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デイブ、剣技の稽古デビューはお城で!?
ソルドとドルフって、ダメな大人なのだろうか?
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ドルフを先頭に城を出たルーク達は城門に一人の少女の姿を見付けた。宮殿へと消えたステラが着替えて城門でルークを待っていたのだ。
「訓練終わったんですね。お疲れ様」
声をかけてきたステラにデイブとミレアは緊張した。友達になったと言ってもやはり相手は王女なのだから無理も無いだろう。するとデイブがステラに言った。
「おやメイティ。今からソルド殿の奢りでご飯食べに行くんだけど、一緒に来るかい?」
ウィンクするドルフにステラの目が輝いた。
「えっ、良いんですか? ぜひお供させて下さい!」
*
ドルフの言う『良い店』は小洒落た料理屋だった。
「おいドルフ、高そうな店じゃないか。二人で飲む時は安いトコなのによ」
不服そうなソルドにドルフは身も蓋もない事を言った。
「そりゃお前、お前と二人で飲むのに気取った店行ってもしょうがないだろうが」
確かに野郎二人で飲むのにこんな小洒落た店は必要無い。こ汚い安酒場で十分だ。大事なのは『どんな店で飲む』のでは無くて『誰と飲む』かなのだから。
「そりゃそうだな……ところでドルフ殿、給料の前借りはさせていただけるのでありましょうか?」
ソルドは予想外の高そうな店に懐具合が心配になった様だ。
「なんだよ、こんな時に上司呼ばわりしやがって。大丈夫、俺の顔でツケにしてもらえるから。みんな、好きなモノ注文しろよ。なんたって今日はソルドの奢りだからな」
ご機嫌な顔で言うドルフだったが、メニューを見ていたデイブが言いにくそうに口を開いた。
「何を注文したら良いかわからないです」
「私も……」
ミレアも恥ずかしそうに続いて言った。それはそうだろう、一般庶民、しかも学生のデイブとミレアはこんな店に縁などあるわけが無い。
「そうか。学生さんはこういう店は初めてか」
ドルフが店員を呼び、適当に料理と飲み物を注文し出した。
――金、足りるかな……? ――
ソルドはそんなドルフを止めるわけにもいかず、ただ不安そうな目で見るしか無かった。
*
「とりあえず乾杯といくか」
料理に先立って運ばれた飲み物をソルドが掲げた。
「乾杯? 何に?」
「野暮な事言うんじゃ無ぇよ。そうだな、デイブ君の稽古デビューに乾杯だ」
ルークの素朴な質問にソルドはため息を吐いた。そう、乾杯に理由など要らないのだ。するとグラスを持ったドルフが楽しそうに笑った。
「本日のスポンサー、ソルド殿にもな」
「嫌なコト思い出させんじゃねぇよ。ともかく乾杯だ」
ソルドの音頭でグラスが合わされ、ルーク達はジュースをソルドとドルフは酒を一息に喉に流し込んだ。
「昼間っから飲む酒は美味いよな」
「まったくだ。今日、休み取っといてよかったぜ」
楽しそうに酒をおかわりする二人、ダメな大人の典型だ。憧れの二人の思わぬ姿にデイブがルークにそっと耳打ちした。
「ルーク、ソルドさんって飲むといつもこんな感じなのか?」
「うん。ちょっと恥ずかしいけど」
単なる酒飲みと化してしまった兄ソルドにルークが顔を赤くしながら頷くとミレアも小さな声で話に加わった。
「ソルドさんって、ルフトの騎士だったのよね。騎士って言えば常に凛としたイメージがあったんだけど……」
ひそひそ話すルーク達だったが、ソルドはミレアの言葉を聞き逃さなかった。
「ミレア、俺はもう騎士じゃ無いんだよ」
「あ……ごめんなさい」
ソルドの重い一言にミレアはしゅんとなり、空気が重くなってしまったが、ドルフの言葉で事態は一転した。
「何言ってんだよソルド。お前、昔っからこんなだったじゃねぇか」
「ああ、そうだったよな。お前だって人のコト言えねぇけどな」
呆れた顔で言ったドルフを指差してソルドが大笑いしたのだ。だが、ドルフも負けてはいない。
「人を指差すんじゃねぇよ。ま、その通りだけどな」
指された指を叩きながらドルフも声高らかに笑ったのだ。酒を片手に豪快に笑うソルドとドルフ。やはりこの二人、ダメな大人だ。
呆気にとられるルーク達、特にステラのショックは大きかった。騎士としての凛々しいソルドや親衛隊としての精悍なドルフしか見ていなかったのが、その本性を垣間見たのだから無理も無い。するとソルドが運ばれてきた肉の串焼きを頬張りながら言った。
「あのな、騎士だの親衛隊だの言う前に俺達は人間なんだよ。オンとオフの切り替えをきっちりする。それが大人ってモンだ」
だからと言って弟や弟の友達(しかもその中の一人は王女様)の前でこの態度は大人としてどうなんだろう? と思うルーク。そしてミレアはメイティを見て思った。
――それにしてもやっぱりメイティってステラ様にそっくりだわ。もしかしたらメイティって実はステラ様で、お忍びで魔法学園に来てたりして……まさかね――
ライトノベルや漫画、アニメやエロゲーの様な展開を想像し、そんな事あるわけ無いと思い直す何も知らないミレア。そしてステラはミレアに心の中で詫びていた。
――ミレア、ごめんなさい。今は私がメイティだって事は言えないの。いつかちゃんと全て話して謝るから……ごめんね――
「訓練終わったんですね。お疲れ様」
声をかけてきたステラにデイブとミレアは緊張した。友達になったと言ってもやはり相手は王女なのだから無理も無いだろう。するとデイブがステラに言った。
「おやメイティ。今からソルド殿の奢りでご飯食べに行くんだけど、一緒に来るかい?」
ウィンクするドルフにステラの目が輝いた。
「えっ、良いんですか? ぜひお供させて下さい!」
*
ドルフの言う『良い店』は小洒落た料理屋だった。
「おいドルフ、高そうな店じゃないか。二人で飲む時は安いトコなのによ」
不服そうなソルドにドルフは身も蓋もない事を言った。
「そりゃお前、お前と二人で飲むのに気取った店行ってもしょうがないだろうが」
確かに野郎二人で飲むのにこんな小洒落た店は必要無い。こ汚い安酒場で十分だ。大事なのは『どんな店で飲む』のでは無くて『誰と飲む』かなのだから。
「そりゃそうだな……ところでドルフ殿、給料の前借りはさせていただけるのでありましょうか?」
ソルドは予想外の高そうな店に懐具合が心配になった様だ。
「なんだよ、こんな時に上司呼ばわりしやがって。大丈夫、俺の顔でツケにしてもらえるから。みんな、好きなモノ注文しろよ。なんたって今日はソルドの奢りだからな」
ご機嫌な顔で言うドルフだったが、メニューを見ていたデイブが言いにくそうに口を開いた。
「何を注文したら良いかわからないです」
「私も……」
ミレアも恥ずかしそうに続いて言った。それはそうだろう、一般庶民、しかも学生のデイブとミレアはこんな店に縁などあるわけが無い。
「そうか。学生さんはこういう店は初めてか」
ドルフが店員を呼び、適当に料理と飲み物を注文し出した。
――金、足りるかな……? ――
ソルドはそんなドルフを止めるわけにもいかず、ただ不安そうな目で見るしか無かった。
*
「とりあえず乾杯といくか」
料理に先立って運ばれた飲み物をソルドが掲げた。
「乾杯? 何に?」
「野暮な事言うんじゃ無ぇよ。そうだな、デイブ君の稽古デビューに乾杯だ」
ルークの素朴な質問にソルドはため息を吐いた。そう、乾杯に理由など要らないのだ。するとグラスを持ったドルフが楽しそうに笑った。
「本日のスポンサー、ソルド殿にもな」
「嫌なコト思い出させんじゃねぇよ。ともかく乾杯だ」
ソルドの音頭でグラスが合わされ、ルーク達はジュースをソルドとドルフは酒を一息に喉に流し込んだ。
「昼間っから飲む酒は美味いよな」
「まったくだ。今日、休み取っといてよかったぜ」
楽しそうに酒をおかわりする二人、ダメな大人の典型だ。憧れの二人の思わぬ姿にデイブがルークにそっと耳打ちした。
「ルーク、ソルドさんって飲むといつもこんな感じなのか?」
「うん。ちょっと恥ずかしいけど」
単なる酒飲みと化してしまった兄ソルドにルークが顔を赤くしながら頷くとミレアも小さな声で話に加わった。
「ソルドさんって、ルフトの騎士だったのよね。騎士って言えば常に凛としたイメージがあったんだけど……」
ひそひそ話すルーク達だったが、ソルドはミレアの言葉を聞き逃さなかった。
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「あ……ごめんなさい」
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「何言ってんだよソルド。お前、昔っからこんなだったじゃねぇか」
「ああ、そうだったよな。お前だって人のコト言えねぇけどな」
呆れた顔で言ったドルフを指差してソルドが大笑いしたのだ。だが、ドルフも負けてはいない。
「人を指差すんじゃねぇよ。ま、その通りだけどな」
指された指を叩きながらドルフも声高らかに笑ったのだ。酒を片手に豪快に笑うソルドとドルフ。やはりこの二人、ダメな大人だ。
呆気にとられるルーク達、特にステラのショックは大きかった。騎士としての凛々しいソルドや親衛隊としての精悍なドルフしか見ていなかったのが、その本性を垣間見たのだから無理も無い。するとソルドが運ばれてきた肉の串焼きを頬張りながら言った。
「あのな、騎士だの親衛隊だの言う前に俺達は人間なんだよ。オンとオフの切り替えをきっちりする。それが大人ってモンだ」
だからと言って弟や弟の友達(しかもその中の一人は王女様)の前でこの態度は大人としてどうなんだろう? と思うルーク。そしてミレアはメイティを見て思った。
――それにしてもやっぱりメイティってステラ様にそっくりだわ。もしかしたらメイティって実はステラ様で、お忍びで魔法学園に来てたりして……まさかね――
ライトノベルや漫画、アニメやエロゲーの様な展開を想像し、そんな事あるわけ無いと思い直す何も知らないミレア。そしてステラはミレアに心の中で詫びていた。
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