150 / 345
本編
すっかりぽんと三巳ペース
しおりを挟む
怪我人と病人に出来る限りの応急処置が終わりました。
敵対心を抱いていたのに優しく接せられ、すり減った心は温かいものに包まれています。
『乗り物酔いちたら言ってなー』
「大丈夫だ~」
「こ、この程度。なんのこれしきっ」
すっかりペースを持っていかれ、でもなんだかちょっぴし良い気分でライドゥーラの民は風に揺れていました。
今、大きな大きな孔雀に変身した三巳が、もっと大きな大きなゴンドラを持って空を飛んでいます。勿論飾り羽根も大きく広げています。
そんな状態でリファラに向かっていれば、見上げた人達がなんだなんだと騒ぎます。
「って、おい!?この人数をいきなり国に入れる気か!?」
流石に今は落ち着いているとはいえ、それはあまりに危険だとオーウェンギルド長が慌てて止めました。
「大丈夫。事前にリファラのみんなと相談して決めた事なの」
リリはそれに首をゆったりと横に振り、微笑みを浮かべて止めるのを止めました。
『みんなー!ライドゥーラの民達連れて来たじょー!』
リファラの一番広い広場の上空で、三巳が声を張り上げ伝えました。
すると下にいた人達は慣れた様子でゴンドラの誘導を開始しました。もうすっかり三巳の奇行には慣れっこなんです。
「いやー。まさか上から来るとは思わなかったけどな」
オーライオーライと掛け声高くジェスチャーで知らせる人々は、苦笑いで楽しんでいました。
言われた通りに徐々に徐々にゆっくりゆっくり下降して、最後にゴンドラをみんなで優しく地面に降ろします。
ゴンドラが揺れなくなった事でライドゥーラの民はホッと一安心。胸を撫で下ろしています。
やっぱり未確認生命体なクジャクのゴンドラは怖かったみたいです。
「やあ!ようこそリファラへ!」
「さあさ、疲れたろう。先ずは腰を落ち着ける場所に案内するよ」
ゴンドラの枠が取り外されると、次から次へとリファラの民が押し寄せて、ライドゥーラの民の手を取っていきます。
これにはライドゥーラの民は驚き慄き目がパチクリです。
「お、お前達っ、オレ達が憎くないのか!?」
「「「うん?」」」
誰かが代表して上げた驚きの声に、しかしリファラの民は揃って小首を傾げました。
「それを言ったらお兄さん達もあたし達が憎くないのかい?」
リファラの中でも肝っ玉そうな女性が聞き返しました。
思わず聞き返す位に今のライドゥーラの民は身形が貧しかったのです。
「に、憎いさ!」
「バカ!これは私達の自業自得だって言ったろ!」
「でも!」
これに反応して食ってかかった武装した男の人に、穏健派の人達が反論して仲間同士で喧嘩を始めてしまいます。
「あらあら、喧嘩するのも仲が良い証拠って言うけどね。今はみんな体を休めるのが先が良いよ」
その間に入って止めたのは穏やかそうなリファラのお婆ちゃんです。
「ほら、疲れたりお腹が空いてるとイライラしちゃうからね。こっちへおいでなさいな」
腰が曲がっているのにピンシャンとした動きで武装した男の人の手を取ります。
皺くちゃだらけの手で包むと、見た目を裏切る力強さで男の人を引っ張って行ってしまいました。
「おいっ、婆ちゃん!」
「はいはい。お話なら後でちゃぁんとこの婆が聞きますよ」
ニコニコ笑顔でゆったり優しく引っ張られ、さしもの武装した男の人もタジタジです。
「なんだよ。何なんだよこれっ。くそっ!調子の狂う!」
文句を言いながらも周りの目があまりにも穏やかで、見守る空気に大人しく連れて行かれました。
因みに調子が狂い始めた原因は三巳クジャクの所為だったりします。人間予期せぬ大事の前には小事は疎かになりがちです。今回意図せずそれが功を奏していた事は、三巳は全く気付いていません。
(なーんだ。悪い事言っててもみんな怖い人じゃなかったんだよ。良かったー)
とまで呑気に思う位には気付いていません。
結局この日どころか体が本調子になるまで、ライドゥーラの民はお世話になりまくるのでした。
敵対心を抱いていたのに優しく接せられ、すり減った心は温かいものに包まれています。
『乗り物酔いちたら言ってなー』
「大丈夫だ~」
「こ、この程度。なんのこれしきっ」
すっかりペースを持っていかれ、でもなんだかちょっぴし良い気分でライドゥーラの民は風に揺れていました。
今、大きな大きな孔雀に変身した三巳が、もっと大きな大きなゴンドラを持って空を飛んでいます。勿論飾り羽根も大きく広げています。
