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激戦
炸裂! ルークの攻撃魔法
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ルークは叫び声と共に斬りかかったが、相手は百戦錬磨のガイザスだ。剣筋を見切られているだろう、ルークの攻撃は全て捌かれ、躱されてしまう。
「どうした、貴様の正義とはそんなものか?」
余裕の顔で嘲笑う様に言うガイザスにルークの顔に焦りが浮かんだ。だが、もちろんここで止まるわけにはいかない。大きく息を吸い込んだルークは剣を振り上げ、腹の底から雄叫びを上げながら思いっきり振り下ろした。
それはまさにルークの渾身の一撃だった。だが、力の差は歴然、ガイザスは造作無くそれを正面から剣で受け止め、力技で弾き返した。
重い金属音が響き、強い衝撃がルークを襲った。その衝撃で手が痺れ、ルークは危うく剣を落としてしまうところだったが、必死に剣を握る手に力を込め、何とか剣を落とす事無く構え直した。するとガイザスはニヤリと笑った。
「ほほう、次は私が攻める番と言うわけだな」
言うとガイザスは剣を振り上げ、袈裟懸けに振り下ろした。
ルークは間一髪で剣で防御し、直撃を避ける事は出来たが、ガイザスの剣圧に負けて吹っ飛ばされてしまった。
「ルーク様!」
ソルドが声を上げた。ルークの意思を尊重して手を出さずにいたのだが、やはり無理があったか……気に病むソルドの見守る前でルークは剣を杖によろよろと立ち上がりながら小声で何か呟き始めた。
「何をブツブツ言っているのだ? 泣き言か?」
ガイザスが嘲る様に言いながら悠々とルークに近付き、ゆっくりと剣を振り上げた。
「これで終わりだ」
言いながら剣を振り下ろそうとしたガイザスを突然の爆炎が襲った。そう、コレはルークの攻撃魔法だ。よろよろ立ち上がりながらもルークは爆炎の魔法の呪文を唱えていたのだ。
ガイザスは爆風で吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれた。
「やったか?」
興奮したソルドが声を上げて身を乗り出した。だが、ソルドの歓喜の声を打ち消すかの様に瓦礫の中から声が聞こえた。
「これで終りか?」
ガイザスの声だ。そして次の瞬間には積み重なった瓦礫をものともせずガイザスが立ち上がっていた。
「ルフトの王子が攻撃魔法を使うとはな。少し驚いたよ」
涼しい顔で言ったガイザスは、またもや剣をルークの頭上に振り上げた。それを見たソルドが剣に手をかけるが、今から剣を抜いて飛び込んだところで間に合う訳が無い。ルークは死を覚悟して目を瞑った。
「あと一太刀浴びせる力が残っていれば……な。惜しかったな、さらばだ」
言うとガイザスはルーク目掛けて剣を振り下ろした。
「ルーク様!」
ソルドの悲痛な叫び声が響き、次の瞬間にはルークがガイザスの剣によって血の海に沈むかと思われた。だが、ガイザスは剣がルークの頭に当たる寸前でピタリと止めた。
「これでルーク王子は死んだ。君は一人の男としてステラ王女と結婚でも何でもするがいい。ただし、またガイザスに攻め入る様な事があれば……その時は君を殺さねばならない。わかってくれるな?」
ガイザスはそう言って剣を収め、ソルドに向き直った。
「ヒルロンはロレンツ王の生命は奪ってしまったが、私はルーク王子の生命は奪わなかった。これで鉾を収めてもらえないだろうか?」
「ガイザス殿……」
思いもよらぬ言葉にガイザスの事を呼び捨てにしていたソルドが言葉遣いを改めた。
「貴公は私が思っていた暴君とは全く違う方でしたね」
その意味を理解したのだろう、ガイザスも口調が変わった。
「ソルド殿、わかってくれたか」
「はい。貴公には感服つかまつりました。しかし……」
「しかし?」
「貴公に立ち会っていただきたい」
「わかってはもらえぬのか?」
「いえ、貴殿の思いはよくわかっております。ただ……それ以上に血が滾ってしまいました。ルフトの騎士ソルドでは無く、一人の剣士ソルドとして勝負がしてみたいと」
「ふむ……君もそっち側の男だというわけか……昔の自分を見ている様だよ」
ソルドの言葉にガイザスは不敵な笑みを浮かべた。今まではルフトとガイザス、国と国の問題だった。しかしココからは国など関係無い。ソルドとガイザス、二人の男の勝負なのだ。
「はい。一手ご教授お願いします」
恭しく頭を下げ、剣を抜いたソルドに応える様にガイザスも剣を抜いた。
「授業料は高くつくぞ」
「持ち合わせはこの生命より他はございませんが」
