9 / 37
第8話
しおりを挟む
「未菜ー、お弁当食べよー。」
「うんっ、先に食堂行っててっ!!私、お弁当とってくる!」
待ちに待ったお昼休み。
お弁当を取るため教室に急いでいると、背後から「大宮さんっ!」と呼ぶ声がした。
「あっ、久しぶり、上坂くん。ノート、すっごくわかりやすかったよっ!
この間の分野の問題も自分で解けて、零斗にも褒められてるの。」
零斗に褒められた、と聞いたからか彼は途端に満面の笑みを見せた。
「えー、それは光栄だなぁ。せっかくだし今問題たくさん解いて慣れるといいよ、問題集とか持ってる?」
首を横に振ると、まるでその答えがくると最初から決まっていたかのように間髪入れずに言葉が続けられた。
「俺もさ、気になってる参考書があるんだよねぇ。
良かったら、今度の週末見に行かない?」
えっ、2人で出かけるの?
そんな2人で出かけるほど親しくはなかった気が………。
さすがに困惑する。意外にこの人って、グイグイ系だ…………。
「じゃあ、10時に駅に集合ねっ!!」
戸惑う私を尻目に、またまた勝手に話が進んでいった。
私って流されやすいんだろうか。
「あ、あとさ、もう大宮さんじゃなくて未菜って呼んでいい??俺のことも翔平でいいからさ。」
ニカっと笑うと、彼は「じゃあねー!」とかけていったが、途中でクルリと私の元に戻ってきた。
「どうかした?」
まだ何かあるのか?私はもうキャパオーバーだぞ??
警戒しまくってる私を見て彼はクスリと笑うと、いきなり耳元に口を寄せてきた。
ー今度は零斗さんなしで2人きりでねー
いつもの気さくな笑顔とは少し違う、いたずらっぽい表情を残し、唖然とした私を残して、今度こそ彼は走り去っていった。
(…え?零斗が好きなんじゃないの……?)
私はといえば、恋のライバル疑惑が薄まりホッとしたのだった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
カチャカチャ
相変わらず私は1人で夕食をとっている。
「ねぇー、私、今週末出かけるね。」
まだ早いが零斗に伝えたのは、ほんの少しの下心。
イケメンがライバルなのでは、という悩みが消えて安心していたのかもしれない。
「左様ですか。どちら様と?」
キッチンで洗い物をする零斗が聞く。
「翔平と出かk……『ガッチャーーーーーーッン!!』」
突然、キッチンで皿が割れる音がした。
いきなりのことに体がビクつく。
「……大変申し訳ございません。ただ今片付けます。」
慌てた様子で破片を拾い集めようとする零斗。
…長い間一緒にいるけれど、こんな失敗をした零斗を見たのは初めてだ。
「っね、っ零斗、大丈夫なの??」
なんだか突然言いようもなく怖くなって、慌てて零斗に駆け寄る。
「ねぇ、疲れてるんじゃない?」
普段の零斗と同じか確かめたくて、彼の額に手を伸ばすと
ーッバシッッー
彼に届く前にはたき落とされた。
反射的に手を引っ込める。
今起きたことがにわかには信じられなかった。
「っ、申し訳ございません。私の方は大丈夫ですので、未菜様はお食事をお続けください。」
これ以上は立ち入らせない。
彼の表情からは、私への拒絶が浮かんでいる。
有無を言わさぬ口調で言われ、私は逃げるようにして席へ戻った。
「………先程の話ですが、楽しんで行ってらっしゃいませ。」
投げかけられた言葉が背中に突き刺さる。
少しでも引き止めてくれないかな、なんて考えて。
ーバチが当たった。そう感じた。
カチャカチャ
何事もなかったかのように夕食が再開された。
「うんっ、先に食堂行っててっ!!私、お弁当とってくる!」
待ちに待ったお昼休み。
お弁当を取るため教室に急いでいると、背後から「大宮さんっ!」と呼ぶ声がした。
「あっ、久しぶり、上坂くん。ノート、すっごくわかりやすかったよっ!
この間の分野の問題も自分で解けて、零斗にも褒められてるの。」
零斗に褒められた、と聞いたからか彼は途端に満面の笑みを見せた。
「えー、それは光栄だなぁ。せっかくだし今問題たくさん解いて慣れるといいよ、問題集とか持ってる?」
首を横に振ると、まるでその答えがくると最初から決まっていたかのように間髪入れずに言葉が続けられた。
「俺もさ、気になってる参考書があるんだよねぇ。
良かったら、今度の週末見に行かない?」
えっ、2人で出かけるの?
そんな2人で出かけるほど親しくはなかった気が………。
さすがに困惑する。意外にこの人って、グイグイ系だ…………。
「じゃあ、10時に駅に集合ねっ!!」
戸惑う私を尻目に、またまた勝手に話が進んでいった。
私って流されやすいんだろうか。
「あ、あとさ、もう大宮さんじゃなくて未菜って呼んでいい??俺のことも翔平でいいからさ。」
ニカっと笑うと、彼は「じゃあねー!」とかけていったが、途中でクルリと私の元に戻ってきた。
「どうかした?」
まだ何かあるのか?私はもうキャパオーバーだぞ??
警戒しまくってる私を見て彼はクスリと笑うと、いきなり耳元に口を寄せてきた。
ー今度は零斗さんなしで2人きりでねー
いつもの気さくな笑顔とは少し違う、いたずらっぽい表情を残し、唖然とした私を残して、今度こそ彼は走り去っていった。
(…え?零斗が好きなんじゃないの……?)
私はといえば、恋のライバル疑惑が薄まりホッとしたのだった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
カチャカチャ
相変わらず私は1人で夕食をとっている。
「ねぇー、私、今週末出かけるね。」
まだ早いが零斗に伝えたのは、ほんの少しの下心。
イケメンがライバルなのでは、という悩みが消えて安心していたのかもしれない。
「左様ですか。どちら様と?」
キッチンで洗い物をする零斗が聞く。
「翔平と出かk……『ガッチャーーーーーーッン!!』」
突然、キッチンで皿が割れる音がした。
いきなりのことに体がビクつく。
「……大変申し訳ございません。ただ今片付けます。」
慌てた様子で破片を拾い集めようとする零斗。
…長い間一緒にいるけれど、こんな失敗をした零斗を見たのは初めてだ。
「っね、っ零斗、大丈夫なの??」
なんだか突然言いようもなく怖くなって、慌てて零斗に駆け寄る。
「ねぇ、疲れてるんじゃない?」
普段の零斗と同じか確かめたくて、彼の額に手を伸ばすと
ーッバシッッー
彼に届く前にはたき落とされた。
反射的に手を引っ込める。
今起きたことがにわかには信じられなかった。
「っ、申し訳ございません。私の方は大丈夫ですので、未菜様はお食事をお続けください。」
これ以上は立ち入らせない。
彼の表情からは、私への拒絶が浮かんでいる。
有無を言わさぬ口調で言われ、私は逃げるようにして席へ戻った。
「………先程の話ですが、楽しんで行ってらっしゃいませ。」
投げかけられた言葉が背中に突き刺さる。
少しでも引き止めてくれないかな、なんて考えて。
ーバチが当たった。そう感じた。
カチャカチャ
何事もなかったかのように夕食が再開された。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる