恋愛相談から始まる恋物語

菜の花

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2人の悪魔

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とある休日の日の事である。

俺はいつもと変わらぬ様に、家でのんびりと過ごしていたのだが・・・。

「たのもー!」

「うちは道場じゃねーから・・・」

「とりあえず早く入れて、話はそれからだよ」

「何でお前が主導権握ってんだ?」

「いいから入れてよ。立ち話もなんだし」

「それ、そっちsideが使うセリフじゃないからな?」

俺の優雅な休日は、この2人によって崩れさろうとしていた。

言いたい事は山ほどあるが、とりあえず家の中に入れる事にした。

リビングに通して、俺は2人分の飲み物を用意する。

「水無月、何飲む?」

「何でもいい」

「分かった」

俺は冷蔵庫に入っていた、ペットボトルのお茶をコップに注ぐ。

そしてもう一つのコップには、おなじみのミルクティーを入れる。

「七には聞かないの?」

「四月はもう決まってるからいいんだよ」

「何その関係・・・」

何やら水無月が少しトゲトゲしいが、ここは気にしないでおこう。

飲み物の入ったコップをソファーまで持っていき、それぞれに渡す。

「んで、こんな休日にわざわざ俺の癒しを奪ってまで来た理由はなんだ?」

若干というか、かなり気怠げに2人に質問する。

そして、最初に口を開いたのは四月の方だった。

「大変なんだよ! 由々しき問題なんだよ! いとをかしなんだよ!」

「お前は1回古文を勉強し直してこい」

すると今度は、隣にいる水無月が口を開いた。

「なんか、例の野球部の先輩に彼女が出来たって噂が立ってるらしいの」

水無月のその言葉に、首を縦に何回も振っている四月。

なるほど、確かにそれは由々しき問題だな。

決していとをかしではないな。

「んで、それは噂なのか? 本当なのか?」

「それは分からない。だから七は、それを確かめたいんだって」

「先輩に、本当に彼女がいるかどうかをか」

「そう。だから確かめる方法をあんたにも考えて欲しいの」

確かめるって言ったってな~。

んなもん、直接本人に聞けば済む話じゃないか。

それで白黒はっきりするはずだ。

「直接先輩に聞けばいいだろ。もう普通に話せるくらいには仲良いんだろ?」

「ん~。素直に話してくれるかな?」

「おい四月、素直に話さなかったらクズ認定になるぞ・・・」

そんなの浮気性の奴がする事だがな。

もしそうだとしたら、例の先輩はやべーやつになる。

いくらなんでも、それはないと思うが。

「とっ捕まえて尋問する!」

「なんだ、ハニートラップでも使うのか?」

その俺の一言に、場は凍りついてしまった。

主に水無月だけだが・・・。

「・・・キモ」

「待て、なんでそこまで嫌悪感を露わにされなきゃいけない?」

「ハニートラップ・・・蜂蜜買わなきゃ・・・」

1名違う意味で捉えてるバカがいるが、放っておこう。

相変わらず水無月は、俺の事をジト目で見てくる。

元から目つきが怖いんだからやめてほしいんだが・・・。

「・・・結局男は大きいのがいいんでしょ」

「待て、俺は大小の話なんかしてなかったからな」

「ハニートラップって、蜂蜜どれくらいいるのかな?」

「七、七の考えてるハニートラップなんてしても、普通に無駄だから」

「え、そうなの?」

「とりあえず、方法は先輩の周りの人に聞くか、尾行でもして女の影がないか探るかの2つだな。あ、SNSで調べるのもありだな」

これ以上にないだろうと言った具合の、模範解答だろう。

水無月は、顎に手を当て何やら考えている様子。

四月は・・・何故か目をキラキラ輝かせていた。

こいつ、本当に分からん・・・。

「尾行・・・! 名探偵・・・! 警察官・・・!」

バカもここまで行くと逆に清々しいな。

こうにも間違った方向に元気に突っ走る奴も、珍しいだろう。

おかげさまでツッコミ所が満載でもう、疲れてしまった。

せっかくの休日なのに・・・。

「・・・んで、結局どうするんだ?」

「っとね~。このカップが食べたい!」

四月は、いつの間にかリビングの食器棚の引き出しを開けていた。

1番下の引き出しには、カップ麺関係がしまわれているのだ。

ってか何してんだよ、お前・・・。

「人ん家の引き出し勝手に開けるなよ・・・」

「あたしはこれがいい」

すると、水無月もカップ麺を選び始めた。

こいつらには遠慮という2文字はないのだろうか?

いや、ないからこうなってるのか。

「如月くん! 焼きそばないの!?」

「あ? そこになきゃねーよ」

「え~、買っといてよ~」

「お前らもう帰れよ・・・」

その後は、2人して俺の家のカップ麺を食べ、腹を満たし、そのまま帰っていった。

嵐のように来て嵐のように去って行ったな、あいつら。

そんでもって、肝心な作戦は何1つ決まっていない。

こんなんでいいのかとも思ったが、真面目に考える方がバカらしくなってきた。









先輩に彼女がいるかどうか云々の話し合いをしてから、しばらくこちらの動きは何もなかった。

そんなある日の事だ。

俺は学校が終わり、帰る支度をしていた。

すると、俺のスマホのバイブレーションが作動した。

きっとメールか何かのメッセージだろうと思い、確認すると、四月からのメッセージが来ていた。

『放課後に学校近くの公園で待ってるからきてね!  絶対だよ、絶対!』

どーせ、またよからぬことだろう。

ぶっちゃけ行きたくない気持ちがカンストしてるが、行かなかったら行かなかったで、後日物凄く責められそうなので、渋々向かうことにした。









公園に到着し四月を探していると、俺はとんでもない光景を目の当たりにしていた。

公園のベンチに、風呂敷を被って黒いサングラスとマスクを付けている、明らかに不審な人がいた。

その人は俺と同じ学校に通う制服で、スカートを履いているのでおそらく女子生徒。

心当たりがありまくり過ぎるが、逆にそうではないと信じたかった。

可能性は0じゃないからな。

だが、その変質者は、俺の姿を見つけると、真っ先に近寄ってきた。

「如月くん遅いよ! 5分も待ったよ!」

こんな変質者とは初対面のはずだが、俺の名前は知られているようだった。

いや、俺は如月くんじゃなくて白鷺くんだった気がするな?

なら、奴が話しかけたのは如月くんだ。

俺ではない。

っと言った具合の現実逃避をしてみるが、結果は何も変わらなかった。

「この場合の5分なら、許容範囲だろうが」

「男の子は女の子より先に着いてるもんだよ!」

「元々こんな予定なかったろうが。だったらもっと早くから誘えよ」

「だって今日は急に決まったんだも~ん」

「じゃあ、俺が怒られる筋合いはないだろ・・・」

相変わらずこいつは、自分の感覚で物事を決めて進めるからタチが悪い。

んなことよりも、今はその身なりだ。

特に、上半身の首から上だ。

お前は今から銀行強盗でもするつもりかよ・・・。

「ってか、その格好なんだよ」

「決まってるじゃん! 尾行する時に、変装は基本中の基本だよ!」

四月は自信満々なドヤ顏をして、俺に言ってくる。

尾行するのに変装をするのは分かるが、変装の方向性が盛大に間違っていた。

前提条件として、目立ちにくくバレないようにが基本だろう。

だが、今のこの上原バカの格好はどうだろうか?

明らかに、不自然過ぎる。

確かにこれならば、四月だとはバレないだろう。

でも、変質者や不審者と思われるのは間違いないし、俺なら絶対にそう思う。

「そんな格好じゃ確実に通報されるからな。先輩にバレるバレない以前にお巡りさんに捕まるからな」

「え~、良い案だと思ったのに~」

俺の意見にブツブツと文句を言っていたが、一応は理解してくれたみたいなので、変装を解き始めた。

「んで、今日はその先輩に何かしらの動きでもあんのか?」

まあ、何かしら動きがあるから、こいつもこうやってバカな事してるんだもんな。

本当、自分の好きな事に関してはまっすぐだよな。

だが、俺のそんな思いとは違った返答が目の前のバカから聞こえてきた。

「え!? 如月くん、情報仕入れてきたの!?」

「は?」

「へ?」

お互いに、頭にハテナマークを浮かべている状態だった。

待てよ。この後の展開ってもしかして・・・ノープラン?

「四月、この後はどうするつもりだ?」

「決まってるじゃん! 先輩を探すんだよ!」

「探してどうするんだ?」

「尾行して、彼女さん疑惑のある女の人を確認する!」

「先輩はどこにいる?」

「知らない!」

「あては?」

「ない!」

清々しいほどに、毎回ハイテンションで答えてくださった。

これが幼稚園くらいの子供だったら、俺は頭を撫でて褒めてあげただろうに。

だが、目の前にいるのは高校生だ。

っとなると、もはや呆れてしまうに他はない・・・。

「四月、ちょっとそこ座れ」

俺は近くにあったベンチを差して、しにそう告げる。

「なんで?」

「お前に話がある」

「へ? こ、告白・・・?」

頬を赤らめながら俺を見てくる、この四月バカ

どんだけお前の頭は恋愛脳なんだよ。

そんな乙女な表情をしている四月には悪いが、現実をつきつける。

「告白じゃないからな、これは説教だ」

「え~。怒られるのは得意じゃないよ」

「得意な奴なんかいないだろうが。まずお前は、もう少し考えて行動しろ」

「もう少し考えて?」

「そうだ、今回も見切り発車過ぎるんだよ」

例の先輩が、事前に女の人と出かける事が分かっていたりすれば、話は別だ。

そんな情報もなく、ただ先輩を尾行したって味のある情報が取れるか分からない。

変に尾行してバレた日には、一気に気まずくなってしまう。

四月の一途で真っ直ぐな所は否定しないが、それを前面に出し過ぎるのは良くないとも思った。

その後も、四月にはいつくか説教と助言をした。

気がつくと、辺りの陽は暮れ始めていた。

何だかんだ長話しになってしまったが、驚いた事が1つだけあった。

最初こそはブツブツ言っていたものの、それ以降は俺の発言に反発する事もなく、うんうんと頷きながら熱心にメモを取っていた。

ちゃんと学ぶ気はあるって所を見せつけられた気がした。

その事が嬉しかったが、なぜか少し切ない気持ちにもなった。

「そろそろ帰るか。話してたら遅くなっちゃったし」

「ふぅ~。何だか頭使った気がする~」

「それはご苦労なことで」

「あ、これから甘いもの食べに行かない!? お腹空いちゃってさ」

「あ? 別にいいけど」

「やった~! 如月くんの奢り~!」

「は? 奢るなんて一言も言ってないからな?」

俺の前を、小走りで通り過ぎる彼女との時間。

悲しい程に手が届かない、そんな彼女の笑顔に今日も惹かれていく。

そしてそんな募る想いを、必死にかき消しながら、俺は四月と共にファミレスへ向かったのだった。
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