そんな状態でリファラに向かっていれば、見上げた人達がなんだなんだと騒ぎます。
「って、おい!?この人数をいきなり国に入れる気か!?」
流石に今は落ち着いているとはいえ、それはあまりに危険だとオーウェンギルド長が慌てて止めました。
「大丈夫。事前にリファラのみんなと相談して決めた事なの」
リリはそれに首をゆったりと横に振り、微笑みを浮かべて止めるのを止めました。
『みんなー!ライドゥーラの民達連れて来たじょー!』
リファラの一番広い広場の上空で、三巳が声を張り上げ伝えました。
すると下にいた人達は慣れた様子でゴンドラの誘導を開始しました。もうすっかり三巳の奇行には慣れっこなんです。
「いやー。まさか上から来るとは思わなかったけどな」
オーライオーライと掛け声高くジェスチャーで知らせる人々は、苦笑いで楽しんでいました。
言われた通りに徐々に徐々にゆっくりゆっくり下降して、最後にゴンドラをみんなで優しく地面に降ろします。
ゴンドラが揺れなくなった事でライドゥーラの民はホッと一安心。胸を撫で下ろしています。
やっぱり未確認生命体なクジャクのゴンドラは怖かったみたいです。
「やあ!ようこそリファラへ!」
「さあさ、疲れたろう。先ずは腰を落ち着ける場所に案内するよ」
ゴンドラの枠が取り外されると、次から次へとリファラの民が押し寄せて、ライドゥーラの民の手を取っていきます。
これにはライドゥーラの民は驚き慄き目がパチクリです。
「お、お前達っ、オレ達が憎くないのか!?」
「「「うん?」」」
誰かが代表して上げた驚きの声に、しかしリファラの民は揃って小首を傾げました。
「それを言ったらお兄さん達もあたし達が憎くないのかい?」
リファラの中でも肝っ玉そうな女性が聞き返しました。
思わず聞き返す位に今のライドゥーラの民は身形が貧しかったのです。
「に、憎いさ!」
「バカ!これは私達の自業自得だって言ったろ!」
「でも!」
これに反応して食ってかかった武装した男の人に、穏健派の人達が反論して仲間同士で喧嘩を始めてしまいます。
「あらあら、喧嘩するのも仲が良い証拠って言うけどね。今はみんな体を休めるのが先が良いよ」
その間に入って止めたのは穏やかそうなリファラのお婆ちゃんです。
「ほら、疲れたりお腹が空いてるとイライラしちゃうからね。こっちへおいでなさいな」
腰が曲がっているのにピンシャンとした動きで武装した男の人の手を取ります。
皺くちゃだらけの手で包むと、見た目を裏切る力強さで男の人を引っ張って行ってしまいました。
「おいっ、婆ちゃん!」
「はいはい。お話なら後でちゃぁんとこの婆が聞きますよ」
ニコニコ笑顔でゆったり優しく引っ張られ、さしもの武装した男の人もタジタジです。
「なんだよ。何なんだよこれっ。くそっ!調子の狂う!」
文句を言いながらも周りの目があまりにも穏やかで、見守る空気に大人しく連れて行かれました。
因みに調子が狂い始めた原因は三巳クジャクの所為だったりします。人間予期せぬ大事の前には小事は疎かになりがちです。今回意図せずそれが功を奏していた事は、三巳は全く気付いていません。
(なーんだ。悪い事言っててもみんな怖い人じゃなかったんだよ。良かったー)
とまで呑気に思う位には気付いていません。
結局この日どころか体が本調子になるまで、ライドゥーラの民はお世話になりまくるのでした。
10
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
料理人がいく!
八神
ファンタジー
ある世界に天才料理人がいた。
↓
神にその腕を認められる。
↓
なんやかんや異世界に飛ばされた。
↓
ソコはレベルやステータスがあり、HPやMPが見える世界。
↓
ソコの食材を使った料理を極めんとする事10年。
↓
主人公の住んでる山が戦場になる。
↓
物語が始まった。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。
碧
児童書・童話
異世界転生したものの、チートもなければ、転生特典も特になし。チート無双も冒険もしないけど、現代知識を活かしてマイペースに生きていくゆるふわ少年の日常系ストーリー。テンプレっぽくマヨネーズとか作ってみたり、書類改革や雑貨の作成、はてにはデトックス効果で治療不可の傷を癒したり……。チートもないが自重もない!料理に生産、人助け、溺愛気味の家族や可愛い婚約者らに囲まれて今日も自由に過ごします。ゆるふわ癒し系異世界ファンタジーここに開幕!
