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本編
その頃ロウ村長は
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三巳がカカオの木の育て方と南の国の踊りを学んでいる頃。リファラでも首脳会談的なものが進んでいました。
「では三巳ちゃんのお山は結界があるから先ずは先遣隊を送ろう」
「山のモンスターは普通に人を襲う。リファラの民だからと友好的かわからぬ以上最低限の戦闘能力は確保してくれ」
「そうだね。彼等も生きる為に狩猟をするだろうから」
「それでいくと矢張りリファラのモンスター達は不思議ですね。私達は会話が出来ませんがそれでもとても文化的だと感じます」
参加しているのはリファラの総理大臣的存在のリドル、山の民村長のロウ、そしてウィンブルドン伯爵です。
ウィンブルドン伯爵の国の王様は出席していません。何故なら今回の集まりは三巳の山を保護しつつ交流出来るよう整えようの会だからです。ウィンブルドン伯爵自身は三巳とお友達になりましたが、ウィンブルドン伯爵の国全体とはそうではありません。だからウィンブルドン伯爵だけが来ているのです。ただ今回の参加は国王にちゃんと伝えてあります。
「そうだねぇ。その理由がリリを守る為というから頭が上がらないよ」
「うむ。あの子には強い加護が付いているからな」
「ほう。矢張りそうですか」
ロウ村長とウィンブルドン伯爵が感心して頷くのを、リドルは嬉しそうに目尻の皺をニッコリと深めました。
「では先遣隊は一度我が領に留まり、山の民より使者を送って頂くという事で宜しいですかな」
「うむ。山の民達も街へ降りて慣れねばならんからその時はよしなに頼む」
ロウ村長なら知らない街でもへいちゃらでしょうが、これからの山の民を思えば他の人も慣れた方が良いでしょう。
外国の人に対しては怖がりな山の民をどう導くか、ロウ村長は考えるだけでニヤリと笑って組んだ腕に力が入りました。障害が大きい方が燃えると言わんばかりに闘志の炎が見えます。
その頃山では山の民が一斉に2度くしゃみをしていた事など知らず会議は続き、そしてトントン拍子に決まっていきました。あまりにもすんなり終わってしまったので予定よりも時間が余った程です。
「まだ明るいな。どうだろう、これから街で食事をしがてら山でのリリの様子を伝えるというのは」
「それは良い。是非あの子の話を聞かせて欲しい」
「あの方の話なら国民も聞きたいのではないでしょうか。オープンカフェで気になる店があります。そこでなら街の人達も聞けて良いのではないでしょうか」
「うむ!では行こう!」
ガタリと席を立ち意気揚々と出口に向かうロウ村長に続き、リドルとウィンブルドン伯爵もニコニコしながらカフェへ向かうのでした。
カタコトと馬車に揺られてロウ村長達はカフェへと向かっています。
ウィンブルドン伯爵が御者の人に場所を伝えて着いた先は、小川のせせらぎと小鳥の囀る唄が心地良い所です。
「ほう。これは落ち着く」
リファラは元々自然豊かな国ですが、それよりもっと自然な感じです。
ポツンと一軒屋な感じのカフェは、山育ちのロウ村長もお家に帰った気持ちになりました。
小川の側には小道が通り、観光をしたり羽を伸ばしたりする人が歩いています。その通り沿いにカフェはあるのでお店も繁盛しているようです。
「すまない。予約をしていたウィンブルドンだが席は出来ているだろうか」
ウィンブルドン伯爵は先触れを出していました。そしてそれはちゃんとカフェの人に話は通っていて、ニコッと笑った店員さんが直ぐに見晴らしの良い通り沿いの席に案内してくれました。
案内されたロウ村長はビックリです。
食事をするのに予約をする事にも驚きましたが、何より準備された席の周りにはもう既に沢山のリファラの民がいたのです。
「おや。何処から聞きつけたのかねぇ」
リドルはおっとりと笑うと、気付いたリファラの民に手を振り挨拶をします。
「先触れに伝える様には言いましたが、いやはやリリ様は愛されていらっしゃる」
原因を作ったウィンブルドン伯爵は頷き納得の顔です。
「これは宴会コースだな!」
お祭り騒ぎの血が騒いだロウ村長は、豪快にニカッ笑い席に着きました。そして何処から話そうかと腕を組んで楽しそうに考えます。
「ではロキ医師への弟子入りの話からしようか」
そして先ずは養子入りした家の様子から話す事に決めて、体全体を使って伝え始めます。時に真面目に。時に可笑しく。如何にリリが楽しく過ごしているかを話す様は、リファラの民の胸を温かい気持ちで満たしてくれます。
こうしてロウ村長による話は尽きる事なく夜まで続いていくのでした。
「では三巳ちゃんのお山は結界があるから先ずは先遣隊を送ろう」
「山のモンスターは普通に人を襲う。リファラの民だからと友好的かわからぬ以上最低限の戦闘能力は確保してくれ」
「そうだね。彼等も生きる為に狩猟をするだろうから」
「それでいくと矢張りリファラのモンスター達は不思議ですね。私達は会話が出来ませんがそれでもとても文化的だと感じます」
参加しているのはリファラの総理大臣的存在のリドル、山の民村長のロウ、そしてウィンブルドン伯爵です。
ウィンブルドン伯爵の国の王様は出席していません。何故なら今回の集まりは三巳の山を保護しつつ交流出来るよう整えようの会だからです。ウィンブルドン伯爵自身は三巳とお友達になりましたが、ウィンブルドン伯爵の国全体とはそうではありません。だからウィンブルドン伯爵だけが来ているのです。ただ今回の参加は国王にちゃんと伝えてあります。
「そうだねぇ。その理由がリリを守る為というから頭が上がらないよ」
「うむ。あの子には強い加護が付いているからな」
「ほう。矢張りそうですか」
ロウ村長とウィンブルドン伯爵が感心して頷くのを、リドルは嬉しそうに目尻の皺をニッコリと深めました。
「では先遣隊は一度我が領に留まり、山の民より使者を送って頂くという事で宜しいですかな」
「うむ。山の民達も街へ降りて慣れねばならんからその時はよしなに頼む」
ロウ村長なら知らない街でもへいちゃらでしょうが、これからの山の民を思えば他の人も慣れた方が良いでしょう。
外国の人に対しては怖がりな山の民をどう導くか、ロウ村長は考えるだけでニヤリと笑って組んだ腕に力が入りました。障害が大きい方が燃えると言わんばかりに闘志の炎が見えます。
その頃山では山の民が一斉に2度くしゃみをしていた事など知らず会議は続き、そしてトントン拍子に決まっていきました。あまりにもすんなり終わってしまったので予定よりも時間が余った程です。
「まだ明るいな。どうだろう、これから街で食事をしがてら山でのリリの様子を伝えるというのは」
「それは良い。是非あの子の話を聞かせて欲しい」
「あの方の話なら国民も聞きたいのではないでしょうか。オープンカフェで気になる店があります。そこでなら街の人達も聞けて良いのではないでしょうか」
「うむ!では行こう!」
ガタリと席を立ち意気揚々と出口に向かうロウ村長に続き、リドルとウィンブルドン伯爵もニコニコしながらカフェへ向かうのでした。
カタコトと馬車に揺られてロウ村長達はカフェへと向かっています。
ウィンブルドン伯爵が御者の人に場所を伝えて着いた先は、小川のせせらぎと小鳥の囀る唄が心地良い所です。
「ほう。これは落ち着く」
リファラは元々自然豊かな国ですが、それよりもっと自然な感じです。
ポツンと一軒屋な感じのカフェは、山育ちのロウ村長もお家に帰った気持ちになりました。
小川の側には小道が通り、観光をしたり羽を伸ばしたりする人が歩いています。その通り沿いにカフェはあるのでお店も繁盛しているようです。
「すまない。予約をしていたウィンブルドンだが席は出来ているだろうか」
ウィンブルドン伯爵は先触れを出していました。そしてそれはちゃんとカフェの人に話は通っていて、ニコッと笑った店員さんが直ぐに見晴らしの良い通り沿いの席に案内してくれました。
案内されたロウ村長はビックリです。
食事をするのに予約をする事にも驚きましたが、何より準備された席の周りにはもう既に沢山のリファラの民がいたのです。
「おや。何処から聞きつけたのかねぇ」
リドルはおっとりと笑うと、気付いたリファラの民に手を振り挨拶をします。
「先触れに伝える様には言いましたが、いやはやリリ様は愛されていらっしゃる」
原因を作ったウィンブルドン伯爵は頷き納得の顔です。
「これは宴会コースだな!」
お祭り騒ぎの血が騒いだロウ村長は、豪快にニカッ笑い席に着きました。そして何処から話そうかと腕を組んで楽しそうに考えます。
「ではロキ医師への弟子入りの話からしようか」
そして先ずは養子入りした家の様子から話す事に決めて、体全体を使って伝え始めます。時に真面目に。時に可笑しく。如何にリリが楽しく過ごしているかを話す様は、リファラの民の胸を温かい気持ちで満たしてくれます。
こうしてロウ村長による話は尽きる事なく夜まで続いていくのでした。
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