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本編
三巳、久し振りの山を堪能する
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白いフワモコ雲が青空に浮かぶ爽やかな昼間、山では甲高い声が縦横無尽に響いていました。
「よーろれっひひー♪」
ガサガサ、サワワ。木々の枝葉が揺れて擦れる音と共に聞こえる楽し気な声は、勿論三巳です。枝から枝へ右手で掴み、遠心力で飛んで次の枝を左で掴みしています。
「にょはーっはっはっはー!たっのしーぞー♪」
山の起伏もなんのその。上に下にとターザンが如く駆け巡ります。
「ふぬー。やっぱり三巳はこの山が一番落ち着くんだよ」
街では良い子にしていた分、羽目が外れまくりです。
とはいえただ単に遊んでいる訳ではありません。あっちをチラリ。こっちをチラリと山の変化を確認しているのです。
そうしていると通りすがりに出会うモンスターや動物達が声を掛けてくれました。
「ぐがっ、久し振りだな三巳」
背比べの崖では小鬼達が手を振って、その足元には小さな子小鬼が顔を覗かせています。
「おー!増えてるー!」
子小鬼だった子達も今では立派な青年になっています。代わりにヨボヨボさんも増えてて三巳はニシニシ笑いました。
きつい斜面の木々が沢山生えている場所では、ホーンラビットが巣穴から鼻をヒスヒスさせて出て来てくれます。
『あんらまー今日も元気やねぇ』
『かーちゃんだれー?』
「ウサやんも家族出来てるー!」
見慣れた顔の後から、見慣れない小さな影がピョコンと跳ねて出て来て三巳はビックリです。ウサやんはずっと一匹狼よろしく独り身だったのでビックリも一入です。
『そおいえば長い事お出掛けしとったねぇ。どうやったん?人様の世界言うんは』
「楽しかった!人族も捨てたもんじゃなかったんだよ」
『そうなんやねぇ、うっとこが居た時は人族同士で戦い合ってばかりだったけど』
『リファラの一件が良い様に作用したのだろう』
憂い顔で髭をヒクヒクさせるウサやんですが、三巳の後ろからした声に顔を綻ばせました。
『おかえりアンタ』
『ただいまハニー』
途端に生じたピンク色の暖かい空気に三巳は、
(ウサやんが……ハニー……)
と慄きましたが友達の恋路は全力で祝福したい性分なので
「結婚おめでとーなんだよー」
と素直に言いました。
「昔の事は三巳にはわからないけど、皆気の良い奴ばっかで楽しいぞ。とくにジョナサンは良い奴だ!三巳といっぱい遊んでくれたしたな。リファラならモンスターも共存してるから旅行先には打って付けなんだよ」
『せやね。今度ユトはんの案内で行ってみても良いやもしれんね』
そんなこんなでターザンごっこで山を駆け巡った三巳は、その先々で再会した者達にリファラを紹介しました。
そして三巳の預かり知らぬ所で、ユトは観光案内モンスターとして忙しくなるのでした。
「よーろれっひひー♪」
ガサガサ、サワワ。木々の枝葉が揺れて擦れる音と共に聞こえる楽し気な声は、勿論三巳です。枝から枝へ右手で掴み、遠心力で飛んで次の枝を左で掴みしています。
「にょはーっはっはっはー!たっのしーぞー♪」
山の起伏もなんのその。上に下にとターザンが如く駆け巡ります。
「ふぬー。やっぱり三巳はこの山が一番落ち着くんだよ」
街では良い子にしていた分、羽目が外れまくりです。
とはいえただ単に遊んでいる訳ではありません。あっちをチラリ。こっちをチラリと山の変化を確認しているのです。
そうしていると通りすがりに出会うモンスターや動物達が声を掛けてくれました。
「ぐがっ、久し振りだな三巳」
背比べの崖では小鬼達が手を振って、その足元には小さな子小鬼が顔を覗かせています。
「おー!増えてるー!」
子小鬼だった子達も今では立派な青年になっています。代わりにヨボヨボさんも増えてて三巳はニシニシ笑いました。
きつい斜面の木々が沢山生えている場所では、ホーンラビットが巣穴から鼻をヒスヒスさせて出て来てくれます。
『あんらまー今日も元気やねぇ』
『かーちゃんだれー?』
「ウサやんも家族出来てるー!」
見慣れた顔の後から、見慣れない小さな影がピョコンと跳ねて出て来て三巳はビックリです。ウサやんはずっと一匹狼よろしく独り身だったのでビックリも一入です。
『そおいえば長い事お出掛けしとったねぇ。どうやったん?人様の世界言うんは』
「楽しかった!人族も捨てたもんじゃなかったんだよ」
『そうなんやねぇ、うっとこが居た時は人族同士で戦い合ってばかりだったけど』
『リファラの一件が良い様に作用したのだろう』
憂い顔で髭をヒクヒクさせるウサやんですが、三巳の後ろからした声に顔を綻ばせました。
『おかえりアンタ』
『ただいまハニー』
途端に生じたピンク色の暖かい空気に三巳は、
(ウサやんが……ハニー……)
と慄きましたが友達の恋路は全力で祝福したい性分なので
「結婚おめでとーなんだよー」
と素直に言いました。
「昔の事は三巳にはわからないけど、皆気の良い奴ばっかで楽しいぞ。とくにジョナサンは良い奴だ!三巳といっぱい遊んでくれたしたな。リファラならモンスターも共存してるから旅行先には打って付けなんだよ」
『せやね。今度ユトはんの案内で行ってみても良いやもしれんね』
そんなこんなでターザンごっこで山を駆け巡った三巳は、その先々で再会した者達にリファラを紹介しました。
そして三巳の預かり知らぬ所で、ユトは観光案内モンスターとして忙しくなるのでした。
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