獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

社食には夢が詰まっているんだよ

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 「という訳で三巳はこれからもリファラの皆と仲良ししたいんだよ」

 そう言って締め括った三巳は、お口の周りにソースをたっぷり付けています。
 山の事を語るのは楽しくて、ついつい長話しになってしまったのです。冷めていく料理をチロチロ気にする三巳に、リドルは苦笑して、オーウェンギルド長は盛大な溜息を吐いて食べながら話す事を許してくれたのです。
 それでもお口に物を入れたままは話さなかった三巳は、やり切った感満載で「むふー」と鼻息を漏らすのでした。

 「成る程、迷いの森にその様な秘密があったのか」

 リドルは思慮深く顎を摩ると一度目を閉じました。そしてもう一度目を開けた時にはニコニコと優しい眼差しで三巳を見ました。

 「これを公言してしまうと山の周りが騒がしくなってしまうよ。大丈夫かい?」
 「う。うぬ。大丈夫だ。……多分」

 心配するリドルに視線が揺らいだ三巳でしたが、トシンと胸を叩いて強気の姿勢を見せます。最後の言葉は小さ過ぎて隣にいたオーウェンギルド長にしか聞こえていないでしょう。

 「はぁーったく……。
 おい獣神、何も公言までしてやる事はない。付き合う奴ってのは自分で選んでくもんだ。
 ただ噂ってのは好き勝手飛びやがるがな。そういう手合いはそれこそ結界が弾いて仕舞いだろうがよ。迷いの森は無くすこたぁねぇってこった」
 「うにゅ。結界は消さないぞ。三巳はこあいの嫌いなんだよ」
 「なら問題はねぇ。初めは有象無象が湧いて出るが、誰も好き好んで迷いたかはねぇもんだぜ。いずれ落ち着くだろうよ」

 オーウェンギルド長はそう言いますが、入れなくともそれなりに悪い事をする人というのもは出るものです。
 けれども其れ等はギルドで解決すれば良いと、オーウェンギルド長は思っているのでした。そしてそれをわざわざ三巳に教える気もないようです。

 「うにゅ!」

 三巳は元気良く頷き、そして追加で運ばれて来た料理に手を付けました。話す事は話したので、後はリドルの判断次第なのです。よって温かい料理を求めて注文していたのです。
 まくまく、もぐもぐ。頬袋をいっぱいに頬張る三巳に、リドルは慈愛の微笑みで、オーウェンギルド長は眉間を抑えて呆れを隠しません。

 「はっはっは!いっぱい食べれるのは健康な証拠だね。たんと食べなさい。
 さて、では我々は今の話を詰めていこうか」
 「ですな。恐らくリファラの者はこれから大きな決断を迫られるだろう。その為にも国交は慎重に、かつ綿密に行った方が良い」

 大人のお話し合いを始めた2人に、三巳は耳だけピクピク参加しつつもそれ以外は料理に全神経を集中しました。

 (うはー、これも美味しいんだよ)

 話し合いの邪魔をしないように声は出さずに舌鼓を打ちます。
 街でも外食は沢山しましたが、社食にはそれとは違う魅力が詰まっています。今食べている物も街で食べた物より少し違い、見た目はシンプルになって、でも使っている材料の種類は沢山に増えていました。

 (おお!これはポテトサラダに近いんだよ。そしたらこっちの丸いパンに切れ目を入れて、ほんでこっちのコロッケっぽいのを挟んで……ぬひひひ!バーガーみたいになったんだよ♪)

 それを更にアレンジをして裏メニューを量産していきます。
 それをあまりにも美味しそうに頬張るので、リドルは話し合いをしつつも横目で見ながら

 (アレンジを広めるのも良いねぇ)

 と、目の皺を深く微笑むのでした。

 そしてその後、リファラを発信源に外食アレンジが世界的に流行るのでした。
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