217 / 362
本編
その頃ロウ村長は
しおりを挟む
三巳がカカオの木の育て方と南の国の踊りを学んでいる頃。リファラでも首脳会談的なものが進んでいました。
「では三巳ちゃんのお山は結界があるから先ずは先遣隊を送ろう」
「山のモンスターは普通に人を襲う。リファラの民だからと友好的かわからぬ以上最低限の戦闘能力は確保してくれ」
「そうだね。彼等も生きる為に狩猟をするだろうから」
「それでいくと矢張りリファラのモンスター達は不思議ですね。私達は会話が出来ませんがそれでもとても文化的だと感じます」
参加しているのはリファラの総理大臣的存在のリドル、山の民村長のロウ、そしてウィンブルドン伯爵です。
ウィンブルドン伯爵の国の王様は出席していません。何故なら今回の集まりは三巳の山を保護しつつ交流出来るよう整えようの会だからです。ウィンブルドン伯爵自身は三巳とお友達になりましたが、ウィンブルドン伯爵の国全体とはそうではありません。だからウィンブルドン伯爵だけが来ているのです。ただ今回の参加は国王にちゃんと伝えてあります。
「そうだねぇ。その理由がリリを守る為というから頭が上がらないよ」
「うむ。あの子には強い加護が付いているからな」
「ほう。矢張りそうですか」
ロウ村長とウィンブルドン伯爵が感心して頷くのを、リドルは嬉しそうに目尻の皺をニッコリと深めました。
「では先遣隊は一度我が領に留まり、山の民より使者を送って頂くという事で宜しいですかな」
「うむ。山の民達も街へ降りて慣れねばならんからその時はよしなに頼む」
ロウ村長なら知らない街でもへいちゃらでしょうが、これからの山の民を思えば他の人も慣れた方が良いでしょう。
外国の人に対しては怖がりな山の民をどう導くか、ロウ村長は考えるだけでニヤリと笑って組んだ腕に力が入りました。障害が大きい方が燃えると言わんばかりに闘志の炎が見えます。
その頃山では山の民が一斉に2度くしゃみをしていた事など知らず会議は続き、そしてトントン拍子に決まっていきました。あまりにもすんなり終わってしまったので予定よりも時間が余った程です。
「まだ明るいな。どうだろう、これから街で食事をしがてら山でのリリの様子を伝えるというのは」
「それは良い。是非あの子の話を聞かせて欲しい」
「あの方の話なら国民も聞きたいのではないでしょうか。オープンカフェで気になる店があります。そこでなら街の人達も聞けて良いのではないでしょうか」
「うむ!では行こう!」
ガタリと席を立ち意気揚々と出口に向かうロウ村長に続き、リドルとウィンブルドン伯爵もニコニコしながらカフェへ向かうのでした。
カタコトと馬車に揺られてロウ村長達はカフェへと向かっています。
ウィンブルドン伯爵が御者の人に場所を伝えて着いた先は、小川のせせらぎと小鳥の囀る唄が心地良い所です。
「ほう。これは落ち着く」
リファラは元々自然豊かな国ですが、それよりもっと自然な感じです。
ポツンと一軒屋な感じのカフェは、山育ちのロウ村長もお家に帰った気持ちになりました。
小川の側には小道が通り、観光をしたり羽を伸ばしたりする人が歩いています。その通り沿いにカフェはあるのでお店も繁盛しているようです。
「すまない。予約をしていたウィンブルドンだが席は出来ているだろうか」
ウィンブルドン伯爵は先触れを出していました。そしてそれはちゃんとカフェの人に話は通っていて、ニコッと笑った店員さんが直ぐに見晴らしの良い通り沿いの席に案内してくれました。
案内されたロウ村長はビックリです。
食事をするのに予約をする事にも驚きましたが、何より準備された席の周りにはもう既に沢山のリファラの民がいたのです。
「おや。何処から聞きつけたのかねぇ」
リドルはおっとりと笑うと、気付いたリファラの民に手を振り挨拶をします。
「先触れに伝える様には言いましたが、いやはやリリ様は愛されていらっしゃる」
原因を作ったウィンブルドン伯爵は頷き納得の顔です。
「これは宴会コースだな!」
お祭り騒ぎの血が騒いだロウ村長は、豪快にニカッ笑い席に着きました。そして何処から話そうかと腕を組んで楽しそうに考えます。
「ではロキ医師への弟子入りの話からしようか」
そして先ずは養子入りした家の様子から話す事に決めて、体全体を使って伝え始めます。時に真面目に。時に可笑しく。如何にリリが楽しく過ごしているかを話す様は、リファラの民の胸を温かい気持ちで満たしてくれます。
こうしてロウ村長による話は尽きる事なく夜まで続いていくのでした。
「では三巳ちゃんのお山は結界があるから先ずは先遣隊を送ろう」
「山のモンスターは普通に人を襲う。リファラの民だからと友好的かわからぬ以上最低限の戦闘能力は確保してくれ」
