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本編
パメさんどこですか?
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風通しの良い屋内に広く絨毯が敷かれ、壁には様々な模様に彩られたタペストリーが隙間なく飾られています。
三巳が今いるその場所は顔役がいるはずの場所です。けれども目の前には片膝を立てて胡座をかいている白いお髭が立派なお爺さんしかいません。まるでサンタクロースの様な長いお髭に三巳は釘付けです。
「眉毛ももっさり。お目々が見えないんだよ」
眉まで白くて真っ白々です。髪の毛も白いですが、とっても短いのでイエティの様だとは思わずに済みました。
お爺さんはレオを見上げ、お髭をもそりと動かしました。
「レオか。久しいな」
「イントネーションが三巳と一緒!」
お髭に隠れた口から聞こえた言葉には独特のイントネーションがありません。グランの人達の言葉を沢山聞いた三巳は驚きます。
「顔役は国一番の長生きなのさ。本人曰く人生経験が豊富らしいぜ」
「おーそうなのかー。凄いなー」
恐らく聞かなくても三巳よりは確実に年下のお爺さんですが、人の世界で長く生きるという事はそれだけ色々あるのでしょう。三巳は素直に感心して頷き尻尾を振りました。
「ほむほむ。暫く顔を見せん内に子供をこさえとったか」
しかし三巳を見て言われたその言葉には、三巳も尻尾をしおしおと垂らして悲しみの表情を浮かべました。
「み、三巳はそんなにお子ちゃまに見えるのか……」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
「相変わらずだな爺さん。あんま揶揄い過ぎないでくれよ。これでも俺の連れなんだ」
「ほむほむ。がーるふれんどか。レオも隅におけんのー」
「がっ、がーるふれんどっ」
「やめてくれ爺さん」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
終始調子を変えずに話すお爺さんに、珍しく三巳が疲れた顔で耳と尻尾を萎らせました。
感情がわかり易く耳と尻尾に出る三巳に、お爺さんは眉毛と髭に隠れた目と口をニコリとさせます。そしてジッと見据えていた片方の眉を上げました。すると眉毛に隠れた海色の目が現れます。
「ほいでこの老いぼれに何用かな?お嬢ちゃん」
体はお爺さんなのにそんな事を感じさせないとても強くて真っ直ぐな目で見て言われた三巳は、どこか母獣に通じる厳格さを感じて尻尾をビッと上げました。
答え方に寄っては母獣のお説教コースと同じ位怖い目に合うと本能で感じたのです。
「三巳はチョコ好きでな、だからカカオの木を育てたいだよ。それでな、苗木を知ってそうなパメって人が何処にいるのか知りたいんだよ」
ドキドキしながら事情を説明すると、お爺さんは海色の目で三巳をジッと見たまま髭を数度なぞります。そしてなぞる手を止めると眉も下げて「ほむほむ」と一つ頷きました。
「まあ良い。こんなこんまい嬢ちゃん神さんが悪い事に使いはせんぢゃろ」
そう言って片膝に手を置いたお爺さんは、「よっこいせ」と言いそうな動きで立ち上がります。そして腰に両手を添えて外へと歩き出しました。
三巳はそんなお爺さんの後を付いて歩きながらレオを見上げます。そして口に手を添えて
「神気漏れてる?」
と、こしょこしょと小声で尋ねます。
レオは不安気な三巳の頭をポンポンと撫でて上を向きました。
「あの爺さんは化け物の部類だ。あんま気にすんな」
過去に色々あったのでしょう。慰めにそう言ったレオの目は理解する事を諦めた色をしていました。
三巳はちょっと聞きたい気もしましたが、人の過去は無闇に詮索しないのがエチケットです。話しても良い時は話してくれるだろうと頷き、一応神気の漏れがないか全体を確認します。そして大丈夫そうだと納得すると改めてお爺さんを具に観察しました。
「くえない人というのはああいう人を言うのかな」
「さて、な。でもまあ、あの爺さんの目は確かだぜ」
一見ただのひょうきんなお爺さんです。けれども三巳が神族だと見抜いた事から只者ではないでしょう。
