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本編
カカオの苗木ゲットなんだよ♪
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三巳が滞在しているグランでは暑い日が続いています。
この日もカンカンテリテリな太陽の光に、さしもの三巳もグテンとバテていました。
「うにゅぅ~……。暑い……暑いんだよ……。これでまだ夏じゃないなんて……」
風通りの良い木陰を見つけて大の字で突っ伏しています。毛深い尻尾は特に熱を溜めやすく、三巳は何とか熱を逃そうとなるべく地面に広げています。
「おいおい。あんたそれでも獣神か。熱なんていくらでも調整出来るだろうよ」
その横で涼しい顔で木にもたれ掛かっているレオは呆れています。そんなレオもタンクトップにハーフパンツで足もサンダルな海男スタイルです。三巳だってタンクトップに半ズボンに足なんて裸足ですが。
三巳はレオを見て真剣に尻尾を隠そうか悩み出しました。
「今更尻尾が無くなりゃ、パメは不信に思うだろうな」
そんな三巳の心を、正確に読んだレオにスッパリと言い切られて更に重力に押し潰されたようにペシャンと地面と一つになってしまいます。
「そんなに体感調節するの嫌かねぇ」
訳がわからないと溜め息を吐くレオを三巳は見上げました。そしてグニグニと口を引き結びます。
「三巳は……人間らしさを忘れたい訳じゃ無いんだよ……」
地面の冷たさと、肌を撫でる暑い風を感じながらポツリと呟かれた言葉は、獣の聴力を持つレオにしっかりと届きました。
レオはその言葉の意味を正しく理解して目を細めます。
「記憶保持者か……。話には聞いてたが初めて会ったな」
それだけ言うと黙り込んで目を閉じました。
レオはそれ以上何も言いません。三巳の気が済むまで待ってくれるようです。
けれども待てども待てども暑さは無くなりません。むしろ太陽が真上を過ぎると暑さは増していきます。
三巳は諦めてムクリと起き上がりました。
「にゅー。三巳には常夏の暑さは無理みたいなんだよ。グランの人達は何でへいちゃらなんだ?」
周りを見渡せば島民はなんて事ない顔で日向を歩いています。良く焼けた肌は尚の事熱を吸収しやすそうですが、道行く人達は皆笑顔です。
「ずっと住んでりゃ体も順応するってもんだ」
「そういうもんかー」
とはいえ三巳はそれまで待てません。リファラには三巳の帰りを待つ山の民達がいるのですから。
「仕方ない。今はエアコンつけよう」
そう言って三巳は魔法で冷風を作り出しました。上から下に流れていく冷たい風がエアコンぽいです。
「?エアコンってなんだそりゃ」
「冷風とか温風とか作る機械なんだよ。除湿とか加湿も出来るのもあったっけ。構造は知らないけど」
「へえ。そりゃ便利なモンもあったもんだな」
「うぬ。でも三巳はエアコンの風ってあんま好きくないんだよ。扇風機で充分だと思うんだけど、親戚の人達は体に悪いって言うんだ」
「そうかい」
聞いた手前ちゃんと三巳の話を聞いているレオですが、またわからない言葉が出て来てしまったので深掘りは止める事にしました。
取り敢えず動ける様になった三巳はパメの元へと向かいます。約束の時間は決まっていないのでのんびり行きます。
「ごめんくださーい。三巳だよー」
パメの家に着いたら大きな声で呼び掛けます。
するとパメが中から顔を出しました。
「イラッシャイ。オ上ガリナサイナ」
「ぬ?」
出て来たパメは踊り子の服を着ていません。三巳はいつもと違う事に目をパチクリさせます。
言われるままに中に入るとそこには数本の苗木がありました。
「パメっ!パメっ!これ!」
