忠犬ネルビーの大冒険

蒼穹月

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そして日常へ

新雪一番乗り

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 キラキラ、キラキラ世界が光ってる。
 山の村が一面真っ白に輝いてる。

 朝あまりの寒さにブルリと震えて目が覚めたら、空気がキーンって冷たくておれは氷になっちゃったって思ったんだ。
 リリが作ってくれたフカフカの寝床から出て、ペソリと床に前脚を着いたらビックリした。床も氷になっちゃった!
 おれは獣の神との修行を思い出した。氷の国がこんなだったな。あっちはホントに氷しか無かったけど。

 『わふ~、うひっ冷たいっ』

 おっかなびっくりペソペソ歩いて外に出たおれは、その光景に思わずチカチカした目をギューって閉じた。

 「おー、一晩で随分積もったなー」

 フワリと毛皮に覆われたと思ったら三巳の尻尾の毛だった。
 フカフカ、フカフカ。三巳の毛はあったかくおれを包んでくれる。

 『はうっはうっ』

 鼻先でフサフサ動く毛先を見るとムズムズーってしてかみかみしたくなった。そしたら笑われた。
 むー。三巳だって同じなの、おれ知ってんだぞ。一緒に玉コロかみかみした仲だからなっ。

 「ネルビー身体強化使えたろ。それで寒いのや冷たいの抑えられるだろ」
 『わう!その手があった!』

 おれは早速使った。
 おおっ、あんまし寒く無いぞ。
 寒くなくなったら今度は真っ白い世界にウズウズしだした。

 「にししー、最初のいーっぽ♪」

 何の事だと三巳を見たら、丁度ピョーイと片足跳びしたとこだった。
 そんでその体勢のまま着地した三巳はクルリとおれを振り向いてニィーっと目を細めて笑った。
 おれは意味がわからなかった。

 「ここ、三巳のエリアな」
 『!?』

 そう言ってピョイピョイと飛んで跳ねた三巳のあとにはいくつもの足跡が付いてた。
 真っ白な世界に三巳の足跡だけが目立つ。

 『むー!おれもやるっ』 

 俺も真似して真っ白な上を駆け回る。
 でも三巳ほどしっかり跡を残せなかった。

 「にゃははー、ネルビーは四本脚で重心が分散する上に脚が人族より小さいからなー。
 でもその分ネルビーのってわかる犬の肉球跡がキャンパスを描いてるみたいなんだよ」

 言われて真っ白な世界を全体的に見たら、ボコボコ三巳の足穴と、その周りをおれの足跡がグルグル回って楽しそうだった。

 「さらにドーン♪」

 俺の興奮を見てさらにニコーってした三巳は、今度は全身でバッて飛び上がってそのまま腹から雪に落下してった。
 そして三巳が消えた。

 『わふ!?三巳!?三巳がいない!匂いはするのにっ!』

 慌てて消えたとこ行ったら雪に埋もれてモガモガ笑ってた。
 なんだそれ面白そうだぞ。
 ワクワクしたから真似てみた。
 ピョーンて跳ねて腹からズボー!
 埋まった。
 な、なんだこれ。ボフッてしてズブーってして、た、楽しい!
 そっからはおれと三巳で真っ白な世界におれ達の跡をいっぱい残した。
 全身びしょ濡れの雪まみれになったけど、凄く楽しかった。
 最後に空を見ながら三巳と笑い転げてたらリリが呼びにきた。

 「ふふふっ。朝ご飯に呼びに来たんだけど、とっても楽しそうね。
 でも風邪を引いたら大変だから乾かしてから中に入ってね」

 コロコロ笑うリリに、おれと三巳は顔を見合わせてお互いのビッショリの毛皮を見た。
 そんで同時にブルブルブルって体を震わせて水気を飛ばした。

 『リリ、ご飯!』
 「いっぱい運動したからお腹空いたんだよー。三巳は着替えたら直ぐ行くなー」

 三巳は着替えに行ったからおれはリリと並んでご飯に向かう。

 『外真っ白くて凄いなっ、なっ』
 「ええ、これが銀世界というのね。とっても幻想的で素敵だわ」
 『ご飯食べたらリリも遊ぼう』
 「そうね。そうしたいけれど今日もお仕事あるから」

 リリと遊ぶ気満々だったのに断られてショボン。
 前の家の時はもっと一緒に遊べてたのに、ここでのリリはいつも忙しそうだ。ちょっと寂しいけど働くリリが楽しそうだからおれは我慢する。
 おれはリリが幸せならそれで良いんだ。
 ガッカリしてたけどご飯の時にジジ上がお休みにしてくれて、だからその後いっぱいリリと遊べた!
 ジジ上大好きだ!
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