獣神娘と山の民

蒼穹月

文字の大きさ
上 下
267 / 362
本編

海の宝探し

しおりを挟む
 グランの海は沖縄のように澄んだ綺麗な海です。
 そんな海の浅瀬で三巳とクロが海の中の砂の上をキョロキョロと見ています。

 「この辺は人通りが多いから見つからねえかも、な」

 パラソルの下でその様子を見ているレオがポツリと呟きます。敷物の上で座るレオも水着を着ていますが、海に入る気はなさそうです。

 「くっくっく。クロはわかっておる様だがのう。三巳に合わせておるのだろうな。ほんに愛いのう」

 同じくパラソルの下で優雅に寝そべる美女母が、レオに応える様に喉で笑いながら言います。美女母の目から見れば、愛娘と遊ぶデレデレな父親全開です。
 因みに美女母の水着はとてもセクシーな水着です。それをクロから受け取ったパーカーで隠しています。

 「父ちゃん!あっち行ってみよ!あっち!」

 近くには無さそうだと判断した三巳が、クロの腕を引っ張ってゴツゴツとした岩がある方へ向かいました。

 「今度こそ見つかると良いがのう」
 「そーだな」

 あくまでも一緒にはしゃぐ気のない2人を他所に、三巳はズンズンバシャバシャとはしゃぎまくりです。
 そんな三巳に腕を引っ張られるクロは終始嬉しそうにニコニコしていました。

 「あっ。蟹っ」

 岩場の近くまで来ると、先程まで居なかった小さな生き物がチラホラ見つかります。

 「あっあっあー。隠れちゃった」

 けれども彼等は人の気配に敏感で、直ぐに隙間に入って逃げてしまいます。
 けれどもその様子も可愛らしくて頬が緩みます。

 「うにゅ。安全第一大事なんだよ。これからも捕まらないよーになー」

 隙間に向かって三巳が言うと、隙間からニョキッと小さな鋏が出て来ました。そしてフリフリと横に振っています。

 「ふふふ。三巳に有難うって言っているのかな?」
 「うにゅふふふー♪バイバイなんだよ♪」

 気分上々な三巳は手を振り返して貝探しを続けました。

 「んーみゅ。普通の貝殻はいっぱい見つけたんだけどなー」
 「そうだねぇ。透明な貝殻は無いねぇ」

 しかし探せど探せど玻璃貝は見つかりません。

 「グランの人達はどーやって見つけてるんだろ」
 「戻って聞いてみるかい?」
 「んにゃ。まだいーんだよ。もうちょっと自力で頑張りたい」
 「ふふふ、そうだね。自分で見つけた方が楽しいものね」

 という訳で海に潜って浅瀬をキョロキョロします。
 グランの海には貝や蟹の他にもヒトデやウミウシが居て、少し離れた所には珊瑚礁が広がり色とりどりの魚達が楽しそうに泳いでいます。それらを見ているだけでも楽しいですが、折角なので玻璃貝は見つけたい所存です。

 (おや)

 水中メガネで海の底を見ていたクロが何かに気が付きました。
 チラリと三巳を見るとまだまだキョロキョロが止まりません。
 クロはソッと目線を戻すとニッコリと笑いました。髭も嬉しそうに海に泳いでいる様です。

 「三巳や、見つかったかい?」

 顔を上げたクロは三巳に声を掛けます。
 三巳も顔を上げると首を横に振りました。

 「んーにゃ。中々に難しくて手強いんだよ」
 「う~ん。玻璃貝は透明だからねぇ。海の透明に重なってしまうのかも知れないね」
 「そっかー。それもそーなんだよ。んーみゅ、だったらグランの人達は何で気付けるんだろ」
 「そうだねぇ。自分からここに居るよって教えてくれるのかねぇ」

 腕を組み、考え込んだ三巳でしたが、クロの言葉にハッとします。その動きに合わせてお水に濡れてビシャビシャな耳と尻尾も水滴を撥ねて立ち上がるので、クロが愛娘の可愛らしさに打ちのめされています。
 三巳はそんな親バカなクロを尻目にまた海に潜って行きました。
 そして水面から太陽の位置と、海に差し込む光を良ぉく観察します。

 「うばっ!」

 そしてそれは漸く見つける事が出来たのです。
 海面から降り注ぐ光の柱。それらの殆どが砂の中へと吸収されていきますが、一部分だけ他と違う場所がありました。
 それは光を反射し、波の動きに合わさる様に、キラリ、キラリと小さな七色の輝きを放っていたのです。
 三巳はそーっと近寄り間近で良く観察をします。

 (うな。三巳の影で見えなくなる。うはっ。でもこーして光に当てるとキラキラして綺麗なんだよっ)

 暫く海の中の綺麗な輝きを堪能してからソッとキラキラした物を手に取り海面から顔を上げました。そしてそれをクロに見せに行きます。

 「父ちゃん!玻璃貝見ーつけた!なんだよ♪」
 「ふふふっ。やったねぇ三巳!」
 「うにゅ!うへへへー♪」

 太陽にかざしてキラキラキラリ。三巳は玻璃貝に住んでいる生き物がいないのを確認して大事に尻尾収納へ仕舞いました。

 「玻璃貝は二枚貝なのかな?」

 手に入れたのはレンズの様に真ん丸で、しかし内側には蛤やアサリの様に接続する部分がありました。という事は何処かにもう片方もあるかもしれません。
 見付け方をマスターした三巳はクロと一緒にご機嫌で貝殻探しを続行し、手のひらいっぱいに見つける事が出来たのでした。
しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...