忠犬ネルビーの大冒険

蒼穹月

文字の大きさ
上 下
18 / 19
そして日常へ

雪の種類

しおりを挟む
 冬ってこんなに寒くなるんだな。
 初めて新雪に触れた日からいっぱいの日が過ぎた。あの日が一番寒いと思っていたのに、まだまだ寒くなっておれはビックリだ。
 最近はおれの寝床で寝るのも寒くて、リリと一緒に寝てる。
 リリと寝るのは好きだ。ぎゅーって体いっぱいで抱きしめてくれる。
 リリにぎゅーってされるとポカポカあったかくて気持ち良いんだぞ。

 「うふふ。ネルビーの尻尾、元気ね。でもあんまり動かすと冷たい空気がお布団に入っちゃうわよ?」
 『きゅ~、それは困る。おれ尻尾我慢する』

 嬉しいと尻尾振っちゃう。でも冷たいのはダメだ。
 おれは頑張って、頑張って尻尾を抑えた。でも先っぽだけ言う事聞いてくれない。

 「ふふ。ネルビーが嬉しいと私も嬉しい」
 『わふ~、リリ寒く無いか?』

 おれは毛があるからリリ程寒くない。でもリリもおれの毛に顔を埋めて「あったかい」って。

 『明日は雪積もるかな』

 雪は楽しい。雪の上を駆け回ると体も熱くなって寒いのどっか行っちゃうんだ。
 なのにここのとこずっと新しい雪降ってなくて、地面の雪はカチンコチンになっちゃった。氷よりは柔らかいけど、でも硬くておれの足がちょっと冷たくて痛い。

 「そうね。積もったばかりの雪で雪だるま作ったり、鎌倉作ったり。楽しい事いっぱいだわ」
 『落ちてくる雪もいろんな形あって楽しいぞ!』
 「うん。どれもキラキラで綺麗」
 『今日は久し振りに降るって三己が言ってた。どんな雪なのか楽しみだ』
 「ふふふ。それじゃあ明日の為にも今日は寝ましょうか」
 『わうっ!おれ寝る!』

 明日が楽しみだ!



 明日が来て目が覚めたおれは、一目散に外に向かった。
 そんでいつも通り雪の上を駆け回ろうと思ったのに……。おれ埋まった!

 『わう!?のれないっ!ばふっ!?わぷっ!?』

 いつもならどんなに柔らかい雪の日でも足が埋まるだけなのに。今日の雪はなんだか変だ。さらさらしてて掴みどころがないってやつだ。

 「おー。昨日は寒かったからなー。粉雪じゃ今日は雪だるま無理だなー」
 『粉雪?』

 雪の中で雪と戦ってたら三己の声がした。
 おれはもそもそと雪の中を泳いで家に戻ってどういう事か聞いてみた。

 「良く冷えた空気だと細かいサラサラの雪が降るんだよ。初めて降った雪は大きくて重みがあったろ?あれはまだ冬の初めで気温もそんなに低くなかったからなんだよ」

 確かに今思えばあの時はまだ冷たいけど耐えれた。

 『それじゃ今日は駆け回れないのか……』

 新雪の上におれの跡を残して駆け回るの楽しいんだけどな。

 「にししっ、その代わり埋まって遊ぶのには最適だぞ」

 埋まって、遊ぶ。
 おれはさっき雪の中を泳いだの思い出した。
 あの時は訳がわからなくていっぱいいっぱいだったけど、思い返せば確かに楽しい。

 『おれ!雪で泳ぐ!』
 「おー、どうせなら子供達と遊ぶともっと楽しいぞー。三己位大きいと埋もれきれなくて微妙だからなー」

 そう言って雪に入った三己。確かに上だけ出ててちょっと面白い。
 仕方ないからこの日は子供達の子守りを買って出てあげたんだぞ。えっへん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

欲しいのならば、全部あげましょう

杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」 今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。 「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」 それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど? 「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」 とお父様。 「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」 とお義母様。 「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」 と専属侍女。 この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。 挙げ句の果てに。 「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」 妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。 そうですか。 欲しいのならば、あげましょう。 ですがもう、こちらも遠慮しませんよ? ◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。 「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。 恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。 一発ネタですが後悔はありません。 テンプレ詰め合わせですがよろしければ。 ◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。 カクヨムでも公開しました。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...