25 / 345
本編
ごくらく、ごくらく~♪
しおりを挟む
梅雨空がまだ戻って来てはいないけど、雲がチラチラ見え始めたある日の事です。
というより、温泉施設が完成した日の昼過ぎです。
「タオルよーし。パンツよーし」
三己が手元をめくり確認しています。
「三己ブラシ忘れてるよ」
リリがブラッシング用のブラシを持ってきてくれました。
「あ!忘れてたー。ありがとー」
三己は目を瞬かせてお礼を言います。
「ふふ。これはこのまま私が持っていくわね」
ブラッシングする気まんまんのリリが大事にタオルに包みました。
「ほっほっほ。この年になっても温泉に入れるとわのう。
三己には感謝じゃの」
マイ風呂桶と石鹸まで持参してロキ医師が楽しく笑います。
「他に温泉あるの?」
「おー、山の裏手に地獄谷があっていくつか人が入れる温泉が湧いてんだー」
「ほっほっほ。若い時分には良く湯治に行ったものじゃよ」
「へー私もいつか行ってみたいな」
「おー、いつでも案内するぞ」
目をキラキラさせて想像を膨らませるリリに、三己はニカッと笑って尻尾を大きく一振りします。
「でも今日は村お初の温泉施設にレッツらゴー♪」
「おー♪」
三己が元気よく腕を振り上げ、リリも合わせてガッツポーズをしました。
温泉施設に着くと既に人だかりが出来ていました。
小さな村の事なので噂が広まるのは一瞬です。
皆手に手にタオルやら桶やらアヒルさんやらを持っています。
「お、来た来た。
三己皆開店を待ってんだ。さっさと鏡開きやっちまおうぜ」
入り口で大工達が酒樽を前にして手招きしています。
「にょははー。気持ちはわかるが情緒もへったくれもないなー」
大工達や周りの期待に熱い視線に答える様に、ひょいひょいと前に向かって軽快に進み出ます。
「でも三己もさっさと入りたいからー。
温泉施設建設大作戦の成功を祝してー」
先に控えていたロウ村長と一緒に木槌を構えます。
「かーいてーん!ぱっかーん!」
間が抜ける様な三己の掛け声に合わせて二人は木槌を落としました。
酒樽の蓋がくしくも三己の掛け声と同じ音を立てて割れました。
「よっしゃー!入るぜー!」
「入って飲むぜー!」
「やーね男って、もっと静かに楽しめないのかしら」
バタバタと施設に入っていく男連中を横目に女性陣はしずしずとおしゃべりしながら中に入っていきます。
もっともしずしずしているのは外面だけで、その足元は早歩きですので説得力はありません。
それはそうでしょう。
これまで温泉は山の裏まで出向かないといけなかったのですから。
しかも鏡開きされたお酒は後で皆に配られるのです。
今日しか楽しめない行事は今日楽しまなくてどうするというのでしょう。
ちなみに子供達には特性のミックスジュースが配られます。
「三己達も行くかー」
「ええ」
三己とリリも皆の後に続きます。
ロキ医師とは浴室が別れるのでお別れです。
「わー凄い脱衣場が整ってる!」
「おー、(前世を参考に)一人一人に籠がいきわたる様に広めにしてあるんだ」
「鍵棚式ではないのね」
リリは以前入ったことのある共同浴場を思い出しました。
そこでは盗難やトラブル防止の為に鍵棚を採用していました。
「ん。ここじゃ鍵自体の意味がないからなー」
何せ三己の結界によって悪い人はいません。
しかしそんなことは露知らないリリは不思議そうに、不安そうに首を傾げます。
「たしかにここの人達は皆良い人だけど……。
よそから来た人の中には悪い人もいるんじゃない?」
「ああ、リリは聞いて無かったか。
この山には悪い奴が出入り出来ない結界が張ってあるんだ」
「え?私は入れたわよ?」
「?リリは良い子だろ」
三己の何気ない一言は、自分を綺麗な人間だとは思っていないリリの胸に響きました。