それでも悪い人には見えないし、何よりレオが紹介してくれた人だから警戒心は抱きません。むしろ楽しい人だなと尻尾を大きく振るのでした。
三巳が今いるその場所は顔役がいるはずの場所です。けれども目の前には片膝を立てて胡座をかいている白いお髭が立派なお爺さんしかいません。まるでサンタクロースの様な長いお髭に三巳は釘付けです。
「眉毛ももっさり。お目々が見えないんだよ」
眉まで白くて真っ白々です。髪の毛も白いですが、とっても短いのでイエティの様だとは思わずに済みました。
お爺さんはレオを見上げ、お髭をもそりと動かしました。
「レオか。久しいな」
「イントネーションが三巳と一緒!」
お髭に隠れた口から聞こえた言葉には独特のイントネーションがありません。グランの人達の言葉を沢山聞いた三巳は驚きます。
「顔役は国一番の長生きなのさ。本人曰く人生経験が豊富らしいぜ」
「おーそうなのかー。凄いなー」
恐らく聞かなくても三巳よりは確実に年下のお爺さんですが、人の世界で長く生きるという事はそれだけ色々あるのでしょう。三巳は素直に感心して頷き尻尾を振りました。
「ほむほむ。暫く顔を見せん内に子供をこさえとったか」
しかし三巳を見て言われたその言葉には、三巳も尻尾をしおしおと垂らして悲しみの表情を浮かべました。
「み、三巳はそんなにお子ちゃまに見えるのか……」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
「相変わらずだな爺さん。あんま揶揄い過ぎないでくれよ。これでも俺の連れなんだ」
「ほむほむ。がーるふれんどか。レオも隅におけんのー」
「がっ、がーるふれんどっ」
「やめてくれ爺さん」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
終始調子を変えずに話すお爺さんに、珍しく三巳が疲れた顔で耳と尻尾を萎らせました。
感情がわかり易く耳と尻尾に出る三巳に、お爺さんは眉毛と髭に隠れた目と口をニコリとさせます。そしてジッと見据えていた片方の眉を上げました。すると眉毛に隠れた海色の目が現れます。
「ほいでこの老いぼれに何用かな?お嬢ちゃん」
体はお爺さんなのにそんな事を感じさせないとても強くて真っ直ぐな目で見て言われた三巳は、どこか母獣に通じる厳格さを感じて尻尾をビッと上げました。
答え方に寄っては母獣のお説教コースと同じ位怖い目に合うと本能で感じたのです。
「三巳はチョコ好きでな、だからカカオの木を育てたいだよ。それでな、苗木を知ってそうなパメって人が何処にいるのか知りたいんだよ」
ドキドキしながら事情を説明すると、お爺さんは海色の目で三巳をジッと見たまま髭を数度なぞります。そしてなぞる手を止めると眉も下げて「ほむほむ」と一つ頷きました。
「まあ良い。こんなこんまい嬢ちゃん神さんが悪い事に使いはせんぢゃろ」
そう言って片膝に手を置いたお爺さんは、「よっこいせ」と言いそうな動きで立ち上がります。そして腰に両手を添えて外へと歩き出しました。
三巳はそんなお爺さんの後を付いて歩きながらレオを見上げます。そして口に手を添えて
「神気漏れてる?」
と、こしょこしょと小声で尋ねます。
レオは不安気な三巳の頭をポンポンと撫でて上を向きました。
「あの爺さんは化け物の部類だ。あんま気にすんな」
過去に色々あったのでしょう。慰めにそう言ったレオの目は理解する事を諦めた色をしていました。
三巳はちょっと聞きたい気もしましたが、人の過去は無闇に詮索しないのがエチケットです。話しても良い時は話してくれるだろうと頷き、一応神気の漏れがないか全体を確認します。そして大丈夫そうだと納得すると改めてお爺さんを具に観察しました。
「くえない人というのはああいう人を言うのかな」
「さて、な。でもまあ、あの爺さんの目は確かだぜ」
一見ただのひょうきんなお爺さんです。けれども三巳が神族だと見抜いた事から只者ではないでしょう。
それでも悪い人には見えないし、何よりレオが紹介してくれた人だから警戒心は抱きません。むしろ楽しい人だなと尻尾を大きく振るのでした。
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