興奮して膨らんだ尻尾を上下に振り、指を真っ直ぐに指す三巳にパメもニコッと返してくれます。
「三巳チャン勉強家ネ。今ノ三巳チャンナラコノ子達任セラレルヨ」
「にゃ―――♪」
嬉しさ爆発の三巳は大きく手を上げると、奇声を上げてパメにガバッと抱き付きました。
「ありがとーパメ!三巳、三巳なっ。頑張ってカカオ育てるんだよっ」
ぎゅぎゅっと抱きしめ返してくれるパメを見上げてキラキラの瞳でお礼を言います。
そんな三巳の耳の後ろを優しく掻き撫でながらパメはうんと頷きます。
「実、付クシタラ持ッテキテナ」
「うん!約束なんだよっ」
「ソレトコレモナ」
「ぬ?」
ひっつき虫になっている三巳をそのまま抱き上げたパメは、鏡の前まで歩いて行くとそこで三巳を降ろします。そして鏡の横に掛けてあった布を三巳に充てがいました。
「!パメっ、これっ、これっ」
充てがわれたのは三巳のサイズにピッタシの、
「三巳チャンノパウヨ」
パウとレイでした。
「うにゃー!ありがとーなんだよ!嬉しいんだよ!」
喜び跳ねる三巳はそのままの勢いでガバッと服を脱ごうとして、脱げませんでした。
「女としての自覚を持て!ったく、着たけりゃ外出てるから終わったら声掛けてくれ」
レオに止められて気付いた三巳は、ちょっぴし白いお耳を赤くして伏せます。
「うぬ」
恥ずかしさ隠しに殊勝な顔で重々しく頷く三巳に、レオはやれやれとその場を後にしました。
レオが見えなくなった事で改めて服を着替える三巳です。鏡の前でクルン、クルン。前からを見て後ろからを見てバッと手を広げた三巳は誇らし気にパメを見ました。
「トッテモ素敵ヨ」
パチンとウインクをされて三巳もにゅふふとご満悦に笑います。
「見せてくる!」
そしてバッと駆けて部屋から出て行きました。
嬉しそうに尻尾をフリフリして出て行った三巳に、パメはクスクスと笑い、
「ラオ君似合う!?似合うー!?」
と部屋の外から聞こえた声に更に笑みを深めたのでした。
この日もカンカンテリテリな太陽の光に、さしもの三巳もグテンとバテていました。
「うにゅぅ~……。暑い……暑いんだよ……。これでまだ夏じゃないなんて……」
風通りの良い木陰を見つけて大の字で突っ伏しています。毛深い尻尾は特に熱を溜めやすく、三巳は何とか熱を逃そうとなるべく地面に広げています。
「おいおい。あんたそれでも獣神か。熱なんていくらでも調整出来るだろうよ」
その横で涼しい顔で木にもたれ掛かっているレオは呆れています。そんなレオもタンクトップにハーフパンツで足もサンダルな海男スタイルです。三巳だってタンクトップに半ズボンに足なんて裸足ですが。
三巳はレオを見て真剣に尻尾を隠そうか悩み出しました。
「今更尻尾が無くなりゃ、パメは不信に思うだろうな」
そんな三巳の心を、正確に読んだレオにスッパリと言い切られて更に重力に押し潰されたようにペシャンと地面と一つになってしまいます。
「そんなに体感調節するの嫌かねぇ」
訳がわからないと溜め息を吐くレオを三巳は見上げました。そしてグニグニと口を引き結びます。
「三巳は……人間らしさを忘れたい訳じゃ無いんだよ……」
地面の冷たさと、肌を撫でる暑い風を感じながらポツリと呟かれた言葉は、獣の聴力を持つレオにしっかりと届きました。
レオはその言葉の意味を正しく理解して目を細めます。
「記憶保持者か……。話には聞いてたが初めて会ったな」
それだけ言うと黙り込んで目を閉じました。
レオはそれ以上何も言いません。三巳の気が済むまで待ってくれるようです。
けれども待てども待てども暑さは無くなりません。むしろ太陽が真上を過ぎると暑さは増していきます。
三巳は諦めてムクリと起き上がりました。
「にゅー。三巳には常夏の暑さは無理みたいなんだよ。グランの人達は何でへいちゃらなんだ?」
周りを見渡せば島民はなんて事ない顔で日向を歩いています。良く焼けた肌は尚の事熱を吸収しやすそうですが、道行く人達は皆笑顔です。
「ずっと住んでりゃ体も順応するってもんだ」
「そういうもんかー」
とはいえ三巳はそれまで待てません。リファラには三巳の帰りを待つ山の民達がいるのですから。
「仕方ない。今はエアコンつけよう」
そう言って三巳は魔法で冷風を作り出しました。上から下に流れていく冷たい風がエアコンぽいです。
「?エアコンってなんだそりゃ」
「冷風とか温風とか作る機械なんだよ。除湿とか加湿も出来るのもあったっけ。構造は知らないけど」
「へえ。そりゃ便利なモンもあったもんだな」
「うぬ。でも三巳はエアコンの風ってあんま好きくないんだよ。扇風機で充分だと思うんだけど、親戚の人達は体に悪いって言うんだ」
「そうかい」
聞いた手前ちゃんと三巳の話を聞いているレオですが、またわからない言葉が出て来てしまったので深掘りは止める事にしました。
取り敢えず動ける様になった三巳はパメの元へと向かいます。約束の時間は決まっていないのでのんびり行きます。
「ごめんくださーい。三巳だよー」
パメの家に着いたら大きな声で呼び掛けます。
するとパメが中から顔を出しました。
「イラッシャイ。オ上ガリナサイナ」
「ぬ?」
出て来たパメは踊り子の服を着ていません。三巳はいつもと違う事に目をパチクリさせます。
言われるままに中に入るとそこには数本の苗木がありました。
「パメっ!パメっ!これ!」
興奮して膨らんだ尻尾を上下に振り、指を真っ直ぐに指す三巳にパメもニコッと返してくれます。
「三巳チャン勉強家ネ。今ノ三巳チャンナラコノ子達任セラレルヨ」
「にゃ―――♪」
嬉しさ爆発の三巳は大きく手を上げると、奇声を上げてパメにガバッと抱き付きました。
「ありがとーパメ!三巳、三巳なっ。頑張ってカカオ育てるんだよっ」
ぎゅぎゅっと抱きしめ返してくれるパメを見上げてキラキラの瞳でお礼を言います。
そんな三巳の耳の後ろを優しく掻き撫でながらパメはうんと頷きます。
「実、付クシタラ持ッテキテナ」
「うん!約束なんだよっ」
「ソレトコレモナ」
「ぬ?」
ひっつき虫になっている三巳をそのまま抱き上げたパメは、鏡の前まで歩いて行くとそこで三巳を降ろします。そして鏡の横に掛けてあった布を三巳に充てがいました。
「!パメっ、これっ、これっ」
充てがわれたのは三巳のサイズにピッタシの、
「三巳チャンノパウヨ」
パウとレイでした。
「うにゃー!ありがとーなんだよ!嬉しいんだよ!」
喜び跳ねる三巳はそのままの勢いでガバッと服を脱ごうとして、脱げませんでした。
「女としての自覚を持て!ったく、着たけりゃ外出てるから終わったら声掛けてくれ」
レオに止められて気付いた三巳は、ちょっぴし白いお耳を赤くして伏せます。
「うぬ」
恥ずかしさ隠しに殊勝な顔で重々しく頷く三巳に、レオはやれやれとその場を後にしました。
レオが見えなくなった事で改めて服を着替える三巳です。鏡の前でクルン、クルン。前からを見て後ろからを見てバッと手を広げた三巳は誇らし気にパメを見ました。
「トッテモ素敵ヨ」
パチンとウインクをされて三巳もにゅふふとご満悦に笑います。
「見せてくる!」
そしてバッと駆けて部屋から出て行きました。
嬉しそうに尻尾をフリフリして出て行った三巳に、パメはクスクスと笑い、
「ラオ君似合う!?似合うー!?」
と部屋の外から聞こえた声に更に笑みを深めたのでした。
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