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エディの告白
ステラだけで無く、シーナもお弁当を作ってきていた!
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「腹減ったな、そろそろメイティの弁当をご馳走になろうぜ」
「そうね、私もうお腹ペコペコ」
デイブが言うとミレアがそれに賛同した。ミレアが『お腹がペコペコ』だと言うのも無理はない、朝九時に集合して歩く事数時間、湖に着いたのは昼前だ。そしてそれから着替えて水遊びをしていたのだからお昼はとっくに回っている。
水から上がって荷物を広げると、ステラの作ってきた弁当はサンドイッチだった。それを見たデイブとミレアがブツブツと何か呟いている。
「あれっ このサンドイッチ、見た事がある様な……」
「そうね。何かしら、この既視感は……」
デイブとミレアが首を捻っているとルークが何か思い付いたらしく、声を上げた。
「兄さんのサンドイッチだ!」
そう、ステラの作ってきたサンドイッチは野外授業の時にルークがソルドに持たしてもらったサンドイッチとそっくりなのだ。するとステラはとんでもない事を言い出した。
「あらっ わかっちゃいました? 以前のアレも実は私が作ったんですよ」
ステラはいたずらっぽく笑うがルークはその場から、いや、アルテナから逃げ出したくなってしまった。だが、そういうわけにはいかない。ルークは必死に平静を装ってステラに詫びを入れた。
「やっぱり。兄さんが作ったにしちゃ、芸が細かいと思ったんだよな。ゴメンね、メイティ」
もちろん後でしっかり謝るつもりだ。しかしステラはニコニコしながら言った。
「いえいえ、ソルドさんには父がお世話になってますから」
「メイティのお父さんがソルドさんのお世話にって?」
デイブが不思議そうな声で聞いた。ルークの兄ソルドがアルテナ王ゼクスの親衛隊だという事はルークから聞いて知っている。という事は、メイティ(正体は王女ステラだが)の父親も親衛隊なのかと思ったのだ。するとステラは笑顔で答えた。
「ええ。私の父はお城に住み込みで働いているんですよ」
「それじゃメイティもお城に?」
びっくりした顔でミレアが聞くとステラはコクリと首を縦に振った。
「ええ。私の家族も一緒に住まわせてもらってます」
「凄~い!じゃあ、ステラ様の姿なんかもよく見るわけ?」
「ええ。しょっちゅう見てますよ」
まあ、確かにその通りだ。ステラの父親であるゼクスは城に住んで王としての激務に勤しんでいるし、ステラの家族と言えば母親は王妃で弟は王子だ。間違い無く城に住んでいる。そしてミレアの言う『ステラ様の姿』は鏡でしょっちゅう見ているのだから。
「いいなぁ~~~~ 私もステラ様と会ってみたいなぁ」
今話をしている相手がステラ王女その人だとは知らず、ミレアは羨ましそうに言った。
*
「あ、あの……私もお弁当作ってきたの。よかったらコレも……」
ステラの家族の話がひと段落したところでシーナが恥ずかしそうな声で言った。そしておずおずと差し出した弁当箱にはステラの作った豪華なサンドイッチとは対照的な、おにぎりと卵焼き、唐揚げにタコさんウィンナーといった一般庶民の家庭的な料理が詰められていた。
「わあ、嬉しいな。いただくよ!」
いち早く喰いついたのはもちろんエディなのは言うまでも無いだろう。
「私のと交換ですね」
ステラがニコニコ顔で言うがシーナは完全に気後れして尻込みしてしまっている。
「でも、メイティの綺麗なサンドイッチと並べられると恥ずかしい……」
王女様が王子様の為に作ったサンドイッチと一般庶民の娘が一般庶民の友達の為に作った弁当が豪華さや綺麗さでは比べ物にならないのは当たり前だ。だが、それが全てでは無いのが女の子の手作り弁当というものだ。
「そんな事無いよ! とっても美味しいよ!」
おにぎりを頬張りながらエディが言った。そう、エディにとってはシーナの手作り弁当が最高の品、何物にも代え難い一品なのだ。エディに続いてデイブもおにぎりに手を伸ばした。
「どれ、んじゃ俺もひとつ……おっ本当に美味いな」
「そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ私はメイティのサンドイッチをいただきますね」
シーナは嬉しそうに言うとステラのサンドイッチを手に取り口に運んだ。
「美味しい! こんなサンドイッチ初めてだわ」
「この唐揚げも美味しいわよ。それにしてもシーナったら大袈裟ね。」
シーナの感嘆の声にステラが笑顔で返した。実に微笑ましい光景だ。するとデイブが右手におにぎり、左手にサンドイッチを持ち、ちらっとミレアを横目で見ながら言った。
「メイティもシーナも良い奥さんになれるなあ」
「な、なによ! 私だって作ろうと思えば作れるんだからね!」
ミレアがムキになって噛みつくと、エディがボソっと突っ込んだ。
「ミレアが料理してるとこなんて見た事無いけど」
何度も言うがデイブとミレアそしてエディは幼馴染、十年来の付き合いだ。しかしデイブもエディもミレアが料理をしているところなど見た事が無い。と言うか、実際ミレアは料理をした事など無い。
「うっさいわね。じゃあ今度は私もお弁当作ってくるわよ!」
「はっはっはっ 期待しないで待ってるぜ」
思わず口走ってしまったミレアにデイブは言った。もちろん言葉とは裏腹に少しは本当に期待しているのは言うまでも無いだろう。
「そうね、私もうお腹ペコペコ」
デイブが言うとミレアがそれに賛同した。ミレアが『お腹がペコペコ』だと言うのも無理はない、朝九時に集合して歩く事数時間、湖に着いたのは昼前だ。そしてそれから着替えて水遊びをしていたのだからお昼はとっくに回っている。
水から上がって荷物を広げると、ステラの作ってきた弁当はサンドイッチだった。それを見たデイブとミレアがブツブツと何か呟いている。
「あれっ このサンドイッチ、見た事がある様な……」
「そうね。何かしら、この既視感は……」
デイブとミレアが首を捻っているとルークが何か思い付いたらしく、声を上げた。
「兄さんのサンドイッチだ!」
そう、ステラの作ってきたサンドイッチは野外授業の時にルークがソルドに持たしてもらったサンドイッチとそっくりなのだ。するとステラはとんでもない事を言い出した。
「あらっ わかっちゃいました? 以前のアレも実は私が作ったんですよ」
ステラはいたずらっぽく笑うがルークはその場から、いや、アルテナから逃げ出したくなってしまった。だが、そういうわけにはいかない。ルークは必死に平静を装ってステラに詫びを入れた。
「やっぱり。兄さんが作ったにしちゃ、芸が細かいと思ったんだよな。ゴメンね、メイティ」
もちろん後でしっかり謝るつもりだ。しかしステラはニコニコしながら言った。
「いえいえ、ソルドさんには父がお世話になってますから」
「メイティのお父さんがソルドさんのお世話にって?」
デイブが不思議そうな声で聞いた。ルークの兄ソルドがアルテナ王ゼクスの親衛隊だという事はルークから聞いて知っている。という事は、メイティ(正体は王女ステラだが)の父親も親衛隊なのかと思ったのだ。するとステラは笑顔で答えた。
「ええ。私の父はお城に住み込みで働いているんですよ」
「それじゃメイティもお城に?」
びっくりした顔でミレアが聞くとステラはコクリと首を縦に振った。
「ええ。私の家族も一緒に住まわせてもらってます」
「凄~い!じゃあ、ステラ様の姿なんかもよく見るわけ?」
「ええ。しょっちゅう見てますよ」
まあ、確かにその通りだ。ステラの父親であるゼクスは城に住んで王としての激務に勤しんでいるし、ステラの家族と言えば母親は王妃で弟は王子だ。間違い無く城に住んでいる。そしてミレアの言う『ステラ様の姿』は鏡でしょっちゅう見ているのだから。
「いいなぁ~~~~ 私もステラ様と会ってみたいなぁ」
今話をしている相手がステラ王女その人だとは知らず、ミレアは羨ましそうに言った。
*
「あ、あの……私もお弁当作ってきたの。よかったらコレも……」
ステラの家族の話がひと段落したところでシーナが恥ずかしそうな声で言った。そしておずおずと差し出した弁当箱にはステラの作った豪華なサンドイッチとは対照的な、おにぎりと卵焼き、唐揚げにタコさんウィンナーといった一般庶民の家庭的な料理が詰められていた。
「わあ、嬉しいな。いただくよ!」
いち早く喰いついたのはもちろんエディなのは言うまでも無いだろう。
「私のと交換ですね」
ステラがニコニコ顔で言うがシーナは完全に気後れして尻込みしてしまっている。
「でも、メイティの綺麗なサンドイッチと並べられると恥ずかしい……」
王女様が王子様の為に作ったサンドイッチと一般庶民の娘が一般庶民の友達の為に作った弁当が豪華さや綺麗さでは比べ物にならないのは当たり前だ。だが、それが全てでは無いのが女の子の手作り弁当というものだ。
「そんな事無いよ! とっても美味しいよ!」
おにぎりを頬張りながらエディが言った。そう、エディにとってはシーナの手作り弁当が最高の品、何物にも代え難い一品なのだ。エディに続いてデイブもおにぎりに手を伸ばした。
「どれ、んじゃ俺もひとつ……おっ本当に美味いな」
「そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ私はメイティのサンドイッチをいただきますね」
シーナは嬉しそうに言うとステラのサンドイッチを手に取り口に運んだ。
「美味しい! こんなサンドイッチ初めてだわ」
「この唐揚げも美味しいわよ。それにしてもシーナったら大袈裟ね。」
シーナの感嘆の声にステラが笑顔で返した。実に微笑ましい光景だ。するとデイブが右手におにぎり、左手にサンドイッチを持ち、ちらっとミレアを横目で見ながら言った。
「メイティもシーナも良い奥さんになれるなあ」
「な、なによ! 私だって作ろうと思えば作れるんだからね!」
ミレアがムキになって噛みつくと、エディがボソっと突っ込んだ。
「ミレアが料理してるとこなんて見た事無いけど」
何度も言うがデイブとミレアそしてエディは幼馴染、十年来の付き合いだ。しかしデイブもエディもミレアが料理をしているところなど見た事が無い。と言うか、実際ミレアは料理をした事など無い。
「うっさいわね。じゃあ今度は私もお弁当作ってくるわよ!」
「はっはっはっ 期待しないで待ってるぜ」
思わず口走ってしまったミレアにデイブは言った。もちろん言葉とは裏腹に少しは本当に期待しているのは言うまでも無いだろう。
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