飄々とした風に言うソルドだが、目は真剣そのものだ。ガイザスは余裕の顔で剣をひと振りすると切っ先をソルドに向け、誘う様に言った。
「よろしい、来なさい」
「どうした、貴様の正義とはそんなものか?」
余裕の顔で嘲笑う様に言うガイザスにルークの顔に焦りが浮かんだ。だが、もちろんここで止まるわけにはいかない。大きく息を吸い込んだルークは剣を振り上げ、腹の底から雄叫びを上げながら思いっきり振り下ろした。
それはまさにルークの渾身の一撃だった。だが、力の差は歴然、ガイザスは造作無くそれを正面から剣で受け止め、力技で弾き返した。
重い金属音が響き、強い衝撃がルークを襲った。その衝撃で手が痺れ、ルークは危うく剣を落としてしまうところだったが、必死に剣を握る手に力を込め、何とか剣を落とす事無く構え直した。するとガイザスはニヤリと笑った。
「ほほう、次は私が攻める番と言うわけだな」
言うとガイザスは剣を振り上げ、袈裟懸けに振り下ろした。
ルークは間一髪で剣で防御し、直撃を避ける事は出来たが、ガイザスの剣圧に負けて吹っ飛ばされてしまった。
「ルーク様!」
ソルドが声を上げた。ルークの意思を尊重して手を出さずにいたのだが、やはり無理があったか……気に病むソルドの見守る前でルークは剣を杖によろよろと立ち上がりながら小声で何か呟き始めた。
「何をブツブツ言っているのだ? 泣き言か?」
ガイザスが嘲る様に言いながら悠々とルークに近付き、ゆっくりと剣を振り上げた。
「これで終わりだ」
言いながら剣を振り下ろそうとしたガイザスを突然の爆炎が襲った。そう、コレはルークの攻撃魔法だ。よろよろ立ち上がりながらもルークは爆炎の魔法の呪文を唱えていたのだ。
ガイザスは爆風で吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれた。
「やったか?」
興奮したソルドが声を上げて身を乗り出した。だが、ソルドの歓喜の声を打ち消すかの様に瓦礫の中から声が聞こえた。
「これで終りか?」
ガイザスの声だ。そして次の瞬間には積み重なった瓦礫をものともせずガイザスが立ち上がっていた。
「ルフトの王子が攻撃魔法を使うとはな。少し驚いたよ」
涼しい顔で言ったガイザスは、またもや剣をルークの頭上に振り上げた。それを見たソルドが剣に手をかけるが、今から剣を抜いて飛び込んだところで間に合う訳が無い。ルークは死を覚悟して目を瞑った。
「あと一太刀浴びせる力が残っていれば……な。惜しかったな、さらばだ」
言うとガイザスはルーク目掛けて剣を振り下ろした。
「ルーク様!」
ソルドの悲痛な叫び声が響き、次の瞬間にはルークがガイザスの剣によって血の海に沈むかと思われた。だが、ガイザスは剣がルークの頭に当たる寸前でピタリと止めた。
「これでルーク王子は死んだ。君は一人の男としてステラ王女と結婚でも何でもするがいい。ただし、またガイザスに攻め入る様な事があれば……その時は君を殺さねばならない。わかってくれるな?」
ガイザスはそう言って剣を収め、ソルドに向き直った。
「ヒルロンはロレンツ王の生命は奪ってしまったが、私はルーク王子の生命は奪わなかった。これで鉾を収めてもらえないだろうか?」
「ガイザス殿……」
思いもよらぬ言葉にガイザスの事を呼び捨てにしていたソルドが言葉遣いを改めた。
「貴公は私が思っていた暴君とは全く違う方でしたね」
その意味を理解したのだろう、ガイザスも口調が変わった。
「ソルド殿、わかってくれたか」
「はい。貴公には感服つかまつりました。しかし……」
「しかし?」
「貴公に立ち会っていただきたい」
「わかってはもらえぬのか?」
「いえ、貴殿の思いはよくわかっております。ただ……それ以上に血が滾ってしまいました。ルフトの騎士ソルドでは無く、一人の剣士ソルドとして勝負がしてみたいと」
「ふむ……君もそっち側の男だというわけか……昔の自分を見ている様だよ」
ソルドの言葉にガイザスは不敵な笑みを浮かべた。今まではルフトとガイザス、国と国の問題だった。しかしココからは国など関係無い。ソルドとガイザス、二人の男の勝負なのだ。
「はい。一手ご教授お願いします」
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「授業料は高くつくぞ」
「持ち合わせはこの生命より他はございませんが」
飄々とした風に言うソルドだが、目は真剣そのものだ。ガイザスは余裕の顔で剣をひと振りすると切っ先をソルドに向け、誘う様に言った。
「よろしい、来なさい」
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