上 下
51 / 85
エディの告白

シーナの水着は……

しおりを挟む
 そして翌日、夏休みの初日だ。朝から夏の日差しが肌を刺す。集合時間は九時。待ち合わせ場所に一番に着いたのはエディ……では無かった。

「シーナ!」

「あら、おはようエディ」

 現在時刻は八時四十分。待ち合わせの時間までにはまだ二十分もある。自分が一番乗りだとばかり思っていたエディはシーナに言った。

「随分早いね」

「みんなを待たせちゃったら悪いと思って。せっかく誘ってもらったんだもの」

 やっぱり良い子だなと思うエディに微笑みながらシーナは言った。

「エディも随分早いのね。早く来ておいて良かったわ」

 その微笑みにすっかりやらてしまったエディは何か話したくても言葉が出て来ない。待ち望んだ時間だというのに……もじもじしているうちに聞き覚えのある声が聞こえた。 

「お~っす エディにシーナ、早いな~」

「おはよう、待たせちゃったかしら?」

 デイブとミレアがやって来たのだ。そして時間ギリギリになって

「ごめんごめん、遅くなっちゃった」

 ルークとステラが小走りで現れた。

「ごめんなさい。お弁当作ってたら遅くなっちゃって」

「時間ぴったりだ。謝る事無いぜ」

 謝るステラにデイブが言うとミレアも笑顔で言った。

「そうよ。お弁当作ってきてくれたんでしょ?」

「うん、たくさん作ってきたから遠慮無く食べてね」

「おう、楽しみだぜ」

「じゃあ行きましょうか」

 例によって湖まで長い道のりを歩く。先刻の失態を取り戻すべくエディはシーナに一生懸命話しかけた。正直うっとおしいぐらいに。だが、それに嫌な顔を見せず話を聞き、時には相槌を打ち、時には笑顔を見せて応えるシーナ。それはエディにとって夢の様な時間だった。

 やがて湖に到着。ステラにとっては長い道のりだったが、エディにとってはあっという間の道のりだった。

「あんた達、覗いたら殺すからね」

 水着に着替える為、ミレア・ステラ・シーナが茂みへ消える。デイブは今回も水着を着込んで来たらしい。

「デイブ、毎回毎回暑くないの?」

 水着に着替えながらルークが聞くとデイブは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「この暑さ、蒸れ具合こそ夏の醍醐味ってヤツよ」

「また訳のわからない事を……」

 エディが呆れた顔をするが、デイブは豪快に笑った。

「まぁ良いじゃねぇか。楽しんだ者勝ちってコトよ。んじゃ、先行くぜ!」

 満面の笑顔でまた一人先に湖に飛び込むデイブにルークもすっかり呆れた顔となった。

「やれやれ…… ミレアを待つって考えはまったく無いみたいだね」

「まあ長い付き合いだからね。でも今は恋仲なんだから、少しは考えてあげないとダメだよね」

 そんな事を話ながらルークとエディが着替えを済ませ、少し待つとミレアの声が聞こえた。

「おっ待たせ~」

 テンションの高いミレアの声と共に水着に着替えた三人の女の子が茂みから出て来たのだ。ステラは白のワンピース、ミレアは赤のセパレーツ。これらは以前、五人でバーベキューに来た時と同じものだった。そしてエディの目を釘付けにしたのはもちろんシーナの水着姿だ。

 シーナの水着は紺色のローレグタイプのワンピース。しかも、胸のところには名前が書かれた白い布が縫い付けられている。早い話がスクール水着、所謂スク水だった。かわいい水着のステラとミレアの少し後ろを恥ずかしそうに歩くシーナを見てエディが言った。

「シーナは真面目なんだね。今日は学園の行事じゃ無いんだから学園指定の水着じゃなくてもよかったのに」

「アンタたち相手には学園の水着で十分ってコトよ」

 ミレアが悪づくが、エディはさらっと言った。

「でも、シーナが着るとかわいいよ」

「じゃあ何? 私が着るとかわいく無いっての?」

 エディの言葉にミレアが噛み付いた。デイブが普段からミレアにそういう事を言っていればこんな事にはならなかっただろうが……

「いや……そういう事じゃ無いけど……」

 言葉に困るエディにルークが助け舟を出した。

「そんな事無いよ。ミレアだってかわいいよ」

「じゃあ、私は?」

『かわいい』という言葉にステラまでもが珍しく乗っかってきた。

「も、もちろんステ……メイティもかわいいよ」

 焦ったルークは危うく皆の前で『ステラ様』と言ってしまうところだった。そんな中、デイブは一人水に浸かって呑気なものだ。

「はっはっはっ 女は怖ぇな。まあいいから早く来いよ。気持ち良いぜ」

 幸せそうにバチャバチャと水飛沫を上げて誘うデイブに。ルーク達は顔を見合わせて頷いた。

「そうね、行きましょうか」

「うん、いこう!」

 五人は歓声を上げて湖に向かって駆け出した。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...