「そうだね。彼等も生きる為に狩猟をするだろうから」
「それでいくと矢張りリファラのモンスター達は不思議ですね。私達は会話が出来ませんがそれでもとても文化的だと感じます」
参加しているのはリファラの総理大臣的存在のリドル、山の民村長のロウ、そしてウィンブルドン伯爵です。
ウィンブルドン伯爵の国の王様は出席していません。何故なら今回の集まりは三巳の山を保護しつつ交流出来るよう整えようの会だからです。ウィンブルドン伯爵自身は三巳とお友達になりましたが、ウィンブルドン伯爵の国全体とはそうではありません。だからウィンブルドン伯爵だけが来ているのです。ただ今回の参加は国王にちゃんと伝えてあります。
「そうだねぇ。その理由がリリを守る為というから頭が上がらないよ」
「うむ。あの子には強い加護が付いているからな」
「ほう。矢張りそうですか」
ロウ村長とウィンブルドン伯爵が感心して頷くのを、リドルは嬉しそうに目尻の皺をニッコリと深めました。
「では先遣隊は一度我が領に留まり、山の民より使者を送って頂くという事で宜しいですかな」
「うむ。山の民達も街へ降りて慣れねばならんからその時はよしなに頼む」
ロウ村長なら知らない街でもへいちゃらでしょうが、これからの山の民を思えば他の人も慣れた方が良いでしょう。
外国の人に対しては怖がりな山の民をどう導くか、ロウ村長は考えるだけでニヤリと笑って組んだ腕に力が入りました。障害が大きい方が燃えると言わんばかりに闘志の炎が見えます。
その頃山では山の民が一斉に2度くしゃみをしていた事など知らず会議は続き、そしてトントン拍子に決まっていきました。あまりにもすんなり終わってしまったので予定よりも時間が余った程です。
「まだ明るいな。どうだろう、これから街で食事をしがてら山でのリリの様子を伝えるというのは」
「それは良い。是非あの子の話を聞かせて欲しい」
「あの方の話なら国民も聞きたいのではないでしょうか。オープンカフェで気になる店があります。そこでなら街の人達も聞けて良いのではないでしょうか」
「うむ!では行こう!」
ガタリと席を立ち意気揚々と出口に向かうロウ村長に続き、リドルとウィンブルドン伯爵もニコニコしながらカフェへ向かうのでした。
カタコトと馬車に揺られてロウ村長達はカフェへと向かっています。
ウィンブルドン伯爵が御者の人に場所を伝えて着いた先は、小川のせせらぎと小鳥の囀る唄が心地良い所です。
「ほう。これは落ち着く」
リファラは元々自然豊かな国ですが、それよりもっと自然な感じです。
ポツンと一軒屋な感じのカフェは、山育ちのロウ村長もお家に帰った気持ちになりました。
小川の側には小道が通り、観光をしたり羽を伸ばしたりする人が歩いています。その通り沿いにカフェはあるのでお店も繁盛しているようです。
「すまない。予約をしていたウィンブルドンだが席は出来ているだろうか」
ウィンブルドン伯爵は先触れを出していました。そしてそれはちゃんとカフェの人に話は通っていて、ニコッと笑った店員さんが直ぐに見晴らしの良い通り沿いの席に案内してくれました。
案内されたロウ村長はビックリです。
食事をするのに予約をする事にも驚きましたが、何より準備された席の周りにはもう既に沢山のリファラの民がいたのです。
「おや。何処から聞きつけたのかねぇ」
リドルはおっとりと笑うと、気付いたリファラの民に手を振り挨拶をします。
「先触れに伝える様には言いましたが、いやはやリリ様は愛されていらっしゃる」
原因を作ったウィンブルドン伯爵は頷き納得の顔です。
「これは宴会コースだな!」
お祭り騒ぎの血が騒いだロウ村長は、豪快にニカッ笑い席に着きました。そして何処から話そうかと腕を組んで楽しそうに考えます。
「ではロキ医師への弟子入りの話からしようか」
そして先ずは養子入りした家の様子から話す事に決めて、体全体を使って伝え始めます。時に真面目に。時に可笑しく。如何にリリが楽しく過ごしているかを話す様は、リファラの民の胸を温かい気持ちで満たしてくれます。
こうしてロウ村長による話は尽きる事なく夜まで続いていくのでした。
10
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
貴方の隣で私は異世界を謳歌する
紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰?
あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。
わたし、どうなるの?
不定期更新 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる