89 / 358
本編
クリスマスパーティー♪
しおりを挟む
薄ら雪が積もり始めた頃、広場のシンボルツリー前には村中の子供達が集まっていました。
その周囲を囲む様に長テーブルが設置され、その上には鳥の丸焼きやらケーキやらが所狭しと置かれています。今日は楽しいクリスマスパーティーの日です。
「じんぐるぐるー♪じんぐるぐるー♪」
「真っ赤なユニトナカーイー♪お空を駆け回るー♪」
子供達は一様に目を輝かせて歌い踊っては、クリスマスツリーの根元を期待の眼差しで見つめます。
「そんなに穴が開くほど見ても、プレゼントはまだ出てこないよ。
クリスマスプレゼントはイヴの夜、みんなが寝静まった頃に良い子の為にサンタさんがくれる物だからね」
「みんなは良い子かなー?」
「良い子だよ!おうちのお手伝いいっぱいしたもん!」
気もそぞろな子供達に、大人達は内心でクスクス笑いが止まりません。
だって大人はサンタさんの正体を知っているからです。
サンタさんの正体を見破れたら一人前になった証なのです。
知らない子供達はまだ見ぬサンタさんを思い描いてキャッキャとはしゃぎます。
「うんうん。子供は純真で可愛いなー」
因みにこの山には宗教が無いのでクリスマスは本来の意味では無く、日本での一般的なクリスマスと同じ意味で楽しまれています。ツリーの下にプレゼントが置かれる所だけは海外式ですが。
三巳は獣神だけど祀られている訳ではないのです。
だから三巳が周囲を見回すと、それぞれ思い思いに家族と団らんしたり、恋人と仲睦まじくしています。
最近やっとロキ医師と正式に家族となったリリとネルビーもほんわかと団らんしています。
その後ろでロダが家族団らんをしながらも、チラチラとリリを気にして見ています。二人きりになりたくてウズウズしているのが丸わかりです。
よく見るとそこかしこに異性を気にする人達が見られます。
「うんうん。青春だなー」
三巳は近所のオバちゃんの風情で生暖かく見守り言いました。
嬉しそうに目を細めた三巳は、尻尾を振りながら食べ物を物色しに行きました。
夜も遅くまで続くパーティーですが、流石に小さなお子ちゃまから順繰りに船を漕ぎ始めました。
コクリ、コックリ。
今にも倒れそうです。
其々の家のお母さんは、そんな子供達を抱っこすると、慣れた手付きでお家に連れ帰りました。
そうして子供達は一人、また一人と帰っていなくなりましたが、年長さんになる程頑張って粘って起きている子もいます。
「ほら、お友達は帰っちゃったよ。
そろそろ帰って寝ようか」
「いやー!今年こそはサンタさんに会うのー!」
「我儘言ったらプレゼント貰えなくなっちゃうよ?」
「わがままじゃないもん!
良い子だからサンタさんにありがとうするんだもん!」
夜も遅く、月は傾き落ちていく時刻です。
お父さんもお母さんも我が子を寝かせつけようと諭します。けれど子供達はグズって言う事を聞いてくれません。
「今年は多いなー」
「今年は大きくなった子が多いからな」
「でもみんな寝てくれないと準備出来ない。なんとか寝てもらわんと」
小さな子供のいない大人達は微笑ましく眺めてコソコソ話し合います。
そこへ三巳が颯爽と前に出て、グズる子供達を尻尾に包んで持ち上げました。そのままゆらり、るら~りと揺らしてみれば、強がる子供達もウトウトトロ~ンと目蓋が閉じてしまいました。
空かさずお父さんお母さん達に子供達を返すと、お礼を言って連れ帰って行きました。
「ナイスだ三巳!」
「よぅしっ、もう小さい子はいないな?
みんな今の内にプレゼントをツリーの下に積むぞ!」
子供達が居なくなった途端、大人達は一斉に慌ただしく動き出します。
聡い子が起き出す前に、準備したプレゼントを次々と山積みにしていきます。
勿論三巳もこの日の為に作ったプレゼントを一緒になって積んでいきます。
朝この山を見た子供達の喜ぶ顔を思い描いて。
「にゅふ~、よぉーし!
みんな朝まで飲み明かそう!」
ツリーの下が小高い山になると、三巳は満足そうに息を吐いてクルリと振り返ると、グラスを持って言いました。
「よっしゃー!クリスマスの夜はここからだー!」
「呑むぞー!」
今迄のほのぼの賑やかなパーティーが一転、大人達の宴会場に変化しました。
「あ、でも三巳は歳は兎も角体は子供なんだからジュースな」
「しょんな!?」
けれど大人達がお酒を楽しむ傍ら、前世は大人でも現在子供の三巳はお酒を取り上げられてしまいます。
三巳は哀しみの悲鳴を上げて、耳と尻尾をしおしおに萎れさせてorzの形で落ち込みましたとさ。
その周囲を囲む様に長テーブルが設置され、その上には鳥の丸焼きやらケーキやらが所狭しと置かれています。今日は楽しいクリスマスパーティーの日です。
「じんぐるぐるー♪じんぐるぐるー♪」
「真っ赤なユニトナカーイー♪お空を駆け回るー♪」
子供達は一様に目を輝かせて歌い踊っては、クリスマスツリーの根元を期待の眼差しで見つめます。
「そんなに穴が開くほど見ても、プレゼントはまだ出てこないよ。
クリスマスプレゼントはイヴの夜、みんなが寝静まった頃に良い子の為にサンタさんがくれる物だからね」
「みんなは良い子かなー?」
「良い子だよ!おうちのお手伝いいっぱいしたもん!」
気もそぞろな子供達に、大人達は内心でクスクス笑いが止まりません。
だって大人はサンタさんの正体を知っているからです。
サンタさんの正体を見破れたら一人前になった証なのです。
知らない子供達はまだ見ぬサンタさんを思い描いてキャッキャとはしゃぎます。
「うんうん。子供は純真で可愛いなー」
因みにこの山には宗教が無いのでクリスマスは本来の意味では無く、日本での一般的なクリスマスと同じ意味で楽しまれています。ツリーの下にプレゼントが置かれる所だけは海外式ですが。
三巳は獣神だけど祀られている訳ではないのです。
だから三巳が周囲を見回すと、それぞれ思い思いに家族と団らんしたり、恋人と仲睦まじくしています。
最近やっとロキ医師と正式に家族となったリリとネルビーもほんわかと団らんしています。
その後ろでロダが家族団らんをしながらも、チラチラとリリを気にして見ています。二人きりになりたくてウズウズしているのが丸わかりです。
よく見るとそこかしこに異性を気にする人達が見られます。
「うんうん。青春だなー」
三巳は近所のオバちゃんの風情で生暖かく見守り言いました。
嬉しそうに目を細めた三巳は、尻尾を振りながら食べ物を物色しに行きました。
夜も遅くまで続くパーティーですが、流石に小さなお子ちゃまから順繰りに船を漕ぎ始めました。
コクリ、コックリ。
今にも倒れそうです。
其々の家のお母さんは、そんな子供達を抱っこすると、慣れた手付きでお家に連れ帰りました。
そうして子供達は一人、また一人と帰っていなくなりましたが、年長さんになる程頑張って粘って起きている子もいます。
「ほら、お友達は帰っちゃったよ。
そろそろ帰って寝ようか」
「いやー!今年こそはサンタさんに会うのー!」
「我儘言ったらプレゼント貰えなくなっちゃうよ?」
「わがままじゃないもん!
良い子だからサンタさんにありがとうするんだもん!」
夜も遅く、月は傾き落ちていく時刻です。
お父さんもお母さんも我が子を寝かせつけようと諭します。けれど子供達はグズって言う事を聞いてくれません。
「今年は多いなー」
「今年は大きくなった子が多いからな」
「でもみんな寝てくれないと準備出来ない。なんとか寝てもらわんと」
小さな子供のいない大人達は微笑ましく眺めてコソコソ話し合います。
そこへ三巳が颯爽と前に出て、グズる子供達を尻尾に包んで持ち上げました。そのままゆらり、るら~りと揺らしてみれば、強がる子供達もウトウトトロ~ンと目蓋が閉じてしまいました。
空かさずお父さんお母さん達に子供達を返すと、お礼を言って連れ帰って行きました。
「ナイスだ三巳!」
「よぅしっ、もう小さい子はいないな?
みんな今の内にプレゼントをツリーの下に積むぞ!」
子供達が居なくなった途端、大人達は一斉に慌ただしく動き出します。
聡い子が起き出す前に、準備したプレゼントを次々と山積みにしていきます。
勿論三巳もこの日の為に作ったプレゼントを一緒になって積んでいきます。
朝この山を見た子供達の喜ぶ顔を思い描いて。
「にゅふ~、よぉーし!
みんな朝まで飲み明かそう!」
ツリーの下が小高い山になると、三巳は満足そうに息を吐いてクルリと振り返ると、グラスを持って言いました。
「よっしゃー!クリスマスの夜はここからだー!」
「呑むぞー!」
今迄のほのぼの賑やかなパーティーが一転、大人達の宴会場に変化しました。
「あ、でも三巳は歳は兎も角体は子供なんだからジュースな」
「しょんな!?」
けれど大人達がお酒を楽しむ傍ら、前世は大人でも現在子供の三巳はお酒を取り上げられてしまいます。
三巳は哀しみの悲鳴を上げて、耳と尻尾をしおしおに萎れさせてorzの形で落ち込みましたとさ。
20
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる