、瞼が閉じたり開いたりする。
極度の精神的疲労から来る眠気は、想像以上に強くて──。
明日はちゃんとご飯が食べられるといいなぁ……。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
◆
ひゅぅ──……と風が吹いている。
眠れない夜は目を閉じていても周りの音がよく聞こえていた。
──そりゃあ、寝付けないわよね……。
寝返りをうちながら私は小さく息をつく。
第三王子との婚約破棄、そして親友との裏切り……。
疲れているとはいえ、あまりにもショックなことが多すぎた。
(喉が渇いたわ……ちょっと水でも飲もうかしら)
瞼をこすりながら起き上がり、水差しのほうを見る。
こういう時に備えて非常用の水はストックしてあるから、机の上に……
「え?」
ぬう、とベッドの影が確かな輪郭をもって立ち上がった。
纏ったヴェールを脱ぎ捨てるように、影から人が現れて──
「アイリ・ガラント子爵令嬢だな」
今日だけで二度目となる言葉を聞いた瞬間、
とても綺麗な紺碧の瞳が私を覗き込んでいた。
鋭利で冷たい刃物の切っ先から、私の首の皮に添えられている。
「!?」
「民を苦しめる悪女よ。言い残すことはあるか?」
いつもは上手く言葉に出来ない私もさすがに大声を出した。
その剣幕に押されたのか、騎士様は訝しむように眉を顰める。
「だが盗まれたルビーはここにある。これをどう説明する」
「私だってそれがどうしてここにあるのか分かりません。帰ったら部屋に置いてあったんです」
私は身の潔白を証明するためにあれこれ説明をした。
まず犯行時刻からして私ではないこと、その時間、パーティーに出席していたことを多数の者達が証言できること。それと断言できるけど、私に宝石店のショーケースを壊すような力はない。魔術だって使えないし、悲しいかな、非力さには自信がある。
「もちろんその宝石はお返しします。もう一日だけちゃんと調べてくれませんか」
隊長さんはしばらく考えるように目を伏せて、
「…………分かった」
「隊長!?」
わ、信じてくれた!?
正直このまま連れて行かれるかと思っていただけに、私の反応は部下の人と同じようなものになってしまった」
「彼女は口が悪くてわがまま放題、買い物の際にはクレームをつけまくり、社交界を辟易させた噂の悪女ですよ?」
え、そんな話になってるの!?
部下さんの話に仰天する私から目を離さないまま、隊長さんは告げる。
「それは分かっているんだが……その噂からして、どうもきな臭い。それに、犯行には魔術の形跡があったが、貴族学校に問い合わせたところアイリ・ガラントは魔術も使えない役立たずという話じゃないか」
「ひぇ」
ぐさりと刺さりすぎて私のハートは壊れる寸前だ。
確かに私は役立たずで、いつもエミリアのあとにくっついていたけど……。
「彼女が犯行に及べたというのは考えにくい。現物がここにあったのは確かに不信だし、ほぼ確定的だが……もう一日だけ調べよう。その間、あなたはここに軟禁させていただきます。よろしいですね?」
「は、はい……ありがとうございます」
「いえ、仕事ですので」
私がお礼を言うと、騎士様たちはルビーを回収して去って行った。
扉の前には見張りが立っている気配がする。
はぁ──……どうして私がこんな目に合わなきゃいけないんだろ。
エミリアに恨まれるような覚えはないんだけどなぁ。
私はベッドに転がりながら天井を見つめる。
唯一の救いはあの騎士様が私のことを信じようとしてくれたことくらいか。
とはいえ騎士様も権力があるわけじゃない。ここまでしたのだ。エミリアはあらゆる手を使って私を追い詰めようとしてくるだろう……なんとかしないと、実家にまで迷惑がかかる。出来れば家族に知られる前に、この騒ぎを治めないと……でもどうしたら……。
つらつらと考えていた私はうとうとし始めて、瞼が閉じたり開いたりする。
極度の精神的疲労から来る眠気は、想像以上に強くて──。
明日はちゃんとご飯が食べられるといいなぁ……。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
◆
ひゅぅ──……と風が吹いている。
眠れない夜は目を閉じていても周りの音がよく聞こえていた。
──そりゃあ、寝付けないわよね……。
寝返りをうちながら私は小さく息をつく。
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疲れているとはいえ、あまりにもショックなことが多すぎた。
(喉が渇いたわ……ちょっと水でも飲もうかしら)
瞼をこすりながら起き上がり、水差しのほうを見る。
こういう時に備えて非常用の水はストックしてあるから、机の上に……
「え?」
ぬう、とベッドの影が確かな輪郭をもって立ち上がった。
纏ったヴェールを脱ぎ捨てるように、影から人が現れて──
「アイリ・ガラント子爵令嬢だな」
今日だけで二度目となる言葉を聞いた瞬間、
とても綺麗な紺碧の瞳が私を覗き込んでいた。
鋭利で冷たい刃物の切っ先から、私の首の皮に添えられている。
「!?」
「民を苦しめる悪女よ。言い残すことはあるか?」
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