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本編
グラン入国!
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珊瑚の育つ南国の海。白い砂浜。そして緑豊かなジャングル。其れらを背景に佇む青年がいます。
彼は先程まで確かにライオーガの姿をしていました。けれども今は何処からどう見ても人族そのものです。獣人族でもなく、ただの普通の人族です。
「ひゃー!ラオ君変身出来たのかっ!あー!匂いも人っぽい!うひゃー!行ける!?一緒に行けるのか!?」
大興奮で尻尾をブンブカ振って耳をピコピコ動かす三巳の額を、レオは人の形の手で押さえました。
「落ち着け」
「うぬ」
大きな手の平で視界が遮られたことでスンと気を鎮めることに成功した三巳です。耳も尻尾も落ち着きを取り戻しました。けれども良く見ると尻尾の先っぽだけはフリフリ振っていて嬉しさが伝わります。
レオは無意識に漏れる苦笑いを、空いている方の手で隠しました。
「寧ろ三巳の方が大丈夫か?神気ダダ漏れだぜ?」
「うぬ!大丈夫なんだよ!ちゃんと抑えれるっ」
言うなりシュッと漏れ出る神気を引っ込めます。けれども隠そうとしない耳と尻尾はそのままです。
レオが怪訝に見るので三巳は自分の耳を両手で触ってペタンと閉じました。
「耳と尻尾も隠さないとダメか?三巳はこれが無いと落ち着かないんだよ」
「ダメってこたあ無えよ。あの国は獣人族も多いからな」
「おおっ、獣人族は父ちゃん以外初めましてなんだよ」
「ま、それにそれが三巳のチャームポイントだってんならそのままで良いんじゃねーか?可愛いぜ」
サラッと言って三巳の頭を撫でるレオに三巳は胸がドキンと高鳴りました。
(う、うーにゅぅ……。山の民には無いスマートさなんだよ。三巳は聞き慣れなくて照れてしまうんだよ)
けれども褒められて喜ばない三巳はいません。「にゅふふふふ~♪」とご機嫌に鼻歌混じりに笑いが止まりません。
「それじゃあいっちょ行くか」
歩き出した旅人姿のレオを追い掛けて三巳も行きます。そして尻尾収納から身分証を取り出してハタと気付きました。
(ラオ君持ってないよな。コレ。むむ……大丈夫なんだよっ、三巳ちゃんとお金も持って来たからなっ。入場料は三巳に任せるんだよっ)
ドヤ顔のお姉さん顔でレオを見上げる三巳です。
勿論そんな三巳の心内など知らないレオはサクサクとグランの入り口に向かって歩いて行きます。
そして到着しました。三巳念願のグラン(入り口)です。
そして三巳はガーン!と雷に打たれました。
「うにゅぅぅ……身分証が要らない国があったなんて……!」
そうです。なんとグランには国壁など無く、また入り口も便宜上設けられただけのテーマパークっぽい形の枠組みだけだったのです。つまり入り放題出放題です。
「だ、大丈夫なのか!?」
他国の事なのに心配してオロオロする三巳は、地球の国家間の諍いのニュースを思い出して青褪めます。
「ヤー、大丈夫ダヨ旅ノ人ー。ココ滅多ニ人来ナイ陸ノ孤島ネー」
三巳とは対照的にあっけらかんと笑うのは南の国っぽくラフな、けれどもお洒落な感じの服を着た一応門番っぽい仕事をしている人族のお兄さんです。手に持っているのは槍です。飾りに鷹の羽っぽいのが付いています。
三巳は一瞬にしてテーマパークに来たと勘違いしちゃいます。
「うぬ。それで入場料を払う窓口は何処なんだよ?」
「ダカラタダダヨー」
チケット売り場を探してキョロキョロする三巳に、門番のお兄さんはスンとした顔に口をニコリとさせて言いました。
そして隣で事の成り行きを見守っているレオは
(神族って奴は変なのが多いのかね)
とこれまたスンとした顔をしていました。
「イーカラ入ルナラ入ルー」
門番のお兄さんに背中を押され、三巳はドキドキしながら門を潜ります。
門を潜るとそこはもう憧れの南の国です。そこらかしこにラフな格好の老若男女がゆったりまったり過ごしています。人族と獣人族が同じ位いるでしょうか。クロの様に二足歩行の動物っぽい獣人族がいる中に、三巳の様に肌は人族で獣の耳と尻尾が生えている人達もチラホラいます。それでも顔立ちは人族と獣人族の間の子な顔で、三巳の様に完全に人族な顔の人は今のところ見当たりません。
「ぬぅー。リリが言ってたのはコレかー。三巳はハーフにしてもちょっと異質な見た目だったんだなー」
三巳は自身の顔をモニモニ触ってハーフらしき人達と比べました。
「いねえ訳じゃねえんだろうが。ま、珍しい見た目ってのはそうかもな」
レオも三巳の頭をポフポフ叩いて撫で撫でして言います。撫でると三巳がどうにも気持ち良さそうな顔をするのでつい撫でてしまいます。
沢山撫でられて満足した三巳は気を取り直していざ観光……をしようとしてそうでない事を思い出して頭を振りました。