(本当に、三己は何度私を泣かせれば済むのかしら)
リリは涙目のままクスリと苦笑し、涙をごまかすように服を脱ぎました。
「ほら、三己も早くしないと先入っちゃうわよ」
「ま、待って。今脱ぐからー」
三己も慌てて服を脱ぎます。
脱ぎ方がお子ちゃまの様ですが、三己には獣耳と大きな尻尾があるから仕方無いのかもしれません。
脱いだ後は座りが悪いのか、しきりに耳と尻尾をピルピル揺らしていました。
「おー」
「はわ~」
浴室エリアに入ると、二人は感嘆の溜息が漏れました。
浴室のタイルは一枚一枚丁寧な模様が施され、所々に像や魔法のランプが置かれ一種独特な雰囲気を作り出しています。
温泉吹き出し口には三己が携わっていた時には無かった、ライオンに似た魔物の像が口から温泉を出しています。
「え?あれ?昨日までは普通のだったよね?」
前世では漫画や映画だけで見た、庶民の憧れを前に三己は混乱しました。
「三己、まずは体洗わないと」
リリに声を掛けられるまで三己は目を白黒させていました。
「そーだな」
結局楽しいから深く考えるのを止めました。
体を洗ったら早速温泉に入ります。
「はーにゃぁ―――」
「ほへ~~~」
足先からゆっくり入って、肩まで浸かると自然と気の弛んだ声が漏れました。
顔までゆるゆるです。
そこかしこでゆるゆるが伝染しています。
「ああー極楽極楽ー」
「骨身にしみわたる~」
かっぽーんというBGMを背後に聞きながら、温泉内ではしばしの静寂が流れました。
「そろそろ露天も行ってみよー」
「わくわく。どきどき」
屋内エリアから屋外エリアへ行く道も遊び心があって、ついキョロキョロしてしまいます。
「わーどーぶつの像が手招きしてるー」
「本当。皆小動物で可愛い」
動物の像に手招きされた先、屋外エリアでは異空間が広がっていました。
「はえー」
「ほあー」
三己とリリは大口開けて呆けています。
「あれ?空間魔法で飛ばされちゃった!?」
「落ち着けリリ。空間魔法は発動してない。
これはすべて演出だ」
間違えるのも無理はありません。
三己とリリが呆ける目の前には南国のジャングルが広がっていたのですから。
「これ、吟遊詩人の歌で聞いたことがあるわ。
南の島ではこういう大きな葉っぱが生い茂ってるって」
「おー、あそこなー。
本物はもっとデカかったぞー」
「行った事あるの?」
「おー、今度話したるー」
「楽しみにしてるわ」
三己は水で萎んだ尻尾を振り振りさせてジャングルに隠された秘湯を探します。
「まさか温泉施設で探検するとは思わなかったぞ」
「ふふ。でもとっても楽しい」
シダ植物に囲われた温泉を探し当てると、ゆっくり浸かりながらごちました。
「はーふー」
「はにゃ~」
浸かるとやっぱり気の抜けた空気が漏れました。
顔もやっぱりゆるゆるです。
サワサワと葉の揺れる音をBGMにまったりと温泉に浸かります。
「他にも露天風呂はあるけど」
「のぼせちゃうね」
内風呂でも長湯をしていたので、二人の体は真っ赤っかになっていました。
「一旦上がって施設探検しないか?」
「うん。そうしよう」
こうして三己とリリは長湯をしているおば様方をしり目に早々に湯から上がったのでした。
というより、温泉施設が完成した日の昼過ぎです。
「タオルよーし。パンツよーし」
三己が手元をめくり確認しています。
「三己ブラシ忘れてるよ」
リリがブラッシング用のブラシを持ってきてくれました。
「あ!忘れてたー。ありがとー」
三己は目を瞬かせてお礼を言います。
「ふふ。これはこのまま私が持っていくわね」
ブラッシングする気まんまんのリリが大事にタオルに包みました。
「ほっほっほ。この年になっても温泉に入れるとわのう。
三己には感謝じゃの」
マイ風呂桶と石鹸まで持参してロキ医師が楽しく笑います。
「他に温泉あるの?」
「おー、山の裏手に地獄谷があっていくつか人が入れる温泉が湧いてんだー」
「ほっほっほ。若い時分には良く湯治に行ったものじゃよ」
「へー私もいつか行ってみたいな」
「おー、いつでも案内するぞ」
目をキラキラさせて想像を膨らませるリリに、三己はニカッと笑って尻尾を大きく一振りします。
「でも今日は村お初の温泉施設にレッツらゴー♪」
「おー♪」
三己が元気よく腕を振り上げ、リリも合わせてガッツポーズをしました。
温泉施設に着くと既に人だかりが出来ていました。
小さな村の事なので噂が広まるのは一瞬です。
皆手に手にタオルやら桶やらアヒルさんやらを持っています。
「お、来た来た。
三己皆開店を待ってんだ。さっさと鏡開きやっちまおうぜ」
入り口で大工達が酒樽を前にして手招きしています。
「にょははー。気持ちはわかるが情緒もへったくれもないなー」
大工達や周りの期待に熱い視線に答える様に、ひょいひょいと前に向かって軽快に進み出ます。
「でも三己もさっさと入りたいからー。
温泉施設建設大作戦の成功を祝してー」
先に控えていたロウ村長と一緒に木槌を構えます。
「かーいてーん!ぱっかーん!」
間が抜ける様な三己の掛け声に合わせて二人は木槌を落としました。
酒樽の蓋がくしくも三己の掛け声と同じ音を立てて割れました。
「よっしゃー!入るぜー!」
「入って飲むぜー!」
「やーね男って、もっと静かに楽しめないのかしら」
バタバタと施設に入っていく男連中を横目に女性陣はしずしずとおしゃべりしながら中に入っていきます。
もっともしずしずしているのは外面だけで、その足元は早歩きですので説得力はありません。
それはそうでしょう。
これまで温泉は山の裏まで出向かないといけなかったのですから。
しかも鏡開きされたお酒は後で皆に配られるのです。
今日しか楽しめない行事は今日楽しまなくてどうするというのでしょう。
ちなみに子供達には特性のミックスジュースが配られます。
「三己達も行くかー」
「ええ」
三己とリリも皆の後に続きます。
ロキ医師とは浴室が別れるのでお別れです。
「わー凄い脱衣場が整ってる!」
「おー、(前世を参考に)一人一人に籠がいきわたる様に広めにしてあるんだ」
「鍵棚式ではないのね」
リリは以前入ったことのある共同浴場を思い出しました。
そこでは盗難やトラブル防止の為に鍵棚を採用していました。
「ん。ここじゃ鍵自体の意味がないからなー」
何せ三己の結界によって悪い人はいません。
しかしそんなことは露知らないリリは不思議そうに、不安そうに首を傾げます。
「たしかにここの人達は皆良い人だけど……。
よそから来た人の中には悪い人もいるんじゃない?」
「ああ、リリは聞いて無かったか。
この山には悪い奴が出入り出来ない結界が張ってあるんだ」
「え?私は入れたわよ?」
「?リリは良い子だろ」
三己の何気ない一言は、自分を綺麗な人間だとは思っていないリリの胸に響きました。
(本当に、三己は何度私を泣かせれば済むのかしら)
リリは涙目のままクスリと苦笑し、涙をごまかすように服を脱ぎました。
「ほら、三己も早くしないと先入っちゃうわよ」
「ま、待って。今脱ぐからー」
三己も慌てて服を脱ぎます。
脱ぎ方がお子ちゃまの様ですが、三己には獣耳と大きな尻尾があるから仕方無いのかもしれません。
脱いだ後は座りが悪いのか、しきりに耳と尻尾をピルピル揺らしていました。
「おー」
「はわ~」
浴室エリアに入ると、二人は感嘆の溜息が漏れました。
浴室のタイルは一枚一枚丁寧な模様が施され、所々に像や魔法のランプが置かれ一種独特な雰囲気を作り出しています。
温泉吹き出し口には三己が携わっていた時には無かった、ライオンに似た魔物の像が口から温泉を出しています。
「え?あれ?昨日までは普通のだったよね?」
前世では漫画や映画だけで見た、庶民の憧れを前に三己は混乱しました。
「三己、まずは体洗わないと」
リリに声を掛けられるまで三己は目を白黒させていました。
「そーだな」
結局楽しいから深く考えるのを止めました。
体を洗ったら早速温泉に入ります。
「はーにゃぁ―――」
「ほへ~~~」
足先からゆっくり入って、肩まで浸かると自然と気の弛んだ声が漏れました。
顔までゆるゆるです。
そこかしこでゆるゆるが伝染しています。
「ああー極楽極楽ー」
「骨身にしみわたる~」
かっぽーんというBGMを背後に聞きながら、温泉内ではしばしの静寂が流れました。
「そろそろ露天も行ってみよー」
「わくわく。どきどき」
屋内エリアから屋外エリアへ行く道も遊び心があって、ついキョロキョロしてしまいます。
「わーどーぶつの像が手招きしてるー」
「本当。皆小動物で可愛い」
動物の像に手招きされた先、屋外エリアでは異空間が広がっていました。
「はえー」
「ほあー」
三己とリリは大口開けて呆けています。
「あれ?空間魔法で飛ばされちゃった!?」
「落ち着けリリ。空間魔法は発動してない。
これはすべて演出だ」
間違えるのも無理はありません。
三己とリリが呆ける目の前には南国のジャングルが広がっていたのですから。
「これ、吟遊詩人の歌で聞いたことがあるわ。
南の島ではこういう大きな葉っぱが生い茂ってるって」
「おー、あそこなー。
本物はもっとデカかったぞー」
「行った事あるの?」
「おー、今度話したるー」
「楽しみにしてるわ」
三己は水で萎んだ尻尾を振り振りさせてジャングルに隠された秘湯を探します。
「まさか温泉施設で探検するとは思わなかったぞ」
「ふふ。でもとっても楽しい」
シダ植物に囲われた温泉を探し当てると、ゆっくり浸かりながらごちました。
「はーふー」
「はにゃ~」
浸かるとやっぱり気の抜けた空気が漏れました。
顔もやっぱりゆるゆるです。
サワサワと葉の揺れる音をBGMにまったりと温泉に浸かります。
「他にも露天風呂はあるけど」
「のぼせちゃうね」
内風呂でも長湯をしていたので、二人の体は真っ赤っかになっていました。
「一旦上がって施設探検しないか?」
「うん。そうしよう」
こうして三己とリリは長湯をしているおば様方をしり目に早々に湯から上がったのでした。
10
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
料理人がいく!
八神
ファンタジー
ある世界に天才料理人がいた。
↓
神にその腕を認められる。
↓
なんやかんや異世界に飛ばされた。
↓
ソコはレベルやステータスがあり、HPやMPが見える世界。
↓
ソコの食材を使った料理を極めんとする事10年。
↓
主人公の住んでる山が戦場になる。
↓
物語が始まった。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。
碧
児童書・童話
異世界転生したものの、チートもなければ、転生特典も特になし。チート無双も冒険もしないけど、現代知識を活かしてマイペースに生きていくゆるふわ少年の日常系ストーリー。テンプレっぽくマヨネーズとか作ってみたり、書類改革や雑貨の作成、はてにはデトックス効果で治療不可の傷を癒したり……。チートもないが自重もない!料理に生産、人助け、溺愛気味の家族や可愛い婚約者らに囲まれて今日も自由に過ごします。ゆるふわ癒し系異世界ファンタジーここに開幕!