王都から追放されて、貴族学院の落ちこぼれ美少女たちを教育することになりました。
スタジオ.T
ファンタジー
☆毎日更新中☆
護衛任務の際に持ち場を離れて、仲間の救出を優先した王都兵団のダンテ(主人公)。
依頼人を危険に晒したとして、軍事裁判にかけられたダンテは、なぜか貴族学校の教員の職を任じられる。
疑問に思いながらも学校に到着したダンテを待っていたのは、五人の問題児たち。彼らを卒業させなければ、牢獄行きという崖っぷちの状況の中で、さまざまなトラブルが彼を襲う。
学園魔導ハイファンタジー。
◆◆◆
登場人物紹介
ダンテ・・・貴族学校の落ちこぼれ『ナッツ』クラスの担任。元王都兵団で、小隊長として様々な戦場を戦ってきた。戦闘経験は豊富だが、当然教員でもなければ、貴族でもない。何かと苦労が多い。
リリア・フラガラッハ・・・ナッツクラスの生徒。父親は剣聖として名高い人物であり、剣技における才能はピカイチ。しかし本人は重度の『戦闘恐怖症』で、実技試験を突破できずに落ちこぼれクラスに落とされる。
マキネス・サイレウス・・・ナッツクラスの生徒。治療魔導師の家系だが、触手の召喚しかできない。練習で校舎を破壊してしまう問題児。ダンテに好意を寄せている。
ミミ・・・ナッツクラスの生徒。猫耳の亜人。本来、貴族学校に亜人は入ることはできないが、アイリッシュ卿の特別措置により入学した。運動能力と魔法薬に関する知識が素晴らしい反面、学科科目が壊滅的。語尾は『ニャ』。
シオン・ルブラン・・・ナッツクラスの生徒。金髪ツインテールのムードメーカー。いつもおしゃれな服を着ている。特筆した魔導はないが、頭の回転も早く、学力も並以上。素行不良によりナッツクラスに落とされた。
イムドレッド・ブラッド・・・ナッツクラスの生徒。暗殺者の家系で、上級生に暴力を振るってクラスを落とされた問題児。現在不登校。シオンの幼馴染。
フジバナ・カイ・・・ダンテの元部下。ダンテのことを慕っており、窮地に陥った彼を助けにアカデミアまでやって来る。真面目な性格だが、若干天然なところがある。
アイリッシュ卿・・・行政司法機関「賢老院」のメンバーの一人。ダンテを牢獄送りから救い、代わりにナッツクラスの担任に任命した張本人。切れ者と恐れられるが、基本的には優しい老婦人。
バーンズ卿・・・何かとダンテを陥れようとする「賢老院」のメンバーの一人。ダンテが命令違反をしたことを根に持っており、どうにか牢獄送りにしてやろうと画策している。長年の不養生で、メタボ真っ盛り。
ブラム・バーンズ・・・最高位のパラディンクラスの生徒。リリアたちと同学年で、バーンズ家の嫡子。ナッツクラスのことを下に見ており、自分が絶対的な強者でないと気が済まない。いつも部下とファンの女子生徒を引き連れている。
おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~
ハル*
ファンタジー
今日も今日とて、社畜として生きて日付をまたいでの帰路の途中。
高校の時に両親を事故で亡くして以降、何かとお世話になっている叔母の深夜食堂に寄ろうとした俺。
いつものようにドアに手をかけて、暖簾をぐぐりかけた瞬間のこと。
足元に目を開けていられないほどの眩しい光とともに、見たことがない円形の文様が現れる。
声をあげる間もなく、ぎゅっと閉じていた目を開けば、目の前にはさっきまであった叔母さんの食堂の入り口などない。
代わりにあったのは、洞窟の入り口。
手にしていたはずの鞄もなく、近くにあった泉を覗きこむとさっきまで見知っていた自分の姿はそこになかった。
泉の近くには、一冊の本なのか日記なのかわからないものが落ちている。
降り出した雨をよけて、ひとまずこの場にたどり着いた時に目の前にあった洞窟へとそれを胸に抱えながら雨宿りをすることにした主人公・水兎(ミト)
『ようこそ、社畜さん。アナタの心と体を癒す世界へ』
表紙に書かれている文字は、日本語だ。
それを開くと見たことがない文字の羅列に戸惑い、本を閉じる。
その後、その物の背表紙側から出てきた文字表を見つつ、文字を認識していく。
時が過ぎ、日記らしきそれが淡く光り出す。
警戒しつつ開いた日記らしきそれから文字たちが浮かび上がって、光の中へ。そして、その光は自分の中へと吸い込まれていった。
急に脳内にいろんな情報が増えてきて、知恵熱のように頭が熱くなってきて。
自分には名字があったはずなのに、ここに来てからなぜか思い出せない。
そしてさっき泉で見た自分の姿は、自分が知っている姿ではなかった。
25の姿ではなく、どう見ても10代半ばにしか見えず。
熱にうなされながら、一晩を過ごし、目を覚ました目の前にはやたらとおしゃべりな猫が二本足で立っていた。
異世界転移をした水兎。
その世界で、元の世界では得られずにいた時間や人との関わりあう時間を楽しみながら、ちょいちょいやらかしつつ旅に出る…までが長いのですが、いずれ旅に出てのんびり過ごすお話です。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる