獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

改めて宜しく

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 三巳のお着替えが完了しました。
 今度の三巳は珍しくスカート……に見せかけたキュロットです。上は半袖タイプのパーカーで、可愛らしさとスポーティを併せ持ち、三巳の元気溌剌な可愛らしさを際立たせています。

 「にゅふー♪ウィンドウショッピングは楽しいんだよ♪」

 今の服に至るまで、三巳はこれでもかと試着をし尽くしました。
 それに付き合った女性陣はとっても良い笑顔でやり切った顔をしています。

 「あら、それだけで良いの?全部持って来なさいな」

 そしてロココの一言で試着した物は全てお持ち帰りが決定しました。

 「うーにゅ。両手に買い物袋を持ちたい気分」

 全て尻尾収納に収めてしまったので、沢山お買い物をしたという実感が湧かないのが玉に瑕です。

 「お待たせなんだよ!」

 キュロットから飛び出る尻尾をふわんふわんにさせて、三巳はレオの所に戻って来ました。ちょっぴしお澄まし気分です。
 レオもそんな三巳を見てフッと笑みを見せてくれます。

 「似合ってんな」
 「ふあ!?」

 レオに褒められて三巳はテンション爆上げで舞い上がります。そして全身の毛がシビシビと痺れた感じがしています。

 「んにゅあー!んふー!レオ!レオ!村案内するんだよ!」

 お店の中なので尻尾をビュンビュカ振りたいのを懸命に我慢です。代わりに新しい雨合羽をシュバッと羽織ると、レオの腕を両手で引っ張って外へ飛び出しました。レモン色で後ろに大きなリボンが付いた雨合羽からは、はち切れた尻尾が元気に振る雨粒を弾いています。

 「あらあら」
 「まあまあ」
 「「「うふふふふ♪」」」

 そんな様子に女性陣一同のニマニマが止まる所を知りません。

 「これは村始まって以来の慶事になりそうね」
 「三巳の恋バナなんて噂や妄想位しかなかったものね」

 そんな女性陣の姿に男性陣はチベット砂狐の顔をしました。

 「どう思う?」
 「いや懐いてんなーとは思うけどよ」
 「あれで恋してるって言われてもな」

 聞かれたら怖い事になるのが明白なのでボショボショ語り合います。女性陣がこっちを見たらすかさず笑顔で誤魔化しです。

 「うむ!仲良き事は良き事かな!ではヴィーナの総力を持って持て成しの準備をするぞ!」

 ロウ村長だけは何時ものガハハな大笑いで残った人達を先導します。背後に見える良い笑顔の奥さんに内心冷や汗を掻いているのは内緒なのです。

 「今日の所は止められて良かったね」
 「そうねぇ。でもあの人の事だから明日はわからないわよ」

 けれどもロダと奥さんにはバレバレでした。

 一方の飛び出した三巳はルンルン気分で村を案内中です。

 「うーにゅ。もう夕方だからなー。父ちゃんにご飯1人分増えるの伝えなきゃだし、今日は帰りがてら案内出来るとこだけかなー」

 フンスフンスと鼻息荒く進む三巳はレオの腕を握ったままです。
 レオの方は三巳に腕を取られているので若干前屈みになって歩き辛そうです。代わりに三巳の大きな尻尾が頭上を覆ってくれているので雨には当たっていません。

 「興奮すんのもいいけどな、せめてこっちにしてくれ」

 言ってスルリと三巳の手から腕を擦り抜かせ、その流れでキュッと手を繋ぎました。これで前屈みから脱却です。
 三巳も手を繋げたのが嬉しくてニパーッと犬歯を剥き出しに笑顔満面になります。レオが背筋を伸ばしたので、尻尾がレオを包む形になったのもドキドキしちゃいます。大好きなひととは触れ合っていたいですからね。

 「うにゅっ」

 仲良く手を繋いで歩いていると学校と温泉が見えて来ました。夕方なのでもう子供達は下校後ですが、温泉にはこれから入りに来た人達がチロホラいます。

 「この学校はな、ハンナが校長先生兼教師で創設してくれたんだ。それまでは学校なんて無くて上の人達が口伝で教えてただけだったんだよ。
 そんで奥の温泉はそれより少し早く建ててな、今までは地獄谷まで入りに行ってたのを体悪くなっても入りに来れるようにって建てたんだ。三巳も少し協力したんだよ」
 「そうか、頑張ってんな」
 「うにゅ!」

 認めて貰えて嬉しい三巳は、握っている手にキュッと力が入ります。そしてそのまま前に後ろに振っちゃいます。
 レオはそんな三巳に

 (妹がいたらこんななのかね)

 と兄心を擽られている様です。
 実際には三巳のがうんと年上ですが、神族やモンスターにとっては生きた年数は関係ないのです。それこそお互いに長い年月を生きていればそんなものは誤差範囲なのでしょう。

 「レオと一緒に入りたいけど、男女で別れるからなー。水着着用の混浴造って貰えるようにお願いしてみよーっと」

 そんな事を言いつつレオの水着姿を想像した三巳は、

 「はわわっはわーっ」

 と夢見心地でほっぺを夕日色に染めました。
 想像のレオは、鬣が眩しい偉丈夫なライオーガな佇まいで、競泳タイプのピッチリした水着を着用していたのです。
 そうとは知らないレオですが、

 (また妙な事考えてんな)

 何時も通りの三巳に、特に突っ込む事はしないのでした。
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