「違うんだよ。カカオの木なんだよ。早く帰るって約束したからな。先ずはカカオの木を探すんだよ」
チラチラと観光したい気持ちを横目に三巳はキリリとした顔を作り、いざ探索を始めるのでした。
彼は先程まで確かにライオーガの姿をしていました。けれども今は何処からどう見ても人族そのものです。獣人族でもなく、ただの普通の人族です。
「ひゃー!ラオ君変身出来たのかっ!あー!匂いも人っぽい!うひゃー!行ける!?一緒に行けるのか!?」
大興奮で尻尾をブンブカ振って耳をピコピコ動かす三巳の額を、レオは人の形の手で押さえました。
「落ち着け」
「うぬ」
大きな手の平で視界が遮られたことでスンと気を鎮めることに成功した三巳です。耳も尻尾も落ち着きを取り戻しました。けれども良く見ると尻尾の先っぽだけはフリフリ振っていて嬉しさが伝わります。
レオは無意識に漏れる苦笑いを、空いている方の手で隠しました。
「寧ろ三巳の方が大丈夫か?神気ダダ漏れだぜ?」
「うぬ!大丈夫なんだよ!ちゃんと抑えれるっ」
言うなりシュッと漏れ出る神気を引っ込めます。けれども隠そうとしない耳と尻尾はそのままです。
レオが怪訝に見るので三巳は自分の耳を両手で触ってペタンと閉じました。
「耳と尻尾も隠さないとダメか?三巳はこれが無いと落ち着かないんだよ」
「ダメってこたあ無えよ。あの国は獣人族も多いからな」
「おおっ、獣人族は父ちゃん以外初めましてなんだよ」
「ま、それにそれが三巳のチャームポイントだってんならそのままで良いんじゃねーか?可愛いぜ」
サラッと言って三巳の頭を撫でるレオに三巳は胸がドキンと高鳴りました。
(う、うーにゅぅ……。山の民には無いスマートさなんだよ。三巳は聞き慣れなくて照れてしまうんだよ)
けれども褒められて喜ばない三巳はいません。「にゅふふふふ~♪」とご機嫌に鼻歌混じりに笑いが止まりません。
「それじゃあいっちょ行くか」
歩き出した旅人姿のレオを追い掛けて三巳も行きます。そして尻尾収納から身分証を取り出してハタと気付きました。
(ラオ君持ってないよな。コレ。むむ……大丈夫なんだよっ、三巳ちゃんとお金も持って来たからなっ。入場料は三巳に任せるんだよっ)
ドヤ顔のお姉さん顔でレオを見上げる三巳です。
勿論そんな三巳の心内など知らないレオはサクサクとグランの入り口に向かって歩いて行きます。
そして到着しました。三巳念願のグラン(入り口)です。
そして三巳はガーン!と雷に打たれました。
「うにゅぅぅ……身分証が要らない国があったなんて……!」
そうです。なんとグランには国壁など無く、また入り口も便宜上設けられただけのテーマパークっぽい形の枠組みだけだったのです。つまり入り放題出放題です。
「だ、大丈夫なのか!?」
他国の事なのに心配してオロオロする三巳は、地球の国家間の諍いのニュースを思い出して青褪めます。
「ヤー、大丈夫ダヨ旅ノ人ー。ココ滅多ニ人来ナイ陸ノ孤島ネー」
三巳とは対照的にあっけらかんと笑うのは南の国っぽくラフな、けれどもお洒落な感じの服を着た一応門番っぽい仕事をしている人族のお兄さんです。手に持っているのは槍です。飾りに鷹の羽っぽいのが付いています。
三巳は一瞬にしてテーマパークに来たと勘違いしちゃいます。
「うぬ。それで入場料を払う窓口は何処なんだよ?」
「ダカラタダダヨー」
チケット売り場を探してキョロキョロする三巳に、門番のお兄さんはスンとした顔に口をニコリとさせて言いました。
そして隣で事の成り行きを見守っているレオは
(神族って奴は変なのが多いのかね)
とこれまたスンとした顔をしていました。
「イーカラ入ルナラ入ルー」
門番のお兄さんに背中を押され、三巳はドキドキしながら門を潜ります。
門を潜るとそこはもう憧れの南の国です。そこらかしこにラフな格好の老若男女がゆったりまったり過ごしています。人族と獣人族が同じ位いるでしょうか。クロの様に二足歩行の動物っぽい獣人族がいる中に、三巳の様に肌は人族で獣の耳と尻尾が生えている人達もチラホラいます。それでも顔立ちは人族と獣人族の間の子な顔で、三巳の様に完全に人族な顔の人は今のところ見当たりません。
「ぬぅー。リリが言ってたのはコレかー。三巳はハーフにしてもちょっと異質な見た目だったんだなー」
三巳は自身の顔をモニモニ触ってハーフらしき人達と比べました。
「いねえ訳じゃねえんだろうが。ま、珍しい見た目ってのはそうかもな」
レオも三巳の頭をポフポフ叩いて撫で撫でして言います。撫でると三巳がどうにも気持ち良さそうな顔をするのでつい撫でてしまいます。
沢山撫でられて満足した三巳は気を取り直していざ観光……をしようとしてそうでない事を思い出して頭を振りました。
「違うんだよ。カカオの木なんだよ。早く帰るって約束したからな。先ずはカカオの木を探すんだよ」
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