獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

クリスマスパーティー♪

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 薄ら雪が積もり始めた頃、広場のシンボルツリー前には村中の子供達が集まっていました。
 その周囲を囲む様に長テーブルが設置され、その上には鳥の丸焼きやらケーキやらが所狭しと置かれています。今日は楽しいクリスマスパーティーの日です。

 「じんぐるぐるー♪じんぐるぐるー♪」
 「真っ赤なユニトナカーイー♪お空を駆け回るー♪」

 子供達は一様に目を輝かせて歌い踊っては、クリスマスツリーの根元を期待の眼差しで見つめます。

 「そんなに穴が開くほど見ても、プレゼントはまだ出てこないよ。
 クリスマスプレゼントはイヴの夜、みんなが寝静まった頃に良い子の為にサンタさんがくれる物だからね」
 「みんなは良い子かなー?」
 「良い子だよ!おうちのお手伝いいっぱいしたもん!」

 気もそぞろな子供達に、大人達は内心でクスクス笑いが止まりません。
 だって大人はサンタさんの正体を知っているからです。
 サンタさんの正体を見破れたら一人前になった証なのです。
 知らない子供達はまだ見ぬサンタさんを思い描いてキャッキャとはしゃぎます。

 「うんうん。子供は純真で可愛いなー」

 因みにこの山には宗教が無いのでクリスマスは本来の意味では無く、日本での一般的なクリスマスと同じ意味で楽しまれています。ツリーの下にプレゼントが置かれる所だけは海外式ですが。
 三巳は獣神だけど祀られている訳ではないのです。
 だから三巳が周囲を見回すと、それぞれ思い思いに家族と団らんしたり、恋人と仲睦まじくしています。
 最近やっとロキ医師と正式に家族となったリリとネルビーもほんわかと団らんしています。
 その後ろでロダが家族団らんをしながらも、チラチラとリリを気にして見ています。二人きりになりたくてウズウズしているのが丸わかりです。
 よく見るとそこかしこに異性を気にする人達が見られます。

 「うんうん。青春だなー」

 三巳は近所のオバちゃんの風情で生暖かく見守り言いました。
 嬉しそうに目を細めた三巳は、尻尾を振りながら食べ物を物色しに行きました。

 夜も遅くまで続くパーティーですが、流石に小さなお子ちゃまから順繰りに船を漕ぎ始めました。
 コクリ、コックリ。
 今にも倒れそうです。
 其々の家のお母さんは、そんな子供達を抱っこすると、慣れた手付きでお家に連れ帰りました。
 そうして子供達は一人、また一人と帰っていなくなりましたが、年長さんになる程頑張って粘って起きている子もいます。

 「ほら、お友達は帰っちゃったよ。
 そろそろ帰って寝ようか」
 「いやー!今年こそはサンタさんに会うのー!」
 「我儘言ったらプレゼント貰えなくなっちゃうよ?」
 「わがままじゃないもん!
 良い子だからサンタさんにありがとうするんだもん!」

 夜も遅く、月は傾き落ちていく時刻です。
 お父さんもお母さんも我が子を寝かせつけようと諭します。けれど子供達はグズって言う事を聞いてくれません。

 「今年は多いなー」
 「今年は大きくなった子が多いからな」
 「でもみんな寝てくれないと準備出来ない。なんとか寝てもらわんと」

 小さな子供のいない大人達は微笑ましく眺めてコソコソ話し合います。
 そこへ三巳が颯爽と前に出て、グズる子供達を尻尾に包んで持ち上げました。そのままゆらり、るら~りと揺らしてみれば、強がる子供達もウトウトトロ~ンと目蓋が閉じてしまいました。
 空かさずお父さんお母さん達に子供達を返すと、お礼を言って連れ帰って行きました。

 「ナイスだ三巳!」
 「よぅしっ、もう小さい子はいないな?
 みんな今の内にプレゼントをツリーの下に積むぞ!」

 子供達が居なくなった途端、大人達は一斉に慌ただしく動き出します。
 聡い子が起き出す前に、準備したプレゼントを次々と山積みにしていきます。
 勿論三巳もこの日の為に作ったプレゼントを一緒になって積んでいきます。
 朝この山を見た子供達の喜ぶ顔を思い描いて。

 「にゅふ~、よぉーし!
 みんな朝まで飲み明かそう!」

 ツリーの下が小高い山になると、三巳は満足そうに息を吐いてクルリと振り返ると、グラスを持って言いました。

 「よっしゃー!クリスマスの夜はここからだー!」
 「呑むぞー!」

 今迄のほのぼの賑やかなパーティーが一転、大人達の宴会場に変化しました。
 
 「あ、でも三巳は歳は兎も角体は子供なんだからジュースな」
 「しょんな!?」

 けれど大人達がお酒を楽しむ傍ら、前世は大人でも現在子供の三巳はお酒を取り上げられてしまいます。
 三巳は哀しみの悲鳴を上げて、耳と尻尾をしおしおに萎れさせてorzの形で落ち込みましたとさ。
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