王都から追放されて、貴族学院の落ちこぼれ美少女たちを教育することになりました。
スタジオ.T
ファンタジー
☆毎日更新中☆
護衛任務の際に持ち場を離れて、仲間の救出を優先した王都兵団のダンテ(主人公)。
依頼人を危険に晒したとして、軍事裁判にかけられたダンテは、なぜか貴族学校の教員の職を任じられる。
疑問に思いながらも学校に到着したダンテを待っていたのは、五人の問題児たち。彼らを卒業させなければ、牢獄行きという崖っぷちの状況の中で、さまざまなトラブルが彼を襲う。
学園魔導ハイファンタジー。
◆◆◆
登場人物紹介
ダンテ・・・貴族学校の落ちこぼれ『ナッツ』クラスの担任。元王都兵団で、小隊長として様々な戦場を戦ってきた。戦闘経験は豊富だが、当然教員でもなければ、貴族でもない。何かと苦労が多い。
リリア・フラガラッハ・・・ナッツクラスの生徒。父親は剣聖として名高い人物であり、剣技における才能はピカイチ。しかし本人は重度の『戦闘恐怖症』で、実技試験を突破できずに落ちこぼれクラスに落とされる。
マキネス・サイレウス・・・ナッツクラスの生徒。治療魔導師の家系だが、触手の召喚しかできない。練習で校舎を破壊してしまう問題児。ダンテに好意を寄せている。
ミミ・・・ナッツクラスの生徒。猫耳の亜人。本来、貴族学校に亜人は入ることはできないが、アイリッシュ卿の特別措置により入学した。運動能力と魔法薬に関する知識が素晴らしい反面、学科科目が壊滅的。語尾は『ニャ』。
シオン・ルブラン・・・ナッツクラスの生徒。金髪ツインテールのムードメーカー。いつもおしゃれな服を着ている。特筆した魔導はないが、頭の回転も早く、学力も並以上。素行不良によりナッツクラスに落とされた。
イムドレッド・ブラッド・・・ナッツクラスの生徒。暗殺者の家系で、上級生に暴力を振るってクラスを落とされた問題児。現在不登校。シオンの幼馴染。
フジバナ・カイ・・・ダンテの元部下。ダンテのことを慕っており、窮地に陥った彼を助けにアカデミアまでやって来る。真面目な性格だが、若干天然なところがある。
アイリッシュ卿・・・行政司法機関「賢老院」のメンバーの一人。ダンテを牢獄送りから救い、代わりにナッツクラスの担任に任命した張本人。切れ者と恐れられるが、基本的には優しい老婦人。
バーンズ卿・・・何かとダンテを陥れようとする「賢老院」のメンバーの一人。ダンテが命令違反をしたことを根に持っており、どうにか牢獄送りにしてやろうと画策している。長年の不養生で、メタボ真っ盛り。
ブラム・バーンズ・・・最高位のパラディンクラスの生徒。リリアたちと同学年で、バーンズ家の嫡子。ナッツクラスのことを下に見ており、自分が絶対的な強者でないと気が済まない。いつも部下とファンの女子生徒を引き連れている。
おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~
ハル*
ファンタジー
今日も今日とて、社畜として生きて日付をまたいでの帰路の途中。
高校の時に両親を事故で亡くして以降、何かとお世話になっている叔母の深夜食堂に寄ろうとした俺。
いつものようにドアに手をかけて、暖簾をぐぐりかけた瞬間のこと。
足元に目を開けていられないほどの眩しい光とともに、見たことがない円形の文様が現れる。
声をあげる間もなく、ぎゅっと閉じていた目を開けば、目の前にはさっきまであった叔母さんの食堂の入り口などない。
代わりにあったのは、洞窟の入り口。
手にしていたはずの鞄もなく、近くにあった泉を覗きこむとさっきまで見知っていた自分の姿はそこになかった。
泉の近くには、一冊の本なのか日記なのかわからないものが落ちている。
降り出した雨をよけて、ひとまずこの場にたどり着いた時に目の前にあった洞窟へとそれを胸に抱えながら雨宿りをすることにした主人公・水兎(ミト)
『ようこそ、社畜さん。アナタの心と体を癒す世界へ』
表紙に書かれている文字は、日本語だ。
それを開くと見たことがない文字の羅列に戸惑い、本を閉じる。
その後、その物の背表紙側から出てきた文字表を見つつ、文字を認識していく。
時が過ぎ、日記らしきそれが淡く光り出す。
警戒しつつ開いた日記らしきそれから文字たちが浮かび上がって、光の中へ。そして、その光は自分の中へと吸い込まれていった。
急に脳内にいろんな情報が増えてきて、知恵熱のように頭が熱くなってきて。
自分には名字があったはずなのに、ここに来てからなぜか思い出せない。
そしてさっき泉で見た自分の姿は、自分が知っている姿ではなかった。
25の姿ではなく、どう見ても10代半ばにしか見えず。
熱にうなされながら、一晩を過ごし、目を覚ました目の前にはやたらとおしゃべりな猫が二本足で立っていた。
異世界転移をした水兎。
その世界で、元の世界では得られずにいた時間や人との関わりあう時間を楽しみながら、ちょいちょいやらかしつつ旅に出る…までが長いのですが、いずれ旅に出てのんびり過ごすお話です。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる