25 / 85
魔法王国アルテナでの日々
ルーク達の前に現れたのは
しおりを挟む
「よかったらボクのサンドイッチも食べてよ」
「えっ いいの? じゃあ私のおにぎりと交換しましょ」
「じゃあボクはお肉と交換してもらおうかな」
皆でお弁当を食べる時にありがちな光景が繰り広げられる中、デイブは一人葛藤していた。
「……うーん」
「あれ デイブ、どうしたの?」
デイブが難しい顔をしているのに気付いたルークが尋ねるが、デイブは眉間に皺を寄せたまま自分の弁当と向き合い、一人でブツブツと何やら呟いている。
「サンドイッチと交換するとなるとやっぱりハンバーグか? いやコレは俺の大好物だし……かといってこのフライは……」
何の事はない、デイブは交換の品を何にしようかと真剣に悩んでいただけだった。そんなデイブを見かねたルークは笑顔で弁当箱を差し出した。
「いいよ、交換なんかしなくても。こんなにたくさんあるんだから、きっとみんなにも分けてあげろって事なんだよ。兄さん、友達と一緒にご飯食べるのは大事な事だっていつも言ってるもの」
「そ、そうか? なら遠慮無く」
ルークの好意に喜び、嬉しそうにサンドイッチに手を伸ばしたデイブはパク付くなり声を上げた。
「美味ぇ!」
「本当、美味しいわね」
「何か気品のある味がするね。こんなの初めてだよ」
ミレアとエディも絶賛の声を上げた。ルークも一つを手に取り、頬張ってみたところ、エディの言う『気品のある味』というのが理解出来た様な気がした。そのサンドイッチは怪我が治るまでお城で世話になっていた時に出してくれた食事と似た味付けだったのだ。ルークは思った。
――お城の材料を使ったからかな?でも、こっちの方が美味しい気がするな。兄さんが作ってくれたからかな? 外でみんなと食べてるからかな? ――
*
四人が輪になって弁当を食べているとどこからともなく声が聞こえてきた。
「楽しそうだね」
「うん、楽しいよ」
「ああ、楽しいぜ」
「ええ、楽しいわよ」
「うん、楽しいな」
ルーク達四人はその声に同時に応えた。どういう訳か四人共、どこからともなく聞こえてきた誰の声ともわからない声に自然と応えてしまったのだ。
「それは結構だね」
するとまた声がした。と同時に四人の輪の真ん中に小さな影が現れた。
「やあ、はじめましてだね。声は聞いてると思うけど」
何の前触れも無く姿を現した声の主に四人の心は震えた。
「き、君って……」
ミレアが震える声で言おうとしたが、感激するやら興奮するやらで言葉にならない。すると声の主はニコっと笑い、その口から期待通りの言葉が発せられた。
「そうだよ。君たちの言う精霊ってヤツ。ボクは風の精霊シルフ」
「えっ いいの? じゃあ私のおにぎりと交換しましょ」
「じゃあボクはお肉と交換してもらおうかな」
皆でお弁当を食べる時にありがちな光景が繰り広げられる中、デイブは一人葛藤していた。
「……うーん」
「あれ デイブ、どうしたの?」
デイブが難しい顔をしているのに気付いたルークが尋ねるが、デイブは眉間に皺を寄せたまま自分の弁当と向き合い、一人でブツブツと何やら呟いている。
「サンドイッチと交換するとなるとやっぱりハンバーグか? いやコレは俺の大好物だし……かといってこのフライは……」
何の事はない、デイブは交換の品を何にしようかと真剣に悩んでいただけだった。そんなデイブを見かねたルークは笑顔で弁当箱を差し出した。
「いいよ、交換なんかしなくても。こんなにたくさんあるんだから、きっとみんなにも分けてあげろって事なんだよ。兄さん、友達と一緒にご飯食べるのは大事な事だっていつも言ってるもの」
「そ、そうか? なら遠慮無く」
ルークの好意に喜び、嬉しそうにサンドイッチに手を伸ばしたデイブはパク付くなり声を上げた。
「美味ぇ!」
「本当、美味しいわね」
「何か気品のある味がするね。こんなの初めてだよ」
ミレアとエディも絶賛の声を上げた。ルークも一つを手に取り、頬張ってみたところ、エディの言う『気品のある味』というのが理解出来た様な気がした。そのサンドイッチは怪我が治るまでお城で世話になっていた時に出してくれた食事と似た味付けだったのだ。ルークは思った。
――お城の材料を使ったからかな?でも、こっちの方が美味しい気がするな。兄さんが作ってくれたからかな? 外でみんなと食べてるからかな? ――
*
四人が輪になって弁当を食べているとどこからともなく声が聞こえてきた。
「楽しそうだね」
「うん、楽しいよ」
「ああ、楽しいぜ」
「ええ、楽しいわよ」
「うん、楽しいな」
ルーク達四人はその声に同時に応えた。どういう訳か四人共、どこからともなく聞こえてきた誰の声ともわからない声に自然と応えてしまったのだ。
「それは結構だね」
するとまた声がした。と同時に四人の輪の真ん中に小さな影が現れた。
「やあ、はじめましてだね。声は聞いてると思うけど」
何の前触れも無く姿を現した声の主に四人の心は震えた。
「き、君って……」
ミレアが震える声で言おうとしたが、感激するやら興奮するやらで言葉にならない。すると声の主はニコっと笑い、その口から期待通りの言葉が発せられた。
「そうだよ。君たちの言う精霊ってヤツ。ボクは風の精霊シルフ」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる